給与計算のやり方を11ステップで解説!効率化する方法や注意点も紹介!
更新日: 2025.4.22
公開日: 2020.12.10
jinjer Blog 編集部
従業員に正確な賃金を支払うためには、勤怠表などの書類をもとに、給与計算をおこなう必要があります。
給与計算の方法を間違えると、賃金の未払いや過払いといった重大なミスにつながるので、正しい計算方法と流れを理解しておくことが大切です。
今回は、給与計算のやり方についてわかりやすく解説します。また、給与計算業務をミスなく楽にこなせる方法についても紹介します。
目次
給与計算を手計算しているとミスが発生しやすいほか、従業員の人数が増えてくると対応しきれないという課題が発生します。 システムによって給与計算の内製化には、以下のメリットがあります。
・勤怠情報から給与を自動計算
・標準報酬月額の算定や月変にも対応しており、計算ミスを減らせる
・Web給与明細の発行で封入や郵送の工数を削減し、確実に明細を従業員へ渡せる
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1. 給与計算の方法とは?
給与計算とは、従業員の給与を計算し、支払う業務のことです。給与担当者は正確に給料を支払うために、給与計算の方法を正しく理解しておかなければなりません。
1-1. 給与計算の基礎構造
給与計算の基本的な仕組みは、以下の計算式で表すことができます。
総支給額 – 控除額 = 差引支給額(手取り額)
- 総支給額(額面):基本給に残業代などの各種手当をプラスした金額のこと
- 控除額:税金と社会保険料のこと(会社によって親睦会費などの特別な項目を設けていることも)
- 差引支給額(手取り額):従業員の銀行口座に振り込む金額のこと
例えば、20万円の給与総支給額から控除額の3万円を引いて、手取り額である17万円を銀行口座に振り込むというのが、給与計算の基本的な仕組みです。
関連記事:給与計算の基礎を解説!初心者でもわかる給与の仕組みや計算方法
1-2. 給与で支払われるもの
給与計算の基礎構造を理解できたら、まず給与として支払われるものについて把握し、正しく総支給額の計算ができるようにしましょう。
総支給額は、主に「基本給」「各種手当」「変動的な給与」から構成されます。ここでは、それぞれの内容について詳しく紹介します。
①基本給
基本給とは、残業手当や通勤手当、役職手当などの各種手当と、業績に応じて支給される給与(賞与・ボーナスなど)を除いた基本賃金のことです。
②手当(役職手当、家族手当、住宅手当、資格手当など)
手当とは、特定の条件を満たした人に支払われる報酬のことです。例えば、特定の役職に就いた人が受け取れる「役職手当」や、家賃援助をおこなう「住宅手当」などがあります。
③変動的な給与支給額(残業代・休日割増代・深夜割増代)
毎月変動する給与に該当するものとして、代表的なのが「残業代」です。また、時間外労働や休日労働、深夜労働といった労働に対しては、割増賃金も支給しなければなりません。残業代や割増賃金は、従業員の毎月の勤務状況によって大きく変わることもあるので、正しく計算できるような体制を整備しておくことが大切です。
関連記事:法定内残業とは?法定外残業との違いや36協定、割増賃金の計算方法を解説
1-3. 給与計算担当者(経理担当)の業務内容
給与計算担当者の主な業務内容は、従業員の給与を正確かつ適切に計算し、支給することです。給与計算には、健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料、所得税・住民税などの税金の計算も含まれます。
また、毎月の給与計算だけでなく、年間を通して標準報酬月額の改定や労働保険の年度更新、住民税の年度更新、年末調整などの業務も対応しなければならないケースがあります。給与計算業務は、従業員と会社、県や国などの社会をつなぐ大切なポジションなので責任は重いですが、その分やりがいを感じられる仕事です。
関連記事:【図解】給与計算ガイド!例を用いて給与計算のやり方を徹底解説!
