「むやみに新たな一歩を踏み出そうというのは無責任」中川パラダイスが考える仕事との向き合い方

よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属のお笑いコンビ、ウーマンラッシュアワーの中川パラダイスさんと、複数の企業で働いているパラレルワーカーの松嶋さんとの対談内容をご紹介。

中川さんの以下ツイートをきっかけに松嶋さんがコンタクトを取り、対談が実現。

今回の対談のテーマは「お互いの仕事に対する価値観」について。仕事のバックグラウンドが全く異なる二人が考える「働き方」とは?ぜひ、ご一読いただけますと幸いです。

中川パラダイス | ウーマンラッシュアワー(よしもとクリエイティブ・エージェンシー)

1981年生まれ、大阪府出身。大阪NSC23期入学し、2008年に村本大輔とウーマンラッシュアワーを結成。2011年にABCお笑い新人グランプリ最優秀新人賞、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など、数多くの賞レースで結果を残し、2013年12月THE MANZAIで優勝を果たす。

松嶋 活智 | リスナーズ株式会社経営企画、yentaコミュニティマネージャー、その他多数のコミュニティを主催

1998年化学系部品メーカーにて、潤滑剤の研究開発を担当。その後、コールセンターのアウトソース企業に入社、センター長、アカウントマネージャーを歴任。外資系 IT 企業に転職後、アウトソースマネジメント、マーケティング担当などに携わる。2018年9月からyentaコミュニティマネージャー、10月からリスナーズ株式会社でパラレルワーク。個人事業主としてはコーポレートアイデンティティなど専門。

相方・村本さんの留学から始まったこの企画

松嶋今回、なぜtwitter上で「緊急企画」を呼びかけたのか、その経緯から伺ってよろしいでしょうか。


中川
パラダイスさん (以下、中川):テレビの仕事もありますが、基本漫才師なんで舞台に立つほうが多いんです。で、相方の村本が語学留学のため渡米するという話になって、いなくなったらスケジュールが真っ白になっちゃうんです。

なので、「村本がいない2か月間限定で3,000円以上であればなんでもやろう」と思ったんです。


松嶋
今回の企画の発端になっている村本さんですが、個人的には遠慮なしにガンガンくる手厳しい対応が多い印象があります。


中川
厳しいというか、お笑いに対してすごく真面目ですよね。ネタに関していいもんつくりたいっていうのがあるから、そこに対する厳しさはあるんじゃないですか。

なので、厳しいといっても理不尽な厳しさじゃなくて、理由があるんですよ。

たとえば、村本が思うのと違うタイミングでツッコんだ場合にちゃんと説明があるんですよ。「俺はまだ話の途中やったのに、その後の展開も俺は考えてたのにそこでツッコんで終わらしたから、俺が言いたいことが言われへんかった」みたいな。

感情が荒ぶって、「お前、俺のボケ終わらすなよ、ホンマ。お前は俺のネタのおかげで飯食えてんねやから」っていう言い方をするときもありますよ。それは多分、よっぽど悔しかったんやと思うんですよ。

ただ、10年ぐらいやってきてるんで、何を言ったら相手が傷付くとか、何を言ったら怒るっていうのはある程度わかってきたんですよ。だから年々付き合いやすくはなっていると思いますね。

まあ、向こうは言いたいこと言ってくるけど、こっちは3割ぐらい聞いといて7割は聞かずに捨てているときもありますからね。


松嶋
それ、結構大事な考えですよね。


中川
そうですよ。全部聞いちゃうと、「全部せなあかん」となって、自分が持ってる力以上のものを発揮せなあかん。できないじゃないですか。そうなると芸も縮こまったりするんで。

「じゃあ今回はここの部分努力して、ここの部分はしゃあないな」って解釈ですね。聞く分は聞いて、聞かないとこは全く聞かへんみたいな。

だからよく言われますけどね。「お前、この前言ったのにまた忘れてるやん」とか。ただ僕が排除してるだけなんですけどね。僕の性格的に全部やろうと思うと無理なんで。芸が縮こまったりするんで、気をつけなあかんわってね。


