「最前線でともに戦う人事」アカツキの“魔法使い”が仕掛けるユニークな人事制度とは?

今回は、モバイルゲームを中心に急成長を遂げている、株式会社アカツキの人事企画室長である、坪谷さんにインタビュー。

坪谷さんは、「人事企画室WIZ」という部署を立ち上げ、自らを魔法使いと称し、人事側から現場のメンバーの成長を積極支援しています。

そんな坪谷さんが仕掛ける、ユニークな人事施策とは、具体的にどのようなものか。是非、ご覧ください。

【人物紹介】坪谷 邦生 | 株式会社アカツキ 組織・人事グループ 人事企画室 室長

リクルートマネジメントソリューションズ社にて人事コンサルタントとして50社以上の人事制度構築・組織開発支援に携わる。アカツキにて人事企画室WIZを立ち上げる。中小企業診断士。

人事企画室「WIZ」は何をする部署なのか?

RPGゲームのキャラクターに例えると、人事は「魔法使い」だ

-人事企画室WIZとは何をする部署なのでしょうか?


坪谷氏
:WIZは、「メンバーがワクワクしながら成長しつながることで、幸せを生み出す組織づくり」の実現を目的とした組織です。

アカツキでは、「事業活動を通して社会をより幸せにしていくこと」が存在意義だと考えており、そのために、まずはメンバーがワクワクしながら働き、つながりながら成長し、幸せになってもらうことが大切だと信じています。


-「WIZ」にはどのような意味が込められているのですか?


坪谷氏
:WIZには2つの意味が込められています。

1つは、魔法使い「Wizard」という意味です。アカツキの現場で日々闘っているメンバーは、面白くて個性的な人が多く、よくRPGゲームのキャラクターにあてはめて例えていたんです。

「経営陣は勇者っぽいな」「あの人は売上をすごくあげているから戦士っぽいな」「この人は格闘家かな」って。

その中で「我われは何だろう」と考えたら「魔法使い」が浮かんだんです。あまり力はないけど「人材マネジメントという特殊な魔法を使ってみんなに貢献したい」というところから、魔法使いのWizardが出てきました。

また、2つ目として、そういったメンバーと一緒に闘いたい、一緒に成長していきたいという「With」という意味も込められています。

「人事はただの間接部門として引っ込んではいないぞ」「現場のメンバーと一緒に最前線で闘うぞ」という意志表示です。

ある新卒2年目との出会いが、WIZ立ち上げの構想につながる

-人事企画室WIZを立ち上げた経緯について教えてください。


坪谷氏
:きっかけは、新卒2年目の若手マネージャーから受けた相談ですね。

私は、アカツキ入社する以前は、他社で人事マネージャー、人事コンサルといった経験をしてきています。

さまざまな会社の経営層、人事の方々と一緒に、人事制度の策定、組織開発、組織活性化の支援をしていく中で、「マネジメントをうまく機能させるためのコツ」のようなものについて、少し見えてきたことがあります。

そのポイントは、仕組みではなく、魅力あるリーダーや、本気で取り組んでいる人の存在にある、ということです。そのような人材がいなければ、どんな施策を打っても、どんな仕組みを作っても、うまくいかないんです。

私がアカツキに入社して2カ月ぐらいの頃に、新卒2年目のメンバーに「最近、マネージャーになったのですが、何をどうしていいか分からなくて・・・」と、声を掛けられたんです。

「何か役に立てることはないかな」と、まずは1on1ミーティングを実施することにしました。

話を聞いていくと、そのマネージャーは、非常に意欲的で優秀な印象を受けたのですが、マネジメントの基礎については当然まだ何も知らないんですよね


-マネージャーと言っても、新卒の2年目ですもんね。


坪谷氏
:そのため、マネジメントに関するやり方や考え方といったノウハウを教えていったところ、彼は見事に成長してチームも無事に目標達成したんですよ。

そのときに、「人事にできることは、これかもしれない」と感じたんです。

すごく優秀だけど、マネジメントについてはまだやり方が分からないリーダーの横について、彼らが魅力的なリーダーになれるようにサポートすることで、会社に大きなインパクト与えることができるのではないか。

そこから、アカツキの人事企画として価値を発揮していくために、人事企画室WIZを立ち上げました。

WIZがメンバーのために支援する「5つの魔法」とは?