2. 給与計算の事前準備の手順
正確に給与計算をおこなうには、給与として支給すべきもの、給与から控除すべきものを正しく計算できるようにしなければなりません。ここでは、給与計算を始める前にすべき事前準備の手順について紹介します。
2-1. 就業規則・給与規程の確認
就業規則とは、従業員が働くうえでのルールや、労働条件を定めたもので給与に関する規定も書かれています。従業員が10人以上の事業所は、就業規則を作成して労基署に届け出ることが法律で義務づけられているため、必ず作成しなければいけません。
従業員10人未満の場合は、作成や届出の義務はありませんが、賃金含め従業員と企業間でルールを設けることで、トラブルが起きにくい環境を構築できるので作成することをおすすめします。給与計算の担当者になった際は、まず自社の就業規則を確認し、どのような給与規程が設けられてるのかチェックしましょう。
2-2. 従業員情報の収集・更新
給与計算には、従業員の情報が必要となります。勤続年数や職種、役職などによって基本給や手当が変わることも多いためです。
また、家族の増減がある場合、扶養状況によっては家族手当の支給有無や源泉所得税の計算方法が変わってきます。勤務地の変更・転居があれば通勤手当の計算方法も変わります。給与に関わる従業員情報については、毎月の給与計算前に収集・更新しておきましょう。
2-3. 社会保険(健康保険、厚生年金保険、介護保険)の加入状況
社会保険は、国民の生活を守るための制度です。健康保険・厚生年金保険・介護保険については、すべての労働者が加入するわけではありません。条件を満たした人のみ加入するため、従業員一人ひとりの労働条件などを確認して加入手続きをおこなう必要があります。また、給与計算の際は、その情報もきちんと反映させられる仕組みを整備しておきましょう。
関連記事:社会保険の加入条件は?労働時間を満たさない場合の対応策まで説明!
2-4. 労働保険(雇用保険、労災保険)の加入状況
労働保険とは、労働者を守るための公的保険制度で、雇用保険と労災保険から構成されます。労働保険は、社会保険(健康保険・厚生年金保険・介護保険)と加入条件が異なります。
とくにパート・アルバイトなどの短時間労働者の場合、雇用保険に加入できても、健康保険・厚生年金保険には加入できないケースもあるかもしれないので、気を付けて加入手続きや給与計算をおこなう必要があります。
なお、労災保険はすべての労働者に加入させなければなりません。しかし、労災保険料については、全額会社が負担するので、給与支給額には影響しないため留意しましょう。
関連記事:雇用保険とは?パート・アルバイトの適用や給付内容についてわかりやすく解説
3. 給与計算のやり方を11ステップで徹底解説!
給与計算をするための事前準備ができたら、実際に給与の計算をおこなっていきます。ここでは、給与計算のやり方を11ステップに区分してわかりやすく解説します。
3-1. 労働時間の集計
勤怠表やタイムカードなどをチェックし、従業員ごとに1ヵ月分の労働時間を集計します。
定時で働いた場合の給与は基本給に含まれていますが、定時を超えて働いた場合は残業代の支給が必要です。そのため、残業時間も正しく管理しなければなりません。。
また、休日労働(法定休日の労働)や深夜労働(22時~翌5時の労働)には、割増賃金の支給も必要です。割増賃金を正しく支払うためにも、割増労働ごとに労働時間を集計できるような仕組みを構築することが大切です。そのほか、欠勤・早退状況や有給取得数なども適切に管理できるようにしておきましょう。
【労働時間の計算方法を詳しく知りたい方はコチラ▶労働時間の正しい計算方法についてわかりやすく解説】
3-2. 残業代・割増賃金の計算
勤怠を集計したら、それを基に残業代や割増賃金を計算します。割増賃金の計算式は、次の通りです。なお、割増率を「1」にすれば、法定内残業における残業代も計算できます。割増賃金 = 対象となる労働時間 × 1時間あたりの基礎賃金 × 割増率
