給与計算業務とは?実務の流れや計算に必要な法令知識を解説 - ジンジャー(jinjer)|統合型人事システム

給与計算業務とは?実務の流れや計算に必要な法令知識を解説 - ジンジャー(jinjer)|統合型人事システム

給与計算業務とは?実務の流れや計算に必要な法令知識を解説 - ジンジャー(jinjer)|統合型人事システム

給与計算業務とは?実務の流れや計算に必要な法令知識を解説

給与を計算する人

給与計算業務とは、従業員の勤怠情報などから毎月の給与や賞与を計算し、支給額を確定する業務のことです。給与計算業務には、労働基準法や所得税法などの法律も多く関係するため、正確な知識を身につけておく必要があります。

この記事では、給与計算の方法や業務フロー、押さえるべき法令の知識、注意ポイントなどを解説します。

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1. 給与計算業務とは

計算する人

給与計算とは、従業員の給与を正確に算出し、支給額を確定する業務です。基本給や各種手当、残業代などの総支給額を計算し、所得税や社会保険料などを控除して、最終的な支給額を決定します。

給与計算業務の担当者は、従業員の権利を守り、企業の法令遵守を支える役割も担います。給与計算を正確かつ効率的におこなうには、業務の流れや関連法規を正しく理解しておくことが大切です。ここでは、基本となる給与計算の仕組みやスケジュールを解説します。

給与計算の基礎をおさえたい方はこちらの記事もあわせてご確認ください。

関連記事:給与計算の基礎を解説!初心者でもわかる給与の仕組みや計算方法

1-1. 給与計算の基本的な仕組み

給与計算で給与に含まれるものは次の3つに分類できます。

①基本給

②手当(通勤手当、役職手当、資格手当、家族手当、住宅手当など)

③変動的な給与(時間外労働手当・深夜割増手当・休日割増手当)

②の手当は企業によって金額や名称が異なります。また、従業員によっても手当の有無や金額が違うため、必ず就業規則を確認しましょう。

基本的な給与計算は、次の計算式で表せます。

【総支給額】―【控除額】=【差引支給額】

  • 総支給額:基本給、割増賃金、各種手当などの支給額から、欠勤控除や遅刻早退控除などを反映した、社会保険料や税金を差し引く前の金額のことです。一般的に「額面」とよばれます。
  • 控除額:社会保険料や税金などです。企業によって親睦会費などの特別な項目を設けている場合もあります。
  • 差引支給額:従業員の銀行口座に振り込まれる金額のことです。一般的に手取り額ともよばれます。

1-2. 給与計算業務のスケジュール

給与計算は毎月・毎年のスケジュールが決まっています。

毎月のスケジュールは次のとおりです。

  • 業務内容
10日
  • 源泉所得税・住民税の納付期限(前月徴収分)
勤怠締日
  • 勤怠の集計・計算
勤怠締日~支払数日前
  • 給与計算
  • 振込手続き
支払日
  • 給与の支払い
末日
  • 社会保険料の納付期限

年間スケジュールは次のとおりです。

業務内容
4月
  • 社会保険料率の改定の確認
  • 新卒入社社員の給与設定
  • 給与支払報告に係る給与所得者異動届出書の提出(期限:4月15日)
5月
  • 住民税の年度更新(その年6月から翌年5月まで適用)
6月
  • 労働保険(雇用保険・労災保険)の年度更新(期限:6月1日~7月10日)
7月
  • 定時決定(社会保険の算定基礎届の提出)
8月
9月
  • 定時決定による社会保険料の計算変更(その年9月から翌年8月まで適用)
10月
  • 最新の最低賃金の確認
  • 年末調整書類の配布
11月
  • 年末調整書類の回収
12月
  • 年末調整の実施
  • 還付額または追徴税額の反映
1月
  • 従業員へ源泉徴収票の交付(期限:1月31日)
  • 法定調書の提出(期限:1月31日)
  • 給与支払報告書の提出(期限:1月31日)
2月
3月

スケジュールの詳細は関連記事をご覧ください。

関連記事:給与計算業務の流れ(フロー)とは?月間・年間スケジュールも紹介!

