労働時間の上限は1日8時間・週40時間!上限規制と違反リスクを解説
更新日: 2026.5.12 公開日: 2020.3.27 (特定社会保険労務士)

労働時間は「1日8時間・週40時間まで」と労働基準法で定められており、これを超えて働かせる場合には、36協定の締結と時間外労働の上限遵守が必要です。また、時間外労働には「月45時間・年360時間」という上限があり、違反すると罰則や是正指導の対象となる可能性もあります。
休憩時間や残業時間の定義、副業・兼業時の通算ルールなどは正しく理解していないと、意図せず法令違反となるケースも少なくありません。近年は上限規制の適用拡大や制度見直しも進んでおり、最新のルールを押さえることが重要です。
本記事では、労働時間の上限や36協定のルール、違反リスクを整理するとともに、自社の状況を確認するための実務ポイントまで、わかりやすく解説していきます。
関連記事:労働時間の計算方法や上限規制、労働時間の判定事例をわかりやすく解説!
目次
毎年対応が必要な36協定の届出。しかし、働き方改革関連法による上限規制の変更や複雑な特別条項など、正確な知識が求められる場面は増え続けています。
36協定届の対応に不安な点がある方は、今のうちに正しい手順と注意点を確認しませんか。
◆この資料でわかること
- 働き方改革関連法による上限規制の変更点
- 罰則を避けるための「特別条項」の正しい知識と運用
- ミスなく進めるための締結・届出の具体的な手順
- 【記入例付き】新しい届出様式の書き方
本資料では、届出作成~提出の流れまで36協定の届出について網羅的に解説しており、毎年発生する煩雑な業務の効率化に役立ちます。ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 労働時間の上限とは


労働基準法では、1日や1週間の労働時間に上限が定められています。まずは、その基本的なルールと、上限が設けられている理由を確認していきましょう。
1-1. 法定労働時間は「1日8時間・週40時間」
労働基準法第32条では「1日8時間・週40時間まで」と労働時間の上限が定められています。これを「法定労働時間」とよび、企業は原則として法定労働時間の範囲を超えて労働させることはできません。
ただし、労働基準法第36条に基づく労使協定(36協定)を締結し、労働基準監督署へ届出をおこなうことで、法定労働時間を超えた労働が可能です。
法定労働時間を超えた労働は「時間外労働(残業)」に該当します。残業時間にも上限があり、36協定を締結している場合でも、原則として「月45時間・年360時間」を超えることはできません。
1-2. 所定労働時間と法定労働時間
1-1章で解説している法定労働時間のほかに、労働時間には、「所定労働時間」があります。
所定労働時間とは、各企業が就業規則などで定めている勤務時間のことです。法定労働時間を超えた残業には、法律に基づき割増賃金の支払いが必要です。一方で、所定労働時間を超えていても法定労働時間の範囲内であれば、通常の賃金以外に割増賃金が必要にならない点が相違点です。
このように、一口に「残業時間」といっても、その内容によって扱いが異なります。所定労働時間を超えたものか、法定労働時間を超えたものかを区別して理解しましょう。
1-3. 労働時間に上限がある理由
労働時間に上限が設けられている主な理由は、従業員の心身の健康を守るためです。労働時間が長くなるほど、睡眠不足や疲労の蓄積が起こりやすくなります。
また、自由に使える時間が減ることで、家族との時間や休養の機会が失われ、ストレスを溜めやすくなります。こうした状態が続くと、体調不良やメンタル不調につながる可能性もあるでしょう。
従業員の健康が損なわれ、休職者や離職者の増加につながると、企業にとっても大きな影響が避けられません。従業員の健康を守り、ワークライフバランスを実現して企業の生産性を維持するために、労働時間の上限は設けられています。
1-4. 労働時間の上限は変更される可能性がある
時間外労働の上限規制は、大企業では2019年4月から、中小企業では2020年4月から適用されています。建設業や自動車運転業務、医師など一部の業務は適用が猶予されていましたが、2024年4月からはこれらの業務にも上限規制が適用されました。
現行制度は比較的新しい法律ですが、社会情勢の変化などにより、今後さらに見直される可能性もゼロではありません。現時点で具体的な見直し案や時期は出ていませんが、人事担当者としては制度変更の動向を継続的に確認していくことが重要です。
2. 労働時間と休憩時間・残業時間の関係性


