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会社の未来は採用ブランディングが左右する|100社以上の採用支援から見えたノウハウとは

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こんにちは!HR NOTE編集部 野上です。

先日、core words株式会社のCEO兼Creative Director 佐藤タカトシ氏による「採用ブランディング」の基礎講座に参加してきました。

近年、「リファラル採用」「ダイレクトリクルーティング」など新たな採用手法が増えてきており、新たに取り組まれている採用担当者も多いかと思います。しかし、採用手法を変えても「なかなか結果が出ない」「集客が上手くいかない」といった声をよく耳にすることもあります。

もしかすると、小手先の採用手法にとらわれてしまって、「採用ブランディング」がうまくいっていないことが原因になっているかもしれません。

そこで今回はリクルート、DeNAで16年間に渡って「採用ブランディング」をおこなってきた佐藤タカトシ氏の経験や採用ブランディングのノウハウをご紹介させていただきます。

佐藤さんプロフィール

佐藤 タカトシ(さとう たかとし) | core words CEO/Creative Director

2001年4月、リクルートコミュニケーションズ入社。11年間に渡り、大手自動車メーカー、大手素材メーカー、インターネット関連企業、流通・小売企業など、100社以上の採用ブランディング、採用コミュニケーションを支援。マネージャー、クリエイティブディレクターを務めたのち、2012年7月、DeNAに転職。採用チームに所属し、採用ブランディングとダイレクトリクルーティングをメインミッションとして活動。 2015年7月、core wordsを設立。

リクルート時代におこなった採用ブランディング

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リクルートの制作関連会社(現:リクルートコミュニケーションズ)で約11年間に渡り多くのクライアント企業の採用ブランディングを支援されてきた佐藤氏。そこでの経験や佐藤氏が学んだ採用ブランディングのノウハウをご紹介いたします。

職場環境の理解のために採用支援先の飲食店でアルバイト体験

佐藤氏:採用担当者が職場環境の良さをわからないと、求職者に現場で働くイメージを伝えることはできないと思っています。たとえば、ヒアリングをした内容を、原稿にしますっていうことはできるんですが、それだと求職者には刺さりません。実際にゴールデンウィークに4日間ぐらい採用支援先の飲食店でアルバイトとして働かせていただいたことで、その会社の仕事とか環境がいいなと感じることができました。

私がアルバイトをさせていただいた店舗には、若い店長さんがいました。会社から多くの仕事を任されていましたし、店長さんもお店の雰囲気もよかったです。店長が経営者に近い仕事をされていたところがとても良く感じました。実際に体験ができたことで、会社の良さを伝えれるキャッチコピーを作成することができました。

本当にこの会社のこういうところがいいよ」と上辺だけでなく、嘘のない情報を求職者に腹の底から言えることが、1つの採用ブランドを形成していきます。

某大手メーカーの理系採用の人気ランキングを4位から1位に

佐藤氏:某大手メーカーの採用担当をした時には、技術系の採用なので理系の学生向けにブランディングをしていく必要がありました。私は、企業のブランディングではなく理系の学生が世の中のためにどのように貢献していくべきなのかをブランディングしていきました。自社に入社してほしいことを前面的に押し出すよりも、「エンジニアってこう生きるべきだよね」「エンジニアってこういう就職、転職活動するべきだよね」みたいに、理系学生の未来について語ってあげると、学生に刺さりやすかったです。

理系学生は、文系学生に比べると、論文や研究で忙しくて面接やセミナーに参加できないなどの障壁があります。このような学生に対しては、スカイプを使った面接をおこないました。また、このときおこなった施策の中には、それまでは設計や開発などの職種ごとに採用をしていたのを、「機械系」「電気系」などの専門技術を選考のチャネルにしました。理系学生の多くは、自分が培ったスキルを仕事でいかすことができるのかを重視して就職活動をおこなっています。なので、機械系の人はこういう仕事があります、電気系の人はこういう仕事がありますと、中途採用に近い感じで採用をしていくとマッチングが上手くいったんです。

理系学生向け人気企業ランキングというのが毎年発表されるんですけど、理系で4位だったのが1位になったので、かなり効果のあった施策だったと思っています。

「何を伝えるのか」より「誰が伝えるのか」

佐藤氏:「何を」「誰が」伝えるのか、というのは求職者の意思決定を大きく左右するものです。会社の人たちが求職者に対して「この会社で働くのがいいよ」って言ってもなかなか伝わりません。中立な立場の人から、「あの会社よりこの会社のほうがいいよ」って客観的に言ってもらうことで、求職者の意思決定に響きやすくなります。私がおこなったイベントでは、中立な立場にいる大学の教授などに登壇していただいて、企業の比較をしていただくようなコンテンツをしました。

