産後パパ育休の社会保険料は免除される?給与・賞与の条件と手続き方法を解説
更新日: 2025.6.11
公開日: 2025.6.11
jinjer Blog 編集部
「産後パパ育休で社会保険料は免除される?」
「免除の条件や手続き方法は?」
上記のような疑問をお持ちではないでしょうか。産後パパ育休を取得している期間は、条件を満たすと該当月の健康保険料や厚生年金保険料が免除されます。労働者から育休申請があったら、会社は速やかに社会保険料免除の手続きをしなければなりません。
本記事では、産後パパ育休における社会保険料免除の条件とともに、免除となる育休取得の具体例を紹介します。会社がすべき手続きについてもまとめているため、従業員へスムーズな育休取得を促したい方はぜひ参考にしてください。
4月から施行された育児・介護休業法の改正では、子の看護休暇の拡大をはじめ、子の年齢に応じた柔軟な働き方への措置などが取り入れられました。
これによって、企業側にも柔軟な働き方の実現に向けた対応が強く求められます。そのため、人事労務担当者は特に改正ポイントを正しく理解しておくべきです。
しかし、「結局何をどう整備すればいいのか分からない」「うちの就業規則、今のままで大丈夫?」と悩む人事・労務担当者も多いのではないでしょうか。
そんな方に向けて、当サイトでは改正箇所をわかりやすく図解し、出産前から年齢別に利用できる制度をまとめた資料を無料配布しています。
制度を“知っている”だけで終わらせず、“対応できる”企業になるために。ぜひこちらから資料をダウンロードの上、法改正への備えにお役立てください。
目次
1. 産後パパ育休の社会保険料免除制度とは
産後パパ育休の社会保険料免除制度は、育休の期間を通して「健康保険料」や「厚生年金保険料」が免除される仕組みです。給与が支給されない場合は、雇用保険料も発生しません。
育休を取得した労働者には、条件を満たせば「育児休業給付金」「出生後休業支援給付金」も支給されます。給付金は非課税所得なので、所得税や住民税は課税されません。
社会保険料免除と給付を合わせると、実質的に休業前の手取り額の10割を維持できることが特徴です。
参考:育児休業、産後パパ育休や介護休業をする方を経済的に支援します|厚生労働省
2. 産後パパ育休で社会保険料免除となる条件
産後パパ育休の期間は、以下の条件を満たすと給与・賞与から社会保険料が免除されます。
- 月末最終日を育休期間に含んでいる場合
- 育休開始日を含んだ月に14日以上取得する場合
- 賞与月の最終日を含んで連続1ヵ月以上の育休を取得する場合
それぞれの詳細を解説します。
2-1. 月末最終日を育休期間に含んでいる場合
月の最終日を育休期間に含んでいる月は、社会保険料免除の対象月です。例えば、産後パパ育休を「6月28日〜7月2日」の期間で取得した場合は、6月分の給与にかかる社会保険料が免除されます。
月末最終日のみ取得した場合でも、その月の社会保険料は免除される点は認識しておきましょう。
参考:出生時育児休業(産後パパ育休)には、給付の支給や社会保険料免除があります|厚生労働省
2-2. 育休開始日を含んだ月に14日以上取得する場合
育休開始日と復職日が同月の場合、14日以上の育休を取得すれば該当月の保険料が免除されます。産後パパ育休は短期間で取得するケースが多いため、2022年10月に免除要件が見直されました。
例えば、産後パパ育休を「7月2日〜7月17日」の期間で取得した場合は、7月分の給与にかかる社会保険料が免除されます。「14日」には、土日や祝日などの休日も含めてカウントされることを押さえておきましょう。
参考:育児休業等期間中の社会保険料免除要件が見直されます。|厚生労働省
2-3. 賞与月の最終日を含んで連続1ヵ月以上の育休を取得する場合
賞与にかかる社会保険料は、賞与月の最終日を含んで連続1ヵ月以上(暦日+ 1日以上)の育休を取得する場合に限り免除されます。
産後パパ育休は「最大28日」なので、上記の条件を満たせません。賞与の社会保険料を免除するためには、産後パパ育休とほかの育休制度を組み合わせる必要があります。