松嶋
中川さんのおっしゃっていることって、お笑いだけじゃなくて会社にもあてはまりますよね。

上司や周囲からいろんなフィードバックを聞いて、それを全部やろうとするんですよ。でも、だんだんやることが多くなって活動が制限されて、すごくつまらない仕事になってしまう。


中川
縮こまってしまう部分もあるでしょうね。


松嶋
その良い意味での力の抜き方って大事ですよね。ただ、会社に所属していると意外と力の抜き方が難しい。


中川
難しいんやと思いますよ。お笑いは「面白かったらOK」という世界なので結構自由ですから。たとえば先輩をいじって失礼なことを言おうが、ウケればいいんです。

普通の会社じゃ信じられないことですけど、吉本やったら笑いに変われば先輩が「ありがとうな」って言ってくれるんですよ。こんな世界はお笑いぐらいしかないんかなって思います。

新しいコミュニティに入っていくおもしろさ

松嶋お笑い芸人って、短期プロジェクトのように、毎回仕事で関わるメンバーが異なって、それこそ吉本以外のさまざまなジャンルの方々とも共演するじゃないですか。中川さんはそういう仕事のやり方ってやりやすいですか?やりにくいですか?


中川
年々やりやすくはなっていってるんじゃないですかね。


松嶋
もともとはやりづらかったんですか?


中川
僕らはまずオーディションがあって、劇場に出れる権利を勝ち得るわけです。劇場の中には先輩後輩がという関係がありますが、ここはまだ芸人だけのコミュニティなんです。

でも年々ずっとやっていったらテレビの仕事があったり、営業の仕事があったりで、どんどん吉本だけじゃない外部の方々と触れ合っていくことになります。で、やっぱり芸人だけの世界とそれ以外の世界は違うわけです。

芸人同士やったらちょっとぐらい気を抜いてても回りがツッコんでくれるし、盛り上げてくれるし、ちゃんとでけへんかったらでけへんかったなりの「ちゃんとせーよ」っていう笑いに変えてくれたりするんですよ。

でも外部の人と仕事していくと、芸人だけのコミュニティのやり方だと通用しない。普通にやっても盛り上がらないんです。

1来たことに対して3、4と返していったり、状況を見て突っ込んでいったり、そういう状況判断や気配りが増えていくから最初は戸惑うんですよ。


松嶋
多分、ひとつだけのコミュニティのほうが楽なんですよね。同じ会社で同じ仕事して「こうやったらこう返ってくるな」みたいなパターンができますから。

でも、コミュニティの外に出ると当然、自分の価値は何で、相手に何を提供できるか、みたいなことを意識して、新しいことを学んでいかなきゃいけません。そこは最初はすごく大変ですよね。ただ、逆に面白みもあると思うんです。


中川
単純に今までやってきたことと違う仕事にチャレンジできるわけですからね。

たとえば劇場で漫才したり、「誰が一番鈍感なリアクションでしょう」みたいなコーナーをやったりしていますと。一方で、今回のような仕事をテーマにした取材を受けるわけやないですか。

そうなってきたら、今までコーナーでやってきたリアクション芸とかじゃなくて、仕事に対する価値観や相手の仕事のスタンスなど、仕事に関することに対して自分の今までやってきたことをつなげて会話を広げていく必要があります。

そういうことは昔は全然できへんかった。自分の中にあるエピソードだけをただひたすらに話していくだけでした。

今は何となく「こういうことを言うてはる」「求めてはるんやろな」とか、人との会話がどんどん増えてきた、慣れてきた感があるんで、自分で勝手につなげてしゃべったりできるようになりましたね。


松嶋
仕事の幅が広がりますよね。

仕事はプロジェクト化し、会社はコミュニティ化していく。芸能界はどうか

松嶋僕は、仕事がどんどんプロジェクト化し、会社はコミュニティ化していくと考えていて、芸能界はすでにそういった環境だと思うんですよね。

一方で、中川さんはよしもとクリエイティブ・エージェンシーという会社に所属してるじゃないですか。その帰属意識ってどれぐらいあるものなんですか?