1時間あたりの基礎賃金は、「月給 ÷ 1ヵ月あたりの平均所定労働時間」で算出します。なお、ここでいう月給には、基本給だけでなく、役職手当や資格手当などの固定給(家族手当や通勤手当などの一部手当を除く)も含まれるので注意しましょう。。
割増率については、労働基準法によって以下の基準が設けられています。
労働時間 |
時間 |
割増率 |
時間外労働(法定内残業) |
1日8時間、週40時間を超えない範囲の残業時間 |
割増なし |
時間外労働(法定外残業) |
1日8時間、週40時間を超える残業時間 |
25% |
1ヵ月に60時間超の時間外労働 |
月60時間を超える時間外労働(法定外残業)の時間 |
50% |
休日労働 |
法定休日の労働時間 |
35% |
深夜労働 |
22:00~翌5:00までの労働時間 |
25% |
なお、割増労働は重複して発生するケースもあり、その場合は以下のように合算して割増率を求めます。
労働時間 |
時間 |
割増率 |
時間外労働+深夜労働 |
時間外労働(25%)+深夜労働の時間(25%) |
50% |
休日労働+深夜労働 |
法定休日労働(35%)+深夜労働の時間(25%) |
60% |
時間外労働(1ヵ月に60時間超)+深夜労働 |
時間外労働(1ヵ月に60時間超)(50%)+深夜労働の時間(25%) |
75% |
例えば、残業が深夜(午後10時~翌午前5時)に及んだ場合、時間外労働の割増率25%と、深夜労働の割増率25%を合算し、合計50%の割増率が適用されます。同様に、法定休日の労働が深夜に及んだ場合は、休日労働の割増率35%と、深夜労働の割増率25%を合算し、合計60%の割増率が適用されることになります。
なお、労働基準法で定められている休日(法定休日)には、法定労働時間が適用されないため、休日労働と時間外労働の割増率が重複することはありません。
例えば、通常勤務日の定時が9時~18時の人が、休日に9時~19時まで働いた場合でも、適用されるのは休日労働の割増率のみで、18時~19時までの1時間に時間外労働の割増率は適用されないので要注意です。
ちなみに、労働基準法で定められた割増率は、あくまで最低限のラインです。
企業によっては、より高い割増率を適用しているところもあるので、事前に就業規則を必ず確認しておきましょう。
関連記事:割増賃金の基礎となる賃金とは?計算方法など労働基準法の規定から基本を解説
3-3. その他手当の計算
残業代・割増賃金の他にも、企業によっては通勤手当や家族手当などの各種手当が支給されます。通勤手当に関しては、支給額によって所得税の課税対象になるかどうかが変化します。
電車やバスなどの交通機関を利用している場合は月15万円まで、マイカー通勤の場合は片道距離に応じて4,200円~31,600円までがそれぞれ課税対象外になります。
それ以上支給した分については所得税の課税対象となるので、計算時に間違えないよう注意しましょう。
関連記事:所得税における通勤手当の課税・非課税ルールとは?交通費のとの違いも解説
3-4. 総支給額の計算
1~3で計算した支給額を合算し、総支給額を算出します。総支給額の計算式は以下のとおりです。
総支給額 = 基本給 + 所定外手当(残業代・割増賃金) + 各種手当
総支給額が計算できたら、次に給与から差し引くものについて計算をおこなっていきます。
【給与計算の流れを知りたい方はコチラ▶給与計算業務の流れ|月間と年間のスケジュールも紹介!】
3-5. 雇用保険料の計算
雇用保険料は、従業員と事業主で分けて負担しているため、総支給額から従業員負担分の雇用保険料を控除する必要があります。雇用保険料の計算式は以下のとおりです。
雇用保険料 = 総支給額 × 雇用保険料率
雇用保険料率は厚生労働省から毎年発表されており、業種や年度によって異なります。2025年4月からは雇用保険料率が引き下げられるので、最新の雇用保険料率を給与計算に反映させて、正しく雇用保険料の控除をおこないましょう。
