安全衛生

仕事の生産性を向上させる「健康経営」の取り組みとは

健康経営とは?

健康経営」とはアメリカのロバート・ローゼンによって1980年に「健康な従業員こそが収益の高い会社を創る」というヘルシーカンパニー思想が提唱されたことにより生まれました。

事実、健康日本21推進フォーラムが実施した「疾病・症状が仕事の生産性に与える影響に関する調査」では、肩こりや頭痛など会社を休むほどではない不調(プレゼンティズム)を抱えていると生産性を100点にした場合は70点に、やる気や集中力は65点に下がるというデータがあります。

日本で健康経営に本腰を入れ始めたのは、経済産業省の「アクションプラン2015」により企業健康保険組合に健康経営を促すようになってからではないでしょうか。

現在では、東京証券取引所で上場企業を対象に健康経営銘柄を選定するなど、厚生省主催で企業や自治体を表彰するなどの取り組みを行うことで健康経営を推進しています。

会社が社員の健康を支援することは、社員の高いパフォーマンスと生産性につながるだけでなく、企業の社会的責任(CSR)や共通価値の創造(CSV)を果たし、採用活動でも他社との差別化を図る効果があります。

健康経営に取り組んでいる企業をご紹介

株式会社タニタ|タニタ食堂ブームを起こした健康経営とは?

タニタ健康機器メーカーの社員が不健康では説得力に欠けると、2009年1月より「タニタの健康プログラム」をスタートさせました。

歩数計を全社員に配布し、週に1回は体組成計と血圧計で健康状態を可視化、健康指導に使用します。

また、マスコミにも多く取り上げられた自社食堂での健康食の提供や、近隣のスポーツクラブでの運動指導、長時間労働者には睡眠計の貸与も行います。

タニタの取り組みの特徴は、「はかる」「わかる」「気づく」「変わる」のサイクルを継続的に回すことで、効果を実感しながら健康増進を目指せるような仕組みになっていることです。
現在、「タニタの健康プログラム」は他の企業や自治体にも導入されています。

アサヒビール株式会社|時代とともに変化した商品の価値観と健康への意識

asahi

アルコールを扱う企業では、時代とともにカロリーや健康を気にするようになり、「糖質off」「プリン体ゼロ」のようなヘルシー志向の商品を販売するようになりました。アサヒビールでも、仕事の質と健康への考え方が変わってきており、2007年に「健康基本方針」を策定しました

  • 単体からグループへ
  • 治療から予防へ
  • 心身両面の取り組みへ

 

この3つを重点的に取り組み始め、本社および全国の事業所に社員保健師を配置する他、非常勤の産業医と精神科医により心身のケアを行っています。

また、特定健診・保健指導による生活習慣病の予防、健康相談・指導による健康管理、人間ドックの受診開始年齢の早期化を実施し、疾病予防と早期発見に取り組んでいます。

株式会社ローソン|ローソンヘルスケアポイントで社員のやる気を引き出す

lawsonローソンでは、「私たちは“みんなと暮らすマチ”を幸せにします。」の企業理念に基づき、お客様だけでなく社員と家族の健康を2005年から推進しています。

2012年より健康診断全社員受診を掲げ、未受診者はディスインセンティブの対象としました。また、毎年スマートフォンアプリを400名ずつ配布、社内部活やスポーツ大会、宿泊型保健指導などを行っています。

特徴的な取り組みはローソンヘルスケアポイント制度です。この制度はスマートフォンアプリにて90日間、毎日の行動をチェックするなど、社内部活や健康に関するイベントに参加するとポイントが付与され、インセンティブを支給する仕組みになっており、社員のモチベーションアップにつながっています。

ロート製薬株式会社|健康増進100日プロジェクトで全社員を巻き込む

ロート製薬オールウェル計画推進室を設け「ALL WELL=みんなを健康に」をスローガンに健康意識を社員に共有してもらおうと、福利厚生のひとつであるスマートキャンプや食改善やストレスコントロールなどをサポートしています。

特徴的な取り組みは「健康増進100日プロジェクト」です。このプロジェクトは1年かけて会長をはじめとした全社員1,600名を対象に職場間を横断したチームを組み、チームで「禁煙」や「体脂肪改善」「腹囲減少」等の目標を掲げて競い合い、優秀なチームを表彰する仕組みになっています。

チーム内で励まし合うことで目標を達成する社員も増え、社内のコミュニケーション活性化や、タクシー代等の移動経費が減る効果も生まれました。

花王株式会社|ヘルスリテラシーの高い社員を増やす5つの取り組み

kao世界の人々の「清潔・美・健康」を願い、豊かな生活文化の実現する企業理念に基づき、社員と家族の健康をケアするための5つの取り組みを中心にヘルスリテラシーの高い社員を増やす施策を行っています。