2. 給与計算の方法と業務フロー

計算する人

給与計算業務の大まかな流れ(フロー)は、次のとおりです。

  1. 従業員の勤怠情報を締めて、労働時間を集計する
  2. 総労働時間から総支給額を計算する
  3. 各種保険料・税金を計算する
  4. 総支給額から各種保険料と税金を控除する
  5. 給与を振り込み、保険料と税金を納付する

給与計算業務を理解するためには、まずは業務の全体的な流れを把握し、そのうえで各工程の内容を押さえることが大切です。

この章では、給与計算業務を実際の流れに沿ってそれぞれの工程について詳しく紹介します。

2-1. 勤怠の締め・労働時間の集計

給与計算業務は勤怠の確認から始まります。まずは従業員の勤怠情報を見て抜け漏れなどがないか確認しましょう。必要に応じて従業員や上長に確認をとり、全従業員の全労働日について正しい勤怠情報がそろった時点で勤怠を締めます。

勤怠を締めた後は、総労働時間や遅刻・早退の時間、欠勤の日数、時間外労働・休日労働・深夜労働の時間など、必要な項目ごとに労働時間を集計します。

勤怠の締め作業や労働時間の集計方法について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

関連記事:勤怠の締め作業の重要性とは?重要性や効率的に管理する方法をご紹介! 

関連記事:労働時間の計算の仕方や注意点を正社員・パート別に例を交えて解説

2-2. 総支給額の計算

勤怠が確定したら算出した労働時間数を基に、給与の総支給額を計算します。

基本給や、時間外労働・休日出勤などによって発生する割増賃金、通勤手当や住宅手当などの各種手当、そして対象期間に発生した欠勤や遅刻・早退による控除を基に、総支給額を計算します。

計算式は次のとおりです。

【総支給額】=【基本給】+【割増賃金】+【各種手当】-【欠勤や遅刻早退などの各種控除】

  • 割増賃金:時間外労働、休日労働、深夜労働に対する割増分
  • 各種手当:通勤手当、役職手当、資格手当、住宅手当など

時間外労働や休日労働、深夜労働は、労働基準法によって定められている割増率で計算しましょう。

2-3. 各種社会保険料の計算

総支給額を計算したら、次は社会保険料の計算をします。

社会保険料は、主に「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」「雇用保険」の4つの計算が必要です。従業員分の社会保険料の計算方法は次のとおりです。

社会保険の種類 計算方法
健康保険料

(子ども・子育て支援金を含む)

【標準報酬月額】×【保険料率】
厚生年金保険料 【標準報酬月額】×【保険料率】
介護保険料 【標準報酬月額】×【保険料率】
雇用保険料 【総支給額のうち、賃金とみなされる額】×【保険料率】

「健康保険」「厚生年金保険」は、標準報酬月額にそれぞれの保険料率をかけて算出した額を企業と従業員で折半します。健康保険料率は地域や加入している健康組合によって異なるため、必ず加入先が提示している保険料額表を確認しましょう。

「介護保険」は、40歳から64歳までで健康保険に加入している従業員に加入の義務があります。介護保険料も標準報酬月額に保険料率をかけて算出した額を企業と従業員で折半します。健康保険料と同様に、加入先の保険料額表を確認しましょう。

「雇用保険料」はその月の総支給額のうち雇用保険で賃金としてみなされる額に、毎年厚生労働省より発表されている雇用保険の保険料率をかけると算出できます。

なお、2026年4月から新たな社会保険「子ども・子育て支援金」の徴収が始まりました。子ども子育て支援金は健康保険料に上乗せする形で計算されます。法令上は、給与明細で子ども・子育て支援金額を健康保険料と分けて表示する義務はありません。しかし、従業員の理解を促すために、内訳を分けて子ども・子育て支援金額を明記するのが望ましいとされています。

