労働条件通知書とは?必要な理由や項目別の書き方について
更新日: 2023.9.29
公開日: 2022.1.19
YOSHIDA
労働条件通知書とは賃金や労働時間、休暇などを記載し、使用者から労働者への交付が法律上義務付けられている書類です。
内容は絶対に記載が必要な事柄と、そうではない事柄に分かれるものの、労使間のトラブルを防止するためにも、どちらの内容も記載するほうが望ましいでしょう。
この記事では、労働条件通知書の内容と、交付が必要な理由、項目別の書き方を詳しく解説します。
目次
紙で雇用契約書を取り交わしている場合、以下のような課題はないでしょうか。
・労働条件通知書を交付するために来社してもらったり、郵送したりするのが手間
・早く働き始めてほしいが、雇用契約の締結に時間がかかってしまう
そのようなお悩みをお持ちの方におすすめなのが、雇用契約書の電子化です。システムを利用して雇用契約書を電子化すると、オンライン上で雇用契約書の締結や労働条件通知書の交付ができ、時間と場所を選ばずスピーディーに雇用契約を締結することができます。
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1. 労働条件通知書とは?労働者への交付が義務付けられている書類
労働条件通知書とは、労働基準法第15条により、会社(使用者、事業主)が労働者と雇用契約をする際、交付が義務付けられる書類です。[注1](2019年4月以降は電磁的方法も可。詳細は後述。)
労働条件通知書に明記する内容は、大きく以下の2つに分かれます。
- 絶対的明示事項:労働契約の期間や始業・就業の時刻など、法律上明記が義務付けられている内容
- 相対的明示事項:退職金の有無など口頭通知でも問題ない内容
これらの内容を記載し、労働者の雇い入れ時には必ず交付が必要です。
各明示事項の詳細に関しては、4章で詳しく説明します。
1-1. 労働条件通知書と雇用契約書の違い
労働条件通知書と似た書類に「雇用契約書」があります。
双方の違いは、法的に交付する義務はあるか、双方の合意が必要かという点です。
労働条件通知書は、会社から労働者に対してのみ交付するもので、法律上、交付が義務付けられている書類です。
一方、雇用契約書は法律上、作成する義務はありません。
労働条件に対する双方の合意を示す書類であり、労働条件通知書とは異なり、2部作成して署名押印をおこないます。
実務上は効率化を図るために、これらをまとめて「労働条件通知書兼雇用契約書」として交付するケースもあります。
2. 入社時に労働条件通知書が必要な理由
労働条件通知書が必要な法的根拠としては、労働基準法第15条第1項の下記条文が該当します。
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。
労働基準法では立場の弱い労働者を保護するために、このような規定を使用者に求めており、労働条件の通知をおこなう手段として労働条件通知書の作成が義務づけられています。
また、法的な理由にかかわらず、労働条件の通知は、労働時間や賃金などは労働者がその条件で働くかどうかを決定する上で重要となります。書類だけでなく電子媒体での交付も可能で、労使間のトラブルを防止する役割も担っています。
2-1. 雇用契約書もトラブルを避けるために作成すべき
前項で雇用契約書の作成は義務付けられていないと説明しましたが、労働条件に労使間で合意している確かな証拠として、雇用契約書は締結しておくべきです。
従業員と水掛け論のようなトラブルを避けるためにも、雇用契約書もしくは労働条件通知書兼雇用契約書の作成をしておくと安心でしょう。
2-2. 2019年4月以降は労働条件通知書の電子交付も認められる
労働条件通知書は、労働者にとって非常に重要な内容が書かれているため、従来は書面での交付しか認められていませんでした。しかし、法改正により2019年4月以降、下記の点に留意すればFAXやEメールなど電子的方法でも明示できるようになりました。[注2]
- 労働者が希望した場合のみ、下記により交付が可能
- FAX、電子メール、SNSが利用できる(ショートメール(SMS)は不適切)
- 印刷・保存がしやすいよう、添付ファイルで送付すること
- 本当に書類(データ)が到達したか、労働者に確認すること
- 到達した書類(データ)は、なるべく印刷して保存するように伝えること
なお、労働者へ明示が必要な内容自体に変更はないため、中身を省略して送付するなどは認められないので注意しましょう。
3. 労働条件通知書交付のタイミングと対象者
労働条件通知書は従業員の雇い入れ時(入社時)に交付する必要があります。
ただし、職業安定法改正により2018年1月1日以降、下記のような場合にも対応が必要です。
3-1. 新卒者を雇い入れるとき
新卒者を雇用する場合、内定までに労働条件通知書を交付すべきであるとされました。
