「意味のあるフリーアドレス」にするために必要な考え方♯コクヨが提案する働き方改革

個人や組織の創造性や生産性の向上において、働きやすいオフィス環境は重要な要素の一つ。コクヨでは、単なるオフィスの改善のみならず、さまざまな働き方改革に取り組んでおり、働き方改革の領域における各分野のパートナー企業とも連携し、複合化する働き方の課題を解決しています。「働き方のプロであるコクヨ」が考える「働き方改革」とはどのようなものか、シリーズでご紹介していきます。

こんにちは、HR NOTE編集部 働き方改革プロデューサーの井上です。

今回は、社員が固定席を持たないオフィススタイル「フリーアドレス」について、コクヨの取り組みや実例をご紹介します。

フリーアドレスのメリット・デメリット、導入・運用の際のポイント、そもそもなぜ導入に至るのかなど、世間に先駆けてフリーアドレスを実施してきたコクヨのノウハウが満載です!

是非、ご覧ください。

太田 裕也 | コクヨ株式会社 ワークスタイルコンサルタント/プロジェクトディレクター

「働く場」としてのオフィス、「学ぶ場」としての教育施設、「暮らす場」としてのホテル等、多様な場のコンセプトワークや空間デザインを手掛けた。その後、「意識・行動・空間」を多面的にデザインするコンサルタントとして、数々の企業の戦略的ワークスタイルの実現を支援。2012年に全面リニューアルを行った自社「NEXT OFFICE」においては、「深輪・広縁」をコンセプトに、市場変化に対応し「違い」を生み出す、新しい働き方をデザインした。

フリーアドレスを導入するメリットと陥りがちなデメリットとは?

フリーアドレス導入の3つのメリット


-「フリーアドレス」という単語をよく耳にしますが、実際に多くの企業が導入に向けて動いているのでしょうか?


太田氏
:数年前と比べると、日本企業におけるフリーアドレスの導入は、確実に増えてきています。当社調べで、2008年の導入率は約16%だったのですが、2017年では30%を超えてきています。


-ここ10年近くで、約2倍になっているのですね。フリーアドレス導入のメリットはどのようなものでしょうか?

 

太田氏大別して3つのメリットがあります。

1、「スペース効率の向上(スペースコストの削減)」

これはファシリティマネジメントの観点で、定量効果が最も明快です。

フリーアドレスは、「全社員数分の席を用意しないこと」を前提とするケースが大半です。

在席率の実態に合わせ総席数を最適化することで、執務席以外の豊かなスペース(コミュニケーションエリアなど)を生み出すことができます。

つまり、限られた床を有効活用することができるということです。

2、「コミュニケーションの活性化」

固定席の場合、情報交換や相談をする相手が近くの席の人に偏りやすいという傾向がありますが、フリーアドレスにすることで、部門やグループを越えたコミュニケーションが活性化され、個々が抱える課題を解決する相手が増えます。

つまり、新たな気付きを得ながら解決の質やスピードを上げることができるのです。

3、「主体的行動力の強化」

たとえば、毎日同じ席で仕事をすることがルーティーンになっていると、「今おこなうべき(あるいはおこないたい)ことをするために、この場所を選択しよう」という思考にはなりません。

固定席があると、集中作業も、コミュニケーションも、休憩も、全てある程度自席でおこなえてしまいますからね。

ところがフリーアドレスになると、「そもそも自分がどの席に座るか」という選択から始まります。たとえば、「集中的に資料を作りたいから囲われ感のあるブースのような場所を選ぶ」「プロジェクトメンバーとのやり取りが多いから隣の席を選ぶ」といった感じです。

「自ら考え行動する(働く場を選ぶ)」という習慣が身につくため、一人ひとりの主体性や自律性を高めることができるのです。


-「社員の在席率」はどのように計測するのですか?


