契約書に損害賠償条項は必要?記載すべきポイントも解説
更新日: 2023.1.11
公開日: 2022.11.29
jinjer Blog 編集部
契約書を作成する際はさまざまな項目を記載する必要がありますが、そのなかで重要なのが損害賠償条項です。
契約している企業のどちらかが損失を出した場合、債務不履行となった場合、その損害賠償をどのように支払うのか、どの範囲までをカバーすべきなのかを契約書に明確に記載しなければなりません。
損害賠償条項の重要性とともに、損害賠償の範囲や記載事項を解説します。
「契約書に契約不履行だったときの対応が記載されていない」
「担当者が自社に不利な契約書を持ってくるのはなぜ?」
「契約書に載っていない合意内容があった」
契約書には、取引内容はもちろんのこと、取引不履行だった場合や協議事項が発生した場合の対応についても記載しておく必要があります。
もし契約書に抜け漏れがあったとしても、締結された内容を一方的に破棄することは難しいでしょう。
ですが中には、契約書に載っていない合意内容があることが締結後に発覚することもあるかもしれません。
契約書のトラブルを防ぐためには、法務担当者が確認するだけでなく、担当する従業員が契約書に記載しなければならない項目を理解することが必要です。
本資料では、契約の基礎知識から、契約書に記載される主な項目などをまとめています。
また契約に関して従業員から上がってくる質問集や、リーガルチェックを円滑にすすめるためのチェックシートも付いているので、従業員の勉強用資料としてもご利用いただけます。ぜひご活用ください。
1. 契約書に損害賠償条項は必要?
損害賠償は民法でもルールがありますが、取引内容によっては企業間で独自にルールを決めなければならないケースもあります。損害賠償条項を作成する前に、損害賠償の重要性を確認してください。
1-1. 損害賠償と違約金の違いを確認
損害賠償と混同されやすいのが違約金です。
損害賠償は契約書の内容に反する行動をしたり、その結果企業が被害を被ったりした場合に金銭を請求できるものです。民法には損害賠償のルールがあるため、契約書に損害賠償条項がなくても請求できるケースは多いです。
一方で違約金は契約書の内容に反する行動があったときに請求できるものです。民法にルールがないため、契約書に違約金の記載がなければ請求できません。
1-2. 民法での損害賠償を確認
民法415条416条では、契約した相手が契約違反をした場合、損害賠償を請求できることが明確に記載されています。契約書に損害賠償の項目がなくても損害賠償を請求することは可能ですが、どの場合に契約違反となるのかが明確でない場合は請求できない可能性もあります。
民法では、債務を履行しなかった場合、債務者に故意、過失がある場合、債務不履行によって契約者が損害を受けた場合、そして債務者が事前に債務不履行を予見できたのに回避しなかった場合には、損害賠償の請求ができることになっています。
1-3. 独自のルールを明確にするために必要
契約書に損害賠償条項がなくても法律の定めによって損害賠償を請求することは可能ですが、民法の定めによらない部分でも損害賠償を請求する可能性がある場合は記載が必要です。
民法が定める規定よりも範囲を広げる場合、反対に狭くする場合にも契約書には記載しなければなりません。
1-4. 責任の所在を明確にするために必要
損害賠償条項を契約書に記載することで、損害賠償の責任を明確にできます。特別な規定がない場合でも民法に準ずる旨を記載しておけば、万が一債務不履行などのトラブルが発生した際もその後の処理を進めやすくなります。民法に従う旨だけでも、契約書には損害賠償条項を記載しましょう。
民法の規定の中には、契約書に記載されていなければ無効となる内容もあります。そのため、責任の所在や責任の範囲について細かく定めておかなければなりません。
しかし、取引の条件に関する交渉は、法務部門以外の従業員が担当することがほとんどです。従業員自身も契約におけるリスクや課題を把握していなければ、思うように話が進まないこともあるでしょう。契約を円滑に進めるためには、法務部門以外の従業員も契約の基礎知識を持つことが大切です。
当サイトで無料配布している「【従業員周知用】ビジネスにおける契約マニュアル」では、契約の定義や契約が有効または無効になる条件、契約書に記載される主な項目について解説しています。契約締結を進めるにあたって重要なポイントもまとめているので契約業務におけるミスや漏れも軽減できます。従業員の勉強用資料として活用できるので、気になる方はこちらからダウンロードしてご覧ください。
2. 民法における損害賠償の範囲
民法では損害賠償の範囲が明確に規定されています。
契約違反によって生ずべき損害、特別の事情による損害のなかから、債務者が事前に予見すべきであった損害が民法が定める損害賠償の範囲です。
契約違反は民法では債務不履行とも呼ばれます。契約した当事者が、契約書に記載された義務を果たさなかった場合は債務不履行として扱われます。
さらに、不法行為によって契約書の内容に反した場合にも損害賠償を請求できます。
違法行為により権利や利益が侵害された場合や、違法行為と損害の発生に因果関係がある場合は損害賠償の請求対象です。
