風営法の従業員名簿とは?記載項目や保管期間、罰則を受けない管理方法を解説
更新日: 2025.6.13
公開日: 2024.11.8
jinjer Blog 編集部
風営法の従業員名簿(風営法第36条では「従業者名簿」とされている)は、警察の立ち入りの際に提出が求められます。不備や虚偽があった場合に処罰の対象となる可能性があるため、適切な作成・保管をすることが重要です。
この記事では、風営法で定められた従業員名簿の作成方法や保管期間・保管方法、作成の注意点について解説します。
最後まで読むことで、風営法の従業員名簿への理解が深まり、立ち入り検査があっても問題なく対応できるようになるでしょう。
人事担当者の中でも業務を効率化することに興味はあっても、実際にどのように進めるべきなのか、どんなメリットがあるのかピンと来ない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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1. 風営法における従業員名簿とは
風営法における従業員名簿(正式名称:従業者名簿)とは、従業員の情報を一覧化したものです。
風営法の対象となる業種では、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)第36条にて従業員名簿を作成し、以下のルールで管理するよう定められています。
- 法律で定められている必要事項を記載する
- 営業所・事務所ごとで作成して保管する
- 虚偽なく正確に記載する
自己流の書式や情報に虚偽事項があるなど、ルールを逸脱した場合は風営法違反で罰則につながる恐れもあるため、注意しましょう。
(従業者名簿)
第三十六条 風俗営業者、店舗型性風俗特殊営業を営む者、無店舗型性風俗特殊営業を営む者、店舗型電話異性紹介営業を営む者、無店舗型電話異性紹介営業を営む者、特定遊興飲食店営業者、第三十三条第六項に規定する酒類提供飲食店営業を営む者及び深夜において飲食店営業(酒類提供飲食店営業を除く。)を営む者は、国家公安委員会規則で定めるところにより、営業所ごと(無店舗型性風俗特殊営業を営む者及び無店舗型電話異性紹介営業を営む者にあつては、事務所)に、従業者名簿を備え、これに当該営業に係る業務に従事する者の住所及び氏名その他内閣府令で定める事項を記載しなければならない。
1-1. 労働基準法における従業員名簿との違い
労働基準法第107条でも、従業員名簿(労働者名簿)の作成が義務づけられています。風営法と労働基準法の従業員名簿の大きな違いは記載すべき対象者です。
労働基準法の労働者名簿は、労働者に該当する人が対象者です。例えば、正社員や契約社員、派遣社員(※派遣元に作成義務あり)、パート・アルバイトなどが対象に含まれます。労働者に該当しない個人事業主・フリーランスは対象に含まれません。また、日雇い労働者についても、労働基準法では名簿作成義務の対象から除外されています。
一方、風営法の従業員名簿には、営業に係る業務に従事するすべての人が対象に含まれます。つまり、日雇い労働者や、労働者に該当しない個人事業主・フリーランスなども対象者となります。
このように、風営法と労働基準法の従業者従業員名簿と労働者名簿は似ている書類ですが、対象者に大きな違いがあるので正しく理解して管理をおこないましょう。
(労働者名簿)
第百七条 使用者は、各事業場ごとに労働者名簿を、各労働者(日日雇い入れられる者を除く。)について調製し、労働者の氏名、生年月日、履歴その他厚生労働省令で定める事項を記入しなければならない。
② 前項の規定により記入すべき事項に変更があつた場合においては、遅滞なく訂正しなければならない。
関連記事:従業員名簿とは?必須項目・書き方や保管期間・方法を解説
2. 風営法の従業員名簿の設置が必要となる業種一覧
風営法第36条で定められた従業員名簿の設置が必要となる業種一覧は以下のとおりです。
営業の種別 | 業種 |
風俗営業1号~5号の営業 | キャバクラ、ホストクラブ、低照度飲食店、麻雀、パチンコ、ゲームセンターなど |
深夜における酒類提供飲食店営業 | バー、居酒屋、ガールズバー、ゲイバーなど |
特定遊興飲食店営業 | ナイトクラブ、ショーパブ、ライブハウスなど |
店舗型性風俗特殊営業 | ソープランド、箱ヘル、個室ビデオ、ラブホテル、アダルトショップなど |
無店舗型性風俗特殊営業 | デリヘル、アダルトビデオ・グッズ等の販売など |
上記の業種では営業所ごと、無店舗型の場合には事務所で従業員名簿を作成し、保管しておきましょう。また、上記の表以外にも「店舗型電話異性紹介営業を営む者」や「無店舗型電話異性紹介営業を営む者」も対象に含まれます。
3. 風営法の従業員名簿の記載項目
風営法の従業員名簿の記載項目は以下のとおりです(風営法第36条、風営法関係内閣府令第25条)。
- 氏名
- 生年月日
- 性別
- 住所
- 従事する業務の内容
- 採用年月日
- 退職年月日
