業績評価制度「OKR」とは?導入するメリットや導入方法を紹介
更新日: 2024.4.3
公開日: 2023.3.6
OHSUGI
業種によっては変化が著しい昨今、競争に負けないように目標を立てて企業を運営していくことは大切なことです。しかし、企業とはさまざまな価値観や異なる能力を持つ従業員の集合体でもありますから、そう簡単にまとめあげられるものではありません。
そこで近年注目を集めているのが「OKR」です。OKRとはどのような仕組みなのかや導入方法を解説していきます。
目次
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. OKRとは?
OKRとはObjectives and Key Results(目標と主要な結果)の略でアメリカのインテル社が発祥の目標の設定・管理方法のひとつです。大きな特徴は1~3ヵ月(四半期)ほどという、従来使われてきた計画方法より短いスパンで目標設定・追跡・評価・再設定をおこないます。
また企業と従業員が同じ目標を共有することで、部署に関係なく社内が透明化するのも大きな特徴です。そのため、企業と従業員の目標がずれることなく目標に向かうことができます。
最終的に定められたペースで計画を進行できるようになることがOKRのゴールです。OKRで誤解しないようにしたい点は、あくまで企業の目標達成のためのシステムであり、従業員の報酬と結び付けて考えるものではないことです。
OKRでは、企業や従業員の行動で得られる最終的な結果をObjectives(目標)とします。例えば「1〜3ヵ月(四半期)で達成可能なもの」「モチベーションの向上を促すチャレンジングなもの」などが挙げられます。
またOKRでは、目標達成のためにおこなってきたそれぞれの施策の成果を具体的な数値水準で把握することをKey Results(成果指標)とします。成果指標の要素と特徴は、以下のとおりです。
- 数値で測れる定量的なもの
- 目標1つに付きKRは2~5個程度
- 達成の見込みが50%ほどの目標であること
- 60~70%達成すれば成功とする
1-1. KPIとの違い
OKRは目標を設定、管理するための考え方です。一方、KPIは目標を達成するまでの進捗を測るための指標です。このようにOKRとKPIでは活用する目的が異なります。また、目標の達成率にも違いがあります。KPIでは達成率100%を目指しますが、OKRでは60~70%の達成率で成功と考えられています。
1-2. KGIとの違い
KGIはKey Goal Indicatorの略で企業が抱える最終目標を客観的に評価するための指標です。KGIとOKRを比べると目標の達成度合いが異なります。先述のとおり、KGIは目標の達成度合いは60~70%です。一方、KGIはKPI同様、100%が達成率です。
1-3. MBOとの違い
MBOは従業員の目標と企業の目標を連動させて、業績を向上させる考え方です。MBOはOKRよりも評価の期間が長くなります。MBOは長期的な視点で目標を管理するのに対して、OKRは評価期間が短いため、こまめな振り返りで軌道修正が可能です。
2. OKRが注目されている背景
OKRが注目されている背景は市場が変化するスピードが速くなった点です。市場が短期間でも変化するようになったため、MBOのように長期的な視点での目標設定では対応しきれないケースもあります。そのため、OKRでスピーディな市場の変化についていくことが求められています。
また、OKRであれば会社と従業員が同じ方向を向くことが可能です。多様な価値観の人が集う組織において、OKRで一体感を生み出すこともニーズが高まっている背景でしょう。
3. OKRを導入するメリット
OKRにはさまざまなメリットがあります。以下にまとめてみました。
3-1. 企業の目指す方向性に目標をあわせられる
OKRは企業の最重要項目であるObjectivesを掲げ、短いスパンで目標立てとフィードバックを繰り返します。従業員は企業の目指す最終形を深く理解し、自然と全員が同じ方向を向くことになるのです。
3-2. 状況への対応力が増す
