給与計算における住民税とは|住民税の計算・納付・注意点について解説
更新日: 2023.3.15
公開日: 2020.12.14
野村 佳史

給与計算で住民税を算出する場合、給与所得や控除などを理解しておく必要があります。また、給与計算における住民税は、住民票のある市町村や都道府県によって課税される税金額が違うため、事前の確認が必要です。
本記事では、住民税の基礎知識と計算方法、納付や注意しておきたいポイントなどをご紹介します。
【給与計算業務のまとめはコチラ▶給与計算とは?計算方法や業務上のリスク、効率化について徹底解説】
1. 給与計算で知っておきたい住民税の基礎知識

1-1. 住民税とは
住民税とは個人の所得にかかる地方税のひとつで、「都道府県民税」と「市区町村民税」を合わせた税金を表しています。各自治体の公的サービスに利用される税金で、それぞれ住んでいる都道府県と市区町村に納めます。
住民税を納める先は、その年の1月1日に住民票の籍を置いている自治体です。税額に関しては、前年の1月1日~12月31日までの所得額から算出される点に注意が必要です。
1-2. 住民税の納め方は2種類
住民税を納める方法には、特別徴収と普通徴収の2通りがあります。特別徴収は会社側が支払い、普通徴収は個人で支払う形になります。
1-2-1. 特別徴収
特別徴収は、給与から天引きされる納付方法です。給与の支払い者である会社が従業員の住民税を計算して給与から天引きし、各自治体へ納付する仕組みになっています。
1-2-2. 普通徴収
普通徴収とは、勤めている会社を通さずに自分で住民税を納付する方法です。対象は個人事業主やフリーランス等の給与所得でない人となります。
また、退職や転職をした場合にも普通徴収となることがあります。転職をした際は、特別徴収だった場合でも、普通徴収に切り替わる場合があるため、注意が必要です。
1-3. 住民税が決まる時期
住民税は前年の所得をもとに計算され、翌年の1月1日に住民票のある自治体に納付する地方税です。住民税の算出は各自治体がおこない、毎年5月ごろに納付者に通知が送られます。普通徴収の場合は個人宛てに、特別徴収の場合は会社宛てに納付書が届きます。
特別徴収は、前年の住民税が6月の給与から1ヵ月ごとに天引きされる仕組みです。一方普通徴収では、納付書の期日までに3ヵ月ごとに納付します。ただし、年の途中で退職した場合は1ヵ月分ごとの納付となることがあります。届いた納付書に従って納付してください。
2. 給与計算で住民税を計算する方法

2-1. 所得割、均等割とは
住民税は「所得割」と「均等割」の合算が年間の納税額となります。まずは所得割額と均等割額からご紹介します。
【住民税(年間)】=【所得割】+【均等割】
- 所得割:
前年の所得に応じて課税されます。標準税率では、都道府県民税で所得の4%、市区町村民税で6%の課税です。合わせて10%となるように設定されていることが多いです。
- 均等割:
各自治体で定めた課税金額です。標準税率で、都道府県民税1,500円と市区町村民税3,500円を足した5,000円が均等割で課税されます。毎月給与から天引きする金額は、上記合算で出された【住民税(年間)】を12ヶ月分に割ると算出されます。
2-2. 住民税の計算の流れ
STEP①「課税標準額」を算出する
課税標準額は、給与所得から所得控除額を差し引いた金額です。この金額が課税の対象となります。
【課税標準額】=【給与所得】-【所得控除額】
- 給与所得…給与収入(支給額)から給与所得控除を差し引いたもの
- 所得控除…社会保険料控除や生命保険料控除、配偶者控除、扶養控除などの各種控除
【参照】国税庁:No.1410 給与所得控除
【参照】国税庁:所得金額から差し引かれる金額(所得控除)
STEP②「所得割」を算出する
所得割は、課税標準額に所得割の税率をかけたものに、調整控除や配当控除、住宅ローン控除などの控除を引いたものが、都道府県民税と市区町村民税の所得割の金額です。
【所得割】=【課税標準額】×【税率】-【各種控除額】
STEP③「所得割」と「均等割」を足し合わせる
最後に、STEP②で計算した所得割に、各地方自治体の均等割を足し合わせれば、徴収する住民税が算出されます。
特別徴収の場合は、これを12等分した金額を毎月給与から天引きしていくことになります。
3. 住民税を計算するときの注意点

給与計算で住民税を算出するときには、自治体によって税率が異なっていたり、追加の税金が上乗せされる場合があります。
3-1. 令和5年度までは均等割が上乗せになる
東日本大震災の復興に充てる財源確保のため、所得税には復興特別所得税がかけられています。標準税率で都道府県民税が1,500円、市町村民税が3,500円と500円ずつ上乗せされます。
住民税の均等割にも平成26年度から令和5年度まで、均等割が上乗せされていることに注意しましょう。
3-2. 自治体によっては税率が異なる
国税庁により、住民税には標準税率が設定されています。しかし、自治体によって税率は異なるので注意しましょう。たとえば、政令指定都市では都道府県民税が2%、市区町村民税が8%です。
基本的には合わせて10%ですが、横浜市は10.025%、名古屋市は9.7%となっています。詳しくは、各自治体で確認しておくと良いでしょう。
上述のように、自治体によって異なるため、従業員の引っ越しがある際には所得税の再計算が必要になります。また、所得に応じて税額が変わるので毎年計算が必要になります。従業員が少なければ問題ないかもしれませんが、コア業務と併せて行うとなると難しいのではないでしょうか。
そのような場合はシステムを導入すると、人事・勤怠システムと連携させることでミスなく漏れなく控除金額を自動で計算してくれるため、時間を取られることもなくなるのでおすすめです。
当サイトでは、給与計算システム「ジンジャー給与」の管理画面のキャプチャ画像を参考に、実際にどのように住民税を算出するかや、システムを連携することでどのように効率化できるか解説した資料を無料で配布しております。システムを導入することで、再計算の手間含め、給与計算業務が効率化されそうだと感じた方は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
【参照】横浜市:個人の市民税・県民税について
【参照】名古屋市:所得割の税率
4. 給与計算で住民税を算出するときは給与所得と所得控除額が必要

給与計算で住民税を算出する際には、前年の給与所得と所得控除の総額が必要です。また、その年の1月1日に住民票を置いていた自治体の税率も確認ください。
また、税率は自治体によっても異なります。詳しくは自治体ごとに確認しましょう。
【所得税の計算について知りたい方はコチラ▶所得税とは?|源泉所得税の計算方法や税額表の見方を解説】
【社会保険料と給与計算について詳しくはコチラ▶給与計算で社会保険料を算出する方法を分かりやすく解説】
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