三和交通 溝口様:
弊社は般乗用旅客自動車運送事業、いわゆるタクシー事業を運営しています。神奈川、埼玉、東京で8営業所あり、あわせて1500名ほどの社員が勤務しており、車両台数600台ほどで営業しています。
jinjer取材担当:
最近はSNSへの動画投稿が話題になってますね。「タクシー会社の人がなぜSNSで動画投稿?」と思ったのですが、始められたきっかけを教えてください。
三和交通 溝口様:
若い世代の方たちに「タクシー会社がなんでこんなことやってるの?」とか「タクシー会社って面白いな」と興味を持ってもらいたいと思い始めました。
動画投稿を通して採用に効果が出始めており、もともとは新卒採用も3人くらいの規模でしたが、昨年は20人以上採用することができました。採用面接でも「動画見ました!」と言ってもらえることが多く、見てくれている方がたくさんいて嬉しいです。
離職という出口を絞りたく社員の声を拾えるようにしたかった
jinjer取材担当:
SNSを活用するなど時代に先駆けられていて、動画投稿もどれも印象的で視聴していて楽しい気持ちになりました!現在は、とても楽しそうな雰囲気の社風ですが、サーベイの導入を検討した理由をお伺いできますでしょうか。
三和交通 溝口様:
採用活動など会社への入口を広げることに対して頑張っても、離職という出口を絞れていない事を課題に感じていました。そこで、まずは「社員の声を聞きたい」と思い、社員の意見を集められる仕組みが搭載されているシステムを探していました。
弊社では3か月に一度、離職防止会議という各営業所の採用担当者を集めた会議体を実施しています。
サーベイ導入前は、会議で「この人の離職防止できたよね?」という話がよく出てきていました。退職理由に関して、表向きでは「一身上の都合」とは言いながらも、実際は勤務上のストレスを感じて「三和交通にいたくない」と感じさせてしまっているのではないかと考えていました。
過去には、一身上の都合で当社を退職後、ほかのタクシー会社で勤務していたことがわかったことも数件ありました。
いざ退職が決まってしまってからだと対応が手遅れになってしまうため、事前に社員の意見を吸い上げる仕組みを作るためのシステムがないかと探していました。
ジンジャーに関しては、当社が実現したい「社員の声を拾う」という部分に特化しており、回答画面なども天気マークで直感的に回答しやすく、社員が使ってくれそうなイメージが湧いたので導入させていただきました。
jinjer取材担当:
社員の意見がブラックボックス化されていたんですね。サーベイの配信を始めて離職の傾向などは把握できるようになりましたか?
三和交通 溝口様:
サーベイは、離職率への課題が強い入社3年以内の社員にのみ配信をおこなっています。
カスタマーサクセスの担当者との打ち合わせを通して、離職しそうな社員の特徴も徐々にわかってくるようになりました。
今までずっとジンジャーで晴れマークの回答をしていた人が、いきなり雷マークで回答していると「何かあったのではないか」と検知ができるため、回答の傾向などは注意をするようにしています。
コメントも一つひとつ確認しながら、ネガティブなコメントを残す社員がいた場合も、今後の動向に気を配らなければいけないと気づくことができています。
沢山いる社員のなかには、自分本位なコメントを残す人も少なくはないです。ただ、それでも社員のストレス発散や愚痴のはけ口になっているのであれば、ジンジャーを導入して良かったなと感じています。
工夫した質問配信で高い回答率をキープ
jinjer取材担当:
今まで社員の声すら把握できていなかった状態が段々と解消されてきたんですね。ちなみに、どのような質問のサーベイを配信しているのでしょうか。
三和交通 溝口氏:
導入当初は「仕事は順調ですか?」「周りの社員との関係はうまくいっていますか?」「体調は良好ですか?」の3問にしており、シンプルで回答しやすい質問にしていました。
また定期的に質問を変えるようにもしています。「最近の思い出エピソードはありますか?」、「お客様からチップをいくらもらっていますか?」や「コロナウイルスの感染拡大に関して、業務上何か心配なことはありますか?」などの質問を配信したこともあります。
毎回同じ質問や、ネガティブな意見を検知するための質問だけを設定するのではなく、時期要因の質問など、回答する側も楽しい質問を設定することで、回答がマンネリ化しないように心がけています。
思い出エピソードを聞いた質問では、「おばあちゃんの荷物を一緒に家まで運ぶのを手伝ったら感謝された」と回答してくれている社員がおり、私も見ていてとても嬉しかったです。
jinjer取材担当:
質問を変えることによって、回答する側も「今回の質問はなんだろう?」って楽しみになりますね。心温かいエピソードをほかの社員にも事例展開する取り組みも面白いなと思いました。ちなみに、配信した後の回答率はどのくらいですか?