関連記事:【最新版】65歳以上の雇用保険料の改正内容とは?給与計算ルールについても解説
3-6. 健康保険料の計算
社会保険の一つである健康保険の保険料は、従業員と事業主とで折半して負担します。健康保険料の計算式は次の通りです。
健康保険料(個人負担額)= 標準報酬月額 × 健康保険料率 ÷ 2
標準報酬月額とは、従業員が事業主から受け取る毎月の報酬を区切りの良い幅で区分したものです。毎年4月~6月に支払った給与を基に、7月に定時決定をして、標準報酬月額の改定をしなければならないので注意しましょう。
なお、40歳以上になると、介護保険にも加入しなければならず、健康保険料に上乗せして介護保険料も支払う必要があります(介護保険料の計算方法は健康保険料と同様)。そのため、介護保険料も給与から天引きしなければなりません。また、健康保険料率や介護保険料率は加入する健康保険組合によって異なるのでよく確認しておきましょう。
【社会保険料と給与計算について詳しくはコチラ▶社会保険料の計算方法とは?給与計算や社会保険料率についても解説】
3-7. 厚生年金保険料の計算
厚生年金保険料は、健康保険料と同じく、標準報酬月額に厚生年金保険料率を掛けて計算し、労使折半で負担します。厚生年金保険料率は、2017年9月より一律(18.3%)に固定されています。
なお、健康保険・厚生年金保険の保険料額表には、標準報酬月額ごとに、健康保険料と厚生年金保険料の「全額」と「折半額」がそれぞれ掲載されています。
つまり、従業員の月給に該当する標準報酬月額がわかれば、いちいち計算しなくても、総支給額から控除すべき健康保険料・厚生年金保険料を確認することが可能です。ただし、保険料額表を用いて計算する場合は、その表が最新のものかどうかきちんとチェックしましょう。
3-8. 住民税の計算
従業員が支払う住民税については、市町村役場から郵送されてくる「住民税特別徴収税額の決定通知書」を確認すれば、控除すべき納税額がわかります。
そのため、特に計算は必要なく、その他の控除と一緒に総支給額から差し引くだけで問題ありません。
【住民税の計算について知りたい方はコチラ▶給与計算における住民税とは|住民税の計算・納付・注意点について解説】
3-9. 源泉所得税の計算
毎月の給与から控除すべき所得税(源泉所得税)は、源泉徴収税額表を基に計算します。同じ給与であっても「扶養控除等申告書」の提出有無や扶養親族の人数によって、給与から天引きすべき所得税額は変わってくるため注意が必要です。
また、年の暮れには年末調整により、その年の納めるべき所得税額と、その年に徴収・納付した源泉所得税の合計額を比較し、過不足額を調整することになるので留意しましょう。【所得税の計算について知りたい方はコチラ▶所得税とは?|源泉所得税の計算方法や税額表の見方を解説】
3-10. その他控除の計算
企業が独自に控除制度を設けている場合は、就業規則に則って計算をおこないます。
例えば、社宅利用料や共済会費などがこれに該当します。
3-11. 差引支給額の計算
総支給額と各種控除額が計算できたら、総支給額から、各種控除額を差し引き、実際に従業員の口座に支給される「差引給与額」を計算します。
ここまで給与の計算方法を解説してきましたが、所得税・住民税といった税金の計算や健康保険料・厚生年金保険料といった社会保険料の計算など、複雑な計算が続くために自社の給与計算方法があっているか不安な方もいらっしゃるのではないでしょうか。
当サイトでは、「給与計算パーフェクトマニュアル」という資料を無料配布しています。本資料では給与計算の基礎や手順はもちろん、間違えやすい社会保険や所得税・住民税の計算方法についても図解形式でわかりやすく解説しています。給与計算の担当者にとっては、いつでも確認できるマニュアルとして有効に活用できますので、興味のある方はぜひこちらから資料をダウンロードしてご覧ください。
4. 給与計算で把握しておくべきポイント
