2種類の契約書の意味や役割をわかりやすく解説
更新日: 2023.3.15
公開日: 2023.3.15
jinjer Blog 編集部
契約書にはいろいろな種類があります。
契約書によって記載されている内容はさまざまなのですが、法律によって契約書は大きく2つに分けることができます。
契約書に記載がない事項についても守らなくてはいけない場合があるので、注意しなくてはいけません。
本記事では契約書の分類やそれぞれの役割について詳しく解説します。
1. 契約書の分類(典型契約・非典型契約)
契約書は典型契約と非典型契約の2つに大きく分けることができます。
そもそも契約とは当事者同士が意思表示を合致すれば成立するため、内容はどのようなものでも構いません。
そのため、世の中にはたくさんの契約があります。
契約類型も無数に存在するのですが、その中で大きく2つに分類したものが典型契約と非典型契約になります。
それぞれどのような意味があるのか確認していきましょう。
1-1. 典型契約の内容
典型契約とは、無数にある契約類型の中から、日常的に使われることが多い13種類の類型のことです。
その13種類の契約類型については、規定を設けています。
契約書は何かしらの定めを設けているのですが、その内容は契約書それぞれで共通しているわけではありません。
契約書に定めがなかったとしても、民法によって定められた規定については守らなくてはいけないのが、典型契約の特徴です。
たとえば、契約不適合責任の取り決めが契約書に記載されていなかったとします。
しかし、規定によって契約不適合責任については負わなくていけないことになっているので、一定の条件があれば記載がなかったとしても適用されます。
契約不適合責任を請け負いたくないケースもあるでしょう。
その場合は、契約不適合責任を負わないことを契約書内で規定しておかなくてはいけません。
そのように記載がされていると、契約する相手としては怪しんで契約をしてくれない場合もあります。
相手が知らずに契約をして、契約書を作成した側が有利に立つことがないように典型契約の規定は定められています。
1-2. 非典型契約の内容
典型契約に該当しないものは、すべて非典型契約と呼ばれます。
非典型契約であれば、契約内容は当事者同士で決めていいとされているので、どのような内容でも法的な問題はありません。
しかし、非典型契約の中にも典型契約に性質が近いものは数多くあります。
そういった契約を行う場合は、非典型契約であっても典型契約の各条文を抜粋して適用するケースがあります。
そのため、非典型契約と典型契約が契約内容に大きく差があるというわけではありません。
しかし、民法によって規定が設けられていないのは間違いないので、契約書によるトラブルが起こりやすいです。
契約を締結する際は、自分にとって不利、一方的な契約書になっていないかをよく確認しなくてはいけません。
2. 契約書の種類ごとの役割(典型契約)
典型契約には13種類があります。
民法を参考に、一つずつみていきましょう。[注1]
[注1]民法|e-Gov法令検索
2-1. 贈与契約
贈与契約は、当事者の一方がある財産を無償で相手に与える意思表示をして、相手方がこれを受理する契約と民法549条で定められています。
財産を移転させる契約には売買契約や交換契約などがありますが、贈与契約は無償で相手に与えるというのが特徴です。
贈与契約の中には、単純贈与はもちろんですが、贈与する側が何かしらの義務を負う負担付き贈与や、死因贈与なども含まれています。
2-2. 売買契約
売買契約は、当事者の一方が一定の財産権を相手方に移転することを約束し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約束する契約と民法555条で定められています。
先ほどの贈与契約と似ていますが、こちらは対価を支払わなくてはいけません。
また、その対価はお金に限定されているので、物的対価によって成立する交換契約とは内容が大きく異なります。
2-3. 交換契約
交換契約は、当事者が互いに所有物(金銭を除く)の財産権を移転することを約する契約と民法586条で定められています。
売買契約とは「もの」で交換をしているという点が異なるのですが、それ以外の性質は同じです。
そのため、売買規約の規定がほぼ適用されると考えてください。
2-4. 消費賃借契約
消費賃借契約は、当事者の一方が金銭等の物を受け取る代わりに、同等の物を返還することを約束する契約と民法587条で定められています。
同等のものとは、同じ種類、品質、数量でなくてはならないと定められているので注意してください。
個人的な価値観によって同等さを決めることはできません。
2-5. 使用賃借契約
使用賃借契約は、当事者の一方からある物を受け取り、無償で使用(又は利用して利益を得る)して、契約が終了したときに返還することを約束する契約と、民法593条で定められています。
先ほどの消費賃借契約と比べると、借りたものそのものを返さなくてはいけない点が異なります。
2-6. 賃貸借契約
