過労死とは?定義や発生原因・企業が取り組むべき対策を解説 - ジンジャー(jinjer)|人事データを中心にすべてを1つに

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過労死とは?定義や発生原因・企業が取り組むべき対策を解説

「過労死の定義は?」

「過労死を予防するためにどのような対策をおこなうべき?」

過労死は、過重な業務を原因の一つとして従業員が死に至ることや、疾患を患うことを指します。企業は、法令やコンプライアンスを守り、従業員が働きやすい環境を整備しなければなりません

本記事では、過労死の定義や、統計データをもとにした過労死の現状、発生原因を解説します。企業が取り組むべき対策を理解し、過労死の予防に努めましょう。

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1. 過労死とは?定義を解説

過労死等防止対策推進法第2条による過労死の定義は以下のとおりです。

  • 業務における過剰な負担による脳血管疾患や心臓疾患を原因とする死亡
  • 業務における強いストレスを起因とする精神障害を原因とする自殺による死亡

また、死亡に至らなくても、業務に関連して脳血管疾患・心臓疾患・精神障害を発症した場合も含めて「過労死等」と定義づけています。

日本の過労死問題は、世界からも「KAROUSHI」として広く認知されている状況です。日本特有の長時間労働や、過剰な業務負担による健康被害が、国際社会からも注目を集めました。

厚生労働省は、過労死基準(過労死ライン)を、1ヵ月あたり80時間(時間外労働)と定めています。さらに詳しい基準は以下のとおりです。

  • 1ヵ月間に100時間を超える時間外労働
  • 2~6ヵ月平均で月80時間を超える時間外労働

上記の時間に至らなくても、業務と発症の関連性が評価された場合は、「労働災害」として認められます。

企業は、従業員の健康を守り、過労死を防ぐための対策や労働環境の改善をおこなわなければなりません。

参考:過労死等防止対策推進法 | e-Gov 法令検索

参考:脳・心臓疾患の労使ア認定基準 改正に関する4つのポイント|厚生労働省

2. 統計データから見る過労死の現状

2023年度の統計データから見る過労死の現状は以下のとおりです。

調査内容 件数 補足
業務過多における脳・心疾患の労災請求件数 1,023件 ・2年連続で増加

・前年度より220件増加

精神障害における労災請求件数 3,575件 ・年々右肩上がりに増加

・前年度より892件増加

自殺者 21,837人 「勤務問題」による自殺者は2,875人

厚生労働省は、年度ごとに過労死に関する実態調査をおこなっており、調査結果は「過労死等防止対策白書」によって報告されています。

過労死等防止対策白書で、長時間労働や過重な業務、精神的ストレスなどが過労死のリスクを高めることがわかりました。日本における過労死問題は、深刻な社会問題となっているのです。

参考:令和6年版 過労死等防止対策白書|厚生労働省

3. 過労死が発生する原因

過労死が発生する主な原因は以下のとおりです。

  • 長時間労働
  • 過重な業務負担
  • 労働時間の不十分な管理体制
  • 精神的ストレス
  • 企業風土や職場文化

3-1. 長時間労働

過労死の最も大きな原因は、長時間労働です。とくに、月80時間以上の残業が続くと従業員の心身に大きな負担がかかり、脳血管疾患や心臓疾患のリスクを高めます

時間外労働、いわゆる残業が常態化することで、従業員は十分な休養や睡眠を取れなくなるでしょう。慢性的な睡眠不足や生活リズムの乱れが、免疫力の低下や心臓への負担になることも少なくありません。

「過労死ライン」を超える時間外労働は、従業員の健康に与える影響が深刻であることを示しています。

3-2. 過重な業務負担

過度な業務量や責任も過労死の原因の一つです。業務過多になる理由として、以下のような原因が考えられます。

  • 従業員によって業務量に偏りがある
  • 人手不足によって一人あたりの業務量が増えている

過重な業務は、従業員の体力だけではなく精神面にも負担がかかります。業務過多が長期化すると、従業員のモチベーションが低下し、離職率が高くなることも懸念されるでしょう。

3-3. 労働時間の不十分な管理体制

企業が従業員の労働時間を適切に管理していないことが、過労死の引き金となる可能性があります。「適切な休暇を取得させていない」「サービス残業や長時間労働が当たり前」となっている企業では、過労死のリスクが高まるでしょう。

連続した勤務や過密なスケジュールは、従業員の心身の健康を著しく損ないます。管理職や経営陣の管理マネジメント力が不足している場合は、早急に改善策を講じることが大切です。

3-4. 精神的ストレス

職場の人間関係やハラスメント(セクハラやパワハラなど)、組織内の競争や評価制度にもとづく精神的ストレスも過労死の原因となります。

精神的なストレスが続くと、うつ病や適応障害などの精神障害を発症し、自殺に至るケースもあるため注意が必要です。

3-5. 企業風土や職場文化

日本特有の企業風土や、職場文化が過労死の原因になることもあります。具体的には以下のような要因が考えられます。

  • 時間外労働に対する同調圧力
  • 上下関係が厳しく「ノー」と言い難い職場環境
  • 過度な競争と成果主義

上記のような風土や文化が強く根付いている場合、従業員は過剰な労働を強いられる状況に陥りやすくなります。

4. 過労死を防ぐために企業が取り組むべき対策

過労死を防ぐために、企業が取り組むべき対策は以下のとおりです。

  • 労働時間の適正な管理
  • メンタルヘルス対策
  • 職場環境の見直し

4-1. 労働時間の適正な管理

長時間労働が過労死の大きな問題となるため、企業は従業員の労働時間を適正に管理し、法定労働時間の遵守や時間外労働の抑制を徹底する必要があります。具体的には、以下のような対策が効果的です。