中川
どうなんですかね。基本的にみんな個人事業主のような感覚だと思いますよ。税金の確定申告も自分でするし、各々がみんな社長なんですよね。

言うてしまえば、村本っていう社長と中川っていう社長が一緒に業務提携してるのがウーマンラッシュアワーですね。


松嶋
ある意味ウーマンラッシュアワー自体がもうプロジェクトなんですね。


中川
 そうです。だからもし、二人が合わへんかったら解散して、違う人とコンビを組んだり、一人でやる選択肢もある。基本そういう考え方ですね。

吉本は基本的には仕事つなげてもらえる、エージェントのような立ち位置ですかね。


松嶋
なるほど、仕事を持って来てくれるのが吉本。


中川
だから所属してるっていう感覚はあまりないですね。


松嶋
一方で、仕事がプロジェクト化、会社がコミュニティ化となると、どうやって仕事を選ぶのか、何をやればいいのかと、結構悩む方がすごく多いみたいです。


中川
確かに、そらそうでしょうね。


松嶋
僕もそういう働き方になっていますが、そこで感じているのは、とりあえずやってみることかなと。やってみて楽しかったらやれば良いんです。

その時に一生懸命にできるものであれば、その後の結果も割と良くなることのほうが多かったりするんです。ただ、難しいなと感じるのが、そのことをうまく説明ができないんですよね。


中川
説明を求めてくる人って結果を知りたい人やから、「いまやってることって仕事につながるんですか?」と聞いてくると思うんです。でも、100%つながるとは言いづらいですよね。

そこで「楽しかったらええやん」と言っちゃうと、そういう人は「いえ、楽しいからじゃなくて仕事につなげたいんです」と、話の論点が全然違うから噛み合わない。


松嶋
個人的には、「楽しい」で良いと思ってるんですよね。楽しく自分ができることをやっていくことが仕事になるような気がしています。


中川
僕の場合は、この2ヶ月チャレンジ自体に関しては、「楽しい」は後からついてきました。「楽しけりゃいいやん」じゃなくて「結果楽しかった」。

最初は、とにかくいっぱい仕事して、とにかくスケジュールが空いた期間を埋めたいという、ただそれだけで、報酬もそこまで見返りを求めていたわけじゃないです。

ただ、やってみた結果、意外と楽しかった。しんどい企画もあるけど、「あとでその話をしたらウケるやん」とか思えるようになって。

前回のチャレンジ企画は、バイトをしてたんです。その時も、「しんどー」「こんなこともせなあかんのや」と思う部分もあったし、「意外とバイト向いてるかも」「10年ぐらいやってなかったけど、めっちゃ仕事できるやん僕」って気づかされたりする部分もあったんです。

でも、チャレンジ企画が大失敗に終わる可能性もあります。性格的に向いてない、やっぱりお金が欲しくなったけど、お金が付いてこーへんてなったら、僕の中では「この企画はうまくいかなかったな」ってなります。

そしたら、「じゃあ次また新しい企画を考えなあかんな」って、また違う展開になるだけです。やってみた結果、そこからどうしていくかだと思います。

新しいチャレンジは消費カロリーが高いけど、プラスになる

松嶋仕事をして稼いで食べていく必要がありますが、とはいえ全くやりたくない仕事をするのは嫌ではないですか?


中川
僕はとにかくいろんなジャンルの違う仕事をたくさんするほうが楽しいんです。だからチャレンジ企画の満足度は高いです。

いろんな仕事、いろんな種類の依頼を受けたい。もちろん言われたことを一生懸命頑張る。いろんなことやったほうが楽しくないですか。


松嶋
僕もそう思いますが、一方で楽なほうを選んでしまう人もいます。毎日同じ仕事のほうがつまらないとしても楽じゃないですか。

でも楽な仕事だけをしていても、5年後に「面白い仕事をしたいと」なっても、急にはできない。だからさまざまな経験を積むことは大事だと思います。


中川
僕はそっちのほうが自分が楽しいので、あんまり深く考えてないですけど、いろんな仕事やったらそんだけの分、自分の中で経験が積めるし、話のネタにもなりますよね。

例えば、自分のトークライブやテレビ番組に出た時に「2かヶ月チャレンジって企画やってたんです」って話をして、「どんな面白い仕事あった?」って聞かれて、話が広がっていくじゃないですか。