規模感とかはいろいろあると思うんですけど、学生や求職者が喜ぶようなコンテンツを準備していくことが大事だと思っています
極端にはなってしまいますが、面接に来ることができなくてもスカイプ面接で内定出しをするというのも効果のあるコンテンツだと思っています。忙しい学生からすると「あの会社おもしろいことやっているな」と、すぐに評判が広まっていくんですよね。

学生が喜ぶようなコンテンツを自社だけでつくるのが難しければ、同じ業界の企業が集まってイベントを開催して、「今この業界ではこの分野の仕事がおもしろいよ」と複数の企業を巻き込んでブランディングをおこなえば学生に刺さりやすくなります。

DeNAでのミッション|採用強化と事業成長への挑戦

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2012年に株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)に中途で入社した佐藤氏。
主にキャリア採用を推進する部署に配属され、前職リクルートで注力をしていた「採用ブランディング」をいかして、DeNAの採用に携わって来られました。ここでは、DeNAでの採用強化や事業成長のためにおこなってきた佐藤氏の挑戦とその採用ブランディングノウハウについてご紹介いたします。

「ガラケーのゲーム会社」からの脱却|新たなイメージのブランディング

佐藤氏:私は2012年に入社をした時は、ちょうどスマホが普及し始めたときで、スマホアプリで革命的なゲームが他社でリリースされ、当時ガラケーのゲームが主軸であったDeNAは押され始めていました。

この変化に対応をしていくために、採用の要件や会社の組織を大きく変化させていきました。その際に「転職したいと思う前にイメージを持たせる」といったブランディングをおこないました。

スマホゲームが普及していく中で、今までの「ガラケーゲーム」というDeNAのイメージだと求職者に「若干古いな」と思われてしまって転職したいと思ってもらえないんですよね。求職者が転職したいと思う前に、「この会社はガラケーの会社じゃなくて、今後スマホゲームを作っていきますよ」というブランディングをしていきました。

転職潜在層だけでなく、転職エージェントなどにもイメージを持っていただけるように、ブログを活用したり、リアルイベントを開催したりして、ターゲットになるエンジニアやデザイナーに会社の新たなイメージをもっていただけるようにしました

アウトプットではなくプロセスを伝える|メディアやイベントを利用したブランディング

佐藤氏:私は企業や人の魂が宿るのはプロセスだと思っています。
「こういうものを作りました」とか、「こういう会社です」というアウトプットだけだと求職者には伝わりません。「なぜその商品ができたのか」とか、「何を考えてみなさん日々仕事をしているのか」というプロセスを伝えたほうが、求職者に刺さりやすいです。

求職者にプロセスを伝えるだけでなく、メディアに求人広告を出すときや、人材紹介会社を利用する際もプロセスを伝えることが大事になります。たとえば、人材紹介会社のキャリアアドバイザーと現場のエンジニアを接触させて、ものづくりのプロセスを理解していただく機会をつくれば、求職者に対して自社のプロセスをキャリアアドバイザーから伝えてもらうことができます。

オウンドメディアやリアルイベントを使ったブランディングもおすすめです。オウンドメディアでのブランディングというのはブログ・Facebook・Twitter・LinekedInなどを使って、社員の業務やプロダクトのプロセスに関するインタビューをひたすら投稿していきました。たまたま見てくれる人や社員のシェアで拡散されるので、多くの方に会社の魅力を認知してもらえました。

広報との連携も大事で、リアルイベントはその場にきた求職者にしかプロセスを伝えることができませんが、イベントを取材して記事にしてもらえば、イベントに来ていない人にも内容を伝えることができます

ブランディングを認知してもらうには地道な努力を積み重ねる必要があります。すぐに結果が出るといった魔法は存在しないので、転職潜在層にイメージを植え付けるためにもプロセスをたくさん伝えれるようなブランディングをしていきましょう。

ダイレクトソーシングは急がない|世の中に会社のイメージを与えることが優先

佐藤氏:ビズリーチ・LinkedIn・Wantedlyを利用して、候補者のレジュメを検索して直接メッセージを送ることが最近流行っています。私はダイレクトソーシングを急いでやっても、会社のイメージが世の中にないと求職者には刺さらないのではないかと思っています。なので、ブログやメディアからある程度プロセスを発信できている状態をつくってからダイレクトソーシングをはじめたほうがいいと思っています。

候補者にメールを送る際にはブログやオウンドメディアのリンクを貼り付けておけば、その会社で働いている人の姿がより詳細に見ることができるため、反応率が上がります。候補者の中には「いきなり面談はちょっと嫌だけど、勉強会ならいいよ」という人も多いので、リアルイベントへの招待するリンクを貼り付けて送ると、接触できる可能性があがります。

