「派遣の2018年問題」あなたの会社は対応できてますか?|対応開始に向けた直前チェック!

こんにちは!HR NOTE編集部です。

労働力の確保、雇用や生産性向上への注目が高まる中、すでに対応が目前となっているのが派遣の2018年問題です。

2012年に改正された労働契約法、2015年に改正された労働契約法の内容に従って、2018年の4月1日から企業も労働者も新しい対応が求められるようになります。

「まだ対応が決められていない!」「結局どう対応するのがベストなんだろう?」

そんな方のために、今回は「派遣の2018年問題」について、あらためてまとめてみました。その対応策もご紹介していきます。

「派遣の2018年問題」とは?

簡単に言うと、2018年4月から使用者・労働者ともに、雇用形態や契約期間に関して見直しの対応が必要となっているということを意味します。

数年前の法改正によって、2018年4月以降、一定条件を満たしたパートタイマーや派遣社員などの有期雇用契約の労働者は、希望すれば「無期雇用契約」という働き方を選ぶことができるようになりました。

これは、労働者にとっては雇用の安定性が増す仕組みのため希望者が多いのではないかと言われています。

一方、企業にとってはコストの増大につながる可能性があり、派遣会社・企業側も労働者との雇用契約内容や契約の期間を見直さなくてはなりません。

場合によっては「雇用止めがおこなわれ、大量の失業者が出てしまうのでは?」ということも懸念されています。

背景にある「一億総活躍社会」実現に向けた取り組み

2018年問題の発端となる法改正は、人口減少が進む日本の中で、「一億総活躍社会の実現」に向けておこなわれました。

一億総活躍社会とは、少子高齢化が進む中でも「50年後も人口1億人を維持し、職場・家庭・地域で誰しもが活躍できる社会」のことです。

なぜそのような社会を実現しようとしているかというと、このままでは、日本全体の生産力低下・国力の低下は避けられないためです。子どもや高齢者を除いた働き手となる「労働力人口」は、2060年にはピーク時の半分になると言われています。

これを受けて、内閣は本格的に労働力不足の解消に乗り出しました。この労働力不足の解消に向けた施策が「働き方改革」です。

2018年問題は、この働き方改革の目玉となる非正規と正社員の格差是正の取り組みによって生じています。

働き方改革とは

労働力不足を解消し、一億総活躍社会を作るために「働き手の増加」「出生率の向上」「労働生産性の向上」に取り組むこと。

そのために、実現しなければならないことが3つあります。

  • 長時間労働の解消
  • 非正規と正社員の格差是正
  • 高齢者の就労促進

この中でも非正規と正社員の格差是正は、働き方改革の目玉となっています。

「働き方改革」の実現に向けて|厚生労働省 ※詳しくはこちら

「同一労働・同一賃金」の考え方

「同一労働・同一賃金」とは「仕事内容が同じ、若しくは同等の労働者には同じ賃金を支払うべきだ」という考え方です。

そもそも非正規で働く人は、国内の労働者の約4割も占めているといわれます。正社員のような働き方を選ぶのは限界があるような、介護や育児の負担を抱える高齢者や女性も多いからです。

しかし、非正規社員の待遇は、正社員の時給換算賃金の約6割にとどまるといわれています。

そのため、結果的に非正規としての働き方を選ぶことになると、働くことを踏みとどまってしまい働き手が増えないこともあります。正社員と同一またはそれ以上の仕事をこなせる能力のある方であっても、生産性を発揮する機会を損失したりしているのです。