そのため、内定通知書だけでなく、入社前に具体的な労働条件の案内が必要です。
3-2. 求人募集時
ハローワークや自社ホームページなどで求人を出す際も、労働条件を明示しなければいけません。
その際、掲載場所の都合で、全ての内容を記載できない場合、求職者と実際に接触する前に、労働条件を明示すべきであるとされています。
3-3. 労働条件に変更があったとき
労働条件に変更があった際も、求職者へ通知が必要となります。
トラブル防止のためにも速やかな対処が必要です。
3-4. 労働条件通知書を交付する対象者
正社員、有期雇用労働者、日雇いを含む短時間労働者を問わず、雇用する全ての労働者に対して交付が必要です。
また、賃金、労働時間といった労働条件は正社員かアルバイトかによっても違いがあります。
そのため、労働者を雇う際は、個別に内容を通知しましょう。
なお、有期雇用者の場合、契約更新時は内容が同一であっても、交付が必要です。
4. 労働条件通知書の書き方を項目別に解説
労働条件通知書に書く内容は「絶対的明示事項」と「相対的明示事項」に分かれます。それぞれの書き方を解説します。
4-1. 絶対的明示事項
以下の項目は、労働条件通知書に必ず明記しなければいけません。
- 労働契約の期間
期間の定めの有無を記載。定めがある場合は、具体的な年月日を記載する。 - 就業場所と従事すべき業務の内容
実際に働く店舗名や会社名(支店名)と、具体的な業務内容(経理、人事など)を記載。変更の可能性がある場合、その旨も記載する。 - 始業及び終業の時刻
業務の開始・終了時間を記載。シフト制など、複雑な場合は別途参照資料を添付してもよい。 - 所定労働時間を超える労働の有無
残業があるかないか「有、無」の形で記載する。 - 休憩時間、休日、休暇
休憩時間は「〇分」のように時間を記載。休日は所定休日、休暇は年次有給休暇、代替休暇の有無などを詳しく記載。 - 就業時転換に関する事項(労働者を二組以上に分けて就業させる場合)
日勤・夜勤など交代制勤務の場合、詳細を記載。 - 賃金の決定、計算及び支払いの方法
基本賃金、諸手当(常に支払われるもの)、時間外労働時の割り増し賃金の決定や計算方法を記載。最低賃金を下回らないように注意する。 - 賃金の締め切り及び支払いの時期
賃金の締切日(月末など)と、支払い方法(所定の銀行に振り込むなど)を明記する。 - 退職に関する事項(解雇事由を含む)
定年制の有無や継続再雇用の有無を記載。また、自己都合退職の際の手続きや解雇事由も明記する。
4-2. 有期雇用労働者の場合、他に4項目明記が必要
短時間・有期雇用労働者の場合、上記に加え、下記の内容の明記も必要です。
- 昇給の有無
- 賞与の有無
- 退職金の有無
- 相談窓口の記載
雇用形態によるそれぞれの項目の違いに注意しましょう。
4-3. 相対的明示事項
相対的明示事項に該当する項目がある場合、労働者へは口頭で明示するだけでよく、労働条件通知書に明記する義務はないものです。
ただし、労使トラブルを防止する観点からも、書面で交付する方が望ましいでしょう。
- 退職手当が該当する労働者の範囲
- 退職手当の決定・計算・支払い方法、支払時期
- 臨時に支払われる賃金(賞与など)
- 最低賃金
- 労働者に負担させる食費や作業用品など
- 安全・衛生に関する内容
- 職業訓練に関する内容
- 災害補償、業務外の傷病扶助について
- 表彰、制裁について
- 休職について
以上、該当する項目がある場合、労働条件通知書にも明示することをおすすめします。
5. 労働条件通知書のテンプレートと記入例を紹介
労働条件通知書のテンプレートは、労働局(厚生労働省)のサイトからダウンロードして利用することが可能です。
業種や雇用形態ごとに適した労働条件通知書のテンプレートが用意してあるので、自社にあった適切な様式を利用するようにしましょう。
▼こちらからダウンロード可能です。
様式集|東京労働局
そのほか、各都道府県の労働局のサイトでは、労働条件通知書の記入例を紹介している場合もあります。
記入例を参考に作成することで、不備のない内容で労働条件通知書を作成することができるでしょう。
参考:労働条件通知書 記入例|鹿児島労働局
参考:労働条件通知書|沖縄労働局
6. 労働条件通知書を交付しないのは違法!記載事項を押さえて労働条件を明示しよう
労働条件通知書は法律上、交付しなければいけない書類であり、事業者は労働者に対して書面や電子媒体で明示しなければいけません。
また、内容には絶対的明示事項というものがあり、雇用条件によっても記載する内容が異なります。
労働条件は労働者が働く上で重要な事柄となるため、テンプレートなども活用し、記載内容に誤りや抜け漏れが無いよう十分注意して作成しましょう。
紙で雇用契約書を取り交わしている場合、以下のような課題はないでしょうか。
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