労働時間の上限を正しく管理するには、休憩時間と残業時間の定義を理解することが重要です。ここでは、基本となる考え方を整理していきます。
2-1. 労働時間と休憩時間の関係
休憩時間とは、労働者が労働から離れ、自由に利用できる時間のことです。労働基準法では、次のとおり休憩の付与が義務付けられています。
- 1日の労働時間が6時間を超え8時間以内:45分以上
- 1日の労働時間が8時間を超える場合:60分以上
例えば、次のように勤務時間ごとに必要な休憩時間が異なります。
- 9:00~15:00(実働6時間)→休憩は必須ではありません(※任意での付与は可能)
- 9:00~16:00(実働6時間超~8時間以内)→45分以上の休憩が必要
- 9:00~18:30(実働8時間超)→60分以上の休憩が必要
このように、労働時間に応じて最低限確保すべき休憩時間が決まっているため、勤務時間の設計やシフト作成の際には注意が必要です。
また、休憩は「自由に利用できること」が前提です。電話当番や来客対応など、何らかの業務に従事している場合、その時間は休憩とは認められません。休憩を与えない、または取得を妨げる行為は法令違反となるため、運用面にも注意しましょう。
関連記事:労働時間に対する休憩時間数とその計算方法をわかりやすく解説
2-2. 残業時間は法定労働時間を超えて労働があった時間
残業には「法定内残業」と「法定外残業」の2種類があります。
- 法定内残業:所定労働時間を超え、法定労働時間の範囲内での労働
- 法定外残業:法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた労働
このうち、割増賃金の支払い義務があるのは、「法定外残業」です。法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて働いた場合、25%以上の割増賃金が必要となります。
一般的に「残業」という言葉は法定内残業と法定外残業の両方を含みますが、このように割増賃金の支払い義務が異なるため、区別が重要です。特に、所定労働時間が8時間未満の企業では、賃金未払いを起こさないためにも違いをしっかりと理解しておきましょう。
関連記事:残業時間の定義とは?正しい知識で思わぬトラブルを回避!
2-3. 労働時間に含まれる時間・含まれない時間
労働時間とは、「労働者が客観的に見て使用者の指揮命令下におかれている時間」を指します。この考え方に基づくと、次のような時間も労働時間に含まれます。
- 制服や作業着への着替え時間(着用が義務付けられている場合)
- 参加が強制となっている研修
- 業務上必要であるとして使用者から指示された学習時間
- 始業前の清掃・朝礼時間(使用者の指示によるもの)
- 休憩時間中の電話番 など
これらも含めて、労働時間の上限を超えないよう確認しましょう。
3. 36協定と時間外労働の上限規制