OKRでの目標設定ではスパンが1~3ヵ月ほどと短く設定されます。結果として、人事や実際の収益目標の変更など不測の事態にも対応しやすい構造です。とくに状況が目まぐるしく変わりやすい業種に適応しやすいといえます。
3-3. 企業内の相互連携が増す
目標達成のためには組織内だけでなく、企業内の別の組織との連携も必要になるケースがあります。OKRでは企業内で目標が共有されているため、組織の垣根に関係なく最適のコミュニケーションを取ることができる点がメリットです。
3-4. 大胆な目標設定ができる
OKRでは基本的に目標の達成度合いは給料に反映しません。結果として思い切った目標設定も可能です。従業員各自が現状以上の目標を立てやすく、失敗しても経験を積むことができることから、成長も期待できます。
4. OKRを導入する注意点
これまで述べたように、OKRは導入する
メリットがある制度ですが、導入する際に注意しなければならない点もあります。
本章ではOKRを導入する際に注意すべき点を4つ紹介します。
4-1. 達成は簡単ではないが、実現可能な目標を設定する
OKRは従業員のモチベーションや向上心アップを主な目的とする制度なので、目標は総じて高めに設定されます。
評価期間中で達成率が100%に到達してしまった場合、目標のハードルが低すぎる可能性がありますので、より高い目標設定が必要です。
しかし、目標をあまりに高く設定しすぎると「達成できるはずがない」「ほどほどにやっておけばいい」といった意識が浸透しやすくなり、従業員のモチベーションやパフォーマンスの低下につながるおそれがあります。
OKRを導入するときは、従業員がやりがいを感じられるよう、60〜70%達成を見込んだ目標を設定するように意識しましょう。
具体的には、達成感のある目標を設定したり、目標の達成度を可視化したりすると、取り組みがいのあるOKRになります。
4-2. 定量的に測定し、客観的に評価する
評価の測定方法には、具体的な数値や数量を対象とする定量評価と、数値以外の部分に着目する定性評価の2種類があります。
OKRの場合、企業が設定した目標を達成することを目指すものなので、達成度を定量的に測定し、客観的に評価する必要があります。
OKRではKRを「売上20%アップ」「新規顧客500人獲得」など定量的に設定しますので、評価する際は設定したKRをどれだけ実現できたかを数値にして表しましょう。
定量評価は、評価をおこなう上司にとっても、評価される側の部下にとってもわかりやすいところがメリットです。
双方がきちんと納得できるよう、測定は正確におこない、当人に伝えるときは具体的な数値を盛り込んで説明することが大切です。
4-3. 頻繁にコミュニケーションをとる体制を整える
OKRで定めた目標を達成するには、こまめに面談をおこない、課題をいち早く発見して適宜改善していくことが大切です。
一般的に、OKRでは週に1回以上の面談を実施するのが理想とされていますので、就業規則などに面談の実施回数や実施方法を明記し、コミュニケーションを取る体制を整えておきましょう。
ただ、従業員一人ひとりと1対1の面談をおこなうには、かなりの手間と時間を要します。
面談をおこなうたびに上司と部下それぞれに負担がかかると、面談そのものが形骸化し、本来の目的を果たせなくなる可能性があります。
とくに近年は働き方改革や新形コロナウイルス感染拡大の影響により、テレワークが普及し、上司と部下が顔を合わせる機会が減少しています。
場所や時間を問わず、かつ手軽に面談をおこなえるよう、Web会議システムを導入するなどの工夫を取り入れることを検討してみましょう。
4-4. 可能な限り、従業員が納得するような目標設計をする
OKRでは、従業員個人、組織、企業が足並みを揃え、同じ方向を向いて目標達成を目指す必要があります。
従業員が目標の内容を理解していなかったり、十分に納得していなかったりすると、達成率が低下するおそれがあります。
だからと言って、従業員一人ひとりに合わせて目標を設定するのは現実的に困難です。
そのため、多くの従業員が納得して目標達成を目指せるような内容を意識するとともに、なぜその目標を設定したのか、どんな意図があったのかを、しっかり説明することが大切です。