対策 内容
労働時間のチェック 従業員の勤務時間を適正に管理し、過度な時間外労働時間が発生していないかどうかを確認
時間外労働時間の上限の遵守 36協定を締結し、時間外労働の上限を超えないよう徹底する
時間外労働の事前申請 無計画・無意味な時間外労働を従業員にさせない

労働時間の適正な管理は、過労死を予防するだけではなく、従業員のモチベーションの維持や生産性の向上、離職率の低下など、さまざまな面で企業に利益をもたらします。

4-2. メンタルヘルス対策

精神的ストレスが原因で自殺に至るケースもあるため、企業は従業員のメンタルヘルスに積極的に取り組む必要があります。具体的には以下のような対策をおこなえます。

対策 内容
ストレスチェックの実施 定期的にストレスチェックを実施し従業員のメンタルの状況を認識する
相談窓口の設置 メンタルヘルス窓口を設置し、従業員に周知する
産業医や専門カウンセラーの設置 産業医や専門カウンセラーを設置し、従業員のメンタルヘルスのサポートを強化する

メンタルヘルス対策は、従業員の健康を守るだけではなく、企業の持続的な発展にも直結します。適切なサポートをおこなうことで、企業全体のパフォーマンスを向上させられるでしょう。

4-3. 職場環境の見直し

従業員が過労に陥らないよう、職場環境を見直し、必要に応じて労働条件の見直しをおこなうことが重要です。具体的には以下のような対策をおこなえます。

対策 内容
業務量の見直し 従業員の一人あたりの業務量が過剰ではないか確認し、必要に応じて業務の再配分をおこなう
柔軟な働き方の導入 テレワークやフレックスタイム制度を導入し、働く時間や環境に柔軟性を持たせる
業務効率化ツールの導入 業務を自動化させ、作業時間の削減やミスの削減を目指し生産性を向上させる

職場環境の見直しは、従業員の長時間労働やストレスを軽減し、過労死やメンタル不調の予防に役立ちます。従業員の健康を守るだけではなく、業務効率の向上にもつながるでしょう。

5. 厚生労働省の過労死等防止対策

厚生労働省の過労死等予防策には以下が挙げられます。

  • 過労死等防止対策推進法の策定
  • 企業におけるストレスチェックの実施の義務化
  • 労働環境改善に関するガイドラインの提供
  • 相談窓口の設置

厚生労働省は、「過労死ゼロ」を実現させるため、関係省庁と連携を取りながら対策に取り組んでいます。企業も、過労死や従業員の健康を守るために働きやすい環境を整備しなければなりません。

参考:過労死等防止対策|厚生労働省

6. 過労死をめぐる裁判事例

過労死をめぐる裁判事例を以下の2つ紹介します。

  • 過労死等による労災認定をめぐる裁判事例
  • 過労死による損害賠償をめぐる裁判事例

6-1. 過労死等による労災認定をめぐる裁判事例

原告は亡くなっていませんが、過労死等による労災認定をめぐって企業を起訴した裁判事例です。概要を以下にまとめました。

項目 内容
事件名 A社運転手くも膜下出血上告事件
争点 ・長時間拘束や時間外労働、宿泊勤務によって体調を崩し、自動車を運転中にくも膜下出血を発症

・労災保険法にもとづき休業補償給付の支給を被告に請求したが不支給決定処分となった

・上記の処分の取り消しを求めて提訴

原告(従業員)の主張 くも膜下出血は、過重な業務との因果関係がある
被告(企業)の主張 原告の疾病は、基礎疾患が影響しており、業務起因性はない
裁判所の判決 発症前に従事した過重な業務による精神的・肉体的な負荷によって、くも膜下出血に至ったと認められる

裁判所は、くも膜下出血の発症と過重労働との因果関係を認め、「労災」と認定しました。長時間労働が過労死に大きく関わっていることが証明された裁判事例です。

6-2. 過労死による損害賠償をめぐる裁判事例

過労により自殺をした方の遺族が、企業に対して損害賠償請求を求めた判例です。概要を以下にまとめました。

項目 内容
事件名 X社事件
争点 ・X社に勤務していた従業員が長時間労働からうつ病を発症し自殺

・遺族が企業に責任を求め、損害賠償を請求

裁判所の判決 ・企業が従業員の健康状態が悪化している事を知りながら、措置を取らなかったとして「安全配慮義務違反」と認定

・債務不履行または不法行為にもとづく損害賠償を負うことになると判断

上記の事件では、遺族に約1億6,800万円の賠償金が支払われ、最終的に和解となりました。企業の「安全配慮義務」の重要性が、世間に広く知れ渡った判例でもあります。

7. 過労死ゼロを目指し労働環境を整備しよう

日本の過労死問題は、世界から注目が集まるほど深刻となっている大きな問題です。企業は、従業員の心身の健康を守るため、然るべき対策をおこなわなければなりません。

過労死の問題が発生した場合、大切な従業員の命が失われるだけではなく、企業のイメージの悪化など社会的損失は避けられないでしょう。中小企業であれば、存続さえ危ぶまれます。

過労死ゼロを目指し、従業員が働きやすい労働環境を整備しましょう。

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OHSUGI

OHSUGI

クラウド型勤怠管理システムジンジャーの営業、人事向けに採用ノウハウを発信するWebメディアの運営を経て、jinjerBlog編集部に参加。営業時代にお客様から伺った勤怠管理のお悩みや身につけた労務知識をもとに、勤怠・人事管理や給与計算業務に役立つ情報を発信しています。

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