原則として、企業は法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた労働を命じることはできません。これを超えて従業員を労働させるには、労使間で36協定を締結し、労働基準監督署へ届出をおこなう必要があります。
ただし、36協定を締結したとしても、無制限に残業させられるわけではありません。ここでは、36協定と時間外労働の上限規制について解説します。
3-1. 36協定の締結・届出の概要
36協定とは、法定労働時間を超えて従業員に時間外労働や休日労働をさせる場合に必要となる、労使間の協定です。正式には「時間外・休日労働に関する協定」といい、労働基準法第36条に基づくため、「36(サブロク)協定」とよばれています。
36協定を締結する際は、使用者と労働者の過半数代表者(または過半数労働組合)との間で内容を合意し、所轄の労働基準監督署へ届出をおこなう必要があります。届出をしていない場合、従業員の同意があっても、時間外労働をさせることはできません。
36協定届には、時間外労働をおこなう業務の範囲や、1日・1ヵ月・1年ごとの延長時間の上限などを定めます。また、原則として有効期間は1年以内とされており、毎年見直しと更新が必要です。
なお、36協定は「締結して終わり」ではありません。実際の労働時間が協定の範囲内に収まっているかを継続的に管理していきましょう。
参考:時間外労働・休日労働に関する協定届|厚生労働省 東京労働局
3-2. 時間外労働の上限は月45時間・年360時間
時間外労働の上限は、原則として「月45時間・年360時間まで」です。これは、長時間勤務を防止するために設けられた基準です。
例えば、営業日が月20日の企業の場合、1日あたり2時間15分の残業をすると、月45時間に達します。一見少なく感じるかもしれませんが、毎日約2時間、睡眠時間や家族と過ごす時間、趣味の時間を残業に費やしていると考えれば、いかに多くの時間を企業に使っているか、イメージができるでしょう。日々積み重なることで生活への影響は大きくなります。
そのため、月単位だけでなく年単位でも上限が設定されており、長期間にわたる過重労働を防ぐ仕組みとなっています。
長時間労働は、メンタル不調や過労死といった健康リスクに加え、離職や訴訟といった企業リスクにもつながります。人事担当者は、単に上限を守るだけでなく、残業削減の仕組みづくりまで意識することが重要です。
3-3. 特別条項付き36協定の上限と要件
臨時的な特別の事情がある場合には、特別条項付き36協定を締結することで、上限(月45時間・年360時間)を超えた残業が認められるケースがあります。ただし、この場合でも次の上限が設けられています。
- 時間外労働が「年720時間以内」
- 時間外労働+休⽇労働が「⽉100時間未満」
- 時間外労働+休⽇労働のどの2~6ヵ月平均を平均しても「月80時間以内」
- 時間外労働が月45時間を超えられるのは「年6回まで」
このように、特別条項を適用した場合でも無制限な長時間労働は認められていません。休日労働も含めて管理する必要がある点に注意が必要です。
関連記事:労働基準法の改正による労働時間規制に企業がおこなうべき対策とは
3-4. 上限規制の適用の歴史と経緯

時間外労働の上限規制は、働き方改革関連法により導入されました。大企業では2019年4月、中小企業では2020年4月から適用されています。
それ以前は、36協定に特別条項を設ければ、明確な法定上限が存在せず、罰則規定もなかったため、実質的に青天井で時間外労働が可能な状況でした。その結果、過労死などの深刻な問題が発生し、社会的にも大きく取り上げられるようになりました。
こうした背景を受け、特別条項がある場合でも法的な上限が設けられ、現在のような厳格な規制へと見直されることとなったのです。
4. 1日・月・年の労働時間の上限の計算と早見表


