全米注目のザッポスに行ってみたら予想以上だった|顧客・社員に愛されるネット靴店の「企業文化」への徹底したこだわり

こんにちは。HR NOTE編集長の根本です。

みなさんは、アメリカのラスベガスにある、靴のネット通販会社「Zappos(ザッポス)」という企業をご存じでしょうか?

ザッポスは、カスタマーサービスの“神対応”が大きな話題を生んでおり、他社が真似出来ないような独自の企業文化を築いていることでも良く知られている企業です。

また、「Amazonがどうしても欲しかった企業」として、約800億円でAmazonに買収されたことでさらに有名になりました。その時も「Amazonが屈服した企業」「Amazonを震撼させた企業」などと言われています。

今や「全米のビジネスマンで知らない人はいない」というくらい、注目されている企業がザッポスです。

実は先日、ラスベガスに行く機会をいただき、現地にて『ザッポスの奇跡/廣済堂出版』の著者 石塚しのぶさんが主催する、「ザッポスの研修・見学ツアー」に参加。ザッポスという会社のカルチャーやその仕組みについて勉強してきました。

では、そんなザッポスは具体的に何がスゴいのか。そこまで注目される理由はどこにあるのか。

今回、現地ツアーで学んだこと・感じたことを記事にしてまとめました。

大きな学びが満載でした!是非ご一読いただけると幸いです。

“数多くの逸話”を残す企業、「ザッポス」とは?

まずは、ザッポスとはどのような会社なのか。その会社概要をご紹介します。

ザッポスの会社概要

【Zappos.com, Inc 概要】

  • CEO:トニー・シェイ
  • 業態:靴を中心としたECサイトの運営
  • 従業員数:約1,500人
  • 歴史
    1999年:サンフランシスコで創業
    2004年:本社をラスベガスに移転
    2008年:創業から10年足らずで売上10億ドル(1,000億円)に到達
    2009年:フォーチュン誌「最も働きがいのある企業100社」にランクイン
    2009年:約9億ドルでAmazonに買収、Amazon傘下に
    ※しかし、自社の文化を維持したまま独立経営をおこなっている
    2011年:フォーチュン誌「最も働きがいのある企業100社」で6位にランクイン。初のTOP10入り
    2013年:ラスベガスのダウンタウンに本社を移転
    2014年:ホラクラシーの導入
  • 新規顧客獲得の43%がクチコミ
  • 顧客のリピート率75%

 

上記だけを見てもすごい経歴ですね・・・。

ちなみに、ザッポスはラスベガスのダウンタウンというところにあり、2013年に本社を移転していますが、もともとは市庁舎だった建物をそのまま活用しています。

上記写真は、ザッポスの正面入り口。目に入るのは「#VAGAS STRONG」という文字。

この文字には、2017年10月に起きたラスベガスのホテルでの銃乱射事件を受け、「このような悲しい事件に負けずに団結して立ち向かおう!」という想いが込められています。

ちなみにザッポスは、銃撃事件で被害に遭われたすべての遺族の方々に代わって、全員分のお葬式代を全額負担したとのこと。

 

こちらがロビーのエントランス。中に入るとこのような感じです。

ザッポスのグッズが買えるショップもあります。Tシャツ、タンブラー、ペン、ノート、シールなど、豊富な品ぞろえ。私も、このツアーを通してすっかりザッポスのファンになってしまい、大量にお土産を購入(笑)。

 

では、ここからさらに深掘りしてザッポスについてご紹介していきたいと思います。

「ネットで靴を売る」ことを可能にした常識破りの販売戦略

ザッポスは靴のインターネット販売を中心にビジネスを展開していますが、みなさんが靴を買うときを想像してください。ほとんどの方は店頭に行って実際に試着をしてから購入するのではないでしょうか。

そう考えたときに「靴をネットで購入する」ということには、大きなためらいがあると思います。しかし、ザッポスはその心理ハードを下げるために、インターネットの黎明期では考えられなかった「ネット業界の常識」を覆す販売戦略を打ち出します。