参考:令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内|厚生労働省

関連記事:社会保険料の計算方法とは?給与計算や社会保険料率についても解説 

関連記事:厚生年金保険料とは?標準報酬月額の決め方から給与計算の方法を解説

関連記事:子ども・子育て支援金制度とは?料率と計算方法、対象者をわかりやすく解説

2-4. 住民税・所得税の計算

住民税と所得税は原則毎月の給与から控除されます。

住民税とは、前年の所得に対して課せられる地方税です。住民税を給与から徴収する場合、毎年5~6月ごろに、従業員が居住する自治体から送られてくる「決定通知書」に記載されている住民税の金額を、6月支給分給与から翌年5月分支給給与によって徴収します。

一方、所得税とは1年間の所得に対して課せられる国税のことです。毎月の給与から徴収する所得税は、国税庁が定める「源泉徴収税額表」を用いて、扶養親族の数や社会保険料を考慮して算出されます。住民税とは異なり、確定した税額ではないため本来の税額と差分は年末調整で調整されます。

参考:給与所得の源泉徴収税額表(令和 8 年分)|国税庁

関連記事:給与計算における住民税の控除処理とは?計算・納付方法やスケジュールを解説

関連記事:年末調整とは?目的や確定申告との違い、基本的な流れを人事担当者向けに解説

2-5. 差引支給額の計算

最初に計算した給与の「総支給額」から「各種社会保険料と住民税・所得税」を差し引くと「差引支給額」が算出されます。差引支給額は一般的に手取りとよばれています。

【総支給額】-【社会保険料・税金などの控除額】=【差引給与額】

2-6. 事務処理・給与の振込手配

差引支給額まで計算できたら、賃金台帳への記入や給与明細の作成などの事務処理と、各従業員への支払い手続きをおこないます。

賃金台帳は、原則最後に記入した日から5年間(当面の間は3年)保管が必要です。

給与明細書は、所得税法において従業員への交付が義務付けられています。給与を支払う際には必ず給与明細を作成し従業員に交付しましょう。

関連記事:給与明細とは?保管期間や注意点、記載項目までくわしく解説

関連記事:賃金台帳に必要な記載事項とは?8つの必須項目と書き方を詳しく解説

2-7. 各種社会保険料・税金の納付

事務処理や振込手配が終わったら、各種社会保険料や所得税、住民税を納付します。

社会保険料は、各役所から送られる「納入通知書」を基に月末までに納付をおこないます。また、所得税や住民税などの税金は、翌月10日までに税務署や各市区町村への納付が必要です。

3. 給与計算業務で必要な法令知識

はてなと虫眼鏡

正確に給与計算業務をおこなうためには、「労働基準法」や「所得税法」など、法律に関する知識が必要です。

ここでは必ず押さえておくべき法令知識を紹介します。

関連記事:給与計算の初心者がこれだけは押さえるべき3つのポイント

3-1. 賃金支払い5原則

労働基準法第24条には、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」「賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。」と定められています。この条文は5つに細分化でき、これを「賃金支払の5原則」とよびます。

  • 通貨払いの原則
  • 直接払いの原則
  • 全額払いの原則
  • 毎月1回以上払いの原則
  • 一定期日払いの原則

ただし、これは原則であり、賃金支払いの5原則には例外のパターンもあるので注意しましょう。

原則 例外
通貨払い 労働協約で定めがある手当

従業員の同意を経て口座振込にする場合など

直接払い 使者(妻子など)に渡す(本人が受け取れない場合)

裁判所の決定により賃金が差し押さえられている場合

全額払い 所得税、社会保険料などの源泉控除

労使協定で定められているもの

毎月1回以上払い 臨時に支払われる給与、賞与

1ヵ月を超える期間を基準に支給される手当

労働基準法内の非常時払い

一定期日払い

関連記事:賃金支払いの5原則とは?例外や守られないときの罰則について

3-2. 時間外、休日、深夜労働の割増賃金(手当)