給与計算では、計算の流れだけでなく、支払い方法など、ほかにも気を付けるべき点がさまざまあります。ここでは、給与計算で把握しておくべきポイントについて詳しく紹介します。
4-1. 賃金支払いの5原則
労働基準法では、賃金支払いについて次の5つの原則が設けられています。
- 通貨で
- 直接労働者に
- 全額を
- 毎月1回以上
- 一定の期日を定めて支払う
つまり、企業は従業員に対して、毎月最低1回は決まった日に全額通貨で直接給与を支払うことが義務付けられています。なお、従業員の同意が得られれば、口座振り込みも可能です。賃金支払いの5原則に則り、給与を支給しなかった場合、労働基準法に基づき30万円以下の罰金が科せられる恐れもあるので注意しましょう。
関連記事:給料の締め日とは?支払日との違いや決めるポイント・変更の注意点を解説
4-2. 社会保険ほかの要件
給与計算では、次のような従業員の社会保険の加入状況を正しく把握する必要があります。
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 介護保険
- 雇用保険
従業員の労働時間や年齢などによって、加入できる社会保険は変わってきます。誤って保険料を給与から控除してしまうと、従業員に支給する給料の額(手取り額)が低くなってしまいます。また、社会保険料率は定期的に更新されるため、最新の情報をきちんと給与計算に反映させましょう。
4-3. 従業員の勤怠情報
給与計算をするには従業員の勤怠情報が欠かせません。従業員の勤怠情報を確認する際は所定の労働時間だけでなく、時間外労働や休日労働などの時間数もチェックしましょう。
時間外労働や休日労働は割増賃金の支払いが必要です。対象の従業員が時間外労働を何時間したのか、どれくらいの割増賃金が必要なのかを確認し、正しく給与計算をおこないましょう。
4-4. 事業所がある地域のルール
大規模な企業の場合、事業所が全国に点在しているケースがあります。このような場合、事業所がある地域のルールに従うようにしましょう。例えば、協会けんぽの保険料率は、都道府県によって異なります。すべての従業員に対して同じように保険料を計算すると、間違いが生じる恐れもあるので慎重に計算をおこなうことが大切です。
また、地域ごとに異なるということでいえば、最低賃金も挙げられます。最低賃金は地域によって異なります。また、特定の産業について設定される「特定最低賃金」にも気を付けて給与を設定し、計算をおこないましょう。
関連記事:労働基準法に基づく最低賃金とは?その基準や違反への罰則を解説
4-5. 書類の保管期間
給与計算で用いた書類は、法律で定められた期間正しく保存しなければなりません。例えば、賃金台帳は、最後に記入をおこなった日から5年間(当面の間は3年間)保存する必要があります。
また、年末調整に使用する扶養控除等申告書は、提出期限(その年の最初に給与を支払う日の前日)の属する年の翌年1月10日の翌日から7年間保存しなければなりません。このように、書類によって保管すべき期間は異なるので、法律に則り、正しく書類管理をおこないましょう。
5. 給与計算をおこなう際のリスク
給与計算には、「税務リスク」「労務リスク」「情報漏えいリスク」といったリスクがあります。ここでは、それぞれのリスクの内容について詳しく紹介します。
5-1. 計算・入力ミス、法令の改正による税務リスク
給与計算において計算・入力ミスが生じると、給与から控除すべき税金額が間違って計算され、誤った額で納税してしまう恐れがあります。また、自分で住民税を納める「普通徴収」を選択している従業員の給与から住民税を天引きしてしまうと、二重で住民税を納めてしまうことにもつながりかねません。
このように、給与計算には税務リスクがつきまといます。税制に関しては、毎年のように法改正もおこなわれているので、最新の情報を定期的にチェックし、正しく給与から控除すべき税金の計算をするようにしましょう。
5-2. 残業代の未払いなどによる労務リスク