太田氏
:お客様へフリーアドレスを推奨する前には、必ず「在席率調査」をおこなわせていただいています。

お客様のオフィス内を調査員が巡回し、「在席/離席/退席」という3つの項目でチェックをかけていきます。時間や曜日による特徴も押さえたいので、朝から晩まで、月曜から金曜まで、実施します。

そうすると、「ミニマム/アベレージ/ピーク」の「在席/離席/退席」が全て明らかになるので、「席数を7割に削減しても大丈夫」など、傾向が見えてくるんです。

当然、部門やグループごとに色が出てくるケースが大半です。「スタッフ系の在席率は90%だが、営業系の在席率は50%しかない」というところまで見ていきます。

ですので、「フリーアドレスが適しているか、適していないか」の判断は、在席率調査の結果も加味しておこないます。

導入後のよくある課題は、「どこに誰がいるのかわからなくなる」こと


-逆に、フリーアドレス導入によるデメリットのようなものはありますか?


太田氏
:当然ながらフリーアドレスは万能薬ではありませんので、扱い方を誤ると効果を得ることができません。

よくある課題としては、主にマネジャーから「誰がどこにいるか、わからなくなった」という声が出ることです。その結果どうなるかというと、上司が部下に対して「ここで仕事しろ」と言ってしまうんです。

部下は「自由に場所を選んで働きたい」と思っているにもかかわらず、上司が昔ながらのマネジメントスタイルから抜け出せないので「常に自分の近くで仕事しろ」と。これでは、フリーアドレスの効果が得られません。

イコールではありませんが、似たような事例はコクヨも過去に経験しているんです。

レポートラインをメインにした業務特性がある部門にもフリーアドレスを採用したところ、ライン内での報連相が希薄になり業務効率の低下が起こってしまいました。

そういった実体験もあり、現在は、完全なるフリーアドレスではない「グループアドレス」「チームアドレス」という形態を採用している拠点もあります。


-「グループアドレス」「チームアドレス」とは、どのような形態ですか?


太田氏
:オフィス内でグループやチームの「領域」を決めて、そのなかで自由に席を選べるという形態です。

つまり、その「領域」の中で、在席率の実態に合わせ総席数を最適化するということです。(「10人のグループだが8席しか設けない」など)

 

-たしかに、完全にフリーにしてしまうよりも緩やかに始める、スモールスタートで取組んだほうがスムーズですね。

 

太田氏:そうですね。先程例示したような業務特性上の課題があったり、どうしても「自分の場所がなくなる」「誰がどこにいるかわからない」といった不安を拭い切れない場合は、「グループアドレス」「チームアドレス」から始めた方がソフトランディングできると思います。


-そもそも、コクヨはいつからフリーアドレスを導入しているのですか?


太田氏
:1997年からですね。当時の霞が関オフィスに大規模なフリーアドレスを導入しました

ですので、私は入社してからほぼずっとフリーアドレスです。13年間、自席に縛られて働いた記憶はありません。


-13年間、自分の席がないって不思議な感覚ですね。


太田氏
:コクヨは、世の中に先駆けて「積極的に試す会社」なんですよ。

まず、自分たちのオフィスで試して、失敗から解決策を見出します。そして、その経験・ノウハウをもとにお客様へサービスを提供しています。

導入前には「その“目的”について全社で目線を合わせること」が不可欠

-フリーアドレス導入の前に、気を付けておくべきことはありますか?


太田氏
:たとえば、「フリーアドレスを導入します」となると、「自分の席がなくなってしまう」と、ネガティブな思考で捉える社員が最初は必ず出てきますが、

自分の席がなくなるのではなく、「席をみんなとシェアする」「気分や用途に応じて、働く場所を選べる」というポジティブな思考に切り替えることが大切です。

単なる言葉の裏返しに聞こえるかもしれませんが、実はこの差は非常に大きいです。思考の癖を変えていくことが不可欠ですね。


-思考の癖はどのように変えていくのですか?


太田氏
:社員向けにセミナーやワークショップを実施し、目線を合わせていくケースが多いですね。

たとえば、「部下の居場所がわからなくなる」という不安の声があったとします。ところが、経営視点でのフリーアドレス導入の意図は、「コモディティ化から脱する新しい価値を生むために、部門内のコミュニケーションよりも、部門を超えたコミュニケーションを増やしたい」ということかもしれませんよね。

まずは、そのような「目的」から理解してもらうように動いていきます。「フリーアドレス」はあくまでも「目的」ではなく「手段」のひとつだということです。

「目的」についてディスカッションをおこないながら、個々が感じている懸念や不安を丁寧に取り払ってあげることが、最初は重要です。

フリーアドレスに慣れていくことで、働き方が変わっていく


-他社にはどのような流れで、フリーアドレス導入の支援をされていくのですか?