例えば、従業員に理解・納得してもらえるように目的を設定した段階で説明会などを開催するなどです。
また、OKRを導入した当初は、OKRについて十分な知識を持たない従業員も少なくありません。
必要に応じてサポートや窓口を設置し、社内での普及を積極的に進めるとよいでしょう。
5. OKRを導入する方法
OKRを導入するには手順を踏むことが大切です。正しい手順を踏むことで想定外のリスクを減らすことができます。リスクの少ない方法を以下にまとめました。
5-1. ステップ1:目的を確定する
OKRを導入する目的を明確にします。目的があやふやなままでは適切なObjectivesの設定ができません。Objectivesが不適切だとKey Resultsも悪影響を受け、最終的に意味のないものになってしまいます。
導入目的が不明瞭だと従業員に必要性を感じてもらえないだけでなく、モチベーションを下げてしまう危険性がある点も重要です。マイナスのイメージを持たれないよう明確な目的を決めましょう。
5-2. ステップ2:初期導入チームを選定する
まずは企業全体で始めるのを避けます。規模が大きすぎると細部の問題点が見つかりにくいだけでなく、従業員全員の納得を得るにも時間がかかりすぎるためです。
最初は小規模に初期運用をおこなうことで成功事例をつくることから始めます。初期導入チームを選定するときは、可能であれば複数選びましょう。イノベーションが必要だったり、ほかの部門や組織にかかわる機会が多かったりする部署がおすすめです。企業内への宣伝効果も狙えるようにOKRの恩恵を受けやすい部署を選びます。
5-3. ステップ3:OKR推進チームを編成する
OKRをスムーズに運用するために指揮を取る「OKR推進チーム」を編成しましょう。構成メンバーには企業側の意図の理解度が高く、さらにOKR導入によって多大な恩恵を受けられると思っている人員が適しています。
人員が揃ったら最終決定権を有する責任者であるリーダーと、リーダーと初期導入チームをつなぐサポート役のサブリーダーを選出してください。リーダーはOKRの導入目的を初期導入チームに浸透させ必要事項を決定します。サブリーダーはOKRの知識やルールを浸透させ、初期導入チームから意見を吸い上げるなどこちらも重要な役です。
またOKRをより効果的におこなうために制度を整える必要が出てくることがあります。人事部の助力が必要になることも多いため、1人メンバーにいるとより安心です。
5-4. ステップ4:導入方針を決定し可視化する
OKR推進チームが発足したら導入方針を決定していきます。OKRを構成する階層の数やスパンの長さはここで決めておきましょう。ほかにも人事評価に結び付けるのか、チーム以外に各従業員にもOKRを設定するのかなど細部にわたって決定しておきます。
次に「ツリー構造」を使って全体を可視化しましょう。1つの階層から下に向かって枝分かれしていくフレームワークで企業と部署とのつながりを明確化します。
5-5. ステップ5:初期導入チームの運用を開始する
まずは目標を設定する必要があります。この目標は経営陣が決めるよりも、初期導入チームやOKR推進チームの従業員たちから意見やアイデアを取り入れながら決定するほうがよいです。
目標が決まったら運用を開始します。OKRの運用中には組織の団結力を高めるためや認識のずれの修正のため、そして情報の共有を目的として4つのイベントを定期的に開催することが大切です。
基本的に週頭には「チェックイン」をおこないます。チーム内の進捗や問題点に関して解決策を模索し、その週に取り組む内容を決定することで、チームの結束力やモチベーションを高めるのが目的です。
週終わりには「ウィンセッション」をおこないます。成果をたたえ合う一方で、失敗例や課題点の相談もおこないます。感謝の気持ちなどを積極的に発言し、チーム全体のモチベーションを上げましょう。
隔週から月次では「コンフィデンスミーティング」をおこないます。チームにとって目標の障害となっていることを話し合い、解決策を模索するのが目的です。