-WIZでは、具体的にどのような支援をされているのでしょうか?


坪谷氏
:人事企画室WIZでは、5つの領域を持っていて、魔法使いにちなんで、「5大魔法」と称しています。

それらの領域は、「GUNSHI」「DEVELOPING」「ARCHITECT」「ASOBIST」「HEARTFUL」の5つです。

横軸が人材マネジメントと組織活性化。縦軸が直接支援と間接支援になっています。


-5大魔法ってインパクトありますね!それぞれについて詳細をお伺いしたいです。

GUNSHI|リーダーの直接支援

坪谷氏:GUNSHIは、先ほどお話したような新卒2年目のマネージャーの事例のような、リーダーへの直接支援になります。

「個別具体的な組織課題にリーダーと共に挑む」ことと、「リーダー候補の立ち上がりをサポートする」ことを実施しています。

主に1on1から入り、それぞれの問題意識をヒアリングして課題をセットし、ともに解決していきます。個別コンサルに近い形です。

DEVELOPING|人材育成の促進

坪谷氏:DEVELOPINGは人材開発です。特に、新しく入社したメンバーをいち早く戦力化することに注力しています。

ポイントは、「まず組織にしっかりと適応できるか」です。仕事適応と組織適応でいくと、組織適応が先です。

全員がいきなり活躍することは、難しいですから、まずは組織に馴染んでやっていける状態になるようサポートしていきます。


-組織適応のためにどのようなことをしているのでしょうか?


坪谷氏
:新卒育成、中途入社研修などを実施しています。また、これらを入社してからの6ヶ月が過ぎるまでの間に月1ぐらいのペースで「SKD面談」というものもしています。


-SKD面談??


坪谷氏
:「最近(SK)どうですか(D)」面談です(笑)。突然、メンバーのカレンダーに「SKD面談」と予定を押さえさせてもらい、「最近どうですか?」って近況を伺うんです。

元気だったら情報交換や雑談を楽しみ、もし何か困っていたら一緒にどうしたら良いかを考えます。

ARCHITECT|人事制度構築・運用

坪谷氏:次は、ARCHITECTです。これは人事制度に関する領域ですね。

評価・報酬などの人事制度の構築と運用をおこなっています。

ASOBIST|意志あるメンバーのサポート

坪谷氏:ASOBISTは、「組織を良くしたい」という想いを持ったメンバーをサポートして、組織を活性化することを目的としています。

アカツキには「会社を良くしたい」「チームを盛り上げたい」と思っているメンバーがたくさんいるのですが、仕事が忙しくてなかなか動けなかったり、やり方がわからなかったりするんですよ。

そこで、たとえば「新しいゲームのローンチを迎えてお祝いをしたいんだけど、リソースが足りない、どうやってやったらいいかわからない」と悩んでいるチームがあった際に、サポートに入るイメージです。

HEARTFUL|「アカツキらしさ」をつくる

坪谷氏:HEARTFULは、「アカツキらしさ」をつくる活動です。これは理念浸透の領域ですね。

たとえば、半年に1度、全社員合宿を必ずやっているのですが、「アカツキハート」と我々がよんでいるアカツキの哲学を全員で学んだり、わかちあったりしています。

WIZの特徴は、人事がリーダーを直接支援していくこと


-5つの魔法の中で、特徴的な部分は何でしょうか?