給与計算に少しでもミスが生じると、従業員に支給すべき賃金額に過不足が生じます。とくに残業代・割増賃金の計算間違いによる、賃金の未払いは発生しやすいです。未払い賃金が生じた場合、労働基準法の「全額払いの原則」に抵触し、法令違反となります。
また、社会保険については、従業員ごとに加入状況が違うことから、社会保険料の徴収・納付漏れも起きやすいです。このように、給与計算には労務リスクもあり、従業員と大きなトラブルにつながる恐れもあります。そのため、給与計算は慎重におこなうようにしましょう。
【残業と割増賃金の関係を詳しく知りたい方はコチラ▶残業による割増率の考え方と残業代の計算方法をわかりやすく解説】
5-3. 個人情報の漏えいリスク
給与計算業務で扱う情報には、従業員の個人情報が多く含まれます。個人情報を扱う事業者に対しては、個人情報保護法が適用されます。法改正が2017年5月におこなわれ、「1件でも個人情報を取り扱っている事業者」であれば適用されるようになりました。
従業員の重要な個人情報が外部に漏れたとなれば、個人情報保護法違反となり、行政指導や罰則を受ける可能性もあります。また、従業員からの信頼を失い、人材確保にも問題が生じ、経営を継続させることが困難になる恐れもあるので、内部統制を強化し、正しく個人情報を取り扱うようにしましょう。
ここまで給与計算の業務内容とリスクについて説明しましたが、「給与計算の業務が多く、リスクも大きい」と感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。今では多くの企業が給与計算システムを導入しており、ミスの低減だけでなくコア業務に集中する環境を手に入れています。
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6. 給与計算のミスが発生した場合の対応
給与計算は毎月どの企業でもおこなわれる業務ですが、専門性が高くミスが許されないので、業務負担を感じている方もいるかもしれません。
給与計算にミスがあると、給与の支給額や税金・社会保険料の控除額における過不足額を調整する業務が必要となり、余計な手間が増えてしまうことになります。
そこで本章では、給与計算ミスをしてしまった場合に取るべき行動とその後の対応について解説します。
6-1. 気づいたらすぐお詫びを入れる
給与計算は、従業員に支払う賃金や、雇用保険・社会保険などに関わる大切な業務であり、ささいなミスも許されません。しかし、人がおこなう作業に「絶対」はなく、ときとして計算間違いや計算漏れが発生することもあります。
ここで重要になるのが「同じミスを繰り返さない」ということです。もし給与計算にミスが発覚したら、すぐに従業員に対してお詫びを入れることが大切です。また、なぜミスが発生したのか、ミスに対する対応、今後のミスを防止するための対策なども細かく伝えると、従業員からの信頼を失わずにすむかもしれません。
関連記事:給与計算ミスに気づいた時のお詫びの方法や注意点を文例とともに解説
6-2. 未払い・過払い賃金を精算する
給与計算ミスが起きたら、賃金の未払い・過払いが起きることもよくあります。未払い賃金が発生した場合、労働基準法「全額払いの原則」に違反することから、できる限りミスが生じてしまった月中に精算をおこなうようにしましょう
ミスに気付くのが遅れたために、翌月などに精算をしたい場合は、必ず従業員の同意を得て対応することが大切です。場合によっては、遅延損害金や付加金も生じるので、慎重に対応しましょう。
一方、賃金の過払いが生じた場合、従業員の同意を得たうえで、翌月の給与支給額などから払い過ぎた賃金を控除します。事前に従業員にきちんと説明をしておかないと、なぜ翌月の手取り額が少なくなったのかわからず、会社に対する不信感が大きくなる恐れもあるので気を付けて対応しましょう。
関連記事:給与計算でミスしたときの対処法は?要因とその防止策もご紹介
6-3. ダブルチェックなどミスの防止対策をする