  • 送料・返品無料
  • 返品は何回でもOK
    購入から365日以内であれば返品可能。「顧客の靴の最小サイズと最大サイズ」を聞いて、一度に数種類を配送して試着してもらうこともある。
  • 基本的に翌日配送
    ほとんどの顧客に発注の翌日に商品が届くようになっている。※翌日配送をコミットして、明言しているわけではないが、可能な限り翌日に顧客に届くようにしている。
  • 24時間365日対応の顧客対応サービス

今では、靴のネット通販ではこれらの対応は「当たり前」になりつつありますが、それはザッポスがきっかけとなって広まっていったとのこと。

なぜこのようなサービスを提供するようになったのか。その根底には「顧客に街中のショッピングと同様に気楽に買い物をしてほしい」という想いがあるためです。

 

靴を商品にしている会社だけあって、やはり社内の至るところに靴のオブジェが並んでいます。

規格外なコンタクトセンターが生み出す、数々の「感動創造ストーリー」

[写真はコンタクトセンターの社員が、実際に顧客に送っているメッセージカード]

 

また、「新規顧客獲得の43%がクチコミ」「顧客のリピート率75%」という数値が示すように、ザッポスには熱狂的なファンが多くいることでも有名です。

ではなぜ、そこまで多くのファンをつくることができるのか。それは「CLT(カスタマー・ロイヤルティ・チーム)」という名称の、カスタマーサービスをおこなうコンタクトセンターの「神対応」にあります。

これまでに、CLTの社員は数多くの“逸話”を生み出しており、その代表的なエピソードをいくつかご紹介します。

1、ある人気女性ブロガーが受けた感動対応

その女性は、病床の母親のために、ザッポスで何足か靴を購入しましたが、母親の病状が悪化して亡くなってしまいました。

母親の死後、諸々の片付けに忙殺されているうちに、ザッポスから靴の具合をたずねるEメールが届きます。

彼女はやっとの思いで以下のような旨を返信します。「母親が亡くなってしまったので靴を返品したい。ごたごたで返品し損ねていたが、必ず返品するので今しばらく待ってもらいたい」。

直ちにザッポスから、「宅配の集荷サービスを送りますからご心配なく」という返信がありました。

ザッポスでは返品時も送料は無料ですが、「購入者は集荷場まで靴を持っていかなければならない」という正規のポリシーがありました。しかし、今回は、そのポリシーを曲げて自宅への集荷を手配してくれたことに、女性は驚き、感謝しました。

しかし、話はそこで終わりません。翌日、彼女の玄関先には色鮮やかなお悔やみの花束と、ザッポスからのメッセージカードが届いたのです。

「感極まって、どっと涙がこぼれました。人の親切にはもとから弱い私ですが、今まで人様からしてもらったことの中で、これ以上に心を打たれたことを思い出せません。もし、ネットで靴を買うのだったら、ザッポスから買うことをお勧めします」

これが彼女のブログの締めくくりの言葉です。

【参照】ザッポスの奇跡:p18-19

2、「自社に在庫がない」そんなときはどうするのか?

ある顧客がラスベガスに旅行に行ったときのこと。お気に入りの靴を忘れてしまったため、ザッポスで同じ靴を購入しようとしました。その靴は以前、ザッポスから購入したものだったのです。

しかし、ザッポスでは品切れ。顧客は落胆してしまいます。そこで、コンタクトセンターの社員は顧客に待ってもらうようお願いし、最寄りの靴屋に片っ端から連絡。顧客が求めている靴を探し当てました。

そればかりでなく、その靴屋に出向いて自ら購入をし、顧客が滞在するホテルまで届けてくれたのです。

【参照】ザッポスの奇跡:p59-60

上記以外にも、

  • 靴のECショップだが、深夜にピザのデリバリーの注文がきても断らずに、近場で注文可能な店を探して、連絡先を教えてあげる
  • 自社に在庫がなければ、競合サイトを検索してそちらの商品を教えて勧める
  • コンタクトセンターでの最長通話記録は7時間半!

