固定残業代の上限は45時間?超過するリスクを徹底解説
更新日: 2023.9.1
公開日: 2021.9.7
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残業の有無に関係なく固定給に含まれる「固定残業代」の上限は45時間といわれています。45時間を超えた時間を設定していると、違法と判断される可能性があります。
本記事では、なぜ上限が45時間なのか、45時間超えが認められることはあるのか、残業時間が45時間を超えたときのリスクなどについて解説します。
関連記事:残業時間の定義とは?正しい知識で思わぬトラブルを回避!
1. 固定残業代の上限は45時間?
固定残業代とは、実際の残業時間に関わらず、一定時間分の時間外労働に対して毎月定額で残業手当を支払う制度のことです。固定残業代を導入する際には、時間外労働を何時間分設定するのか決めなくてはなりません。
時間外手当を払わずに長時間働かせられるだろうと、設定時間を50時間や100時間にすることは不可能です。なぜなら、労働基準法第32条で労働時間は1日8時間・週40時間と決まっていて、原則として時間外労働は認められていないからです*。
しかし時間外労働は、業務量によって避けることが難しい場合もあるでしょう。そこで、労使間で36協定を結び、労働基準監督署に届出をすることによって、時間外労働が認められるようになります。
ただし時間外労働も制限なく行えるわけではなく、原則として月45時間・年間360時間が上限とされています。時間外労働の制限が月45時間なのですから、固定残業代の上限も45時間と考えるのが妥当です。
なお、固定残業代の支給額は労働基準法等で明言されていないため、45時間を超えた固定残業代に設定したからといってただちに違法になるとまではいえません。
しかし、固定残業代を45時間を超えて設定している場合、従業員や求職者から「違法な時間外労働を強いる企業なのではないか」と思われ、マイナスイメージにつながる可能性はあります。また、そもそも36協定を結んでいない状態で時間外労働をさせることは違法であるため、注意しましょう。
時間外労働については、2019年の働き方改革関連法で上限が設けられ、罰則付きで規制されるようになったことも知っておく必要があります。
*参考:労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)|e-Gov法令検索
2. 残業時間の45時間超えが認められる場合と認められない場合
1ヵ月の時間外労働は、45時間以上できないのでしょうか。業務量や進行状況によっては、45時間を超えることもあるでしょう。実は時間外労働の上限には、例外があります。その例外とは36協定で特別条項を結ぶことです。
そうすれば月45時間・年間360時間の制限を超えて時間外労働ができます。しかし無制限に時間外労働ができるわけではなく、いくつかの条件があります*。
- 1ヵ月の上限時間:100時間未満
- 1年間の上限時間:720時間以内
- 時間外労働時間の2ヵ月・3ヵ月・4ヵ月・5ヵ月・6ヵ月平均:いずれも80時間以内
- 時間外労働が45時間を超えるのは1年のうち6ヵ月以内
例えばある月の時間外労働が90時間で、その翌月も90時間だと、1ヵ月の上限時間には収まっていますが、2ヵ月平均が90時間で、80時間を超えてしまうため、違法です。
また月45時間・年間360時間の制限は時間外労働についてでしたが、月100時間・年間720時間の制限は時間外労働に加えて、法定休日に働いた場合に適用される休日労働も含みます。
例えば時間外労働が40時間でも、休日労働が60時間を超えていれば、合わせて100時間を超えてしまうため違法になるのです。この辺りは少しややこしいので注意が必要です。
また特別条項付きの36協定が結ばれていれば、45時間を超える時間外労働がいつでも認められるわけではありません。認められるには特別な事情が必要です。
特別な事情とは具体的でなくてはならず、例として次のようなケースが挙げられます。
- 予算・決算業務
- ボーナス商戦
- 納期がひっ迫している
- 大規模クレームへの対応
- 機械トラブルへの対応
逆にいえば「業務上必要な場合」や「業務上やむを得ない場合」などといったものは抽象的でいつでも起こり得るものとされ、特別な事情とは認められません。
関連記事:働き方改革による残業規制の最新情報!上限時間や違反した際の罰則を解説
3. 従業員の残業時間が45時間を超える5つのリスク
法律的に残業が45時間を超えても大丈夫かという問題もありますが、そもそも長時間の時間外労働により引き起こされる従業員のリスクについても考えなければなりません。ここでは、起こりうるリスクをいくつか挙げてみましょう。
3-1. 従業員のやる気が失われる
時間外労働が長ければ長いほど、従業員のやる気は失われてしまいます。
「やる気がないくらい普通だよ」と思われるかもしれませんが、やる気が失われることは、後述するすべてのリスクの原因となりえます。
効率性に欠けた業務が続くと、もっと働きやすい職場を求めて人材の流出が起こる可能性が高いでしょう。
3-2. コストの増大
時間外労働が増えれば、当然支払わなくてはならない時間外手当も増えていきます。それ以外にも、光熱費などといった費用も増える一方でしょう。
非効率な業務を続けていれば、業績も上がるはずがありません。
3-3. 従業員が心身の健康を損なう
過重な労働が続けば、従業員がうつ病などの精神疾患にかかってしまうおそれもあります。精神疾患は簡単に治る病気ではありません。
短くても数ヵ月、最悪数年かかってしまうこともあります。そうなるとそれまでの間、貴重な人材が減ってしまうばかりか、休職した従業員の手当も必要です。
病気になった従業員から訴訟を起こされるリスクもあります。
3-4. 従業員の過労死してしまう恐れがある
さらに悪化すると、従業員が自殺・病気で過労死してしまう恐れがあります。
厚生省が発表している「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」によると、時間外労働が45時間を超えれば超えるほど、脳・心臓疾患といった過労死との関連性が高まるとされています。
さらに時間外労働が100時間、または2〜6ヵ月平均で80時間を超えると、過労死との関連性が強く疑われるようになります。
時間外労働の時間数だけで一律に過労死が認定されるわけではありませんが、45時間を超えて働かせた場合、過労死と認定される可能性が高まっていくことは認識しておく必要があるでしょう。
従業員が過労死したと認定されれば、当然会社の責任が問われます。遺族から損害賠償や慰謝料を求めて民事裁判を起こされる可能性は高くなります。
3-5. 企業の信用失墜
社員がうつ病になったり過労死したりするような企業になってしまうと「ブラック企業」の烙印を押されてしまうでしょう。近年はSNSでこういったネガティブな情報はあっという間に広がります。
ブラック企業に好んで入ろうとする人はいないでしょうし、離職者も増えるでしょう。不買運動も起きるかもしれませんし、資金調達にも影響を及ぼす可能性もあります。
認可が必要な事業ですと、最悪事業認可の取り消しも考えられます。そうなってしまうと、今まで積み重ねてきた企業の信用が一瞬で崩壊してしまい、それらを回復することは簡単ではありません。
4. 従業員のやる気と健康のために固定残業代は45時間以内に抑えよう
固定残業の上限は、法律などで明らかにされているわけではありませんが、45時間までに押さえておくのが妥当です。
それ以上の時間外労働を強いていると、従業員が病気になる、過労死する、ブラック企業といわれてしまうなどといったリスクが増大していきます。起こりうるリスクをよく検討して、適切な固定残業の時間を設定することが大切です。
関連記事:固定残業代とは?制度の仕組みや導入のポイントを分かりやすく解説
関連記事:みなし残業制度とは?定義やメリット・デメリットを詳しく解説
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