給与計算ミスが発生したら、原因追究の前に、素早く正しい計算に訂正することが何よりも大切です。その後、なぜミスが起きたのか、その原因を突き止め、再発しないよう防止策を講じましょう。
例えば、担当者1人で給与計算をおこなっている場合、不注意や集中力の欠如によって小さなミスが起きることもよくあります。しかし、給与計算では些細なミスも許されません。そのため、ダブルチェック体制を敷き、1人目にミスがあっても、2人目で取り除けるような体制を作り出すのもおすすめです。
このように、ミスの内容に応じて適切な防止策を講じることが重要です。
関連記事:給与計算におけるダブルチェックの重要性と精度を上げる方法
7. 給与計算を自動化して効率化する方法
手動で給与計算をしている場合、タイムカードの集計ミスや電卓の打ち間違いなどによって、人的ミスが起きやすいです。ここでは、給与計算を自動化して効率化する方法について詳しく紹介します。
7-1. エクセル管理
手動で計算しているのであれば、エクセルを用いた給与計算に切り替えてみるのがおすすめです。普段から使用しているエクセルであれば、導入・運用コストもほとんどかからず、すぐに給与計算を始めることができます。また、関数・マクロを活用すれば、定型的な作業を自動化し、ヒューマンエラーを防止することが可能です。
エクセルで給与計算を始める場合、インターネット上にある無料の給与計算テンプレートを用いる方法があるでしょう。テンプレートをカスタマイズすることで、時間と手間を減らして、自社のニーズにあった給与計算シートを作成することができます。
▼より詳しく知りたい方はコチラをクリック
給与計算をエクセルで行う方法とは?4つのコツと注意点を解説
7-2. 社労士や税理士などのアウトソーシング(代行)
エクセルを使っても、給与計算ミスが減らない、業務効率化につながらない、といった場合は、社労士や税理士などがサービス提供している給与計算アウトソーシングを取り入れるのも有効的です。まずは、メリットやデメリットを把握したうえで、取り入れる必要があるか否かを考えましょう。
アウトソーシングのメリット
①正確かつスピーディに給与計算できる
②メインの業務に集中できる
③法改正にしっかり対応できる
④経理コストを削減できる
アウトソーシングのデメリット
①自社にノウハウが蓄積されない
②従業員の個人情報が流出する可能性がある
給与計算をアウトソーシングすると、外部の専門家が給与計算を担当するため、手間をかけずに正確な給与計算をおこなうことができるようになります。一方で、自社に給与計算のノウハウが蓄積されない、セキュリティに不安が残るなど、いくつかのデメリットもあります。
安心して給与計算を委託したいのなら、実績の有無やセキュリティ体制をチェックし、信頼できる業者を選ぶようにしましょう。
関連記事:給与計算のアウトソーシング・代行のメリット・デメリットと相場をご紹介
7-3. 勤怠管理システムや給与計算ソフトの導入
手動・エクセルなどの給与計算に限界を感じている場合、勤怠管理システムや給与計算ソフトの導入を検討しましょう。勤怠の計算や集計に間違いがあれば、自ずと給与計算にもミスが生じます。そのため、勤怠管理の見直しも大切です。タイムカードで正しく管理するのが難しいのであれば、勤怠管理システムの導入がおすすめです。
また、給与計算ソフトを導入すれば、給与支給額や控除額の計算を自動化させることが可能です。法改正に自動で対応できる製品もあります。勤怠管理システムと給与計算ソフトを連携させれば、勤怠の集計から給与の計算までを自動化できるので、さらなる業務の効率化が期待できます。なかには、勤怠管理と給与計算の両方の機能が搭載されたものもあるため、複数のツールを比較し、自社のニーズにあったシステムを導入しましょう。
関連記事:給与計算を自動化するメリット・デメリット、具体的な方法や手順も紹介
8. 給与計算システムの選び方
ここでは、給与計算システムの選び方について詳しく紹介します。
8-1. コストが見合っているか