欧州では時給換算賃金は約8割ほど。日本の非正規・正社員の雇用格差は激しく、OECD(経済協力開発機構)などから是正勧告を受けています。

「同一労働・同一賃金」の考え方では、将来的に非正規という枠組み自体をなくし、ライフステージにあわせた働き方を選べるようにすることを目的にしています。

雇用格差是正のために施行された2つの法改正

派遣用語とルールのおさらい

上記雇用の格差是正のため、数年前2018年問題の引き金となる2つの人材派遣に関わる法改正が行われました。

まずは基本的な派遣用語やルールをおさらいしましょう。

  • 有期労働契約…派遣やアルバイト・パートなどの、期間の定めのある労働契約。
  • 無期労働契約…期間の定めのない労働契約。
  • 登録型派遣…派遣会社からお仕事を案内されて就業決定し、派遣先企業と派遣会社間で結ばれる派遣契約と等しい期間だけ派遣会社と雇用契約を結ぶ形態。派遣期間が終了したら、雇用契約は終了となる。その後、同じ派遣会社から派遣される場合も、あらためて雇用契約を結ぶことになる。
  • 常用型派遣…派遣会社の社員として常時雇用している社員を企業に派遣する形態。登録型派遣と違い、派遣先企業での就業期間が終了しても、派遣会社と雇用関係は継続しており、雇用関係は終了することなく新たな企業に派遣される。もし、新たな派遣先がすぐに見つからない場合でも次の派遣先が見つかるまで給与が支払われる。
  • 無期雇用派遣…常用型派遣の中で、期間の定めの無い形態。無期契約とはいっても定年制を設ける企業が大半のため、「定年までは、毎年契約更新することなく雇用が継続する契約社員」のようなもの。ただし正社員ではないため、賞与や各種の手当等が異なることがある。

2012年の改正労働契約法

2012年の改正労働契約法では、5年後の「無期雇用派遣への転換ルール」が定められました。

これは2013年4月1日以降に有期労働契約を締結・更新した場合、5年後の2018年4月1日から労働者は有期雇用契約から無期雇用契約への転換を申し入れることができるようになったというものです。

ただし、以下3つの条件を満たしていることが無期転換申込権の発生条件になります。

  • A. 使用する事業主が「同一」かどうか
  • B. 契約の更新回数が1回以上
  • C. 有期労働契約の通算期間が5年を超える

2015年の労働派遣法改正

2015年の改正派遣法では派遣社員の派遣期間の制限が見直されました。

これは、派遣社員は個人単位で同一の組織単位で働けるのが3年までとなり、その最初の期限が2018年9月末となるというものです。しかし、以下の場合は3年という期限は適用されません。

  • 派遣会社に無期雇用されている派遣社員を派遣する場合
  • 60歳以上の派遣社員を派遣する場合
  • 期限がはっきりしている有期プロジェクトに派遣する場合
  • 日数限定の業務(1カ月の勤務日数が通常の労働者の半分以下で10 日以下)に派遣する場合
  • 産前産後休業、育児休業、介護休業等で休業している労働者の業務に派遣する場合

つまり法改正の結果どうなったの?

法改正の結果、非正規雇用契約から無期雇用契約の転換が希望すれば可能になりました。

「無期雇用派遣」として働くことの最大のメリットは、派遣元が雇用を保証してくれる点です。

従来の登録型派遣の場合、事前に派遣会社に登録をおこない、希望と合致する派遣先会社がみつかったときに初めて派遣契約を結びます。そして、派遣先での契約期間が終わると、派遣契約も終了となり、次の派遣先企業が見つかるまでは実質的には無職状態となります。

無期雇用派遣の場合、希望と合致する派遣先がみつかったときは派遣先に赴きますが、派遣先との契約期間が終了しても、派遣元との雇用契約は継続します。そのため派遣先が無い間も給料が発生し、派遣元での勤務や待機することになります。収入面でもキャリア面でも安心して働くことができるようになるため、多くの人が無期雇用契約の転換を希望すると言われています。

しかしコスト増を懸念して企業側が「雇い止め」という選択をする可能性もあり、2013年4月に施行された法律の実質的な該当者が現れるのが、施行から5年が経過する2018年4月からと、そのタイミングが迫っています。

これが、現在問題になっている2018年問題の全体像です。

企業側がやらなければならないこととは?

2018年問題を理解したところで、肝心なのはどう対応を進めていくかです。

派遣会社・企業側の目線でいえば、下記いずれかの対応考えておかなければなりません。

1.無期契約社員化

  • 処遇条件(給与など)を改善するか、しないかを決定した上で、無期契約社員化する。

2.正社員化・限定正社員化

  • 完全に正社員に転換するか、勤務地・職務・時間などを限定した限定正社員化する。

3.契約終了・業務効率化

  • 有期契約が5年を超えないように契約終了し、既存業務を別の手段で処理する。

1.無期契約社員化のメリット・デメリット

3つの選択肢のうち、最も増えるのではないかと言われているのが「1.無期契約社員化」です。

出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構
参照:http://muki.mhlw.go.jp/overview/business.html