三和交通 溝口氏:
最初はみんなサーベイを物珍しいと感じて回答してくれたので、回答率は全体で80%以上と高かったのですが、慣れてくると少しずつ回答率も落ちていきました。
回答率を上げるための取り組みとして、役員からの意見を反映し、新人教育のタイミングでジンジャーのログイン設定をしてもらうなどの取り組みを始めました。
ただ、思ったように回答率が上がらなかったため、回答率の低下に関して要因を調べようと思い、営業所別に回答率を出してみたところ、営業所によって回答率にばらつきがありました。所属長がどのくらい熱心にサーベイに取り組んでくれているのかで回答率に差が出てきてしまっていたようでした。
そのため、現在は毎月の所長会で、各事業所ごとの回答率を共有した上で、所属長が各自回答率を上げるための呼びかけをおこなうように指導しています。所属長も社員に対して「サーベイのメール来てる?」「ジンジャー回答した?」と声をかけてくれています。
メール配信されるため、たまには誤ってメールの受信拒否設定をしてしまっているケースもありますが、所属長が一緒にメール設定を確認してあげたりなど回答率を上げるための取り組みは現場でも積極的におこなってくれています。
未だに事業所によって回答率にばらつきがある状態ですが、全体平均すると約70%ほどの回答率を継続できています。事業所によっては90%以上の回答率が出ています。
新人教育や朝礼の場で、ジンジャーへの回答を促すことで全体的な回答率があがるため、正直年齢によって回答率に差があることは現時点ではありません。
jinjer取材担当:
現場の方々を巻き込んでサーベイに取り組んでいらっしゃるんですね!ちなみにコメントで回答する質問は、どのような回答が集まっていますか?
三和交通 溝口氏:
導入当初は、4割ほどはネガティブなコメントを残されることが多かったのですが、最近は9割ほどがポジティブな回答になっています。
ネガティブなコメントについては管理職の対応に関する意見が多く、離職リスクがありそうな内容もあったりしました。
最近だと「コロナ禍では売上が下がっていたが、最近は調子を戻してきているのでもう少し夜の勤務を頑張ってみようと思います」という回答を頂いたときは、自分も頑張っていこうと元気づけられました。
回答内容には真摯に向き合い職場環境を改善した
jinjer取材担当:
嬉しいコメントもあり励まされますね。回答収集後は何か改善策を立てるなどの取り組みはされていますか?
三和交通 溝口氏:
先ほどお話しした管理職に対するネガティブなコメントに関しては、役員に相談した上で該当する管理職の方に個別指導をしていることがあります。
ただ弊社は回答の匿名性を重視しているので、絶対に誰からのコメントかはわからないように情報伝達をおこなっています。また、回答を踏まえた面談実施などもおこなっていません。
コロナウイルスの感染拡大が始まった当初は、「乗車されるお客様のなかにマスクをつけない方がいるので、感染しないか不安がある」という声が沢山寄せられました。意見を踏まえて、すぐにお客様にお渡しするためのマスクを配布したり、助手席と後部座席を区切るタクシー用のシールドを作り、全車に設置しました。実はこのシールドは現在外部に販売もおこなっています。
そのほかも働き方に関してコメントがあれば、社内で協議した上で就業規則の変更をしたことにより、労務トラブルの防止につながりました。なかなか気づきにくく盲点となっている部分もあったため、気づいた時点でなるべく早く改善するように心がけています。
コメントをくれた社員からは後日「○○について改善いただきありがとうございました」と感謝のコメントをもらうこともあったので、社員にも本社での取り組みが伝わっているのではないかと思っています。働く環境や社内のルールなどいろいろなことがジンジャーをきっかけに改善されました。
「本音が聞きたい」を実現するための運用を徹底
jinjer取材担当:
定期的に社員からの声を拾えるようになったおかげで、働く環境が改善されてきているんですね。
回答内容を踏まえて、面談を実施する企業様もいらっしゃると思うのですが、御社が匿名性を大事にしている理由をお伺いできますでしょうか。
三和交通 溝口氏:
匿名性を大事にすることによって、社員からより生の声が拾いやすいと思っています。
現在は人事の数名のみがサーベイの回答が閲覧できるようになっており、社長でさえも閲覧はできません。
現場の所属長もサーベイの回答が閲覧できるようになってしまうと、社員の回答内容が気になって逆に話しかけにくくなってしまったりするケースもあるため、ジンジャーを管理している数人のみが回答者の確認ができるように制限をしています。
本当の離職理由もよくわからないから、本音を知るためにジンジャーを導入したのに、「誰が見てるのかわからない」という不安があると、社員が本当に思っていることを伝えることができなくなってしまうと考えています。
なかには「コメントしても何も改善されないのではないのか」という声もありましたが、それでも匿名性を最も大事にしてきたことによって、社員の不満のはけ口としても利用され続けられてると思っています。不満に思っていることがあるのに、何も言えないという状況だけは避けたいと考えています。
回答内容を踏まえて何かを改善するという動きを継続的に実施してきたことにより、社員もジンジャーを通して「会社が自分を気にしてくれている」という感覚を少なからず持ってくれているのではないかと思っています。離職者防止会議でも、今まであった「この人の離職は防止できたよね」という話が本当になくなりつつあります。
jinjer取材担当:
離職率がどんどん改善されてきているようで嬉しい限りです。導入しているなかで失敗してしまったことなどはありましたか?
