人事異動の目的とは|企業に必要な理由と社員への伝え方

※本記事は株式会社アシロの「企業法務弁護士ナビ」より転載しております。

人事異動は多くの企業で実施されていますが、なぜ人事異動が必要なのかをご存知でしょうか?

人事異動はある程度の規模の会社では日常的にある事柄ですので、あまり深く考えたことはないかもしれません。

この記事では、企業が人事異動を実施する目的をご紹介します。人事異動が必要な理由や実施の伝達方法などを確認したい場合は、参考にしてみてください。

1. 会社が人事異動を実施する目的

会社が人事異動を実施する目的は、組織において必要・適切な人員配置のためです。具体的には以下のような理由が挙げられます。

人事移動を実施する目的

  • 社員の人材育成
  • 適材適所の人員配置
  • 慣れによる意欲低下の防止
  • 企業戦略のための配置変更
  • 不正の防止と発見

社員の人材育成

人事異動をした社員は、新しい環境に身を置き他の業務に携わることになります。その結果、新しい見解や技術が身について仕事の幅が広がり、成長することが期待できるのです。

また、優秀な社員を教育係として配属させたり、業績を上げたい他部署に異動させたりなど、周囲の底上げを図るといった手法も効果的です。

このような目的での人事異動は、新入社員の育成やベテラン社員の昇進・昇格などを理由に実施するケースが多いです。人事異動を上手く活用することで、社員に成長のきっかけを与えられるでしょう。

適材適所の人員配置

「業績がパッとしない社員が配属先の変更後に大活躍するようになった」

このような話は珍しくありません。部署が変わることで、社員が本来の実力を発揮できるようになる可能性は十分にあります。

適正のない部署で働き続けるよりも、適正のある部署で活躍してもらうほうが社員は幸せです。また、企業側も今まで気づけなかった優秀な人材を発掘できる可能性があるので、一石二鳥だといえるでしょう。

もし、現在配置されている部署で活躍が難しい社員がいる場合には、本人と相談の上で、別の部署への配属を検討してみてもよいかもしれません。

慣れによる意欲低下の防止

長い期間ずっと同じ職場で同じ業務をこなしていると、仕事のマンネリ化によって社員の業務意欲が低下してしまう場合があります。慣れによる社員の労働意欲低下が業績悪化の原因になる可能性も否定できないのです。

上記のような事態を回避する目的で、一定期間ごとに職場や部署の入れ替えを実施する企業も存在します。

定期的に新しい業務環境を提供し続けることで、いろいろな仕事に挑戦できるという期待から社員のパフォーマンスが高まり、結果として会社の活性化につながるケースもあるのです。

企業戦略のための配置変更

新事業の立ち上げや経営方針の転換など、新しい企業戦略を成功させるためには、その遂行に適した人材を選抜する必要があります。

そのため、人事異動は事業目標を効果的に達成する手段として優れた施策だといえるでしょう。

『どの時期にどんな人材がどのくらい必要になるのか』これを適切に判断して計画的に人事異動を実行することが、企業戦略を成功させる重要要素です。

不正の防止と発見

同じ社員がずっと同じ業務を担当している状態が続くと、外部からの干渉がなくなりやすく、その結果として不正の温床になる可能性があります。

特に長期間ずっと同じ業務をしている社員がいて、上司でも口出しできないような状況だと、不正のリスクが高くなってしまいます。

そのような事態を回避・発見する目的で、同じ職場での勤務期間に上限を定めている企業も珍しくありません。

 

2. 人事異動のやり方は企業それぞれ

人事異動のやり方は企業によって違います。

典型的なものとしては、労働者本人に内示(正式に辞令を出す前に本人に異動を通知すること)をおこなってから、異動を通知する方法です。

内示はメールや口頭、通知は書面でおこなうケースが多いです。

内示をするタイミング

内示のタイミングもさまざまです。正式な辞令の1ヶ月前くらいが多いかもしれません。ただ、会社によっては内示の内示(内々示)を2ヶ月前くらいにおこなっている場合もあります。

人事異動の異動先によっては引越しが必要になる場合もありますし、業務の引き継ぎや異動先の情報収拾にも時間は必要なので、社員のことを考えるのであれば、可能な限り早めに内示をしてあげたほうがよいでしょう。

内示と辞令の違い

辞令は会社の決定事項の通知です。正式通知であるため書面を交付される場合が多いようです。

 

3. 人事異動をする理由の伝え方

会社にとっては小さな人員整理でも、社員には職場や業務内容が変わるといった大きな変化があります。納得できる理由を説明してもらえないと、異動をネガティブに解釈してしまい、退職を選択してしまう社員も珍しくありません。

人事異動では社員のメンタルケアを意識することが非常に重要です。

人事異動を伝える際には、以下の2点は必ず注意するようにしてください。

人事異動を伝えるポイント

  • なぜ異動をするのかを具体的に説明する
  • 異動先での業務内容を明確にする

なぜ異動をするのかを具体的に説明する

人事異動を告げられた社員は、異動する部署・職場のことよりも『なぜ自分が異動することになったのか』を強く意識して、通知を深刻に受け止めてしまう傾向があります。

ただ人事異動があるという通知だけでは、「自分は何かしてしまったのだろうか」「自分の仕事は評価されていないのだろうか」とネガティブに捉えられてしまい、最悪の場合退職を考えてしまうかもしれません。

そのような誤解を生じさせないためにも、『なぜ人事異動をすることになったのか』その理由を明確に伝えることが重要です。なぜ異動先に求められているのかを説明し、社員のモチベーション向上を図っていきましょう

異動先での業務内容を明確にする

内示を通知する際には、社員から「異動先では自分は何をするのですか?」と質問された場合、異動先の業務内容を説明できるよう事前に準備しておいてください。

「異動先に行くまで次の業務内容がわからない」という状態では、社員の不安を余計に煽ってしまうことになります。

異動先ではどのような業務を任せられて、そこでの適性が自分とどうマッチしているのかを詳しく伝えてあげることで、社員が人事異動に納得しやすくなるでしょう。

 

4. 社員から人事異動を拒否された場合

会社の配転権限が明確に排除されているような場合でない限り、社員が人事異動を拒むことは原則できません社員が正当な理由なく人事異動を拒む場合、会社は解雇を含む処分を検討せざるを得ないと思われます。

例外的に、人事異動が権利濫用であるような場合は、社員はこれを拒否できます。

権利の濫用と判断される例

  • 不当な動機や目的に基づく配置転換である場合
  • 従業員が被る不利益があまりにも大きい場合
  • 業務上の必要性がない場合

 

5. まとめ

会社が人事異動を実施する目的は、組織を発展させて企業に利益をもたらすことです。

具体的な理由としては、以下の5点が挙げられます。

  • 社員の人材育成
  • 適材適所の人員配置
  • 慣れによる意欲低下の防止
  • 企業戦略のための配置変更
  • 不正の防止と発見

人事異動は、上手く活用すれば会社にプラスの影響をもたらしますが、社員への負担も大きい点には注意が必要です。実施する際にはその目的を明確にして、慎重に準備を進めていきましょう。

この記事の執筆者
◆◇この記事の監修者◇◆
梅澤 康二 氏(第二東京弁護士会):弁護士法人プラム綜合法律事務所

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