これまで解説してきたとおり、労働時間には「法定労働時間」と「時間外労働」の上限がそれぞれ定められています。実務では、それらを合算した「総労働時間の目安」の把握が重要です。
ここでは、1日・1ヵ月・1年ごとの上限の考え方を整理したうえで、一覧で確認できる早見表を掲載します。
4-1. 1日の労働時間の上限
法定労働時間は「1日8時間まで」と定められていますが、時間外労働の1日の上限には、法的な制限はありません。そのため、理論上は長時間労働も可能です。
ただし、目安もなく働かせ続けると、月の序盤で1ヵ月の上限を超えるおそれがあります。そのため、目安時間を設けるとよいでしょう。例えば、所定労働日数が20日の企業の場合、1ヵ月の時間外労働の上限45時間を20日で割ると、
- 45時間÷20日=2.25時間(2時間15分)/日
となります。これに法定労働時間8時間を加えると、
- 8時間+約2.25時間 = 約10.25時間(10時間15分)
が、1日の総労働時間の目安となります。
ただし、これはあくまで「月45時間の範囲内に収めるための平均的な目安」です。実際には日ごとにばらつきが生じるため、1日単位だけでなく1ヵ月単位での管理が欠かせません。
4-2. 1ヵ月の労働時間の上限
1ヵ月を4週とすると、法定労働時間の上限は次のとおりです。
- 40時間×4週=160時間
ここに時間外労働の上限である45時間を加えると、
- 160時間+45時間=205時間
が、1ヵ月における総労働時間の上限目安となります。
ただし、時間外労働が月45時間を超えられるのは、特別条項を適用する場合でも、「年6回まで」という制限があります。また、休日労働と合わせて「月100時間未満」「2~6ヵ月平均80時間以内」といった条件を満たす必要があります。そのため、実務上は「1ヵ月205時間」を基準として労働時間を管理し、上限を超えないようにコントロールすることが安心です。
4-3. 1年の労働時間の上限
年間の法定労働時間の上限は、次のように考えます。
- 40時間×365日÷7日=約2,085時間
一般的な企業(年間所定労働日数240日・1日8時間勤務)では、所定労働時間として「240日×8時間=1,920時間」となるケースが多く見られます。これに、年間の時間外労働の上限を加えると、
- 原則(36協定適用時):1,920時間+360時間=約2,280時間
- 特別条項適用時:1,920時間+720時間=約2,640時間
となります。これが年間の総労働時間の上限目安です。ただし、36協定で定めた時間が360時間や720時間未満であれば、その範囲内での管理が必要ですので注意しましょう。
4-4. 1日・月・年の労働時間上限の早見表
これまでの内容をもとに、労働時間の上限を一覧で整理すると次のとおりです。
|
区分 |
法定労働時間 |
36協定(原則) |
特別条項適用時 |
|
1日 |
8時間 |
上限なし(※月・年で規制) |
同左 |
|
1週間 |
40時間 |
上限なし(※月・年で規制) |
同左 |
|
1ヵ月 |
160時間 |
+45時間(計205時間) |
+100時間未満(計260時間未満)※休日労働含む |
|
1年間 |
2,085時間(※目安) |
+360時間(計2,280時間) |
+720時間(計2,640時間) |
※1ヵ月=4週で概算
※特別条項は、その他にも「年6回まで」「2~6ヵ月平均80時間以内」の制限あり
5. 労働形態ごとの労働時間と計算方法