そして四半期の中間の時期に「四半期中間チェックイン(中間レビュー)」をおこないます。OKRのスパンの中間でのフィードバックで、本来の目標に向かって取り組めているかを確認するのが目的です。本来の目標を再確認し、軌道修正をおこなう大切な機会となります。
これらのイベントをおこないながら初期導入チームでの運用で問題点や課題点を洗い出すことが大切です。自社に最も適したOKRを見極めるためにも可能な限り多くの方法やアプローチを試します。
5-6. ステップ6:フィードバック・改善をする
初期導入チームでの運用が一度区切りを迎えたらフィードバックをおこないます。OKRによってもたらされた効果や問題点、自社との相性などを確認しましょう。
フィードバックにはOKR推進チームをはじめ、企業の上層部や初期導入チームのメンバーにもアンケートを取りましょう。多角的に試験導入の結果を分析できるため、導入を継続するのであればよりよい改善策を模索できます。
また、改善策についてスムーズに話し合えるよう、フィードバックやアンケートの結果はしっかり可視化するのがおすすめです。
5-7. ステップ7:全体で運用を開始する
企業の目標や方向が決まったら本格的な運用に切り替えていきます。初期導入チームで得た教訓をもとに企業規模で展開していきます。
もちろん、システムそのものが変わるため、新たな問題が出てくることもあるでしょう。しかし、OKRはスパンが短いため、こまめにフィードバックして修正できます。
5-8. ステップ8:運用開始、効果の測定や改善をする
OKRの効果をより高めていくためには、運用を開始した後も、定期的に効果を測定し、必要に応じた改善をおこなうことが大切です。
効果測定では、単純に「目標を◯%達成した」という事実だけでなく、目標達成までの過程が適切だったかどうか、逆に目標を達成できなかった場合、何が原因だったのかなどを精査します。
その上で、より良くできるポイントや、改善が必要なポイントを洗い出し、次回以降の運用に反映させます。
このサイクルを繰り返していけば、OKRの運用効果をどんどん高めていくことが可能になります。
そのためには、効果を測定する方法や、フィードバックする方法などをあらかじめルールに盛り込んでおくとよいでしょう。
6. OKRの具体例
OKRの具体例として次のような3つの職種について解説します。
- 営業職
- 人事部
- 製造
6-1. 営業職
営業職は売上や業績など、具体的な数字が分かりやすい業種です。営業職において設定されるOKRとして以下が挙げられます。
- O:売上の前年比アップと新規顧客の獲得
- KR:新規顧客獲得によって売上を〇円達成する/新規顧客獲得のために1日〇件架電する
6-2. 人事部
人事部は採用人数や優秀な人材の確保、従業員の管理などが求められます。人事部でのOKRの例は次のとおりです。
- O:エンゲージメントを高める施策を〇月までに実施する
- KR:〇月までにヒアリングを実施する/〇月までにエンゲージメントプログラムを選定する
人材採用だけでなく、採用にかかったコストの削減も目標として設定できるでしょう。
6-3. 製造
製造にまつわる職は生産量や生産スピードを増やすといった目標が挙げられます。また、人事部同様にコスト削減も目標に据えられるでしょう。
- O:コストを削減する/生産量を増やす
- KR:生産量を〇%アップする/廃棄額を〇円削減する
7. OKRは理解を深めながら浸透させていくのがおすすめ
OKRは企業が一丸となって目標に向かうのに効果的なシステムといえます。ただし現在は別のシステムで運営しているとなると、浸透するまでにはかなりの時間が必要です。しかしOKRならではの協力し合いながら解決していく手法は、企業と従業員の連帯感を強めてくれるものでもあります。
いきなり企業全体を切り替える必要はありません。OKRへの理解を従業員にも深めてもらいながら、着実に取り組むとよいでしょう。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
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