給与計算業務の流れ(フロー)とは?月間・年間スケジュールも紹介!
更新日: 2025.4.18
公開日: 2020.12.14
jinjer Blog 編集部

給与計算をするときは、従業員それぞれに対象の諸手当を加え、社会保険料・税金などの控除も適用させる必要があります。ミスなく業務を進めるためにも、給与計算の流れをきちんと押さえておくことが重要です。
この記事では、給与計算の基本的な流れを5つのステップで解説します。また、給与計算のスケジュールを月間と年間で分けて紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
【給与計算のやり方について解説はコチラ▶【図解】給与計算ガイド!例を用いて給与計算のやり方を徹底解説!】
【給与計算業務のまとめはコチラ▶給与計算方法を11ステップに分けて解説!注意点・効率化のポイントも】
給与計算の効率化方法を徹底比較!
給与計算は日々の勤怠管理でもれなく勤怠情報を収集した上で、一人一人計算していく必要があることに加え、ミスが許されない業務であるため、手間だと感じる方も多いでしょう。
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1. 給与計算の業務スケジュール


給与計算の担当者は、毎月おこなう従業員の「給与計算」だったり、年に1度おこなう「年末調整」だったりと、1年を通して、多くの業務処理をおこないます。
まずは給与計算の担当者がおこなう業務にはどのようなものがあるのか、またその流れをみていきましょう。
1-1. 年間スケジュール
給与計算の担当者が年間を通しておこなう主な業務は、次の通りです。
月 |
業務内容 |
4月 |
・社会保険料率の改定 ・給与支払報告に係る給与所得者異動届出書の提出(期限:4月15日) |
5月 |
・住民税の年度更新(その年6月から翌年5月まで適用) |
6月 |
・労働保険(雇用保険・労災保険)の年度更新(期限:6月1日~7月10日) |
7月 |
・社会保険の算定基礎届の提出(期限:7月10日) |
8月 |
– |
9月 |
・定時決定による社会保険料の計算変更(その年9月から翌年8月まで適用) |
10月 |
・最新の最低賃金の確認 ・年末調整書類の配布 |
11月 |
・年末調整書類の回収 |
12月 |
・年末調整の実施 ・還付額または追徴税額の反映 |
1月 |
・従業員へ源泉徴収票の交付(期限:1月31日) ・法定調書の提出(期限:1月31日) ・給与支払報告書の提出(期限:1月31日) |
2月 |
– |
3月 |
– |
このほか、賞与を支給する場合、賞与額の計算業務も必要です。また、毎月の給与に大幅な変動がある場合、社会保険料を決定する標準報酬月額を見直すため、その都度、月額変更届の作成・提出が必要になります。
このように、給与計算担当者は、毎月の給与計算だけでなく、社会保険や税金関係の手続きなど、さまざまな業務も必要となります。スムーズに手続きするため、事前に書類の提出方法や提出先もきちんと調べておきましょう。
1-2. 月間スケジュール
給与計算担当者は、年間スケジュールだけでなく、月間スケジュールも確認しておくことが大切です。また、給与の締日・支払日の関係から、企業によって月間スケジュールは大きく異なることもあるので注意しましょう。
なお、給与の締日15日、支払日25日の企業の場合、月間スケジュールの例は次の通りです。
日 |
業務内容 |
10日 |
・源泉所得税・住民税の納付期限(前月徴収分) |
15日(締日) |
・勤怠の集計・計算 |
15日(締日)~25日(支払日) |
・給与計算 ・振込手続き |
25日(支払日) |
・給与の支払い |
末日 |
・社会保険料の納付期限(前月徴収分) |
従業員の給与から天引きする社会保険料や税金(所得税・住民税)は、毎月納付しなければなりません。納付期限が定められているので、遅れないよう適切に手続きしましょう。次の章では、毎月おこなう給与計算の流れを詳しく紹介していきます。
2. 給与計算の流れ(フロー)