労働時間の上限は「1日8時間・週40時間」が原則ですが、採用している労働形態によって、上限の考え方や管理方法が異なります。ここでは、「変形労働時間制」「フレックスタイム制」「裁量労働制」について、それぞれの特徴と労働時間の考え方を解説します。
5-1. 変形労働時間制(1ヵ月単位・1年単位)
変形労働時間制とは、一定期間(1ヵ月または1年)を平均して、週の労働時間が40時間以内となる場合に限り、「1日8時間・週40時間」の原則を超えて働かせることができる制度です。
変形労働時間制では、1日や1週間単位ではなく、対象期間全体で労働時間を管理します。ただし、あくまで基準となるのは「週40時間」の法定労働時間です。対象期間における労働時間の上限は、次の式で算出します。
- 労働時間の上限=40時間×対象期間の暦日数÷7日
この計算式に当てはめると、1ヵ月単位の変形労働時間制における労働時間の上限は、次のとおりです。
- 28日(2月):約160時間
- 29日(うるう年の2月):165.7時間
- 30日(4月・6月・9月・11月):約171.4時間
- 31日(1月・3月・5月・7月・8月・10月・12月):約177.1時間
変形労働時間制は、繁忙期と閑散期で労働時間を調整できます。しかし、制度設計やシフト管理を誤ると、時間外労働の計算ミスにつながりやすいです。注意して管理しましょう。
関連記事:変形労働制でも残業代は出さないとダメ!残業時間の計算ルールも解説
5-2. フレックスタイム制
フレックスタイム制とは、一定の期間(清算期間)内で総労働時間を満たすことを前提に、日々の始業・終業時刻を従業員が自由に決められる制度です。必ず勤務しなければならない「コアタイム」と、自由に出退勤できる「フレキシブルタイム」を設けることもできます。
変形労働時間制との違いは次の点にあります。
- フレックスタイム制:1日の所定労働時間が決められておらず、従業員が自由に出退勤できる
- 変形労働時間制:あらかじめ1日の所定労働時間が決められている
フレックスタイム制では、清算期間全体で週平均40時間以内におさまっていれば問題ありません。総労働時間の上限は、次の式で算出します。
- 労働時間の上限=40時間×清算期間の暦日数÷7日
なお、清算期間を1ヵ月を超え3ヵ月以内とする場合、さらに「各1ヵ月ごとの週平均が50時間以内」という制限が設けられています。
制度の自由度が高い一方で、労働時間の把握や長時間労働の抑制が課題となるため、適切な管理体制が不可欠です。
関連記事:フレックスタイム制の清算期間とは?仕組みや時間外労働の計算方法を解説
5-3. 裁量労働制
裁量労働制とは、実際の労働時間に関わらず、あらかじめ定めた「みなし労働時間」を働いたものとみなして給与を支払う制度です。業務の進め方や時間配分が従業員の裁量に委ねられる職種に適用されます。
「みなし労働時間」は労使で定めますが、この場合も、基本的な上限は「1日8時間・週40時間まで」の法定労働時間が基準となります。法定労働時間を超えるみなし労働時間を設定する場合には、36協定の締結が必要です。
また、2019年4月より、労働安全衛生法が改正され、すべての従業員に対して「客観的な記録による労働時間の把握」が企業の法的義務となりました。裁量労働制であっても、労働時間を適正に把握しなければなりません。長時間労働が発生している場合には、企業の安全配慮義務が問われる可能性もあるため、健康管理も重要です。
関連記事:裁量労働制とは?労働時間管理における3つのポイントを徹底解説
6. 2024年4月適用|職種別の上限規制


2019年の働き方改革関連法施行後も、一部の業種は時間外労働の上限規制の適用が猶予されていましたが、2024年4月からはこれらの業種にも全面適用されました。ただし、一般の上限規制とは異なる特例が設けられているものもあります。対象業種と、上限規制の内容をまとめました。
|
業種 |
2024年以降の取り扱い |
|
建設業 |
上限規制が全て適用 ただし、災害時における復旧及び復興の事業には次の適用無し
|
|
自動車運転業務 |
特別条項付き36協定を締結する場合、
次の適用無し
|
|
医師 |
特別条項付き36協定を締結する場合、
次の適用無し
医療法等により追加的健康確保措置が義務 |
|
砂糖製造業(鹿児島県・沖縄県) |
上限規制が全て適用 |
7. 労働時間の上限を超えるリスクと対策