そこからまた別の仕事につながったり、新しいチャレンジをすることでどんどん広がっていきますよね。


松嶋
新しいことをやったほうが何かが身に着く可能性が高い。


中川
新しいことをやる時の第一歩って、すごく消費カロリー高いなとは感じます。でもやってみたら意外と自分にとってプラスになることが多いと思うんですよね。

中川さんが考える仕事との付き合い方

松嶋新しいことをやるにあたって、一歩を踏み出したくても踏み出せない人もいると思うのですが、その方に対して何かアドバイスをいただけないでしょうか。


中川
そもそも、一歩を踏み出していないという方は、自分で納得してる部分もあると思うんです。結果として、踏み出されへんってことは今の仕事でそれなりに満足してやってるんじゃないですか。

また、「踏み出すことができない」という自分の性格をわかったうえでそれを了承して働いている方もいるかもしれないじゃないですか。

新しいことに一歩踏み出して、新たな経験や価値観が生まれて良くなっていくからとにかく踏み出してくださいって言っちゃうのは無責任やと思うんすよ。

なので結局、働くという観点において僕が言いたいのは、仕事は大変でしんどい部分もあると思いますが、できる限り仕事以外の部分でノンストレスにしていくことが大切じゃないかなと。

家に帰って仕事してないけど頭抱えて「はー、どうしよ」「明日の仕事しんどいなー」とか、仕事終わったのに家でも仕事のことを考えるのは、すごくストレスがたまると思うんです。

家ではもう仕事から頭を切り離して、酒飲んだら忘れられる人やったら酒飲んだらいいし、テレビ見て自分の好きなアイドル追いかけて忘れられるんやったら忘れたらいいし、友だちに愚痴を聞いてもらってもいいし、ひとりでぼーっとしててもいいし、寝てストレス発散できるんやったらそうすればいいかなってくらいですね。


松嶋
僕は今、前向きに仕事ができていて、そもそも仕事とプライベートあんまり区別がないんですけど、プライベートにも仕事が覆いかぶさってきて、ずっとストレスを感じている人は多いと思います。


中川
そうですよね。一方で、僕は仕事のストレスを感じにくい人って、ある意味得でもあるんすけど鈍感やとも思ってるんですよ。

仕事のストレスを感じたり、プライベートまで仕事のことを考える人って、繊細やったり真面目やったりするんですよ。

芸人って繊細な人が多いんですよ。何で多いかっていったら、相手がこう言ったら喜ぶとか、相手がこう言ったら怒るとか、相手がこう言ったら悲しむっていうことをわかってて、ちゃんと考えてるからなんです。

それがネタにも反映されるし、人を楽しませることができる人って繊細なんです。

僕は「自分が楽しかったらええやん」ってタイプの人間なんで、わりと鈍感なんです。でもそれって知らず知らずのうちに人を傷つけてることも多々あるんですよ。


松嶋
ストレスを感じやすい・感じにくいは、良し悪しありますね。


中川
良し悪しありますよ。でも鈍感やからこそ、忖度なく相手のことを考えずにしゃべった結果、向こうの心が動かされたりするっていうこともあります。

繊細でナイーブな人は、そんだけ人の気持ちの痛みがわかったりするから、別にそれに対してマイナスな感情を抱くこともないし、なんやったら、「俺は人の気持がわかる真っ当な人間なんや」って思ったほうが楽になるからええなって思いますね。

僕は本当に真面目じゃないんで、真面目なのも大変やろなと思いますけどね。


松嶋
それは良いアドバイスですね。でも、真面目な人にとって、「仕事を忘れろ」っていうのも意外と難しいのかもしれないですね。


中川
だから仕事以外のところは、好きなことをしたらええやんって思います。

家に帰って、熱いお風呂でゆっくりしてもいいし、今まで楽しかったことを思い出すでもいいと思うし、ストレスを発散する方法は各々、絶対あると思うんですよ。

「はい、楽しかった。じゃあ明日頑張ろう!」って、次の日のしんどいことに立ち向かう活力みたいなものがちょっとでも出ればいいじゃないですか。

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