「氏名」は、源氏名ではなく本名を記載する必要があります。「生年月日」「性別」を記載する際は、戸籍に記載されている内容を記載しましょう。
「従事する業務の内容」はどこまで明記するか内閣府令で定められていません。「営業」「接客担当」「調理担当」など、担当業種を記載します。また、複数の業務を兼任する場合、すべて明記する必要はありません。
「採用年月日」「退職年月日」については実際に採用した日、退職または解雇した日を記載します。解雇の場合は、解雇理由も記載しておきましょう。
もし、従業員が死亡した場合は退職に含まれます。在職中に病気や事故で亡くなった際は、死亡年月日と理由を記載してください。風営法の従業員名簿の記載事項は、労働基準法と異なる部分もあるので正しく理解しておきましょう。
(従業者名簿の記載事項)
第二十五条 法第三十六条の内閣府令で定める事項は、性別、生年月日、採用年月日、退職年月日及び従事する業務の内容とする。
引用:風営法関係内閣府令(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令)第25条|e-Gov法令検索
3-1. 風営法の従業員名簿のひな形・テンプレート
風営法の従業員名簿をゼロから作成しようとすると、時間や手間がかかるだけでなく、抜け・漏れが生じる恐れもあります。労働基準法の従業員名簿のひな形・テンプレートは、「主要様式ダウンロードコーナー(労働基準法等関係主要様式)」にてダウンロード可能です。
このフォーマットを用いて、自社のニーズにあった名簿へとカスタマイズすれば、効率よく正確な従業員名簿を作成することができます。作成が完了したら、風営法に規定されている記載事項が網羅されているか確認をおこないましょう。
参考:主要様式ダウンロードコーナー(労働基準法等関係主要様式)|厚生労働省
4. 風営法の従業員名簿における注意点
風営法の従業員名簿を作成する際は、いくつかの気をつけるべき点があります。ここでは、風営法の従業員名簿における注意点について詳しく紹介します。
4-1. 全員分の従業員名簿を作成する
風営法の従業員名簿は、当該営業に関わる業務に従事するすべての人が対象です。正社員やパート・アルバイトはもちろん、他店からの派遣スタッフや1日体験入店者、業務委託契約のフリーランスも記載が必要です。
まずは、自社の事業が風営法の対象業種に該当するかを確認しましょう。該当する場合は、法定記載事項を満たす名簿を作成して備え付けておく必要があります。
また、労働者を雇用している場合は労働基準法に基づく従業員名簿の作成義務も発生します。両方の記載項目をカバーする共通フォーマットを用いることで、名簿管理の煩雑さを軽減することが可能です。
4-2. 従業員の身元を確認し保管する
従業員名簿作成の際、従業員の身元を確認できるものを用意しておきましょう。
従業員が名前や住所を偽っていた場合、作成した従業員名簿は虚偽のものとなり意味がありません。また、従業員が年齢を偽っていて18歳未満のものを働かせた場合、使用者責任に問われて罰則が課せられる可能性もあります。
従業員を雇用する際は、風営法36条の2で定められている内容が記載されている、以下の書類など(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令第26条)で身元の確認が必要です。
日本国籍の場合 |
|
外国人国籍の場合 |
|
確認書類は写しを従業員名簿に添付して、一緒に保管しましょう。
なお、日本人の場合、本籍地の都道府県の確認が必要です。運転免許証やマイナンバーカードには、本籍地の都道府県が記載されておらず、それだけでは風営法の条件を満たせないので注意しましょう。
従業員名簿に虚偽の情報があれば罰則の恐れがあるため、しっかり身元を確認したうえでの雇用が大切です。
参考:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)|e-Gov法令検索
参考:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令(風営法関係内閣府令)|e-Gov法令検索
4.3. 個人情報の扱いについて了承を得ておく
従業員名簿を作成する際は、従業員に個人情報の使用目的や範囲を事前に説明して、本人の理解と協力を得ておきましょう。なお、法令上は同意を改めて取る必要はありませんが、業務のため社内で共有したり、警察署や労働基準監督署など第三者が閲覧したりすることについても、事前に説明をしておくことが望ましいでしょう。
5. 風営法の従業員名簿の保存期間
風営法の従業員名簿には、記載事項や添付書類だけでなく、保存期間も明確に定められています。ここでは、風営法の従業員名簿の保存期間について詳しく紹介します。
5-1. 従業員名簿の保管期間は3年
風営法施行規則第106条に基づき、風営法の従業員名簿の保管期間は3年間と定められています。一方、労働基準法の従業員名簿の保管期間は、労働基準法第109条に則り5年間です。しかし、労働基準法第109条には経過措置が設けられており、当面の間は5年間ではなく、3年間の保存でも差し支えないとされています。
