定款を変更するときの手続きや注意点をわかりやすく解説
公開日: 2023.3.17 jinjer Blog 編集部
会社設立時に作成が必要な定款は、1度だけ作成すればよいわけではありません。会社の状況に応じて、変更が必要なケースが発生します。
変更する場合は、自己判断で行わず定められたルールに沿って行う必要があり、変更に必要な事柄に対する正しい理解が重要です。本記事では、定款の変更が必要なケースや定款に記載すべき事項、手続きをする場合の注意点や申請方法、費用などを解説します。
目次
1. 定款変更とは?
定款とは、会社の法律ともいえる重要な書類であり、会社を設立したときに会社法に基づいて作成しなければならないものです。
定款に記載された内容を変更することを、定款変更といいます。
以下のようなケースが発生した場合、定款の変更が必要です。
- 社員が増えた関係で、事業所を移転した
- 新たな事業分野に参入するため事業目的が当初と変わった
- 会社名を変えることになった
- 役員のメンバーを変更した
2. 定款に記載すべき項目
定款に記載すべき項目は、3つあります。
2-1. 絶対的記載事項
絶対的記載事項とは、定款を作成するときに必ず記載しなければならない項目です。
具体的には、以下の事項が含まれます。[注1]
- 会社としての事業の目的
- 商号(会社名)
- 本店所在地
- 会社設立に際して出資される財産の価額あるいはその最低額
- 会社の発起人の氏名または名称および住所
上記のうち、ひとつでも抜けもれがあれば定款として認められません。
2-2. 相対的記載事項
相対的記載事項とは、必ず記載しないといけないわけではないものの、定めなければ定款としての効力が発生しない項目です。
具体的には、以下の事項が含まれます。[注2]
【会社法第28条により定めが必要とされる主な事項】
- 金銭以外の財産を出資する者の氏名や名称や、該当する財産
- 株式会社が成立した後に譲り受けることを約束した財産やその価額
- 株式会社が成立により発起人が受ける報酬
- 会社設立に関して、株式会社が負担する費用 など
【上記以外の事項】
- 株式の譲渡制限に関する内容
- 取締役会や監査役などを置けること
- 会社の存続期間や解散の理由
- 公告方法 など
2-3. 任意的記載事項
任意的記載事項とは、絶対的記載事項や相対的記載事項に含まれない項目であり、記載しなくてもよいものです。
具体的には、以下の内容です。[注3]
- 株主総会の議長となる人物
- 取締役や監査役の人数
- 事業年度 など
3. 定款を変更するときの手続き
定款を変更するときの手続きの流れを、解説します。
3-1. 株主総会での特別決議を行う
特別決議とは、株主総会での議決権を所持する株主の過半数が出席し、なおかつ出席した株主の3分の2以上の賛成によって決議を行うものです。
定款変更は、いわば会社の法律ともいえる重要事項に手を加えることであり、より慎重な判断が求められます。
そのため、定款変更には特別決議が必要だと定められています。
3-2. 株主総会の議事録を作成する
株主総会を実施した場合、議事録の作成が必要です。
記載事項は、会社法施行規則第72条第3項により以下のように定められています。[注4]
- 開催日時や開催場所
- 議事の経過の要領およびその結果
- 株主総会で述べられた意見の概要
- 出席した取締役、執行役などの氏名および名称
- 株主総会の議長の氏名(議長がいる場合)
- 議事録作成を行った取締役の氏名
3-3. 定款変更の登記申請を行う
定款を変更した場合、法務局で登記申請を行います。
法務局への登記申請が必要な項目は、以下の内容です。
- 会社の商号の変更
- 事業目的や内容の変更
- 会社住所の変更
- 支店の移転・設置・廃止に関する内容
- 株式に関する変更
- 公告方法の変更
- 取締役会の設置や廃止に関する内容
- 監査役の設置や廃止に関する内容
- 機関構成の変更
提出する議事録は、原本です。
また、議事録以外にも、変更登記申請書、株主の氏名・名称・住所などを証明する株主リストの提出が求められます。
なお、決算期を変更した場合は、税務署への申請が義務付けられています。
3-4. 変更定款と株主総会議事録を保管する
定款を変更したことや株主総会で決議された事項を証拠として残すために、定款と議事録の保管が必要です。
株主総会議事録は、本店に10年間保管しなければなりません。
また、保管しなかった場合、100万円以下の過料となる可能性があるため、くれぐれも忘れないようにしてください。[注5]
4. 定款変更の申請方法
定款変更の申請方法は、書面申請とオンライン申請のいずれかです。
書面で申請する場合は、議事録や変更登記申請書などの必要書類を管轄する登記所に持参する方法と郵送で提出する方法があります。
オンライン申請の場合は、法務局が提供する専用のソフトを用いて行います。
専用のソフトは、以下のURLです。
登記・供託オンライン申請システム 登記ねっと 供託ねっと|法務省
5. 定款を変更するときの注意点
定款を変更する場合の注意点を、2点お伝えします。
5-1. 原始定款を直接変更しない
原始定款とは、会社を設立したときに作成した定款です。
定款を変更する場合、原始定款に直接変更を加えてはいけません。
定款を新たに作成する必要があります。
また、法務局で登記申請を済ませた後、新たに作成した定款と原始定款の両方を保管しなければなりません。
しかしながら、定款を変更するたびに最初から定款を作り直すとなると、作成に膨大な手間がかかります。
また、定款の内容を正確に把握するために過去のものをすべて読むのは大変です。
- 変更内容が少ない場合は別紙に記載する
- どの定款が最新のものなのか把握できるように保管する
上記のような工夫をすれば、作成や内容把握の手間を省けます。
5-2. 登記申請には期限がある
登記が必要な項目を変更した場合、変更してから2週間以内に申請しなければなりません。
期日を過ぎた場合、登記申請自体は受け取ってもらえるものの、100万円以下の過料となる可能性があります。[注6]
変更して終わりにするのではなく、申請も忘れないようにしてください。
6. 定款を変更するときの費用
定款変更の登記申請を行う場合、登録免許税として費用がかかります。
金額は、変更内容によって異なります。
- 商号の変更:3万円
- 会社の目的の変更:3万円
- 新たな支店の設置:6万円
- 本店や支店の移転:3万円
- 代表取締役・取締役・会計監査人などの変更:3万円(資本金が1億円以下の会社等は1万円)
また、登記申請を自身で行わず司法書士に依頼した場合は、司法書士に支払う金額も必要です。
7. 定款変更に必要な手続きを正しく理解しよう
会社を経営していくうえで、新規事業に参入する場合や役員を新たに選定する場合など、定款の変更が必要なケースは多くあります。
変更する場合は、変更内容を記載するだけでなく、株主総会の特別決議や法務局への登記申請などの手続きが必要です。
変更のためにやるべきことは多いですが、必要事項を正しく理解すれば、専門家の力を借りることなく自身の会社で定款変更に必要な手続きを行えます。
正しい知識を身につけて、抜けもれを防ぐことを意識して取り組んでください。
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