労働基準法で定められた上限を超えて労働させた場合、罰則の対象となるだけでなく、損害賠償や企業イメージの低下など、さまざまなリスクにつながるおそれがあります。ここでは、労働時間の上限を超えた場合に生じる具体的なリスクと、企業として講じるべき対策を解説します。
7-1. 労働基準法違反で罰則が発生する可能性がある
36協定を締結せずに「1日8時間・週40時間」を超えて労働させた場合や、36協定を締結していても「月45時間・年360時間」の上限を超えて残業させた場合には、労働基準法違反となり、罰則が科される可能性があります。
罰則は、違反した従業員ごとにつき「6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(もしくはその両方)」とされています。違反が発覚して直ちに罰則が適用されるとは限りません。しかし、長時間労働が常態化している場合や、従業員からの申告・通報があった場合には、労働基準監督署の調査によって是正勧告を受けることもあります。
さらに、過重労働によって従業員の健康被害が発生した場合には、安全配慮義務違反として損害賠償責任を問われるリスクもあります。過労死など重大な事案に発展すれば、企業への影響は極めて大きくなるでしょう。
関連記事:労働時間の労働基準法違反で企業が受ける罰則とは?違反しないための対策を解説
7-2. 従業員の健康リスクと企業の安全配慮義務
労働時間や残業時間の上限は、従業員の心身の健康を守るために設けられています。上限を超える労働が続くと、疲労の蓄積や睡眠不足により、体調不良やメンタル不調を引き起こすリスクが高まります。
さらに従業員が休職・離職に至れば、人手不足や業務の停滞につながり、企業の生産性低下も招くでしょう。また、健康被害が表面化する前に離職が進むケースも少なくありません。
企業には、従業員が安全かつ健康に働ける環境を整える「安全配慮義務」があります。単に上限を守るだけでなく、長時間労働を未然に防ぐ体制をつくりましょう。
7-3. 企業イメージ・採用への影響
労働基準法や長時間労働の実態が明らかになると、企業イメージの低下は避けられません。近年はSNSや口コミサイトの影響力が大きく、企業規模に関わらず情報が拡散されやすい環境にあります。
特に、未払い残業や過重労働といった問題は「ブラック企業」として認識されやすく、採用活動にも大きな影響を及ぼします。応募者の減少や内定辞退の増加につながるだけでなく、既存の取引先からの信頼低下を招く可能性もあります。
一度低下した企業イメージを回復するのは容易ではありません。長時間労働の是正は、法令遵守だけでなく、企業価値を守るための重要な取り組みといえるでしょう。
8. 労働時間の上限を守るための実務対策


労働時間の上限規制は、制度として理解するだけでなく、日々の運用で確実に守ることが重要です。ここでは、実務で取り組むべき代表的な対策を紹介します。
8-1. 勤怠管理システムによる自動アラート
労働時間の上限管理において有効なのが、勤怠管理システムのアラート機能です。多くの勤怠管理システムでは、次のような条件で自動通知を設定できます。
- 月の残業時間が一定時間(例:30時間・40時間)に近づいたとき
- 月45時間を超える残業が年6回に接近したとき
- 36協定で定めた上限に達する見込みがあるとき
こうしたアラートを活用することで、超過してから対応するのではなく、事前に本人や管理職へ注意喚起をおこなうなど、対応が可能になります。Excelなどの手作業では限界があるため、システムによる自動検知の仕組みを整備することが望まれます。
勤怠管理システムのアラート機能は便利ですが、「設定しただけで安心してしまう」ケースが非常に多いです。実際の現場では、アラートが出ても業務が忙しいと見過ごされ、そのまま上限を超えてしまうことも少なくありません。
重要なのは、アラートを単なる通知で終わらせず、「アクションにつなげる仕組み」を作ることです。例えば、一定時間を超えた段階で上長承認を必須にする、あるいは人事にも自動共有して是正対応を促すといった運用が有効です。
さらに、繰り返し改善がされない部署については、部長会議で一覧化して共有するなど、少し踏み込んだ施策を検討するのも、労働時間管理が形だけで終わらず、組織として改善を定着しやすくなるポイントです。
8-2. 36協定の適切な運用と定期チェック
36協定は、締結すれば終わりではなく、日々の運用の中で適切に管理することが重要です。有効期間は原則1年以内のため、更新漏れがあると協定が失効し、時間外労働自体が違法となるリスクがあります。電子申請などを活用し、確実に届出がおこなわれる体制を整えておきましょう。
さらに、特別条項を設けている場合は、単月の管理だけでなく、
- 月45時間を超える残業が年6回以内に収まっているか
- 時間外労働と休日労働が2~6ヵ月平均で80時間以内になっているか
など、複数月にまたがったチェックが欠かせません。
こうした点を踏まえ、残業時間の実績管理と協定内容の確認を定期的におこない、上限を超えないような運用が求められています。
9. 【2026年最新】労働基準法の改正動向と今後の上限規制