つまり、風営法の従業員名簿が労働基準法の名簿を兼ねる場合でも、3年間の保存で問題ありません。しかし、労働基準法の経過措置はいつ終了するか定かではないので、できる限り5年間保存しておくことが推奨されます。
関連記事:労働基準法第109条規定の労働者名簿の正しい取り扱い方や保存について
5-2. 保存期間の起算日は「退職日」
風営法の従業員名簿は最低でも3年間保存しなければなりませんが、その起算日は「退職日」です。入社日や名簿作成日を起算日としないよう注意が必要です。
なお、労働基準法の従業員名簿における保管期間の起算日も「退職日(または解雇日や死亡日)」です。そのため、風営法の従業員名簿を労働基準法の名簿と兼用する場合も、基本的に同じ起算日で保存を開始すれば問題ありません。
(従業者名簿の備付けの方法)
第百六条 風俗営業者、店舗型性風俗特殊営業を営む者、無店舗型性風俗特殊営業を営む者、店舗型電話異性紹介営業を営む者、無店舗型電話異性紹介営業を営む者、特定遊興飲食店営業者、法第三十三条第六項に規定する酒類提供飲食店営業を営む者及び深夜において飲食店営業(酒類提供飲食店営業を除く。)を営む者は、その従業者が退職した日から起算して三年を経過する日まで、その者に係る従業者名簿を備えておかなければならない。
6. 風営法の従業員名簿の保管方法
風営法の従業員名簿は、正しく3年間保存しなければなりません。ここでは、風営法の従業員名簿の適切な保管方法について詳しく紹介します。
6-1. 営業所(事業所)ごとに保管する
風営法の従業員名簿は、営業所(事業所)ごとに保管しなければなりません。例えば、複数の店舗を経営している会社は、従業員名簿を本社で一括して保管するのでなく、各店舗で保管する必要があります。なお、労働基準法の従業員名簿についても、事業場ごとに保管することが定められています。
6-2. 保管方法は紙・データのどちらでも問題ない
風営法の従業員名簿は、風営法施行規則第107条に則り、紙媒体だけでなく、電子ファイルでも保管できます。電子データで管理すれば、ペーパーレス化を推進し、紛失・盗難リスクも防止することが可能です。また、検索機能を使えば、素早く探している情報を見つけ出すことができます。
ただし、警察や労働基準監督署の立ち入り検査などに備えて、すぐに表示または印刷できるようにしておかなければなりません。また、重要な個人情報を含むので、権限やパスワードを設定し、外部に漏洩しないようセキュリティ対策に注意する必要があります。
(電磁的方法による記録)
第百七条 法第三十六条に規定する事項が、電磁的方法により記録され、必要に応じ電子計算機その他の機器を用いて直ちに表示されることができるときは、当該記録(次条において「電磁的名簿」という。)をもつて同条に規定する当該事項が記載された従業者名簿に代えることができる。
7. 風営法の従業員名簿に関連する罰則
風営法の従業員名簿に不備や虚偽情報があった場合、罰則が課される恐れがあります。
従業員名簿は以下の団体から開示・提出を要求された際は、速やかに開示しなくてはなりません。
- 警察
- 労働基準監督署
- 年金事務所
ルールを守って作成された従業員名簿が用意できない場合や、そもそも開示ができない場合、以下のような罰則が課される可能性があります。
- 100万円以下の罰金(風営法第53条)
- 10日以上80日以下の営業停止処分(基準期間は20日間)
また、労働者を雇用していて従業員名簿を正しく管理していなければ、労働基準法による罰則(労働基準法第120条:30万円以下の罰金)の対象になるリスクもあります。処罰の対象にならなかった場合でも、不備があれば余計な作業が増えたり信用を失ったりなど業務に影響があります。
従業員名簿は不備のないよう作成し、変更が合った際は速やかな対応が大切です。
参考:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律|e-Gov法令検索
参考:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく営業停止命令等の基準|警察庁
8. 風営法の従業員名簿は正しく作成し保管しよう
風営法の従業員名簿は作成・保管方法を正しく把握し、適切に管理することで警察の立ち入りの際も安心です。風営法と労働基準法の必要事項をすべて記載していれば、労働基準法の従業員名簿と兼用することも可能であり、業務負担や管理コストの軽減につながります。
従業員名簿の作成時は、従業員の身元を確認してルールに従い必要事項を記載しましょう。また、従業員名簿の保管期間も明確に定められているため、従業員の退職後も適切に保管することが大切です。正しく作成して、いつでも提出できるよう備えておきましょう。
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