坪谷氏
:WIZの中で特徴的なのは、直接支援をしている部分だと思います。特にGUNSHIがそうで、私も自らをGUNSHIと名乗って力を入れています。


-なるほど。では、GUNSHIとしての支援について深掘りさせてください。

【事例】GUNSHIが介入して、イキイキと働ける組織をつくる

坪谷氏:ひとつ事例として、「CAPS(キャップス)チーム(以下CAPS)」という組織のリーダーの支援をしている話をさせてください。

CAPSは、アカツキが関わっている製品の動作検証やカスタマーサポートをしているチームで、プロジェクトをまたがって横断的にさまざまなゲームに関わる部隊です。

アカツキが急成長する中、対応する案件数が急増し、それに合わせてそのリーダーの部隊のメンバーも増え、正社員・アルバイトなど、合計で70人ほどに拡大し、更に今後人数が拡大していくことが予想されていました。

そのタイミングでCAPSのリーダーから「1人では見きれない・・・、どうしたらいいんだろう」という相談をいただき、週1回の1on1をはじめたんです。


-1人で70人は無理ですね・・・。


坪谷氏
:そこでリーダーが悩んでいる状況を図式化、文章化して整理していき、組織づくりにおける役割や優先順位を明確にしました。

そこから、組織体制の構築や、メンバーの評価や育成の仕組みなどを一緒につくってきました。

はじめは、各プロジェクトのリーダーや、開発メンバーの人たちに「どんな状況だったらCAPSって役に立つ?」「今、CAPSができてないことは何?」といったことをCAPSリーダーとともにヒアリングしたんです。

すると、結構いろんなことが見えてきました。「各プロジェクトに横断的に関わっているCAPSで知識を集約し、ナレッジを他に展開して欲しい」という要望をいくつかのチームからもらったんです。

たしかに、組織を横断的に関われる部隊なのに、そこで集約がされていないともったいないと、「セントラル構想」が立ち上がりました。


-セントラル構想とはどのようなものでしょうか。


坪谷氏
:「セントラル」というバーチャル組織をつくり、そこにナレッジを集約し、CAPSから展開していく構想です。

CAPSリーダーと1on1で進めていた作戦会議も、CAPSリーダーの熱い想いに数人のメンバーが賛同してくれて、気がつくと6人の会議体になって行きました。

「世界基準フレーム」の挑戦、「人材輩出組織」への変革など、ワクワクできる環境を用意

坪谷氏:そうしてCAPSの組織体制の改善を進めている中、アカツキ全社は2020年を目指して急拡大をしていくことを決めました。

そこで、「CAPSも、2020年までにやるべきこと、やりたいことをちゃんと固めよう!」という話になったんです。

さっそく当時のリーダー陣と一日のオフサイトミーティングを開きました。「今のCAPSでできていることが青」「できてないことが赤」「今後やりたいが黄色」と書き出し、「じゃあ、CAPSは2020年に向けて何をしていくか」議論を進め、『CAPS2020』という中長期目標をつくりました。


-どのような目標をつくったのですか?


坪谷氏
:はい。その一部をご紹介しますね。現状の足元でできていないことはまだまだある。そこをしっかりと改善していくこと。まずはそれが大前提です。

その改善を積み重ねた上に、「@フレーム」という、品質保証の基準をつくって世界展開したいという、野望のような目標が生まれました。@は、アカツキのaです。

「ネジをつくるのならこの基準に沿わなきゃいけない」という、JIS規格のようなイメージで、「ゲームのような、おもしろいものをつくるときに@フレームの基準に沿わないといけない」という世界観を2020年までにつくろうと決めました。

そこには人材育成も含まれています。クリエイティブな業務と比べると、動作検証やカスタマーサポートといった業務はどうしても地味にも見えがちですが、実は、CAPSはゲームの基礎を学ぶのに最高の組織なんです。

CAPS出身の人材はユーザーの声を非常に深く理解しているし、ゲームの仕組みも詳しく、他のプロジェクトメンバーとのつながりもたくさん持っています。

実際にCAPSから輩出された人材で活躍しているメンバーは多く、アルバイトから入って大規模ゲームのリーダーになった人も。CAPSは人材輩出組織になれるんじゃないかって思っているんです。


-すごく面白いですね!こういった目標があると、社員もモチベーション高くなりますね!


