同一労働同一賃金が中小企業に適用されどう変わった?
更新日: 2023.3.17
公開日: 2022.1.22
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働き方改革の一環として、雇用形態によらず労働者の待遇を均等・均衡化する「同一労働同一賃金」の実施がスタートしました。
同一労働同一賃金の対象には、大企業だけでなく中小企業もふくまれます。
しかし、中小企業の同一労働同一賃金の実施状況は芳しくありません。
中小企業庁の「2021年版中小企業白書」を見ると、従業員規模が少ないほど同一労働同一賃金の実施率が低くなっていることがわかります。従業員数6~20人の企業の場合、同一労働同一賃金について「十分に理解している」割合は全体の36.2%。従業員数0~5人の企業では、わずか26.5%にとどまります。[注1]
この記事では、同一労働同一賃金における中小企業の定義や、中小企業が影響を受けるポイント、同一労働同一賃金に対応しないリスクについてわかりやすく解説します。
[注1] 中小企業庁:2021年版 中小企業白書
▼そもそも「同一労働同一賃金とは?」という方はこちら
同一労働同一賃金とは?適用された理由やメリット・デメリットについて
目次
同一労働同一賃金に罰則はありませんが、放置すると損害賠償のリスクが高くなります。
同一労働同一賃金とは、「正社員と非正規社員を平等に扱う概念」のように認識されていても、具体的にどのような対策が必要かわからない方も多いのではないでしょうか?
本資料では、どのような状態が「不平等」とみなされうるのかや、企業が対応すべきことを4つの手順に分けて解説しております。 自社でどのような対応が必要か確認したい方は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. 同一労働同一賃金で中小企業はどう変わった?4つの影響を解説
同一労働同一賃金の導入により、中小企業のあり方は大きく変わりました。
中小企業はまず、基本給・賞与・各種手当・福利厚生や教育訓練の4点について、不合理な待遇差を是正しなければなりません。
同一労働同一賃金の中小企業への影響を詳しく見ていきます。
1-1. 4つの不合理な待遇差を是正する必要がある
同一労働同一賃金の実現に向けて、まず厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン」を参照しましょう。
厚生労働省のガイドラインによると、企業は「基本給」「賞与」「各種手当」「福利厚生・教育訓練」の4つの不合理な待遇差をなくす必要があります。
[注2] 厚生労働省:パートタイム・有期雇用労働法の施行にあたっての中小企業の範囲
関連記事:同一労働同一賃金で賞与はどうなる?就業規則や罰則についても解説
関連記事:同一労働同一賃金で各種手当はどうなる?最高裁判例や待遇差に関して
関連記事:同一労働同一賃金における福利厚生の待遇差や実現するメリットとは
1-2. 労働者の待遇差への説明責任が生じる
また、同一労働同一賃金の導入により、非正規雇用労働者は正社員との待遇差について企業に説明を求めることができるようになります。
労働者への説明責任を果たすため、「なぜ待遇差が設けられているか」「なぜ待遇差が不合理なものではないか」を整理しておきましょう。
関連記事:同一労働同一賃金の説明義務はどう強化された?注意点や説明方法も解説
1-3. 人件費が高騰する可能性がある
正社員との待遇差を解消するため、非正規雇用労働者の待遇を引き上げる場合、人件費が高騰する可能性があります。基本給・賞与・各種手当だけでなく、福利厚生や教育訓練も拡充する場合、一時的なコスト増が中小企業の課題となります。
同一労働同一賃金を実現するため、正社員の待遇を引き下げるのは望ましい対応ではありません。
厚生労働省のガイドラインでも、「正社員と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差を解消するに当たり、基本的に、労使の合意なく正社員の待遇を引き下げることは望ましい対応とはいえない」としています。[注2]
非正規雇用労働者の正社員化や、各種手当の共通化によって待遇差を解消する場合は、厚生労働省の「キャリアアップ助成金」などを活用し、コストの負担を抑えることが可能です。
[注2] 厚生労働省:パートタイム・有期雇用労働法の施行にあたっての中小企業の範囲
1-4. 人事制度を整備するための工数が増える
厚生労働省のガイドラインによると、総合職・エリア総合職・一般職など、複数の雇用管理区分が存在する場合も、雇用管理区分ごとに同一労働同一賃金を実現しなければなりません。