太田氏
:「働き方(ワークスタイル)」を定めるプロセスのなかで、フリーアドレスという手段が適していればお勧めしますし、適していなければお勧めしません。


-「適している、適していない」の判断基準は、先程の「在席率」ですか?


太田氏
:それだけではありませんが、「在席率」も大切な要素の1つではありますね。在席率が非常に高い場合で「フリーアドレスを実施しても、メリットがあまり出ない」というのであれば、お勧めはしません。

ただ、在席率が高くても、「今後はコミュニケーションのスタイルを変革したい」という要望がある場合は別です。

「もっと部門を超えてこれまでにない新しい価値を生み出したい」という明確な目的があれば、「在席率が高くてもフリーアドレスにすべき」と導く場合もあります。


-フリーアドレスを導入した企業からは、どのような反響があるのですか?


太田氏
:先程「フリーアドレスの3つのメリット」をお伝えしましたが「コミュニケーションの活性化」に対する感激の声が最も多いと感じます。

今まで話せてなかった人と話せるようになった」という声は多くありますね。

また、昨今は課題が複雑化していますので、部門横断型のプロジェクトが非常に増えてきています。そのような状況の中で、「プロジェクトメンバー同士で集まりやすくなった」という声も増えています。

わざわざ会議室を探して予約しなくても、空いている席に固まって座ればすぐに打ち合わせができますからね。


-空き会議室ありきで、スケジュールが組まれることもなくなって効率的ですね。


太田氏
:圧倒的にプラスの声のほうが多いですね。

そうやって徐々にみなさんフリーアドレスに慣れていきますし、「もう二度と固定席には戻りたくない」という声もよく耳にします。

運用中は現場を見ながら、人間の心理と向き合いながら、ルールをチューニングすることが大事


-逆に、「フリーアドレスがうまく運用にのらない」ときは、どのような要因があるのでしょうか?


太田氏
:よくある失敗例はもちろん「固定席化」なのですが、固定席化の原因の多くは「誰かがいつも同じ席に座る」「席に荷物を置いたまま退社する」などが発端となります。

たとえば、ある人が毎日同じ席に座って仕事をしていたら、その席に“その人の色”がついてしまいます。

その人が席にいなくても、「あの人がいつも座っている席だから自分が座っちゃマズいかな」となり、そういった雰囲気が周囲にも連鎖していってしまうんです。


-そうならないための施策などはあるのですか?


太田氏
:立派な「運用マニュアル」とまでいかなくても、少なくとも「運用ルール」をつくることですね。

最も簡単な例で言うと、「クリアデスク」。つまり、「みんなの席なのできれいにしてから席を移動しましょう」と、ルール化することです。

前に座っていた人が円形のコーヒーのシミ跡を残したまま退席していたとしたら、そこには座りたくないじゃないですか。また、我が城のように荷物を置いたまま退社した人がいたら、当然ながら他の人は使えませんよね。

そういった行動が常態化してしまう前に、ルールをつくり浸透促進をおこなうことが重要です。


-「同じ席に座らないように」というルールもつくったりしますか?


太田氏
:それもありますね。ただ、ルールをつくることが大切である一方で、「ある程度ルールを緩和することも大切」だと思っています。

たとえば、人間は「テリトリー意識」や「真ん中よりも端を好む心理」があるじゃないですか。ですので、「できる限り同じ席(そして端)に座っていたい」という気持ちもあると思います。私だってそうです。

そんな心理を無視して、たとえば「2時間ごとに、席を移動しましょう」というルールにしてしまうと、誰もがストレスを感じますよね。


-たしかに、逆に仕事に集中できなくなりますね。


太田氏
:たとえば、「少なくとも前日とは違う席に座りましょう」というルールであれば、「昨日はこの席に座ったから、今日は違う席に座ろうかな」くらいの気持ちにはなれるので、安定運用が叶うと思います。

現場を見ながら、そして人間の心理と向き合いながら、ルールをチューニングしていくことが重要ですね。

 

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