など、ザッポスではこのようなストーリーが日々生まれており、その結果、自社のファンが増え、クチコミで広がっていき、サービスの購入につながっています。

ザッポスは「たまたま靴を売っているにすぎないサービスカンパニー」である

そして驚くべきことに、このような感動を生み出す対応は、電話やチャットを受けるCLT(カスタマー・ロイヤルティ・チーム)の社員一人ひとりに権限委譲されています。

マニュアルやトークスクリプトは一切なく、顧客が喜ぶためならほとんど何をしてもいいとのこと。「靴を売る」ことは目標ではありません。自分が最適だと感じることを個々の判断で実施しているのです。

ザッポスの社員に「ザッポスは何の会社ですか?」とたずねると、「たまたま靴の販売業を営んでいるにすぎないサービスカンパニーです」と答えます。

ザッポスでは「靴」ではなく「サービス」、つまりは「顧客の感動体験」こそが売り物だといっています。

「顧客をハッピーにするために『自分』が必要だと判断するあらゆることを、『自分」の裁量で実行する権限が私たちには与えられています。それは世の中を良くする、意義ある仕事です」

【参照】ザッポスの奇跡:p28

「ザッポスに出会えたことが一番のハッピー」社員はザッポスが大好き!

そして、顧客のみならず、ザッポスで働く社員もザッポスのことが大好きで、誇りと愛着をもって働いています。

「ザッポスに出会えたことは、私のこれまでの出来事の中で一番ハッピーなこと。毎朝目覚めると、会社にいくのが楽しみで仕方ない。週末には月曜日が待ち遠しくてたまらないときもある」

【参照】ザッポスの奇跡:p35

これは、あるザッポス社員のコメントですが、ザッポスには同じようなことを感じている社員が数多く存在しています。

実際に、ザッポスの説明や社内を案内してくれた社員を見ていても、楽しそうに自社の話をしており「本当に会社が好きなんだな」という雰囲気が出ていました。

ザッポス社員はみんなが笑顔で活き活きと働いており、非常にエンゲージメントが高い水準にあります。その理由のひとつは、給与を超えた「働く意義」をもって業務に取り組めているからだと思います。

たとえば、コンタクトセンターの社員の仕事はただ単に電話に出てオーダーをとること、苦情を受けることではありません。彼らの仕事は「顧客に幸せを届けること」です。

利益ではなく、社会貢献などを目標とした働く意味・意義を持つことは、大きなやりがいや充足感につながります。

ザッポスは顧客の幸せを本気で考え実行していますし、実際にお話いただいた社員の方々も、その想いに心から共感し同じ志を持って働いているように感じました。

しかも、顧客を幸せにするために決められたルールはなく、自分の判断で動くことができる。そういった環境であれば、主体的にワクワクしながら働けるに違いありません。

ザッポス社員の仕事場はどうなっているのか?

そして、そんなザッポス社員が働いている実際の仕事場はどのようになっているのか。こちらは、ザッポスの社員が普段から仕事をしているデスクです。

ものすごくにぎやかなデスクが多く見られますが、座席はフリーアドレスではなく固定席となっています。フリーアドレスにしている会社が多い中、なぜ固定席なのか。

これは、自席にいることが多いカスタマーサービスという職種にもよりますが、一番の理由は、社員の個性を大事にするザッポスのカルチャーからきています。

自分の色を出して活き活きと仕事をしてもらうために、社員の服装や髪型は自由。さらに「デスクにも個性を出してOK」と固定席にしているのです。

ただし、半年~1年スパンで頻繁に席替えを実施しているとのこと。それは常に変化をもとめる社風でもあるため、「自分のテリトリーをつくらないようにする」という意図があります。

一見すると仕事をしている感がありませんね。

ザッポスはペットを連れて仕事することもOK。オフィスに普通に犬がいます。

「デスクの高さですら個性」ということで、デスクの高さも自由に調節することができるようになっています。

 