  • 生活習慣病支援を産業保健スタッフが実施。
  • メンタルヘルスの早期発見と早期治療を目指し、セルフケアと周囲の人達がケアできる仕組み作り。
  • 禁煙しやすい環境作りと禁煙を始めた人への支援。
  • がんの早期発見と早期治療のために法定健診にがん検診を追加。
  • 女性の健康支援としてセミナーやキャンペーンを展開。

 

花王では、上記に加え、健康づくりマネジメントシステムを発足してさらなる健康づくり活動を推進しています。

伊藤忠商事株式会社|社長のトップダウンで徹底した若手社員の健康管理を実施

伊藤忠商事2016年の6月1日に「伊藤忠健康憲章」を岡藤社長の肝いりで策定し、20代~30代の社員を中心に食事と運動のサポートを行っています。

まず、成人病予備軍に対し、本人の了承を得たうえで腕時計型のウェアラブル端末を支給、睡眠、血圧、脈拍、歩数を24時間集計して看護師から医学的なアドバイスを受けます。

また、イントラネット上にマイページを作成し、スマートフォンで食事を撮影してオンライン上で管理栄養士からのアドバイスを受けることができるシステムを導入しました。

さらに2018年4月には360名が入所できる独身寮を都内に建設して、食事をはじめとした健康管理を徹底します。

トヨタ自動車健康保険組合|夫婦揃っての節目健診で家族ぐるみで健康管理

トヨタトヨタ自動車を始め39の事業所が加入しているトヨタ健保組合では2008年から新たな健診制度を導入しました。

その目玉が節目健診です。36歳以上の社員は4年ごとに夫婦揃って節目健診を受けられるようにしました。節目健診では、午前中に人間ドック、がんの発見を目的としたエコーやCT検査を受け、午後は検査結果の速報値を基に夫婦一緒に医師から健康指導を受けることができます。

また、体力チェックや、食生活と運動習慣を入力したデータを「健康処方箋」として配布し、健康データを可視化することで健康情報を把握して夫婦で生活習慣病の改善を目指せるようにサポートしています。

パナソニック健康保険組合|玉入れ大会で今の健康状態をチェック

パナソニックパナソニック健保組合では、創業100周年となる2018年に向け「健康パナソニック2018年」を展開しており、メンタル面、脳心臓疾患(メタボリック症候群)、体力低下(ロコモティブ症候群)、がん、歯周病の予防活動を実施しています。

活動のメインは「玉入れ大会」と「いきいき健康ナビゲーション」です。玉入れの動きはスクワット運動と同じであるため、玉入れで息切れを起こした人は特定保健指導を受診、筋肉痛や体力不足の人にはウォークラリーで体力づくりをしてもらいます。

また、健康ナビゲーションでは健診結果だけでなく、禁煙ラリーや1日1万歩歩くウォークラリー、就寝前の5分間歯磨き運動のサポートを行っています。

サントリーグループ|手厚いメンタルサポートと多様な制度

suntoryサントリーグループでは2016年から「心身ともに健康で、毎日元気に働き、やる気に満ちている」ことが健康であると考え、30歳以上からの人間ドック受診、歯科検診、メンタルセルフチェック、看護師による全社員との健康面談、臨床心理士によるカウンセリングなど、社外専門スタッフが対応する健康相談の体制を整えています。

また、失効年休を利用した特別休業を業務以外の傷病や不妊治療、家族看護のために利用することができます。入院が必要な時には差額ベッド代補助を支給する制度も設けました。

さらに、お台場と大阪オフィスに指圧やマッサージを受けられるヘルスケアルームを設けており年間2,300名が利用しています。

KENKO企業会|14社が交流を通じて健康経営のノウハウを共有

kenkoKENKO企業会は、テルモ株式会社を幹事として2015年6月22日に、株式会社ニトリホールディングス、株式会社三越伊勢丹ホールディングスなど、14社の経営トップが主導で集まり、各社で実施している健康管理プログラムやノウハウを学び・共有することで新しいアイデアを出し合い、全社員と家族30万人の健康増進に取り組んでいます。

具体的な取り組みとして、運動、歩く、禁煙、食事、血糖、血圧、BMI、健康診断受診率の向上を検討しており、健康増進により健康保険組合費用の抑制だけでなく、経営効率化や組織の活性化、生産性向上を目指しています。

最後に

ご紹介した企業の成功例をみると、経営層を巻き込んで取り組んでいるように感じます。

また、「禁煙しましょう」「運動しましょう」とただ呼びかけるだけでなく、社員が自主的に運動をしたり、食事の管理を行うような仕組みを作らなければ、健康宣言を行っても健康経営を実現することは難しいようです。

健康経営への1歩として、スマートフォンやイントラネットでの健康状態の可視化や、全社員で行うスポーツ大会等、自社で取り組めそうなことから始めてみてはいかがでしょうか。

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