毎月おこなわれる給与計算では、大枠5つのステップに分けることができます。
①総支給額の計算
②社会保険料の算出と控除
③税金の控除額を算出
④労使協定による控除を計算
⑤支給額の算出
給与計算をアウトソーシングする、システムでおこなうなどの場合であっても、業務全体の流れを把握しておくとよいでしょう。上記工程を1つずつ解説します。
2-1. 総支給額の計算
はじめに、従業員の勤怠情報をもとに給与の総支給額を算出します。
総支給額を計算するときに必要な情報は、次に記載する「基本給」「各種手当」「欠勤控除」の内容です。
- 「基本給」…残業代や手当を除いた基本賃金のこと
- 「各種手当」…通勤手当や時間外勤務手当などの基本給を補う給与のこと
- 「欠勤控除」…給与計算の対象期間内に、欠勤や遅刻、早退があればその分を引いた賃金のこと
総支給額は、基本給に各種手当を加算し、そこから欠勤や早退、遅刻にともなう減給分を差し引いた金額になります。

「基本給」は従業員の基本的な賃金のことですが、年齢や勤続年数、経験や能力に応じて各企業で定められている給与規定が異なるため、常に従業員情報を整理しておく必要があります。
「各種手当」は通勤手当や時間外勤務手当のほか、住宅手当、家族手当なども含まれるため、転勤や転居、結婚などの情報更新があった従業員は、その都度情報の更新をする必要があります。
2-2. 保険料の算出と控除
次に、保険料の計算をします。
ここで扱う保険とは、「社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金保険)」と「雇用保険」のことです。3つ目の保険として労災保険もありますが、従業員の負担はないため給与計算のときは不要な項目です。
以下の計算方法でそれぞれ算出し、総支給額から控除していきます。
①社会保険料(健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料)
社会保険(狭義)とは、健康保険、厚生年金保険、介護保険の総称で、企業と従業員が折半で負担します。

「標準報酬月額」とは、毎年4~6月の給与報酬の総額を平均したものです。この標準報酬月額に、それぞれの保険料率を乗じると、その年の9月から翌年の8月までの社会保険料が決まります。
②雇用保険料
雇用保険とは、失業や雇用の継続が困難となった際に給付される制度です。

保険料率、負担割合は農林水産・清酒製造、建設業など、業種ごとに違うため、以下を参照ください。
上記の計算で従業員の負担分をそれぞれ算出し、以下に続く税金などと一緒にまとめて「総支給額」から控除します。
【社会保険料と給与計算について詳しくはコチラ▶社会保険料の計算方法とは?給与計算や社会保険料率についても解説】
2-3. 税金の控除額を算出
社会保険料のほかに、所得税や住民税も給与から控除しなければなりません。なお、従業員が自身で住民税を納める普通徴収を希望する場合、住民税については給与からの天引きが不要です。
①所得税
所得税は、給与の「課税対象額」を使って算出します。課税対象額とは、「総支給額」から「非課税対象の諸手当」と、「社会保険料・雇用保険料」を差し引いた金額です。

ここで出た「課税対象額」を、「源泉徴収税額表」に当てはめると、給与から天引きすべき所得税額を確認することができます。
なお、確認する際は従業員の扶養人数の情報が必要のため、前もって「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらい、各従業員の扶養人数を確認しておきましょう。
【所得税の計算について知りたい方はコチラ▶所得税とは?|源泉所得税の計算方法や税額表の見方を解説】
②住民税
住民税を給与から天引きする特別徴収を利用する場合は、毎年5~6月ごろに従業員が居住する自治体から住民税の決定通知書が送られてきます。
住民税を控除する際は、通知書の月額を控除に入れましょう。
【住民税の計算について知りたい方はコチラ▶給与計算における住民税とは|住民税の計算・納付・注意点について解説】
2-4. 労使協定による控除を計算
労働協定で定められている控除額を計算します。労働協定による控除には、労働組合費や社宅などの福利厚生施設の利用費、財形貯蓄などが含まれます。
一般的には就業規則などであらかじめ規定されているケースが多いため、算出する際はそちらを確認しましょう。
2-5. 支給額の算出
総支給額や各種控除額を算出したら、最終的な支給額を計算しましょう。支給額は、①総支給額から、その後計算した②~④の合計金額を差し引いたものです。

