給与計算で社会保険料を算出する方法を分かりやすく解説 | jinjerBlog

給与計算で社会保険料を算出する方法を分かりやすく解説

健康保険や厚生年金保険などの社会保険に加入している従業員は、毎月収入に応じて定められた社会保険料を納付する必要があります。

サラリーマンの場合、企業が給与から社会保険料を控除し、代わりに納付する「特別徴収」が行われるため、企業は給与計算の際、従業員ごとに社会保険料を算出する必要があります。

初めて給与計算を行うときは、社会保険料の正しい算出方法をあらかじめ覚えておきましょう。

今回は、給与計算で社会保険料を算出する方法や、計算時の注意点をまとめました。

1. 給与計算で社会保険料を算出する方法

企業が従業員の給与から源泉徴収(天引き)できる社会保険には、以下の種類があります。

  • 健康保険
  • 厚生年金保険
  • 介護保険
  • 雇用保険

それぞれ保険料率は異なりますが、基本的な計算式は以下の通りとなります。

保険料=標準報酬月額×保険料率÷2

従業員ひとりあたりの社会保険料は標準報酬月額×保険料率で算出できますが、保険料は事業主と従業員で折半する決まりになっています。

給与計算で控除するのは従業員が負担する分だけですので、計算式の最後に、求めた保険料を2で割る必要があります。

1-1. 標準報酬月額の基礎知識と調べ方

社会保険料の計算式に欠かせない標準報酬月額とは、給与などの報酬の月額を区切りの良い幅で区分したものです。

民間企業の給与は景気や社会情勢によって変動しますので、毎年4~6月の3ヶ月間の賃金をベースに、同年9月に見直しを行っています。

改定は年に一度きりですので、9月~翌年8月までの一年間は、同じ標準報酬月額を用いて社会保険料を計算することになります。

なお、社会保険の被保険者がいる企業は、6月に標準報酬月額を見直したうえで、毎年7月10日までに「被保険者報酬月額算定基礎届」を提出する必要があります。

これを定時決定といい、同年9月の改定以降は、提出した算定基礎届の内容をもとに、従業員ひとりひとりの社会保険料を算出します。

標準報酬月額の区分や等級は加入している健康保険の種類によって異なりますが、ここでは最も加入率の高い全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入しているものとして、標準報酬月額の調べ方を説明します。

協会けんぽでは、社会保険料の計算に用いる標準報酬月額の区分や等級、適用される保険料率を、「健康保険・厚生年金保険の保険料額表」として公式HPで公開しています。

なお、健康保険の保険料率は都道府県によって異なりますので、社会保険料を計算する際は、事業所があるエリアに対応した保険料額表をチェックします。

社会保険は原則として、事業所単位で適用する決まりになっていますので、本社とは別のエリアに支社・支店がある場合は、それぞれのエリアに応じた保険料額表を利用することになります。

1-2. 健康保険の計算方法

では実際に、協会けんぽの健康保険に加入している人の社会保険料を、保険料額表を用いて計算してみましょう。

たとえば一例として、以下のような条件で働く従業員がいるとします。

  • 事業所所在地:東京
  • 年齢:40歳
  • 4~6月の平均報酬月額:25万円

協会けんぽの保険料額によると、上記従業員の標準報酬等級は19、標準報酬月額は24万円です。

これに健康保険の保険料率を乗じますが、介護保険第2号被保険者であるかどうかによって、適用される保険料率が異なります。

40~64歳までの方は介護保険第2号被保険者に該当するため、上記従業員の健康保険料を計算する場合は、11.66%の保険料率が適用されます。

以上のことから、この従業員が負担する健康保険料は24万円×11.66%÷2=13,992円となります。もしこの従業員の年齢が30歳だった場合、介護保険第2号被保険者には該当しないため、保険料率は9.87%です。

その場合の健康保険料は24万円×9.87%÷2=11,844円となります。

1-3. 厚生年金保険料の計算方法

厚生年金保険料の計算にも、健康保険と同じ「健康保険・厚生年金保険の保険料額表」を使用します。

厚生年金保険料に関しては、都道府県による区別がなく、全国一律の保険料率が適用されます。厚生年金保険料率は平成29年9月で引き上げが終了し、以後は18.300%に固定されています。