息抜きにボールのプールで遊ぶスペースもあります。

 

こちらは、「#zapposculture」と書かれた大きな水槽です。最近できたとのこと。

中に入ってみると、なんと休憩ルームとなっています。ザッポスでは昼寝を推奨していて、疲れたときはこの癒やしの空間で息抜きできます。

ザッポスが考えているのは、「どうやって生産性を高めるのか」「社員がどうやって幸せに働けるか」ということ。

社内をひとまわりすれば、いかに社員の方々がすごく活き活きと働いているのか、その雰囲気が伝わってきます。

ザッポスの福利厚生、社内制度も一部をご紹介

ザッポスでは福利厚生も充実。これは従業員の福利厚生をパッケージ化している表になります。

なんと、ザッポスは社員の医療費を100%カバーしているとのこと。これはアメリカではほとんどないとのこと。

実際に、フォーチュン誌「最も働きがいのある企業100社」の中でも、数社しか実践できていないことらしいです。

こちらは、社内通貨「ZOLLARS(ザラー)」。

これは、「dollars(ドル)」をもじって、ザッポスの頭文字であるZをつけてそのように呼んでいます。CEOのトニー・シェイがTWO ZOLLARS、トニーが大好きなアルパカがTEN ZOLLARSとなっています。

これは、「コア・バリュー」に沿って良い行動をとった社員に対し、従業員同士でボーナスを送り合う「ピアボーナス」の仕組みになっています。

社員は毎月50ドル分のボーナスを付与できる権利を持ち、良い行動をした社員に「ZOLLARS」をボーナスとして送ることができます。

そして、ZOLLARSがたまると、各アイテムと交換ができます。キーボード、マグカップ、リュック、トレーナー、、、、いろいろありますね。欲しい・・・(笑)。

 

こちらのプレートは勤続年数ごとに社員に付与されるものです。

これにより、誰がどのくらい働いているのかがわかります。長年働いている社員には、上記の「RICHARD」のように、名前入りの大きなスペシャルプレートをもらうことができます。

 

こちらは社員食堂になります。

社員食堂の奥にはトレーニングルーム。ここは通称「ヨガルーム」と言われており、フィットネスをおこなっているスペースです。

ザッポスのスゴさの秘密は「企業文化づくり」にある!

ここまで、ザッポスについていくつか説明をしてきましたが、なぜ、ザッポスはこのような会社をつくることができたのか。

それは、ザッポスがここまで注目をされる最大の理由でもあるのですが、すべては「企業文化づくり」にあります。

CEOのトニー・シェイは「ザッポスは企業文化を経営の中心に考えている」と言っており、「サービスを中核として企業文化を築いて育むことで、成果は後からついてくる」「企業文化=競争優位」になるというのです。

では、ザッポスはどのように企業文化を築いているのでしょうか。

ザッポスの大事な価値観「WOWサービスを生み出すこと」「PECを築くこと」

前述のような感動的ストーリーを生み出している、コンタクトセンターの社員はどのような考え・価値観を持って仕事をしているのでしょうか。それは以下2つです。

  • 顧客に「WOW(驚嘆)サービス提供すること
  • 顧客と「PEC(Personal and Emotional Connection)=パーソナルかつ感情的なつながり」を築くこと

ザッポスには顧客が「WOW(あっ)!」と驚き、感動する「WOWストーリー」が数多く存在します。

そのような、「WOWサービス」を生み出すために重要なのが、「PEC(パーソナルかつ感情的なつながり)」です。

「PEC」を築くためには、どんな会話を何時間してもOKです。その対応内容に決まりはありません。すべてが個々の判断で実施されていきます。

コンタクトセンターの社員は、常に顧客との「PEC」を築く機会を伺っています。

【ザッポスのコンタクトセンターの指標】

  • 他社:1日に何人のお客様を処理したのか?何分で処理したのか?