算出した数字に端数がない場合は、そのまま支給額を決定します。
3. 給与計算するときの注意点
給与計算をミスなくおこなうために、給与担当者は「労働基準法」や「所得税法」、「企業の就業規則」など、多くの労務知識が必要となります。
また、労務知識を身につけるだけでは防げない労務リスクもあります。さらに、住民税や保険料の見直しは毎年おこなわれ、常に最新の情報にアップグレードし続けなければいけないなど、非常に責任ある仕事になります。
本章では、給与計算をする際に気を付けることについて詳しく紹介します。
3-1. 賃金支払い5原則を守る
労働基準法第24条に規定されている「賃金支払いの5原則」は以下のとおりです。
【賃金支払いの5原則】
- 通貨支払いの原則
- 直接払いの原則
- 全額払いの原則
- 毎月1回以上の原則
- 一定期日払いの原則
賃金支払いの5原則は不当な搾取や賃金の未払いから労働者を守り、その生活を安定させるための取り決めです。これらの原則により、日本では現金以外(貴金属や商品券など)で賃金を支給することや、従業員の代理人に賃金を支払うことなどが禁止されています。
労働基準法に定められた法令であり、経営者はこれらを遵守したうえで従業員への賃金支給をおこなわなければなりません。
関連記事:賃金支払いの5原則とは?例外や守られないときの罰則について
3-2. 最低賃金ルールを遵守する
給与は、原則として地域別に設定された最低賃金額以上にしなければならないと、最低賃金法に規定されています。この法律は、正社員だけでなく、パートやアルバイトも含めたすべての従業員に適用される仕組みになっています。
最低賃金は、毎年秋に改訂されているので、もし最低賃金ギリギリの給与設定にしている場合は、毎年賃金額を見直す必要があるため気を付けましょう。
3-3. 残業代・割増賃金を正しく支払う
1日8時間・週40時間の法定労働時間を超えた残業を「時間外労働」といいます。時間外労働に対しては、割増率25%以上を適用して割増賃金を支払う義務があります。なお、1ヵ月60時間を超える時間外労働に対しては、割増率50%以上を適用して割増賃金を支払わなければなりません。
また、深夜帯(22時~翌5時)に労働する場合には、深夜手当として割増賃金(割増率25%以上)を上乗せする必要があります。さらに、法定休日に労働する場合、休日労働としての割増賃金(割増率35%以上)の支給も必要なので、未払い賃金が生じないよう慎重に給与計算をおこないましょう。
【残業と割増賃金の関係を知りたい方はコチラ▶残業による割増率の考え方と残業代の計算方法をわかりやすく解説】
3-4. 社会保険の加入要件を確認する
健康保険・厚生年金保険と雇用保険で、加入要件は変わってきます。とくにパート・アルバイトなどの短時間労働者については、条件を満たしているかきちんとチェックしたうえで加入手続きをしましょう。
また、40歳以上になると、介護保険に加入しなければなりません。給与から介護保険料の徴収漏れがないよう注意が必要です。
関連記事:社会保険の加入条件は?労働時間を満たさない場合の対応策まで説明!
3-5. 法改正を随時チェックする
社会保険や税金に関する法律の改正は、毎年のようにおこなわれています。法改正を給与計算に正しく反映させないと、社会保険料・税金の納付ミスにつながります。また、給与支給額(手取り額)に誤りが生じ、未払い・過払い賃金が発生し、担当者の業務負担が増えることにもなるでしょう。
手作業やエクセルで給与計算をおこなっている場合、法改正の都度確認が必要になるため、工数がかかってしまいます。経営者や採用担当者などが給与計算の業務もするとなると、本来やるべきコア業務に向き合うことができなくなってしまいます。このような問題を抱えた際に、給与計算システムを導入するか検討される方が多くなっています。
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4. 給与計算の方法や手順を正しく理解しよう!

毎月の給与計算の流れを正しく理解し、あらかじめマニュアル化しておくと、スムーズに給与計算ができるようになります。しかし、給与計算担当者は、毎月の給与計算だけでなく、社会保険料・税金の計算・納付に関わる手続きや、年に1度年税額を確定させるための年末調整もおこなわなければなりません。
また、給与計算の仕事は、残業代や勤怠の漏れによる労務リスク、扶養人数などの個人情報を取り扱うことによる情報漏えいリスク、所得税・住民税の計算ミスによる税務リスクなど、さまざまなリスクをはらんでいます。毎月おこなう給与計算でも今一度手順を確認し、正しい給与計算ができているかチェックすることが大切です。また、給与計算業務を自動化し、ミスを防止するため、給与計算ソフトの導入も検討してみましょう。
給与計算をエクセルで効率化する方法を解説した記事はこちら
▶給与計算をエクセルで行う方法とは?4つのコツと注意点を解説
給与計算の効率化方法を徹底比較!
給与計算は日々の勤怠管理でもれなく勤怠情報を収集した上で、一人一人計算していく必要があることに加え、ミスが許されない業務であるため、手間だと感じる方も多いでしょう。
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