一例として、2月に賞与が支給されるケースを考えてみましょう。産後パパ育休を「2月1日〜2月28日」で取得し、通常の育休を「3月1日〜3月10日」で取得した場合は免除の対象となります。
賞与月に育休を取得していても、1ヵ月未満の場合は免除対象とならないことに注意が必要です。
参考:令和4年10月から育児休業等期間中における社会保険料の免除要件が改正されました|日本年金機構
3. 【ケース別】産後パパ育休で社会保険料が免除される具体例
産後パパ育休期間における社会保険料は、「月末最終日を含んでいる場合」や「育休開始日を含んだ月に14日以上取得する場合」に免除されます。
以下では、免除の条件を満たす育休取得の具体例をケース別に見ていきましょう。
3-1. 月初に育休を開始するケース
月初に育休をスタートする場合は、「育休開始日を含んだ月に14日以上取得する」条件を満たせば社会保険料が免除されます。具体例は以下のとおりです。
具体例 | 免除の可否 | |
ケース1 | 開始日:7月2日
終了日:8月15日 |
7月分:○ |
ケース2 | 開始日:7月2日
終了日:8月13日 |
7月分:× |
ケース2のように、取得期間が14日未満の場合は該当月の社会保険料は免除されません。
3-2. 月をまたいで育休を取得するケース
月をまたいで産後パパ育休を取得する場合は、最終日を育休期間に含んでいる月の社会保険料のみ免除されます。具体的なケースを見てみましょう。
具体例 | 免除の可否 | |
ケース1 | 開始日:7月31日
終了日:8月10日 |
7月分:○
8月分:× |
ケース2 | 開始日:7月31日
終了日:8月14日 |
7月分:○
8月分:× |
ケース2では、8月に14日以上の育休を取得しているため「8月も免除の対象になるのではないか」と感じる方もいるでしょう。しかし、8月は「育休をスタートした月」ではないことから、社会保険料免除の対象外となります。
3-3. 2回に分けて育休を取得するケース
産後パパ育休を2回に分割して取得する場合、社会保険料免除の対象月が増えることもあります。具体例を見てみましょう。
具体例 | 免除の可否 | |
ケース1 | 1回目:4月16日~4月29日
2回目:5月1日~5月14日 (4月30日のみ復職) |
4月分:○
5月分:○ |
ケース1では、2回とも「育休開始日を含んだ月に14日以上取得する」条件を満たしているため、2ヵ月分の社会保険料が免除されます。4月30日に復職していることで、それぞれ独立した育休と見なされるためです。
具体例 | 免除の可否 | |
ケース2 | 1回目:4月3日~4月20日
2回目:5月27日~5月31日 (4月21日〜5月26日は復職) |
4月分:○
5月分:○ |
ケース2において、4月は「育休開始日を含んだ月に14日以上取得する」条件を満たし、5月は月末最終日を含んでいます。ケース1と同様に、それぞれ独立した育休と見なされるため、2ヵ月分の社会保険料が免除されます。
具体例 | 免除の可否 | |
ケース3 | 1回目:4月16日~4月29日
2回目:5月1日~5月14日 (4月30日は有給取得) |
4月分:○
5月分:× |
ケース3では、5月分の社会保険料は免除されません。4月30日に有給を取得していることで「連続した一つの育休」と見なされるためです。
勤務日を挟まなければ、分割取得しても独立した育休として扱われない点に注意しましょう。
3-4. 育休中に就労するケース
産後パパ育休中の就労は、休業開始前までに労使協定を締結した場合に限り認められます。社会保険料免除に就労がどのように影響するのか、具体例を見ていきましょう。
具体例 | 免除の可否 | |
ケース1 | 開始日:7月2日
終了日:7月20日 (7月8日のみ就労) |
7月分:○ |
ケース2 | 開始日:7月2日
終了日:7月25日 (7月8日〜10日に就労) |
7月分:○ |
ケース3 | 開始日:7月2日
終了日:7月15日 (7月8日のみ就労) |
7月分:× |