三和交通 溝口氏:
導入初期は、会社に対するネガティブなコメントをいただくことが多かったです。本当に沢山のコメントがありましたが、一度、ネガティブなコメントをもらった社員に対して、直接電話してフォローを入れたことがありました。その時は良かったのですが、今度は該当社員から毎日電話で意見をもらうことになってしまいました。
本来であれば、本人のマネジメントやメンタルフォローは所属長の仕事ですが、レポートラインを飛び越えて私宛に連絡が来てしまい、労力をかけすぎてしまったと感じています。
該当社員に関しては結局退職されてしまいましたが、サーベイを運営している本部と、回答する社員に関してはあえて直接コミュニケーションはとらず、適度に距離感を保ち続けていることが弊社のやり方にはあっているなと感じたきっかけになりました。
jinjer取材担当:
確かに特定個人に対して過度にフォローを入れすぎると、逆に全体のフォローが疎かになってしまうケースもあるため、適度な距離感は大事ですね。
ちなみに、離職者防止会議ではどのような話をされていますか?
三和交通 溝口氏:
直近3か月の離職者を離職理由とともに所属長と共有します。同時に「何か対策していれば離職を防げたのではないか」という議論をしています。
また、各営業所で離職率を上げない取り組みについても発表してもらっています。
発表内容を聞いた上で、ほかの担当者はより良い取り組みにするための意見を伝えたり、ほかの営業所でも同じように改善するためにはどうすべきかなどのディスカッションをおこなっています。
最近だと、ジンジャーの回答を参考にして、若手社員に向けたランチミーティングを開催することで社内のコミュニケーションをより活発にする取り組みを実施し、社員からも「ほかの社員とお話しできて良かった」というコメントをもらいました。
jinjer取材担当:
会社全体で離職という課題解決に取り組まれていて素晴らしいなと思いました。
最後に、これからどのような会社にしていきたいと考えていらっしゃいますか?
三和交通 溝口氏:
採用方針に関しても力を入れて、若い方に沢山ご入社いただきたいと考えています。
現在、タクシー業界は全国的に若手をはじめとして乗務社員数が減ってきています。タクシー会社に入社をすると、平均年収がほかの業界より高かったり、一般企業より働き方が柔軟など感じられるメリットが多いため、ポジティブなイメージをもっと発信してタクシー業界全体のPRにつなげられたらなと思っています。
採用という入り口をもっと広げて、退職という出口をなるべく狭くすることで、より活気のある会社にしていきたいなと思っています。
jinjer取材担当:
採用を通してより会社を強くし、今後もタクシー業界を盛り上げる中心としてご活躍されることを願っております!
本日は貴重なお時間ありがとうございました。
- 編集後記
- 今回は、SNSでも話題の三和交通様から「従業員の声を活かす」取り組みについてお話を伺いました。
全員で働く環境の改善をするため、従業員の方々に楽しんでサーベイに回答してもらえるように質問内容を工夫されている、というお話が印象的でした。
事例をご覧いただいた皆様にも、「サーベイを通して従業員の声を活かす取り組み」を知るきっかけになれば幸いです。改めて、取材へのご協力に感謝申し上げます。最後までご覧いただき、ありがとうございました。