働き方改革関連法の施行から一定の年数が経過し、2026年現在は「多様な働き方の実現」や「休息の質の確保」へと議論の軸が移りつつあります。こうした流れの中で、約40年ぶりとなる労働基準法の抜本的な見直しが議論されています。現時点で検討されている主な改正動向を押さえ、自社の労働時間管理体制を見直すきっかけとしましょう。
9-1. 勤務間インターバル制度の義務化
勤務間インターバル制度とは、終業から次の始業までの間に一定時間以上の休息時間を確保する制度です。現在は努力義務とされていますが、長時間労働の是正や過労防止の観点から義務化が検討されています。単に総労働時間を管理するだけでなく、具体的な時間数や義務の度合いなどもあわせて、議論されていく予定です。
関連記事:勤務間インターバル制度とは?義務化のポイントや導入方法をわかりやすく解説
9-2. 連続勤務の上限規制(14日以上の禁止)
現在の労働基準法では、連続勤務日数の明確な上限は定められていません。しかし、過重労働防止の観点から、一定日数以上の連続勤務を制限する方向での議論が進められています。具体的には、「14日以上の連続勤務の禁止」などが検討課題です。
実現した場合、休日の与え方やシフト設計に直接影響するため、特にシフト制の職場では運用の見直しが必要となる可能性があります。
関連記事:連続勤務日数が13日を超えると違法になる?労働基準法の改正案と実務対応を解説
9-3. 副業・兼業の労働時間通算ルールの見直し
副業・兼業が広がる中で、労働時間の通算ルールの見直しも議論されています。
現行制度では、複数の勤務先での労働時間を通算して時間外労働を判断する仕組みとなっていますが、実務上は把握が難しく、企業側の管理負担が大きいという課題があります。
そのため、通算方法の簡素化や、一定条件下での通算ルールの見直しが検討されています。今後の制度変更によっては、副業人材の受け入れや労働時間管理の方法が大きく変わる可能性があるでしょう。
関連記事:副業の労働時間通算ルールはいつから見直される?改正の最新動向
9-4. 週44時間特例措置の廃止の方向性
現在、常時10人未満の特定の業種(商業・保険衛生業・接客娯楽業・映画演劇業)では、週44時間まで労働させることができる特例措置が設けられています。
しかし、この特例措置の見直し・廃止が検討されています。仮に廃止された場合、これまで週44時間で運用していた企業も「週40時間」へ移行する必要があり、労働時間の見直しや人員配置の再設計が求められるでしょう。
10. 労働時間の上限規制を正しく理解し管理体制を整えよう


時間外労働の上限規制の導入によって、企業に求められる労働時間管理はより一層厳格化しています。過度な長時間労働は、従業員の健康リスクだけでなく、生産性の低下や離職の増加といった経営課題にも直結します。
また、単にルールを守るだけでなく、働きやすい環境を整える視点も欠かせません。そのためには、労働時間を正確かつタイムリーに把握できる仕組みの構築が必要です。従来のタイムカードや出勤簿による勤怠管理では、集計後にしか残業時間が把握できず、気づかぬうちに上限を超えてしまうリスクもあるでしょう。また、自己申告に依存した運用では、サービス残業の温床となる可能性もあります。
こうしたリスクを防ぐためにも、労働時間をリアルタイムで把握し、上限超過を事前に検知できるクラウド型の勤怠管理システムの活用が有効です。制度理解とあわせて管理体制を整備し、法令遵守と生産性向上の両立を目指しましょう。



毎年対応が必要な36協定の届出。しかし、働き方改革関連法による上限規制の変更や複雑な特別条項など、正確な知識が求められる場面は増え続けています。
36協定届の対応に不安な点がある方は、今のうちに正しい手順と注意点を確認しませんか。
◆この資料でわかること
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- 罰則を避けるための「特別条項」の正しい知識と運用
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