ケース1、2は就労日を除いても14日間の育休期間があるため、該当月の社会保険料は免除対象となります。ケース3のように、就労日を除くと14日以上の要件を満たせなくなる場合は免除されません。
産後パパ育休中に就労させる場合は、労働者と話し合い、合意したうえで労使協定を決定・作成する手続きが必要です。
参考:労使協定とは|厚生労働省
4. 産後パパ育休における社会保険料免除の手続き方法
産後パパ育休における社会保険料免除の手続きについて、必要書類や提出のタイミングは以下のとおりです。
会社の対応 | タイミング |
従業員から「出生時育児休業申出書」を受け取る | 原則育休開始2週間前まで |
年金事務所に「育児休業等取得者申出書」を提出する | 育休開始日から終了後1月以内 |
年金事務所から「育児休業等取得者確認通知書」を受け取る | 申請受理後 |
育休期間の変更がある場合は、育児休業等取得者申出書と同様の書面を用いて「延長届」や「終了届」を提出する必要があります。
参考:育児休業等を取得し、保険料の免除を受けようとするとき|日本年金機構
参考:従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が育児休業等を取得・延長したときの手続き|日本年金機構
参考:従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)の育児休業等が終了したときの手続き|日本年金機構
5. 従業員へ産後パパ育休のスムーズな取得を促そう
産後パパ育休は、男性の育児参加を支援するための制度です。男性の育休取得率が高まれば、女性の継続就業割合や、企業のブランド力の向上が期待できます。
従業員のスムーズな育休取得を促すために、人事労務担当者の方がリードできる体制を構築してみてはいかがでしょうか。
4月から施行された育児・介護休業法の改正では、子の看護休暇の拡大をはじめ、子の年齢に応じた柔軟な働き方への措置などが取り入れられました。
これによって、企業側にも柔軟な働き方の実現に向けた対応が強く求められます。そのため、人事労務担当者は特に改正ポイントを正しく理解しておくべきです。
しかし、「結局何をどう整備すればいいのか分からない」「うちの就業規則、今のままで大丈夫?」と悩む人事・労務担当者も多いのではないでしょうか。
そんな方に向けて、当サイトでは改正箇所をわかりやすく図解し、出産前から年齢別に利用できる制度をまとめた資料を無料配布しています。
制度を“知っている”だけで終わらせず、“対応できる”企業になるために。ぜひこちらから資料をダウンロードの上、法改正への備えにお役立てください。
人事・労務管理のピックアップ
-
【採用担当者必読】入社手続きのフロー完全マニュアルを公開
人事・労務管理公開日:2020.12.09更新日:2024.03.08
-
人事総務担当が行う退職手続きの流れや注意すべきトラブルとは
人事・労務管理公開日:2022.03.12更新日:2024.07.31
-
雇用契約を更新しない場合の正当な理由とは?伝え方・通知方法も紹介!
人事・労務管理公開日:2020.11.18更新日:2025.05.30
-
法改正による社会保険適用拡大とは?対象や対応方法をわかりやすく解説
人事・労務管理公開日:2022.04.14更新日:2025.05.16
-
健康保険厚生年金保険被保険者資格取得届とは?手続きの流れや注意点
人事・労務管理公開日:2022.01.17更新日:2025.05.12
-
同一労働同一賃金で中小企業が受ける影響や対応しない場合のリスクを解説
人事・労務管理公開日:2022.01.22更新日:2025.04.23
労務の関連記事
-
男性の育児休暇に関する義務化はいつから?法改正の内容や企業がおこなうべき準備とは
人事・労務管理公開日:2025.06.21更新日:2025.06.17
-
育児休暇に関する法律が2025年に改正!改正のポイントや企業の対応義務を解説
人事・労務管理公開日:2025.06.20更新日:2025.06.17
-
男性の育児休暇とは?取得条件や期間、法改正について詳しく解説
人事・労務管理公開日:2025.06.19更新日:2025.06.17