契約形態とは?形態ごとの特徴やメリット・デメリットを紹介
公開日: 2023.3.17 jinjer Blog 編集部
法律で規定された契約形態「典型契約」には13種類あり、締結した契約内容が該当した場合は民法が適用されます。
典型契約に該当しない契約は「非典型契約」といい、双方の合意の上で自由な取り決めを行います。
本記事では、契約形態ごとの特徴やメリット・デメリット、適切な契約形態を決めることの重要性などを詳しく解説します。
1. 契約形態とは?
契約形態には、法律で定義づけられた契約と定義されていない契約があります。
民法522条1項によって、契約内容は当事者同士の合意があれば自由に決めることができます。[注1]
一般的に使用されることが多い契約を法律によって定義し、締結した契約がその規定に該当した場合、民法を適用できます。
契約形態は、一般的に契約書の契約条項に明記します。
正社員やアルバイト雇用だけでなく、業務委託や派遣など外部から人材を受け入れる場合は、契約形態ごとに業務範囲や報酬の支払い条件が異なることを把握しておく必要があります。
[注1]民法第五百二十二条(契約の成立と方式)|e-GOV法令検索
1-1. 法律で定義された13種類の典型契約と非典型契約
民法上で定義づけられた契約形態を「典型契約」といい、以下の13種類があります。
- 贈与契約(民法第549〜554条)
- 売買契約(民法第555〜559条)
- 交換契約(民法第586条)
- 消費貸借契約(民法第587〜592条)
- 使用貸借契約(民法第593〜600条)
- 賃貸借契約(民法第601〜662条の2)
- 雇用契約(民法第623〜631条)
- 請負契約(民法第632〜642条)
- 委任契約(民法第643〜656条)
- 寄託契約(民法第657〜666条)
- 組合契約(民法第667〜688条)
- 終身定期金契約(民法第689〜694条)
- 和解契約(民法第695〜696条)
企業間の契約で大きく関わる契約形態としては、雇用契約、請負契約、委任契約、寄託契約、組合契約、売買契約、譲渡契約などが挙げられます。
一方、民法で定義されていない契約形態を「非典型契約」といいます。
前述のとおり、当事者双方の合意さえあれば契約内容は自由に決めてよいことから、世の中にはさまざまな非典型契約が存在します。
2. 契約形態ごとの特徴やメリット・デメリット
他社や個人事業主に業務を委託する場合、一般的に「業務委託契約」という言葉がよく使われます。
しかし、業務委託契約は法律で定義された契約形態の呼び方ではありません。
請負契約・委任契約・準委任契約の3つの契約形態をひとまとめにした呼び名で、それぞれ業務の範囲や報酬条件などが異なります。
2-1. 雇用契約
雇用契約とは、当事者同士が合意のうえ、一方が使用者、もう一方が被用者(労働者)として契約を交わすことです。
使用者には「指揮命令権限」があり、被用者は使用者の指揮に従って労働に従事します。
使用者はその対価として労働者に報酬を支払います。[注2]
使用者と被用者(労働者)では、一般的に雇用される側の被用者の立場が弱い場合が多く、残業強要や雇い止めなど、さまざまな問題に発展するケースもあります。
そのため雇用契約に関しては、被用者保護の観点から労働基準法や労働契約法なども適用されます。
被用者にとって不利益な雇用条件変更の禁止や年次有給休暇の取得、一方的な雇い止め禁止などが義務付けられるため、被用者にとってはメリットといえるでしょう。
2-2. 請負契約
請負契約とは、当事者の一方が業務を遂行し、その成果に対して相手方が報酬を支払う契約形態です。[注3]
請負契約の特徴は、契約内容はあくまで業務の完遂や成果物であるため、請け負った会社または個人に対して作業の工程や方法に対して指示を出すことができないという点です。
また、契約した期限以内に仕事が終わらなかった場合、報酬は支払われません。
代表的な例としては、ライターへの執筆依頼やメーカーへのソフトウエアの開発などが挙げられます。
請負委託のメリットは、専門性の高い業務であっても安定した成果物を得られやすいことや、人材教育のコストを削減できることです。
反面、請負契約による外注は自社の人材スキルの向上やノウハウが蓄積されにくくなったり、発注後に仕様の変更があった場合に対応が遅れたりするデメリットがあります。
2-3. 委任契約・準委任契約
委任契約とは、法律行為が関わる事務処理の相手方に委託する際に使用される契約形態です。[注4]
報酬は仕事の成果に関わらず、あくまで業務を遂行したことに支払われます。
弁護士に裁判の告訴代理人を依頼する場合は委任契約に該当しますが、裁判に敗訴したとしても報酬を支払う必要があります。
一方、準委任契約は、法律行為以外の業務(事実行為)の委託をする場合に使用される契約形態です。[注5]
コンサルティング業務や医師の医療行為、システム運営などが該当します。
民法第656条により、準委任契約には委任契約と同じ規定が適用されます。
報酬は業務の遂行によって発生し、委託された企業や個人は業務の結果について責任を負う必要はありません。[注5]
ただし、委任・準委任契約には、業務の遂行にあたって善管注意義務(一般的に求められるレベルの注意を払うこと)を果たす義務があります。
委任・準委任契約のメリットは、請負契約同様スキルが求められる業務を、人件費を抑えて依頼できる点です。
デメリットとしては、発注した側が求める成果が得られなかった場合でも報酬が発生するケースが多いことが挙げられます。
委任・準委任契約を交わす際は、業務内容や報酬の支払いに関して明確にしておく必要があります。
3. 契約形態を決めておくことの重要性
適切な契約形態を決めておくことは、企業間の契約やフリーランスの人材を活用する場合に重要です。
とくに業務委託契約の場合は、請負契約と委任・準委任契約では報酬条件や責任範囲が異なります。
また、契約内容は契約書の条項に記載し、その契約形態が典型契約か非典型契約かを明確にしておきましょう。
4. 契約形態ごとの特徴を把握して適切な選択をすることが大切
法律で定義づけられた契約形態は13種類あります。
双方が使用者と被用者になる雇用保険のほか、一般的に業務委託契約と一括りにされる請負契約や委任契約、準委任契約なども該当します。
契約形態にはそれぞれ特徴があり、報酬の支払い条件や作業範囲、責任範囲などが異なります。
それぞれの特徴を把握し、適切な選択をして契約書を交わすことが大切です。
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