勉強会ではなくても、ランチを食べる、一緒にゲームやりましょうといった切り口でも効果があると思います。実際に直接会ってプロセスなどを伝えていくと、候補者の志望度も上がるので、ダイレクトソーシングに関してはある程度体制が整ってからはじめるのが理想的です

社員の巻き込みも非常に大事になってきます。とくにWantedlyだと応援の数が多いほど多くの方の目に留まりやすくなります。まさにWantedlyに登録している社員の数がフォロワーの数にかなり影響するので、全社員に登録をしてもらい、ブログやコンテンツを応援していただけるように促せば大きな効果が期待できるのではないかと思います。

会社の未来は採用ブランディングが左右する

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佐藤氏:従来のように求人票をエージェントに出す、メディアに求人掲載をするような従来の採用も大事ですが、今求められているのは会社の視野に合う人をいかにして採用するかどうかです。今は雇用の考え方が変化してきているので、自社で本当に採るべき人材にターゲットを絞ってブランディングをすることがより重要になってきていると思います。

人が足りないだけであれば、クラウドソーシングなどで補充することも可能になってきました。自社で雇用、採用するということをよりちゃんと考えなきゃいけない時代になってきているかなと思います。

個人と企業の関係の変化|メディアを活用した個人間でのオファーを

佐藤氏:近年になって求職者個人が持つスキルが多様化し、クオリティも高くなってきています。その個人のスキルを評価・比較することが簡単になっており、Web上には個人の制作を共有できるGitHubのようなメディアもかなり増えてきました。

従来であれば企業は人を採用してから配属先を決めて仕事を依頼することが多かったですが、今ではSNSを活用して自社がほしいスキルを持っている優秀な人材に直接オファーすることができます。しかし、そういう優秀な人は、界隈では有名な可能性があるので、他社との取り合いになってしまうことがあります。なのでこのような優秀な人材を採用することに対してどのようなアプローチをしていくかが重要になってきます。

明確に欲しいスキルを持った人材を採用したいときには、そのスキルを持った人向けにイベントを開催するのが効果的です。Webに掲載された記事、ブログ、SNSから優秀な人を検索して、欲しいと思った人がいれば、イベントに登壇してもらえるかどうかをオファーができるような時代になってきています。この場合だと欲しい人材が属している企業を通してオファーする必要はなく、その人に対して直接オファーができます。直接オファーをして参加していただけるということは、その人たちにとって組織に属している理由はあまりないことが多いです。では、そういう人たちとどのようにして関係性を持続するのか、どのようにして自社に呼び込むのかが重要になってきます。

働き方改革とアライアンス|多様な働き方をブランディングに

佐藤氏:Yahoo!の週休3日制が話題になっていますが、今後社員の雇用形態とか契約内容が多様になってくるのではないかと思っています。優秀な方を採用し、従業員を雇用し続けるためには企業側が多様な働き方を提案していかなくてはいけない時代になってきています。雇用者と企業の関係も変化していくので、優秀な人がいたらその人に対してどういった契約を用意するのかを考えていきましょう。他社がまだやっていない働き方を提案できる会社がいい人材を揃えて成功していく時代が来るのではないかと考えています。

私が企業のブランディングをやるときには、自社の良さだけではなく「働き方を提案しましょう」「こういう雇用形態はどうですか」と考えるようにしています。新卒採用であれば「通年採用にしませんか」みたいな提案をしています。雇用形態だけにとどまらず、まだどこの会社も始めていないような部分を突くブランディングは結構強いです。

採用自体の目的からブランディングを考える|求める人物像に焦点を当てたブランディング

わたしは、事業の成長個人の活躍ができる採用をしていることがブランディングになると考えています。

大量採用をしている会社も多いと思いますが、その中でも「数のために採用をやっている会社」より、「業績の成長を考えて採用している会社」の方が、「会社の成長とあなたの活躍が結びつくのが僕のゴールなんだよね」と言うことができるので、求職者の心には刺さりやすくなります。この「事業の成長」「求職者の活躍」を含めて採用のブランディングを考えるというのが大事かと思っています。

そのためには、求める人物像を考えることがかなり重要です。会社の良さをブランディングしていても、ターゲットではない人にも刺さったりするので効率が悪くなってきます。なので、「こういう人が欲しい」という人物像を解像度高く設定して、その人に対するメッセージを打ち続ければ、ターゲットを絞った集客をすることができます

「人物像」と「事業の成長」ここがリンクしているのが大事で「こういう人を採用すれば、こういう活躍をするから事業は成長するよね」とリンクさせてイメージをするようにしましょう。