法定労働時間を超えた労働、深夜時間の労働、法定休日に労働をさせる場合など、通常の給与に割増率を乗じた割増賃金(手当)を支給する必要があります。

割増賃金率の一覧
区分 割増率
時間外労働:法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える労働 25%以上
休日労働:法定休日の労働 35%以上
深夜労働:22時から翌5時までの労働 25%以上
月60時間を超える時間外労働 50%以上
時間外労働(月60時間以下)+深夜労働 50%以上(25%+25%)
時間外労働(月60時間超)+深夜労働 75%以上(50%+25%)
休日労働+深夜労働 60%以上(35%+25%)

割増賃金は、次の計算式で算出します。

【対象となる時間数】×【基礎賃金(時給)】×【割増率】

割増賃金の計算を誤ると、従業員から未払い賃金の請求を受けるだけでなく、労働基準法に基づき罰則が適用されるおそれもあるため気を付けましょう。

関連記事:労働基準法第37条とは?割増賃金の計算方法や注意点を解説

3-3. 端数処理のルール

給与計算では、時間外労働手当などの計算で、端数が発生する場合があります。端数処理のルールは、法律や厚生労働省の通達で定められており、間違いやすいため注意が必要です。

割増賃金の計算においては、労働時間と賃金額それぞれの端数処理に注意する必要があります。まず労働時間は分単位で計算しなければなりません。例えば、時間外労働が2時間5分の場合、分単位を切り捨てて2時間として計算すると、賃金全額払いの原則に反します。

ただし、1ヵ月の時間外労働などの合計時間に1時間未満の端数が生じた場合、30分未満を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げる扱いは可能です。

賃金の計算においても、労働者に不利になるような端数処理は原則認められません。ただし例外として、次のような場合は給与計算の簡略化が認められています。

  • 1時間当たりの賃金額及び割増賃金額に1円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること。
  • 1ヵ月における時間外労働、休日労働、深夜業の各々の割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること。
  • 1ヵ月の賃金支払額に100円未満の端数が生じた場合、50円未満の端数を切り捨て、それ以上を100円に切り上げて支払うこと。
  • 1ヵ月の賃金支払額に生じた1,000円未満の端数を、翌月の賃金支払日に繰り越して支払うこと。

なお、1ヵ⽉の賃⾦⽀払額における端数処理を採用する場合には、その旨を就業規則に定めて従業員に周知しておく必要があります。

関連記事:給与計算の端数処理で気をつけるべきポイントを徹底解説! 

関連記事:15分単位の勤怠管理や切り捨ては違法?残業代は原則1分単位で正しく計算しよう

3-4. 減給・減額のルール

懲戒処分などで従業員の給与を減額する場合も注意が必要です。賃金を減額する場合、労働基準法91条により限度額が定められています。

対象 上限
1回の減給額 平均賃金の1日分の半額
賃金支払期内の減給総額 一賃金支払期の賃金総額の10分の1

減給の限度額については、こちらの関連記事で詳しく説明しています。

関連記事:労働基準法第91条の減給の上限とは?減給ルールや計算方法をわかりやすく解説

3-5. 社会保険料の改定

健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料は年に一度、「定時決定」という見直しがおこなわれます。定時決定では、4月、5月、6月支払い分給与の平均金額をもとに計算をおこない、その年の9月に社会保険料が改定されます。

一方、固定的賃金が変動したときにおこなわれる社会保険料の改定を随時改定といいます。これは固定的賃金に変動が生じたときから4ヵ月目に改定の手続きが必要です。

特に随時改定は従業員ごとに対象の有無を確認する必要があるため、処理漏れが発生しやすい手続きです。随時改定の処理が漏れると社会保険料が正しく算出できず、将来的に年金事務所から是正指導が入る可能性もあるので注意しましょう。