  • ザッポス:お客様の満足度。電話・チャット・メールへの対応の速さ。コンタクトセンターの離職率。対応時間は見ない。何時間でも話してもいい。最長は7時間36分。※なお、上記を含めいくつかの指標を数値で細かくデータ化しており、社員はその数値を意識して日々行動して、業務の質を高めているとのこと。

多くの企業は電話による顧客対応を「コストの浪費」ととらえてしまいますが、ザッポスではこういったカスタマーサービスを、「顧客と多くの接点が持てる、またとないブランディングの機会」だと考えています。

なお、コンタクトセンターからの売上比率を聞いてみると、やはりECサイトから直接購入する方が圧倒的に多く、その割合は少ないとのこと。

しかし、より深い感動体験につながるのは顧客との直接的なやりとりです。そのため、売上に関係なくコンタクトセンターは会社の中核のポジションとなっており、「より多くの方に電話をかけてきてもらいたい!」とお話されていました。

顧客とのやりとりの中で特に強い「PEC」を築くことができた際は、その顧客に対し、以下の写真のようなメッセージカードを送るとのこと。

ザッポスのコンタクトセンターでは、上記のようなメッセージカードを送ることが当たり前になっており、いつ、誰に、どんな内容で送るのかも、社員個々人の判断に委ねられています。

ちなみに、サッポスが有名になって以降、他社のコンタクトセンターのレベルがあがり、Airbnbの創設者も、会社設立の際にザッポスに研修にきたとのことです。

経営において「社員の感情」を考えることは非常に大事!

ザッポスのコンタクトセンターの社員は、「顧客に幸せを届ける、意義のある仕事だ」と、みんな笑顔で胸を張って業務に取り組んでいます。

「顧客に幸せを届ける」という仕事は、給料を超えた「働く意義」があるものです。その結果、エンゲージメントが高まり、会社が好きになり、前向きな姿勢で仕事をするようになります。

研修では、エンゲージメントの高い社員の割合について、アメリカでは平均が30%。優良企業で60%。ザッポスのようなスモールジャイアントと言われる「小さいけど偉大な企業」は70%以上になると言っていました。

エンゲージメントが倍になると生産性も倍になるとのこと。ちなみに、日本の平均は6%といわれています。

そして、エンゲージメントの高さには、当然ですが「会社が好きである」といった感情が絡んできます。

社員のエンゲージメントが高まると、顧客のために何ができるかを全力で考えるようになり、顧客に対して「WOW!」と感じてもらえる機会の創出につながります。感動した顧客はザッポスを好きになってくれ、ロイヤルカスタマーになり、クチコミでも広まっていき、結果として売上につながります。

このように、今まではビジネス戦略が中心でしたが、これからは従業員の感情も含めた組織戦略が重要になってきています。

ザッポスの「企業文化を核とした」経営戦略

自分の対応はトニー・シェイでもすると思います」とザッポス社員はみんなそう答えます。また、業務で迷ったら、「トニーだったらどうするか」と考えて行動するようにしているとのこと。

これは、経営者であるトニー・シェイの理念や価値観が社員に浸透・シンクロして業務に取り組めているといえると思います。

では、どのようにトニーの考えや価値観を理解してもらい、浸透させているのでしょうか。その戦略について紐解いていきたいと思います。

ザッポスの企業文化を支える「コア・バリュー」

企業文化とは、「企業で働く大多数の人が同じ価値観を持っていること」で、人によってサービスの質が大きく変わるのは、価値観の統一が形成ができていないということになります。

ザッポスでは「コア・バリュー」という自社の価値基準を設けており、社員が正しい意思決定をできるように導いてくれています。

特にザッポスのような社員個々の裁量権が大きい企業は、自分で決断することが多くなります。決断に迷ったときに「会社の存在意義や目指す方向性、大事にしているものは何か」と原点に立ち返って、正しい判断ができるようにしてくれているのが「コア・バリュー」です。