賃貸借契約書は、当事者の一方がある物の使用(又は利用して利益を得ること)を相手方に許可し、相手方がこれに対して賃料を支払うことおよび引き渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約束する契約と、民法601条で定められています。
使用賃借契約と比べると、借りることの対価を支払わなくてはいけない点が異なります。
消費賃借契約、使用貸借契約、賃貸借契約は、自分の財産の貸し借りが行われるという特性から、トラブルにも発展しやすいので注意しなくてはいけません。
2-7. 雇用契約
雇用契約は、当事者の一方が労働に従事することを約束し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約束する契約と、民法623条で定められています。
使用者が被用者に対して指揮命令権限を有しているのが特徴です。
労働者は指揮命令権のもと、働いた対価として賃金を得ることになっているのですが、これだと使用者よりも立場が弱くなりやすいです。
労働者を保護するために雇用契約に関しては、労働基準法や労働契約法といった特別法も適用されるため注意をしなくてはいけません。
労働環境やパワハラなどによる問題は相次いでいるので、それらが起こらないように何をしてはいけないのかを法律の観点から理解しておく必要があります。
2-8. 請負契約
請負契約は、当事者の一方がある仕事を完成することを約束し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約束する契約と、民法632条で定められています。
仕事をする側は、仕事を請け負う人に対して、業務のやり方や作業場所などの具体的な指示を行うことができないという点が特徴です。
その代わりに請負人は、仕事を完成させる義務を負います。
仕事を完成させなければ、報酬を得ることができません。
雇用契約や委任契約とは大きく異なるポイントです。
2-9. 委任契約・準委任契約
委任契約は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手がこれを承諾することによって効力を生じる契約と、民法643条で定められています。
法律行為を具体的に説明すると、弁護士に訴訟の代理を依頼したり、エージェントに契約締結を依頼したりすることが該当します。
法律行為ではなく、事実行為をすることが契約内容になっている場合は、準委任契約に該当するので注意してください。
医師に医療行為を依頼したり、コンサルタントにアドバイスを依頼したりする場合は、法律行為ではないので準委任契約となります。
委任契約や準委任契約では、一般的に要求される注意を払って業務に取り組むことが義務付けられています。
しかし、業務の結果については責任を負わなくてもいいとされているので、真っ当に業務に取り組んだ結果、目覚ましい効果が得られなかったとしても問題はありません。
2-10. 寄託契約
寄託契約は、当事者の一方があるものを保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することにより成立する契約と、民法657条で定められています。
相手にものを預かってもらうための契約であり、相手に渡しているわけではありません。
あくまでも所有権は自分にあるというのが特徴です。
2-11. 組合契約
組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約する契約と、民法667条1項にて定められています。
当事者全員が出資をしなくてはならず、民法上の組合では、組合が負った債務について自分の財産によって債務を支払わなくてはいけないと定められています。
2-12. 終身定期金契約
終身定期金契約は、当事者の一方が、自己、相手方又は第三者の死亡に至るまで、定期的に金銭その他の物を相手方又は第三者に給付する契約と、民法689条で定められています。
現在ではこの契約が用いられることはほとんどありません。
2-13. 和解契約
和解契約は、当事者が互いに譲歩をして、当事者間に存する争いをやめることを約束する契約と、民法695条で定められています。
互いに譲歩しなくてはいけないのがポイントであり、どちらか一方の譲歩だけでは成立しないので注意してください。
3. 契約書の種類ごとの役割(非典型契約)
非典型契約の内容はさまざまであり、種類は無数にあります。
そのため、種類ごとに説明をすることはできません。
しかし、先ほども述べたように典型契約に性質が近い契約については、その内容が用いられるケースがあります。
4. 契約書を締結する際には細心の注意が必要
契約書を締結する側は、どちら側も細心の注意をしなくてはいけません。
契約書に記載されていなかったとしても、法律上、遵守しなくてはいけないことはたくさんあります。
それを破ってしまった場合は、契約書に記載されていなかったと主張しても罰則は免れないでしょう。
また、契約を受ける側としては自分にとって不利な内容が記載されている可能性もあります。
信頼できる相手であったとしても、契約は慎重に行ってください。
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