これからの採用戦略の役割|「経営者」であり「戦略家」であり「伝道師」

佐藤氏:これから採用が激化していくなかで、採用担当者の未来、成功するための役割、心構えを最後に説明したいと思います。

採用担当者は、「経営者」であり「戦略家」であり「伝道師」であるべきだと私は思っています。

これは、前職のDeNA時代にリクルーターが持つ心得として、メンバー全員で定めたものです。

経営者」というのは「事業の成長」のために、「経営的な視点を持ちながら採用をしていこう」ということです。
たとえば、経営方針に沿ってこういう人を採用しましょうと経営会議で提案したり、経営側が掲げている採用目標に対して意義を唱えたりもそうです。「その目標は少し違うと思う」といったように経営目線を持ちながら採用をすることが大事だと思います。

戦略家」というのは採用の手法をゼロベースで考えられるかどうかだと考えています。
よく各社エージェントに言われた通りに動いてしまう採用担当者がいます。エージェントが提案する採用手法はだいたい他の会社もやっていますし、それが自社として最適かどうかに疑問を抱くべきだと思います。

ゼロベースで「この人を採るためにはこういうことをやるべきだ」と言える採用担当者が今後の採用を成功させていくと思っています。たとえば、ゲーム系のデザイナーとそれ以外のデザイナーの採用がしたい時には、それぞれの採用を考える必要があります。デザイナーと言っても専門性によっては、普段の生活や見てる媒体が違います。そういった違いを見つけて、ゲーム系のデザイナーだと「ゲーム専門雑誌に広告を出す」「ゲーム専門雑誌の編集者と一緒にイベントをやる」みたいな提案をしたり、ゲーム以外のデザイナーだと、ゲーム色を嫌がる人もいるので「ゲームの会社に見えないようなお問い合わせページを作成する」などして、それぞれの採用に必要な戦略を考えていきます。

伝道師」というのは、自社の良さを自分の言葉で伝えられるかどうかです。採用ページや、会社概要に記載されていることを求職者にそのまま説明するのではなく、「私は自社をこう思っています」というようなことを自分の言葉で語れることが大事だと思っています。

候補者の方は採用担当者の言葉に重みがあるものかどうかを見極めています。自社の良さをちゃんと自分の言葉で伝えていく伝道師にならなくてはいけないと自負する必要があると思っています。候補者と1対1で話す機会や外部のイベントに登壇することを増やすなどして、エバンジェリスト(伝道師)として活躍をしていく心構えをしましょう。

経営者」であり「戦略家」であり「伝道師」これを目標に人事部全体を巻き込んで取り組んでいくことが会社での採用の成功につながると考えています。

私の会社じゃなくて私が会社|当事者意識をもったブランディング

佐藤氏:「私の会社じゃなくて私が会社」という意識を持って採用をしていくことも大事だと思っています。これも経営者に近い考え方だと思うんですが、「私自身がこの会社」だと意識して、候補者と接することで自分が会社の代表として当事者意識をもってブランディングができるので、非常に能動的な採用活動ができるようになると思っています。

企業の経営において採用が大事な時代になってきているので、採用担当者が「私が会社」だと心構えをすることは今後ますます必要性があるのではないかと思っています。まさに日々、経営戦略に合わせてどのような人材を採用するのか、どのような採用活動が効果的なのかを考えることで、会社の成長に直結することができるので、「私が会社」と意識して採用活動に取り組んでいただきたいです。

企業よりも個人が優位になってきている時代になっており、個人をどう仕事で活かせるのか、そして個人をどのように活かして事業を成長させるかという目線を持つことが大事かなと思っています。「うちの会社はこの目線を持っています」ということを伝えるだけでも他社との差別化になっていくようになるでしょう。

さいごに

いかがでしたでしょうか。
「採用ブランディング」は近年の増え続ける採用手法に隠れしてしまっていますが、新たな採用手法を取り入れる前に最も注力しなければいけない、重要な部分ではないでしょうか。どれだけ良い採用手法をおこなっていたとしても、良いブランディングができていないと、求職者が企業にいいイメージを持てず、企業の規模によっては認知がされていないこともあるかもしれません。

「企業の成長」につながる「採用の強化」が今後ますます採用担当者に求められていく中で、採用ブランディングに注力することは欠かせなくなってくるでしょう。「会社の未来は採用ブランディングが左右する」と言うように、佐藤氏がこれまでしてきた採用ブランディングの経験とノウハウは、今後の採用活動に活かしていただければ幸いです。

次回は佐藤氏が考える「採用ブランディングの3原則」についてご紹介させていただきます。

※なお、佐藤氏は今回お話された内容をもとに、2017年4月に「採用ブランディングの教科書~どんな企業でも”その会社で働きたい”と思う状況を作りだす!~(仮題)」というタイトルの本を株式会社クロスメディア・パブリッシングより執筆予定です。

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