社訓やクレドと呼ぶ企業もあると思います。しかし、これらは掲げているものの、活用できていない企業がほとんどです。

アメリカでは、経営において企業文化に注目している企業が増えてきています。スタンフォード大学でも企業文化のつくり方に関する講義が数多くあるとのこと。

ザッポスが掲げる「10のコア・バリュー」は、社員の生き方そのものである

ザッポスの元CFO&COOであるアルフレッド・リンは、「すべてはコア・バリューから始まる」と言っており、「コア・バリュー」はザッポスの中核となる価値観です。

ザッポスでは10のコア・バリューを掲げています。

  • サービスを通して、WOWを届けよ
  • 変化を受け入れその原動力となれ
  • 楽しさとちょっと変わったことをクリエイトせよ
  • 間違いを恐れず、創造的で、オープン・マインドであれ
  • 成長と学びを追求せよ
  • コミュニケーションを通して、オープンで正直な人間関係を構築せよ
  • チーム・家族精神を育てよ
  • 限りあるところからより大きな成果を生み出せ
  • 情熱と強い意志を持て
  • 謙虚であれ

【参照】ザッポスの奇跡:p92-93

ザッポスでは、日々の意思決定はもちろん、採用・研修・評価・イベント・オフィス環境など、すべてが「コア・バリュー」にもとづいて決定されていきます。

さらに、これは勤務時間だけでなく、勤務外でも意識しているものになります。ザッポスにとって「コア・バリュー」はいつでもどこでも想起されるものであり、社員の「Way Of Life(生き方)」になっているのです。

そしてもちろん、経営者であるトニー・シェイも率先垂範して「コア・バリュー」を体現しています。たとえば、「社内で一番謙虚なのは誰か?」という質問をすると、「トニー・シェイだよ」という答えが多く出てくるとのこと。

戦略的企業文化の基本は「コア・バリュー」

なぜ、ザッポスのコンタクトセンターの社員はそこまで大きな裁量権を持つことが許されているのか。

それは、社員個々人が「コア・バリュー」を体得・体現しているからです。権限移譲を成功させるには、何よりも価値観の共有ができているかどうかが重要です。

また、価値観の共有ができると、ダイバーシティ・マネジメントも実現しやすくなります。

そして、「コア・バリュー」を社員が体得して、浸透していくことによって、「企業独自の文化」がつくられていきます。自社独自の良い文化ができると、社員の一体感が増し、エンゲージメントも高まり、会社のブランディングにもつながります。

さらに「誰をバスに乗せ、バスから下ろすべきなのか」、採用・研修・評価などの場面での判断基準にも役立っていきます。

そして、ザッポスがスゴいのは、「企業文化=競争優位」という仕組みの重要性を全社員が理解しているということです。「独自の良い企業文化があるからこそ、ザッポスの今がある」とみんなが感じています。

誰に聞いても「コア・バリュー」の重要性、企業文化の大切さについて同じようなことを語ります。全員がザッポスの良い文化を醸成しようと、会社のために動いています。

ザッポスの企業文化をつくる仕組み

「コア・バリュー」を軸に会社の仕組みをつくる

「コア・バリュー」はどのようにつくられるのか聞いてみたところ、まずは、トップの想いを「コア・バリュー」に落とし込むことが大前提とのこと。企業文化の土台をつくるのは会社のトップです。

そして、その内容を現場の社員が確認していき、ボトムアップの意見を拾い、すり合わせをしていきます。その際、社員が「コア・バリュー」を共感できるものなのか、体得できるのか、浸透できるのかなどを検討していくことが重要です。