  • メリット:これまで通りの業務を継続してもらえる

雇止めは人手不足が深刻化する現状では採りづらく、正社員化は限定社員であったとしても人件費負担の大幅増が懸念されます。そこで、待遇は現状維持もしくは若干改善させた上で、無期契約社員化するケースが多くなると言われています。

  • デメリット:人件費負担増、社員の待遇の見直しも必要

同一賃金・同一労働とは言っても、正社員ではない非正規労働者。無期雇用とすることでの正社員の待遇についても検討する必要がでてきそうです。また、無期契約社員には手続きが必要です。下記のようなサイトで調べるか、派遣会社に相談しましょう。

▶厚生労働省:有期契約労働者の無期転換ポータルサイト

2.正社員化のメリット・デメリット

  • メリット:優秀人材を確保できる

人手不足が深刻化する中、正社員登用を進めて人材の確保をおこなう舵を切った企業も。ユニクロやスターバックスといった有名企業が、パート社員や契約社員を(勤務地限定)正社員化する動きが目立つようになったのも、この2018年問題がきっかけです。

厚生労働省は2016年1月、今後5年間の非正規雇用労働者の正社員転換や待遇改善のための様々な取り組みを「正社員転換・待遇改善実現プラン」として決定しました。

非正規雇用に留まっている労働者の割合を、2014年平均の18.1%から10%以下にまで引き下げることを、大きな目標の1つとしています。

政府としては、無期契約社員ではなく、できれば限定正社員化を推し進めたい考えのようです。そのため、有期社員を正社員化した会社に対しては、対象者1人につき数十万円の助成金を支給しています。

  • デメリット:人件費負担の大幅増

とはいえ人件費負担の大幅増が懸念されるため、正社員化の対応を取っている企業はそう多くなく、契約更新ができない雇い止めに労働者も使用側も戸惑っているようです。
参考:2018年問題/3 「無期転換」目前 雇い止めも―朝日新聞

3.契約終了・業務効率化のメリット・デメリット

  • メリット:コストの抑制、業務効率化に繋げられることも

雇用止めをおこない、契約を終了すれば単純に人件費の高騰が抑えられるように思われます。

しかし、「契約終了の場合、その非正規社員がおこなっていた業務をどうするのか?」という問題を併せて考えなければ問題解決になりません。この問題の対応を考えずに雇用止めを行ってしまうと、結果的に正社員の負担が増加したり、逆にコストが増加したりしてしまうことになりかねないのです。

「本当に効率化できない仕事なのか?」「正社員の業務効率化で賄えないか?」などと様々な選択肢を改めて検討してみるとかえって業務効率化に繋がることもあるため、契約終了のメリットはそこにあるといえます。

それを受けて増加しているのが、AI・システム化や、ビジネスプロセスのアウトソーシングサービスの導入です。「実はシステムで5秒で終わる仕事だった」「業者に丸投げしてしまったほうがコスト削減になった」といったようなケースもあります。これを機に、根本的な仕事のあり方を戦略的に見直してみてはいかがでしょうか?

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  • デメリット:スムーズに契約終了し業務が引き継げる保証が無い

無期転換申込権が発生する前に雇止めをすることは、労働契約法の趣旨に照らして望ましいものではないとされています。

そして労働契約法第19条でいわゆる「雇い止め法理」(使用者が客観的・合理的な理由なく契約更新を拒否すること=雇い止めを違法とする考え方)が条文化されており、簡単には雇い止めできませんので、慎重な対応が必要です。

また、上記業務効率化や、実施していた業務を誰が対応するのか?といった問題の対応が遅れた場合、一時的な正社員の負担増に繋がります。万が一解決できなければ、正社員の離職にも繋がってしまいかねません。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

対応についてお悩みの方は、まずはどの程度の対応人数が必要かを確認し、対応が必要なタイミングをまずは確認しましょう。

対応の仕方やメリット・デメリットも様々ですが、今後日本では優秀な人材の確保や業務効率化がますます重要な経営課題となってきます。

これを機に、単純な目の前の対応をどうするかということだけでなく、ぜひ長期的な視野で改めて社員の働き方や人材戦略を考えてみてはいかがでしょうか。

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