社会保険喪失証明書の発行までの流れや国民健康保険への切り替え方法
更新日: 2023.4.28
公開日: 2022.1.18
YOSHIDA
事業所ごとに加入していた社会保険は、従業員が退職した後に権利を喪失します。従業員は退職後に新たに他の会社の社会保険に手続きするか、国民健康保険に加入しますが、資格喪失の証明書が正しく取得できないと、新たな保険手続きの妨げになる可能性があります。
今回は、社会保険喪失証明書の発行までの流れとあわせて、国民健康保険への切り替え方法、発行されないときの対策について解説していきます。
▼社会保険の概要や加入条件、法改正の内容など、社会保険の基礎知識から詳しく知りたい方はこちら
社会保険とは?概要や手続き・必要書類、加入条件、法改正の内容を徹底解説
目次
1. 社会保険喪失証明書(健康保険資格喪失証明書)の発行までの流れ
社会保険喪失証明書は、退職した従業員が国民健康保険加入手続きの際に必要な重要書類です。
事業主は従業員から証明書発行の申し出を受け次第、手続きを行います。
手順は次の通りです。
① 健康保険資格喪失証明書の書式を用意しておく
② 従業員から発行希望を受ける
③ 健康保険資格喪失証明書を発行する
④ 健康保険資格喪失証明書のコピーを取っておく
⑤ 健康保険資格喪失証明書を従業員に手渡す
重要なのは、健康保険資格喪失証明書の書式を事前に用意しておくことです。書式は会社ごと自由なので、事前に必要項目をチェックして書類を準備しておくと、希望があった後にすぐ発行できます。
1-1. 健康保険資格喪失証明書に必要な記載項目
ここでは実際に健康保険資格喪失証明書を作成する際に必要な項目をご紹介します。
▼健康保険資格喪失証明書の記載項目例
(被保険者に関する情報)
- 氏名
- 生年月日
- 現住所
- 保険者番号
- 被保険者証番号
- 取得年月日(入社日)
- 喪失年月日(退職日)
(被扶養者に関する情報)
- 氏名
- 生年月日
- 続柄
- 認定年月日
- 喪失年月日
(事業所に関する情報)
- 事業所名称
- 所在地
- 代表者名
- 電話番号
健康保険資格喪失証明書には、被保険者の情報だけでなく、被保険者が扶養している人物の情報も記載します。
また、最後に署名のような形式で事業所の情報を記載し、最後に相違がないことを証明するために、日付を記載します。
実際にPDF形式でダウンロードできるので、自社で作成できない方は有効に活用してみてください。
また、健康保険資格喪失証明書以外にも、厚生年金や雇用保険の資格喪失届や離職証明書の発行など、資格喪失時には複数の対応が必要になります。
本サイトでは上記の社会保険の手続きに関して、資格取得時と資格喪失時の対応についてまとめた資料を無料で配布しております。従業員の入社時や退社時の対応で不安な点があるご担当者様は、こちらから「社会保険の手続きガイド」をダウンロードしてご確認ください。
2. 国民健康保険等への切り替え方法
続いて、国民健康保険への切り替え方法をご紹介します。日本では国民全員が健康保険に加入することが義務づけられており、加入していない場合は医療費が全額自己負担になる可能性があります。
会社を退職した後は、健康保険資格喪失証明書を受け取って、国民健康保険への加入手続きをとりましょう。
▼そもそも社会保険と国民健康保険の違いが判らない方はこちらをご覧ください
社会保険と国民健康保険の違いや切り替え時の手続きとは
2-1. 国民健康保険に切り替える際に必要な持ち物
国民健康保険に切り替える際は、届出が必要です。市区町村によって必要な持ち物は多少異なりますが、おおむね以下のものを求められることが多いようです。
- 健康保険資格喪失証明書
- 世帯主と加入者全員のマイナンバーがわかるもの(個人番号カード・通知カード)
- マイナンバーカードなどの本人確認書類
この他にも市町村によってはキャッシュカードや通帳、銀行届出印などを求められることもあるため、申請を行う市町村に確認を取るのがおすすめです。ホームページで持ち物を公表している所もあります。
なお、康保険資格喪失証明書が発行してもらえない場合については、次章で詳しくご紹介していますので、そちらをご覧ください。
2-2. 国民健康保険に切り替える際の提出先と提出方法・提出期限
国民健康保険への切り替えは、市町村の国民健康保険担当課で手続きを行います。手続きができる時間帯は役所によって異なるので、事前に確認してから申請に行きましょう。
また、提出期限は社会保険喪失日から14日以内です。社会保険喪失日は退職日の翌日なので、仮に4月1日に退職した場合は4月2日が社会保険喪失日となり、4月2日から14日以内に国民健康保険に加入する必要があります。
期限超過に申請を行っても、社会保険喪失日までさかのぼって保険料を納める必要があるため、必ず加入手続きを行いましょう。
関連記事:社会保険と国民健康保険の切り替え手続きや任意継続保険の特徴について
3. 会社や事業所が発行してくれない場合の対策
国民健康保険は紹介した通り、健康保険資格喪失証明書は加入のための重要な書類です。しかし、会社に発行を希望してもなかなか発行してくれない場合があります。市町村によって異なる可能性がありますが、会社に退職日の確認を取ったり、簡易的な書類に置き換えたりなどの対処方法があります。
健康保険に加入していないと、医療費が全額負担になってしまうので、健康保険資格喪失証明書を発行してもらえない場合でも、代替策で必ず加入手続きをとりましょう。
3-1. 代替案①:退職日が確認できる書類を持参する
健康保険資格喪失証明書の発行は会社の義務ではないので、発行が遅れたり、発行してもらえない可能性もあります。その場合は、退職日が証明できる書類を発行してもらいましょう。
「退職証明書」や「離職票」によって退職日を証明することができます。退職日は社会保険の喪失日を確認するために必要です。
3-2. 代替案②:会社に電話で確認をとる
また、会社に電話で確認をとる場合もあります。
そのような場合に備えて事前に担当部署の連絡先や、担当者名を控えておくとよいでしょう。
3-3. 代替案③:年金事務所窓口で健康保険資格喪失証明書を交付してもらう(協会けんぽの場合)
これまで全国健康保険協会に加入していた場合は、年金事務所で発行できます。
保険証に全国健康保険協会の記載があるので、確認してみてください。
手続きは最寄りの年金事務所の窓口で行う他、郵送でも可能です。健康保険・厚生年金保険資格取得・資格喪失等確認請求書を届書として提出します。窓口で手続きする際は身分証明書を持参する必要があります。
ただし、退職後に会社が被保険者資格喪失届を提出していない場合は、手続きできない可能性があります。会社に困っている旨を伝え、早急に手続きを済ませてもらいましょう。
参考:国民健康保険等に加入するため、健康保険の資格喪失証明等が必要になったとき|日本年金機構
4. 健康保険資格喪失証明書は国民健康保険に加入する際に必要な書類!退職後は14日以内に国民健康保険に切り替えよう
健康保険資格喪失証明書は退職後、国民健康保険への切り替えに必要な書類です。保険料は退職日を起点として納めるため、社会保険が失効する退職日の証明が必要になるのがポイントです。
国民健康保険は退職した日の翌日から14日以内に手続きを済ませなければならないので、発行してもらえない場合は催促するか、代替策で対処する必要があります。
代替策としては、離職票や退職証明書を退職日の証明として使用する、電話で会社に退職日を問い合わせるなどの方法があります。また、全国健康保険協会に加入していた場合は、最寄りの年金事務所で発行手続きができます。
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