坪谷氏
:そうですよね。まだまだ足元で、できていないこともあるので、短期での効果的な改善はしっかり積み重ねていきます。

その上で、組織作りや人材育成に向けた中長期の目標を、リーダーたちが想いを持って掲げることがとても大切だと思っています。

今回のCAPSの事例のように、GUNSHIとして現場リーダーと同じ目線でとことんサポートして、メンバーがワクワクしながら成長できる環境をともにつくって行きたいと思います。

人事は、「届けるに足る本音」を磨いて持っておくべき


-WIZとして、各リーダー・組織をサポートする際に、意識していることはありますか?


坪谷氏
:「本音で話す」ですね。これが前提かつ極意だと思っています。

ただ、その時の本音の内容が浅いものだと「レベルが低いな」って言われてしまいますよね。だから本音をピカピカに磨くことが重要だと思います。

質の高い本音を持ち、それを伝わるように語ることができると理想的ですね。


-「本音を磨く」っていいですね。


坪谷氏
:人事こそ、そこを求められるなと思っています。人事が上っ面で話していても、絶対にバレていると思います。

前の職場での経験なのですが、人事マネージャーをやっていた頃、経営で決まったことに自分はあまり納得いっていない、しかし現場に伝えないといけないということがありました。

どうにか説明したのですが、そういう時は、だいたいみんなわかってしまうんですね。「坪谷さん、それは本音じゃないよね」って言われてしまいました。

ルールなので従ってくれているようでも、実は全く心に届いてない。こういう場合は、どこかで廃れますし、不信感も生まれます。


-熱意って伝わりますよね。


坪谷氏
:人って、「相手の思いをしっかりと受け取りたい」ものだと思います。アカツキメンバーは特にそうです。そこをごまかされたりすると信頼が減っていきます。

本音をピカピカに磨く」ということと、「本音が伝わるようにまっすぐ届ける」この2つはいつも意識しています。まだまだ修行中で失敗することも多いのですが。

「人事の領域にも夜明けを」アカツキの事例を世の中に発信していきたい


-現在、WIZが抱えている課題は何かありますか?


坪谷氏
WIZメンバーの数ですね。今の体制ではサポートできる数に限度がある。

たとえば、現在アカツキにはリーダーやリーダー候補が何十人もいるのですが、GUNSHIとして支援できているのは、そのうち7人だけなんです。

支援できる範囲を広げたくて、もっとWIZの仲間を増やしたいという採用課題を抱えています。ですので、現在メンバー募集中です(笑)。

[アカツキWantedlyにてメンバー募集中]
現場にとことん向き合う人事企画(人材開発)担当をWanted!


-「人が足りない」のは、どこの企業でも本当によく聞きますね。


坪谷氏
:はい。アカツキという組織の成長スピードに比べると、WIZの成長スピードには我ながら物足りなさを感じています。

今支援しているリーダーたちからも嬉しいことに、「すごくいい関わり方をしてくれている。自分たちだけではもったいないから、もっと範囲を広げて欲しい」という声をもらっており、もっと効果的に支援をおこなえるように、増員していきたいと思っています。


-最後に、坪谷さんの今後の展望や想いなどあれば、お伺いしたいです。


坪谷氏
:Googleの『How Google Works』のように、アカツキで取り組んでいる人材マネジメントの好事例を、どんどん世の中に発信していきたいです。

世の中の人事に「これ、いいやり方だ」「アカツキの取り組みが参考になった」と感じてもらえるような事例を生み出したい。世の中が良くなっていくことに貢献したい、と考えています。

今できていることは、まだほんの一部分にしか過ぎません。これからも人事にとって役に立てるような取り組みをどんどんつくっていきたいですね。

アカツキは「世界に夜明けを」という意味で、日本語の「暁」からとっています。私たちWIZも、人材マネジメントの領域で、世の中に夜明けをもたらしたいと本気で思っています。

 

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