そのため、人事制度を整備するための工数が一時的に増加する可能性があります。
同一労働同一賃金の実施に向けて、どのように人事制度を構築すればよいかわからない場合は、各都道府県の「働き方改革推進支援センター」を相談先として利用できます。
2. 同一労働同一賃金の対象となる「中小企業」の定義
そもそも、同一労働同一賃金の対象となる「中小企業」は、どのような事業者を差すのでしょうか。
同一労働同一賃金の根拠となる「パートタイム・有期雇用労働法」では、以下の条件のいずれかに該当する事業者を中小企業として定義しています。
上記の表のように、業種の分類によって中小企業の範囲が異なります。
たとえば、小売業やサービス業では資本金(または出資金)が5,000万円以下の企業が中小企業に該当しますが、卸売業の場合は1億円以下の企業のみ中小企業として認められます。
同一労働同一賃金の導入にあたって、自社が中小企業に当たるかどうか確認しておきましょう。[注3]
[注3] 厚生労働省:同一労働同一賃金ガイドライン
3. 同一労働同一賃金の対応をそのままにしておく2つのリスク
同一労働同一賃金の導入により、中小企業は人件費の高騰や、人事制度の整備のための工数増加といった影響を受けます。
しかし、同一労働同一賃金の実現に時間やコストがかかるからといって、対応を先延ばしにすると思わぬ失敗をする可能性があります。
原則として、同一労働同一賃金に違反しても罰則はありません。しかし、正社員と非正規雇用労働者の不合理な待遇差をそのままにしていると、企業は2つのリスクを抱えます。
3-1. 同一労働同一賃金に違反しても罰則はない
同一労働同一賃金に関連する法律として、2020年4月1日施行の「パートタイム・有期雇用労働法」があります。
パートタイム・有期雇用労働法には、企業が同一労働同一賃金に違反した場合の罰金や科料が明記されていません。そのため、企業が不合理な待遇差を設けたとしても、パートタイム・有期雇用労働法によって取り締まりされることはありません。
ただし、悪質な企業に対しては、行政より指導・勧告が行われる可能性があります。
関連記事:パートタイム・有期雇用労働法の内容を分かりやすく解説
3-2. 同一労働同一賃金に違反した場合の2つのリスク
また、同一労働同一賃金に対応せず、そのままにしておいた場合、企業は次の2つのリスクを抱えます。
- 非正規雇用労働者の採用や定着率への悪影響
- 不合理な待遇差をきっかけとして民事訴訟に発展する可能性
正社員と非正規雇用労働者の間に不合理な待遇差がある企業は、採用や定着率に悪影響が生じるリスクがあります。また、不合理な待遇差をきっかけとして、労働者が民事訴訟を起こすリスクにも注意が必要です。
もし裁判所において不合理な待遇差があると認められた場合、正社員と非正規雇用労働者の賃金の差額の支払いや、損害賠償の支払いが発生する可能性があります。
同一労働同一賃金に違反した場合の罰則がないからといって、同一労働同一賃金に対応しないと、上記のリスクを抱えることを知っておきましょう。 当サイトでは、同一労働同一賃金におけるリスク対策として、企業が対応すべきことを図を用いて解説した資料を無料で配布しております。
自社の対応に関して不安な点があるご担当者様は、こちらから「同一労働同一賃金 対応の手引き」をダウンロードしてご確認ください。
4. 中小企業は同一労働同一賃金の実現に向けて早めの対応を!
2021年4月より、同一労働同一賃金が中小企業にも適用されました。
中小企業は大企業同様、「基本給」「賞与」「各種手当」「福利厚生・教育訓練」の4つの観点から、不合理な待遇差を見直す必要があります。
同一労働同一賃金の根拠となる「パートタイム・有期雇用労働法」には、同一労働同一賃金に違反した場合の罰則は明記されていません。しかし、非正規雇用労働者の採用や定着率への悪影響や、民事訴訟に発展する可能性を考慮し、中小企業であっても同一労働同一賃金の考え方を深く理解することが大切です。
関連記事:パートタイム・有期雇用労働法に定められた罰則の詳細を解説
同一労働同一賃金に罰則はありませんが、放置すると損害賠償のリスクが高くなります。
同一労働同一賃金とは、「正社員と非正規社員を平等に扱う概念」のように認識されていても、具体的にどのような対策が必要かわからない方も多いのではないでしょうか?
本資料では、どのような状態が「不平等」とみなされうるのかや、企業が対応すべきことを4つの手順に分けて解説しております。 自社でどのような対応が必要か確認したい方は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
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