給与計算システムを利用する場合、導入・運用コストがかかります。自社の予算に見合った給与計算システムを選ばなければ、コストがかさみ、運用途中で解約しなければならなくなる可能性もあります。
まずは目的を明確化し、費用対効果を検証したうえで、導入するシステムを選ぶことが大切です。また、複数の料金プランが用意されているシステムもあります。その場合、どのような給与計算を実現したいのか、自社の規模にあっているか、といった観点から最適なプランを選択することが重要です。
8-2. どのような業務ができるか
給与計算システムを選ぶ際は、どのような業務に対応しているかを確認しましょう。一般的に給与計算システムは給与の自動計算が可能なシステムです。しかし、システムによってはそれ以外の業務が可能なケースもあります。
例えば、給与計算に限らず、採用管理やタレントマネジメントなど、人事についての業務を効率化できるシステムもあります。そのため、導入しようとしているシステムが給与計算機能以外に、どのような機能が搭載されているかもチェックすることが大切です。
8-3. 作成できる帳簿の範囲
給与計算システムのなかには給与明細や賞与明細はもちろん、源泉徴収票や社会保険提出書類、給与支払報告書などの帳簿を作成できるシステムもあります。帳簿をシステム上で作成できれば、スピーディーにデータを共有できるだけでなく、ペーパーレス化も促進できます。
まずは自社でどのような帳簿が必要なのかを把握して、それにあったシステムを選ぶことが大切です。また、自社の採用する帳簿に合わせてカスタマイズできるかも確認しておきましょう。
8-4. 他のシステムと連携できるか
給与計算システムは他のシステムと連携できるかどうかも大きなチェックポイントです。給与計算システムを勤怠管理システムや会計システム、経費精算システムなどと連携させることで、データ入力・出力などを自動化し、給与計算以外の業務も効率的に進められます。
ただし、システムの種類によって連携できるツールが限定されていることもあります。そのため、自社の既存のシステムと、新たに採用する給与計算システムが連携できるかをきちんと確認しておくことが大切です。
8-5. サポート体制は十分か
給与計算システムを導入したら、すぐに使用できるわけではありません。従業員情報の登録など、初期設定が必要です。初めて給与計算システムを利用するなど、導入に不安がある場合、サポート体制が充実しているシステムを選びましょう。
また、運用中にエラー・トラブルが生じることも少なくありません。そのような場合に備えて、どのような方法でサポートを受けられるのかも事前にチェックしておきましょう。
関連記事:給与計算ソフトとは?メリットや選定ポイント7選を一挙ご紹介
9. 給与計算の正しい方法と流れを確認してミスを未然に防止しよう
給与計算の項目は複数にわたるうえ、項目ごとに計算方法が違います。
計算方法を誤ると、賃金や納税額に過不足が発生する原因になります。
手書きやエクセルで給与計算すると、ヒューマンエラーが起こりやすいので、正確性やスピードを重視するなら、給与計算ソフトの導入をおすすめします。
給与計算のミスを無くしたい、ダブルチェックの手間を減らしたいという場合は、給与計算アウトソーシングの活用も検討してみてください。
【給与計算は端数処理にも注意!▶給与計算の端数処理で気をつけるべき3つのポイント】
給与計算を手計算しているとミスが発生しやすいほか、従業員の人数が増えてくると対応しきれないという課題が発生します。 システムによって給与計算の内製化には、以下のメリットがあります。
・勤怠情報から給与を自動計算
・標準報酬月額の算定や月変にも対応しており、計算ミスを減らせる
・Web給与明細の発行で封入や郵送の工数を削減し、確実に明細を従業員へ渡せる
システムを利用した給与計算についてさらに詳しく知りたい方は、こちらからクラウド型給与計算システム「ジンジャー給与」の紹介ページをご覧ください。



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