急成長している企業の離職率が上がるのは「マネージャーから採用しない」から

640

こんにちは!
ネオキャリア jinjerマーケティング担当の中村 陽太郎です。

私は、jinjerの目指す世界観『人事を経営のセンターピンに』を実現するために、マーケティング活動と平行して、人事データを駆使して経営に最適な打ち手を提案する『戦略人事』について勉強をしています。

日本国内でHR Techサービスが普及してきていますが、人事担当者の中には「HR Techで何ができるようになるの?」「データを蓄積することでどんなメリットがあるの?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

先日、このHR NOTEで従業員の勤怠管理データからマネジメント方法を考える記事を掲載させていただきました。

勤怠データを見て「遅刻や欠勤が増えてきた社員は退職する傾向があるのでは」といった私たちの仮説をもとに社労士の先生にお話をうかがい、そこで発見したマネジメント方法をご紹介させていただきました。

引き続き今回の記事では、人事データから読み取れる従業員の傾向について社労士の先生にお聞きした話の内容をご紹介いたします。

※匿名を条件に編集部が取材をおこなったため、社労士の先生の名前は伏せて展開させていただきます。

「労働時間が長い企業の離職率は高い」とは言い切れない

私は多くの企業において以下の仮説は成立すると考えておりました。

【仮説】
労働時間が長い企業ほど、離職率が高い

しかし多くの業種業態やさまざまな規模の企業を見てこられてきた社労士の先生のお話によると、企業のデータを統計的に見たところで「労働時間と離職率は比例する」とは言い切れないとのことでした。ただ、企業を人数規模や業種などのセグメントで切り分けて調査ができれば、「労働時間が長い企業は離職率が高い」と言ったデータは取れるかもしれないとも。

日本経済新聞と日経BP社が共同運営している「NIKKEI STYLE」では下記のような事例が書かれていました。

しかし一定の割合で、残業代を稼ぐために残業をしている人もいる。このタイプの特徴は、通常のワークタイムに何をしているかわからないというものだ。忙しそうにはしているのだけれど、今その仕事をしなくてもいいだろうと思えるようなことや、あるいはその人がやらなくてもよい仕事などに時間を使っている。さすがにあからさまにゲームをしたり寝ていたりするようなことはないが、優先度も重要度も低い仕事に時間を使っている。またこのタイプは残業を楽しんでいるところもある。残業をしている自分が好きで、おまけにお金も稼げるのだから一石二鳥だ。

このように、長時間労働をしている人の中にはさまざまなタイプが存在するので、長時間労働が一概に離職率につながるとは言い切れないのです。

しかしながらブラック企業と呼ばれるような、長時間労働が慢性的になっている企業や、適正な残業代が支払われていない企業であれば離職率の高さは露骨に出てしまうとのことでした。

急成長をしている企業の離職率は高い傾向がある

さまざまな企業があるので、断定的には言えないとのことでしたが、社労士の先生の経験則だと「人が急に増えている企業は離職率が上がる傾向にある」ことはよく見受けられるとのことでした。

急成長をしている企業は、業務が日々増えていくので、人を採用することで作業の工数を削減しようとします。しかし人を多く採用したところで急成長をしている企業は「業務を教えること」にリソースを割くことができなくなっていきます。

長年働いてる従業員や、仕事の飲み込みが早い従業員であれば、高い生産性を維持できるので、業務を忙しくこなしていきます。それに対し、入ったばかりの従業員や飲み込みの遅い従業員は仕事が与えられなくなるので「暇」だと感じてしまいます。この場合、忙しすぎると感じる従業員と暇に感じている従業員の両者が退職をしてしまい、その結果離職率が上がってしまいます。

人が急に増えるときにはまずマネージャーの育成・採用から着手する

少し人事データとは離れていってしまいますが、社労士の先生は「忙しくなったとしても人は増やさないほうがいい」とおっしゃっていました。なぜなら先程も述べたように、急成長をしている企業には「仕事の分配」「教育」「心のケア」の3つのポイントを補填する体制が整っていないので、離職率が高くなる可能性があるからだといいます。

「仕事の分配」
忙しい人に仕事が集まり、入社後すぐの人には仕事が集まらない。そのため、忙しい人は仕事を辞め、仕事が集まらない人は暇で辞めてしまう。

「教育」
教育の体制や、教育する人がいなければ、教育にコストが掛かりすぎ、仕事を任せることができないので退職が増えていく。

「心のケア」
仕事が忙しいと感じている従業員、仕事がなく暇だと感じている従業員などに対してケアができなければ退職が増えていく。

逆に言えば「仕事の分配」「教育」「心のケア」の3つのポイントをなんとかできるマネージャークラスの人材を育成・採用する、もしくは仕組みをつくることができれば離職率を低下させながら人材を採用することができます。

人を採用・配属する際は、その部署のマネージャー職の能力・人数に注目するべき?

以前私が、採用をお手伝いしていた企業様で、既存マネージャーが減少した結果、新卒入社社員の離職率が上がってしまった事例がありました。

・2014年度新卒 11名配属→離職2名:離職率18%既存マネージャー6名
・2015年度新卒 14名配属→離職4名:離職率29%既存マネージャー3名、新マネージャー3名

もちろん、離職者が増えてしまったのには他の要因も含まれているでしょうが、能力・経験のある既存マネージャーの減少というのがひとつの要因であることに間違いはないと思います。

厚生労働省から出ている「平成25年若年者雇用実態調査」では若年者が初めて勤務した企業を辞めた主な理由として「人間関係がよくなかった」が労働時間についで2位となっています。

FireShot Capture 6 - - http___www.mhlw.go.jp_file_06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku_

「人間関係がよくなかった」と若年者が感じた理由の中には、「教育」や「心のケア」不足によるものも含まれているのではないでしょうか。

人事としてどういう動きをとるべきだったのか

もし仮に、人事部が各組織のマネージャー数と、マネジメント可能な人数のキャパシティに関して統計データをとって把握をしていれば、上記のような離職は避けられたのではないでしょうか。

また細かな統計データをとっていなかったとしても、「この部署は急に既存マネージャー数が減っているけど、こんなに新卒を配属しても大丈夫ですか?」「既存マネージャー数が多い他の部署に多めに配属したほうがいいのではないでしょうか?」という提案はできたと思います。こういった人事の主体的な動きにより離職者数を減らすことができていれば、これは『戦略人事』的な動きと言えるでしょう。

さいごに

急成長している企業で従業員を増やそうと考えているのであれば、まず自社または各配属先部署のマネージャー数・能力に着目し「不足しているようであれば教育でまかなえるのか?」「教育が追いつかなければ外部から採用できるのか?」を慎重に判断する必要があると思います。

この役割を人事がしっかりと担い、過去のデータや実績に応じで会社全体を俯瞰して最適な提言を経営者におこなっていけるようになれば離職率を減少させられるかもしれません。

労働人口が減少する日本において、労働力を確保することは今後さらに難しくなってくると思います。そんな中で人事には、経営者に積極的に提案し人的リソースの最適化を図る『戦略人事』的な動きがますます求められるようになるのではないでしょうか。

公式アカウントをフォローして毎日記事をチェック!