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社会保険料計算の注意点|事例を用いてわかりやすく解説!

人事・総務の給与計算担当であれば、どのように社会保険料を計算するのかを知っておかなければなりません。「給与から、どれくらいの社会保険料が天引きされているのか?」と聞かれた際に、計算方法を理解しておかないと上手く伝えることができません。

今回は、社会保険料の計算方法や、その具体的な事例をご紹介します。

1. 狭義の社会保険(健康保険、介護保険、厚生年金保険)の手続・計算事例

保険計算640

従業員給与から天引きする社会保険料は、企業側が「保険料額表」をみて計算しなければいけません。

健康保険・介護保険が協会けんぽで事業所が東京都の場合を考えてみましょう。
【参照】平成29年度協会けんぽ保険料額表(平成28年9月分)|東京都版

事業所によって健康保険組合はさまざまかと思いますが、上記リンク先のようにそれぞれ地域ごとに異なった保険料になっています。

たとえば、平成28年の4月から6月の収入が以下のような場合

・4月:21万円
・5月:25万円
・6月:23万円

平均の報酬月額は23万円ですので、上記リンク先の表で照らし合わせてみると、平成28年9月~平成29年8月の等級は19(※15)であり、39歳以下であれば健康保険料は11,952円、厚生年金保険料は21,848円となります。

※( )内の数字は、厚生年金保険の標準報酬月額等級です。

40歳以上であれば健康保険料は、介護保険も含めて13,848円です。

なお7月以降に、ある従業員の3カ月の平均報酬月額が2等級以上変わる場合は、月額変更届を提出し、その3カ月経過後に等級を変えることになります

2. 労働保険(雇用保険、労災保険)の計算事例

保険計算2

 

2-1. 給与額をもとにした方法

労働保険料の計算ですが、年度ごとに保険料額が変動します。

  • 業種は飲食店業
    平成28年度及び平成29年度労災保険料率:3.5/1000
    平成28年度雇用保険料率:11/1,000
    平成29年度雇用保険料率:9/1,000
  • 労災保険料の対象賃金が1,000万円(平成28年4月1日~平成29年3月31日)
  • 雇用保険料の対象賃金が800万円(同上)

上記の場合、平成28年度の労働保険料は以下のように計算をします。

1,000万円×3.5/1,000+800万円×11/1,000=123,000円

実務上は、毎年7月10日までに前年度の確定保険料と当年度の概算保険料を計算し申告・納付する方式をとっています。

上記の事例では平成28年度確定保険料が123,000円ですが、平成29年度概算保険料は雇用保険料率だけ平成29年度のものに替えて(11/1,000→9/1,000)、107,000円となります。

平成29年7月10日までに納付する額ですが、平成28年度概算保険料が10万円であった場合は、一般拠出金1,000万円×0.02/1,000=200円を加えて

123,000円(平成28年度確定保険料)
-100,000円(平成28年度概算保険料)
+107,000円(平成29年度概算保険料)
+200円(平成28年度一般拠出金)
=130,200円

を納めます。

なお一般拠出金とは、石綿(アスベスト)による被災労働者救済のための保険料になります。

2-2. 請負額をもとにした方法や特別加入保険料

労災保険料率や一般拠出金率をかける対象が、建設業においては請負額をもとにした方法があります。

たとえば、業種が建設業(建築事業)で、平成28年度の請負金額が1億円(消費税別)のケースを考えます。

労務費率は事業(道路新設事業など)の種類に応じて、18%から40%になります。建築事業の労務費率は23%ですので、1億円×23%=2,300万円を給与額とみなして、労災保険料率や一般拠出金率をかけます。また、特別加入保険料は、特別加入の際に決めた給付基礎日額に365をかけたものに対して、労災保険料率や一般拠出金率をかけます。

たとえば、給付基礎日額10,000円であれば、3,650,000円に労災保険料率や一般拠出金率をかけて労災保険料を求めます

2-3. 従業員給与から差し引く雇用保険料額

たとえば、建設業の従業員で、平成29年4月の給与額が30万円で5月が28万円であれば、4月給与から差し引く雇用保険料は、30万円×4/1,000=1,200円、5月給与分は同様の計算で1,120円です。単純に月ごとに計算していけばよいのです

なお、65歳以上の従業員は雇用保険の対象者でも保険料は免除されますので、給与から引かないでください

3. 社会保険料の計算で気をつけたいこと

保険計算3

 

3-1. 4-6月中の残業を抑える

健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料に関しては、毎年4~6月の「報酬月額」をもとに等級が決まり、その年の9月~翌年8月の保険料を左右します。

そのため4~6月分では、臨時の手当は出さないほうがよいかもしれません。残業をすると時間外手当が発生しますから、残業を抑制すると上記3保険料の削減になります。

3月決算企業の経理・総務部門などは4~6月が忙しい時期で難しいところがありますが、7月以降に2等級以上下がれば、月額変更届により保険料引き下げが可能です。

3-2. 保険料の変わり目

2等級以上変わらない限り9月からの1年間は等級が固定されますが、等級ごとの保険料は改定があれば改定月から変わります。たとえば、健康保険料率が平成29年3月分で改定された場合は、3月分から変更後の保険料額表で計算しないといけません

国で決めている厚生年金保険料・雇用保険料や、さまざまな中小企業が加入している協会けんぽの健康保険料・介護保険料は、改定月が給与計算ソフト・システムで自動設定されているケースもあります

しかし健康保険組合の健康保険料・介護保険料であれば、組合毎に保険料の変わり目は異なり、ソフト・システムで自動設定されていないケースもあるので、給与計算担当者が考えて変えないといけないところです。概ね3~4月に改定する組合が多いです

給与計算ソフト・システムが無くEXCELシートで給与計算している場合、もしくはソフト・システムでも手動設定しなければならない場合は、全ての保険料について改定時期を理解しないといけません。

その際には(会社ごとに決まっているでしょうが)社会保険料が翌月控除・当月控除どちらなのかも気をつけてください。

たとえば、翌月控除であれば、9月分から変わる厚生年金保険料については、10月の給与から9月分の保険料を天引きしていますので、10月から変えます。当月控除の場合は9月の給与からです。

3-3. 算定の基礎となる賃金・報酬

算定の基礎となる給与の多くは、5種類の社会保険で共通しています。たとえば、残業手当・通勤手当などは対象ですが、病気見舞金・出張旅費などは対象外です。ただ、一部保険ごとに異なる扱いをしているものがあります。

たとえば、役員・労働者両方の役割を果たす「兼務役員」に関しては、労働保険では役員報酬部分は対象外ですが、社会保険(狭義)では対象になります。

労災保険・雇用保険の保険料申告書では、役員報酬を算定賃金に入れないように気をつける必要があります。

4. まとめ

社会保険料は多い時は年2回程度保険料改定があり、また給与・手当のどこまでが算定の対象となるのか、どの労働者が各種保険の対象になるかに関して理解しておかないと間違えてしまうことがあります。

その理解があれば、社会保険料で損しない方法も見えてきます。社会保険料は、事業者側から見れば削減するに越したことはありません。ただ保険ですので、保険料を削ると原則(労働者に対する)給付も削られるという点は気をつけましょう。

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