たとえば報酬月額が25万円の人が負担する厚生年金保険料は、以下の計算式で算出します。

24万円(標準報酬月額)×18.300%÷2=21,960円

なお、健康保険と厚生年金保険の保険料については、保険料額表にて、等級・区分ごとに保険料の全額と折半額が掲載されています。

つまり、実際に給与計算を行う際は、提出した算定基礎届の内容と保険料額表を照合し、従業員ごとに標準報酬月額を割り出せば、簡単に社会保険料を調べることが可能です。

1-4. 介護保険料の計算方法

40歳以上になると、要介護状態や要支援状態になった時に介護サービスを受けられる「介護保険」に加入することになります。

介護保険料率は、単年度で収支のバランスがとれるよう、介護保険第2号被保険者(40~64歳の人)の総報酬額総額の見込みや、介護納付金の額、国庫補助額等などをもとに、毎年3月に改定が行われます。

協会けんぽの令和2年3月分の介護保険料率は1.79%ですので、納付すべき介護保険料は以下の計算式で算出します。

介護保険料(従業員負担分)=標準報酬月額×1.79%÷2

ただ、介護保険料は健康保険と一体的に徴収される決まりになっているため、実際には健康保険料率に介護保険料率を上乗せする形で計算を行います。

たとえば令和2年の健康保険料率は9.87%ですが、40~64歳の人は介護保険料率の1.79%を上乗せし、11.66%を乗じて計算します。

健康保険料と共に、介護保険料も算出できますので、個別に介護保険の計算を行う必要はありません。

1-5. 雇用保険料の計算方法

健康保険料や厚生年金保険料の計算には標準報酬月額を用いますが、雇用保険は総支給額をベースにします。

具体的な計算式は以下の通りです。

雇用保険料=総支給額×保険料率

保険料率は厚生労働省から毎年発表されており、令和2年は9/1,000が適用されます。[※注4]

なお、雇用保険料は事業主と従業員で按分する仕組みになっており、9/1,000のうち、6/1000を事業主が、残り3/1,000を従業員がそれぞれ負担します。

たとえば、令和2年のある月の総支給額が25万円だった人の雇用保険料は、25万円×0.003%=750円となります。

2. そもそも社会保険料とは

社会保険とは、人生で直面するさまざまなリスクに対し、必要なお金やサービスを支給する制度のことです。

人は誰でも、生きている中で傷病や労働災害、退職・失業などの憂き目に遭うリスクを抱えています。

そんな万一の場合に備え、保険料という形で集めた財源を活用し、人々の生活を支えるのが社会保険の目的です。

社会保険は公的な制度であり、国民は加入を義務づけられると共に、保険料を納付する責務を負っています。

3. 社会保険料の計算で注意したい2つのポイント

社会保険料を計算するにあたり、注意したいポイントをまとめました。

3-1. 従業員の年齢に注意

健康保険料の計算に用いる保険料率は、介護保険に加入しているか否かによって異なります。

40歳になると介護保険料の徴収が開始され、健康保険料率がアップしますので、忘れずに反映するようにしましょう。

3-2. 昇降給や手当発生に注意

標準報酬月額は4~6月分の平均報酬月額によって算定されますが、昇・降給または手当の支給により、他の3ヶ月の平均報酬月額が大幅に増減した場合、標準報酬月額の変更手続きを行う必要があります。

具体的には、2等級以上の差が出た場合に届出が必要になりますので、昇・降給や手当発生時は、等級に大きな変更はないかどうか確認しましょう。

4. 社会保険料の計算は慎重かつ丁寧に行おう

社会保険料の多くは、標準報酬月額さえわかれば、簡単に計算することができます。

ただ、適用される保険料率は、事業所のあるエリアや従業員の年齢などによって異なりますので、計算する際は正しい保険料率を用いているかどうか、しっかり確認することが大切です。

計算ミスが不安な場合は、従業員のデータや勤怠管理と連動して社会保険料を計算できる給与計算システムを導入すると、より正確かつスピーディに社会保険料を算出できるでしょう。