「何を意味するのか?」「誰が読んでもわかるコア・バリューになっているか」そのようなことも考えていく必要があります。

「コア・バリュー」をつくるには、最低でも1~2年はかかるとのこと。作成して、テストをして、再度見直して、またテストをする。そのようなことを繰り返します。

そうやってできた「コア・バリュー」をもとに組織の仕組みをつくっていきます。たとえば、評価制度で考えてみます。

「コア・バリュー」に沿った行動と社員の評価が結びつかないと、当然、体得しようと思わないですし、浸透もすることはないでしょう。

また、企業文化は「説得」するものではなく「納得」するものだと言っていました。納得する環境をつくるためには、まずリーダーがコア・バリューを体得せねばなりません。

ザッポスが重要視する「コア・バリュー」採用

みなさんは、どのような観点から面接をされているでしょうか。ザッポスはスキルフィットももちろん見ますが、何よりも重要視しているのは、「カルチャーフィット」です。

「文化に合わない」と判断したのであれば、トニー・シェイが紹介してきた候補者でも採用はしません。それだけ、カルチャーフィットを大事にしています。

ザッポスの採用フローは以下のようになっているとのこと。(あくまでも一例です)

1、電話でのスクリーニング

2、動画インタビュー

3、本社ツアー

4、人事面接&現場のチーム面接

5、食事会など

ではどのように、カルチャーフィットを見極めているのでしょうか。いくつかその事例をご紹介します。

「コア・バリュー」に沿った面接ガイドの作成

「コア・バリュー」の基盤をつくった後、それぞれの「コア・バリュー」に沿った面接ガイドをつくっていきます。

たとえば、「チーム・家族精神を育てよ」という項目であれば、「社員と業務後に一緒にごはんを食べにいくことに抵抗はあるか?」といったような質問をしていきます。

現場社員とのフィット感を重視

また、採用には積極的に現場の社員を巻き込んでいき、働いている社員と候補者とのフィット感を見ていきます。

なぜなら、社員は「コア・バリュー」を体得しており、普段からそれに沿った行動をしているので、現場の温度感は非常に参考となる意見だからです。

経営陣・人事部の考えを共有・浸透させる

また、経営陣・人事部は、会社の考えを共有・浸透させるために常に動いています。地方拠点の採用も積極的に顔を出し、価値観のすり合わせをしていきます。

 

カルチャーフィットが弱い方を即戦力として採用した結果、「売上が伸びたけれど、社員満足度が低くなった」このようなことは多く見られます。

ザッポスの採用合格率は1%で、ハーバード大学の合格率である5%より低いそうです。

「コア・バリュー」に合わない人は、どんなにスキルがあっても絶対に採用しない。そこに対して妥協はしない。それがザッポスの採用方針です。

さらに、「採用されたけれど、文化に合わない」。そう判断された方には、2,000ドルの採用辞退ボーナスを提示して辞めてもらうこともおこなっています。そこまで企業文化を大事にしているのです。

このような姿勢を終始一貫して見せられると、社内で働く社員も「企業文化を本当に大事にしているんだな」と、より一層、文化の重要性を感じるかもしれませんね。

ザッポスは、社員・顧客・社会から「愛される企業」である

ここまで長きにわたり、ザッポスについてご紹介させていただきました。

トニー・シェイは、「人の幸せの追求がビジネスの成功の鍵だ」と言っています。

社内にいる「社員」という顧客を満足させられないと、「社外の顧客」も満足させることはできない。社内外の顧客の幸せをつなげるために、ザッポスの企業文化があります。

自分の会社を良くすること。社員にワクワクして働いてもらうことに大きな投資をすることが重要な時代になってきています。ただし、それらの施策はすべて「コア・バリュー」に結びつけることが必須条件です。

もちろん、他社がザッポスのような企業文化を真似てつくることはできないと思います。それぞれの企業のミッション・ビジョンは異なってくるためです。

重要なのは、自社のミッション・ビジョンをもとに「コア・バリュー」をつくり、「コア・バリュー」に徹底してもとづいた仕組み・施策を構築できるか。カルチャーフィット採用にコミットできるか。それが良い企業文化をつくることだと思います。

「企業文化の浸透は大事である」ということは良く耳にしていましたが、ザッポスの企業文化を学ぶことで、よりその重要性を理解することができました。

みなさまにとっても、何かしらご参考となれば幸いです。

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