ですが、不法行為による損害を立証するためには、加害者側の故意の行為であることを証明しなければなりません。
3. 契約書の損害賠償条項に記載すべき内容
契約書の損害賠償条項に記載すべき内容として、範囲、上限、条件、さらに弁護士費用の負担を解説します。
3-1. 損害賠償の範囲
まずはどこからどこまでを損害賠償の範囲とするか明確に記載してください。
範囲として記載できる項目は下記の5点があります。
3-1-1. 通常の損害/特別の損害
通常の損害とは民法416条1項で定められた通常発生する可能性のある損害のことです。特別な損害とは民法416条2項で定められた、債務者が予見すべきだった損害のことを指します。
通常損害のみに請求するのか、特別損害に対しても請求するのかを明確にしましょう。
3-1-2. 直接の損害/間接の損害
債務不履行により契約者に直接の損害があった場合にのみ損害賠償を請求するのか、間接的にでも損害があった場合にも損害賠償を請求するのかを記載します。
支社や系列会社への影響なども考えて損害の範囲を決定する必要があります。
3-1-3. 現実の損害/非現実の損害
現実の損害は金銭で賠償させるもの、非現実の損害とは懲罰などで賠償させるものを指します。
ですが、日本の法律では非現実の損害賠償を強要するのは難しいです。そのため、現実の損害と範囲を指定したとしても強い意味は持たせられません。
3-1-4. 弁護士費用の負担
訴訟問題に発展した際の弁護士費用はどちらが負担するかを記載します。
法律では弁護士費用は損害の範囲に含むことが可能です。損害賠償請求権の行使は弁護士に依頼しなければ難しいため、必須と考えられているためです。
弁護士費用を別途請求する可能性があるのか、どこまでの範囲を弁護士費用として請求する可能性があるのかを記載しておく必要があります。
損害賠償に弁護士費用の金額を含めるのかも記載しておきましょう。
3-1-5. 故意によるものか
債務不履行が故意によるものの場合のみ損害賠償を請求するのか、故意でない場合も損害賠償を請求するのかを記載してください。
法律では故意による行動かを判別するためには充分に証拠を集めて立証しなければなりません。故意でなかった場合の記載がないと、損害賠償を請求できなくなる可能性があります。
3-2. 損害賠償の上限
損害賠償の上限も記載しておきましょう。いつまでにいくらまでの賠償金額を用意すべきなのかを明確にしてください。
損害賠償金額の上限の記載がない場合、債務者から上限を設定してほしいと依頼されるケースもあります。
賠償金額の上限は現実的な金額に設定されることが多いです。代金のみ、従来の報酬金額のみとするケースも多々あります。
実際の損害からかけ離れた金額を設定している場合、公序良俗違反とみなされる可能性もあるので注意してください。
3-3. 損害賠償の発生条件
どのようなケースで損害賠償が発生するのか、条件も記載しておきましょう。
故意によるものか、過失によるものかで損害賠償の金額が変わったり、請求できなかったりする可能性があります。
主な発生条件としては、下記の3パターンがあります。
・故意によるものでも過失によるものでも損害賠償を請求する
・故意によるものの場合のみ損害賠償を請求する
・故意によるもの、または重過失による場合のみ損害賠償を請求する
契約の内容に応じて、最適な条件を検討して契約書にも明確に記載してください。
4. 契約書には損害賠償条項を記載しよう
損害賠償は民法によって定められているため、契約書に記載がなくても請求できます。
一方で、条件や範囲などは契約する企業間で取り決められるため、トラブルを防ぐためには記載しておくことをおすすめします。
損害賠償条項を記載する際はその範囲だけでなく、上限や発生条件も記載し、双方が明確に判断できる内容にしましょう。一方に不利になりすぎず、平等な契約を結ぶことが、契約を安全に長続きさせるためには大切です。
必要に応じて契約先と話し合い、適切な内容を考えましょう。
「契約書に契約不履行だったときの対応が記載されていない」
「担当者が自社に不利な契約書を持ってくるのはなぜ?」
「契約書に載っていない合意内容があった」
契約書には、取引内容はもちろんのこと、取引不履行だった場合や協議事項が発生した場合の対応についても記載しておく必要があります。
もし契約書に抜け漏れがあったとしても、締結された内容を一方的に破棄することは難しいでしょう。
ですが中には、契約書に載っていない合意内容があることが締結後に発覚することもあるかもしれません。
契約書のトラブルを防ぐためには、法務担当者が確認するだけでなく、担当する従業員が契約書に記載しなければならない項目を理解することが必要です。
本資料では、契約の基礎知識から、契約書に記載される主な項目などをまとめています。
また契約に関して従業員から上がってくる質問集や、リーガルチェックを円滑にすすめるためのチェックシートも付いているので、従業員の勉強用資料としてもご利用いただけます。ぜひご活用ください。
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