定時決定と随時改定については、次の関連記事もご覧ください。

関連記事:社会保険料の定時決定(算定基礎届)とは?対象者や算出方法、手続きの流れを解説

関連記事:社会保険の随時改定とは?標準報酬月額を改定する条件やタイミング、手続きや注意点を解説

3-6. 通勤手当の非課税限度額

通勤手当は原則として非課税ですが、一定額を超える部分は課税対象となります。通勤手段や距離ごとの非課税限度額は次のとおりです。

①交通機関又は有料道路を利用している人に支給する通勤手当の場合

:最高限度を150,000円として1ヵ月当たりの合理的な運賃等の額

②自動車や自転車などの交通用具を使用している人に支給する通勤手当

通勤距離の区分 課税されない金額
片道2km未満 全額課税
片道2km以上10km未満 4,200円
片道10km以上15km未満 7,300円
片道15km以上25km未満 13,500円
片道25km以上35km未満 19,700円
片道35km以上45km未満 25,900円
片道45km以上55km未満 32,300円
片道55km以上65km未満 38,700円
片道65km以上75km未満 45,700円
片道75km以上85km未満 52,700円
片道85km以上95km未満 59,600円
片道95km以上 66,400円

参考:通勤手当の非課税限度額の改正について|国税庁

4. 給与計算業務で起こりやすいトラブルと防止策

ガベルと本

給与計算業務でミスが発生すると、担当者の業務負担が増え、残業コストの上昇につながります。また、未払い賃金が生じる場合には、従業員とのトラブルや企業への不信感にもつながりかねません。

そのため、給与計算でよく起こるミスを把握し、あらかじめ対策を講じておくことが重要です。ここでは、実際に起こりやすい課題とその防止策について具体的に紹介します。

4-1. 打刻・申請漏れによる勤怠データの誤集計

正確な給与計算をおこなうには、勤怠データの正確性が欠かせません。例えば、従業員によるタイムカードの打刻漏れや休暇・残業申請の未提出があると、実際の労働時間が正しく反映されず、時間外労働や欠勤控除の計算に誤りが生じてしまいます。また、勤怠集計の段階でミスがあると、その後の給与計算にも影響が出ます。

このようなミスを防ぐためには、従業員が正しく打刻・申請できるように、ルールや手順を周知徹底することが重要です。加えて、勤怠管理システムを導入して集計作業を自動化すれば、人的ミスを減らし、勤怠データの正確性をより確実に担保できます。

4-2. 各種手当・控除の適用ミスによる計算誤り

企業が独自に導入する役職手当や住宅手当などの各種手当、寮費などの控除制度)は、各社によって支給要件や金額などが異なります。

そのため、各種手当や控除に関しては、就業規則などの社内ルールで取り扱いを明確に定めることが重要です。加えて、給与計算ソフトの設定にはこれらのルールを正確に反映させ、定期的に更新・確認をおこなうことで、計算ミスや法令違反のリスクを最小限に抑えられます。

4-3. 年末調整の処理間違い

給与計算業務には、毎月の給与計算に加え、年末調整業務も含まれます。年末調整とは、その年の源泉徴収税額と実際の年税額を照合し、年末の給与で過不足を精算する必要があります。

年末調整でよくあるミスには、従業員の申告内容の誤りや、企業担当者による控除情報の反映漏れがあります。控除が正しく反映されないまま年末調整を実施すると、所得税額に誤差が生じ、再計算が必要になることもあります。

このようなトラブルを防ぐには、早めに年末調整のスケジュールを立て、計画的に業務を進めることが重要です。また、従業員に申告間違いの事例を事前に周知しておくと、申告ミスの防止につながります。さらに、システムで対応できる業務は積極的に自動化し、手入力によるミスを極力減らすことが効果的です。

関連記事:年末調整はいつが期限?具体的なスケジュールや提出書類を解説

4-4. 給与改定(昇給・降給)や人事異動の反映漏れ

昇給やベースアップなどで基本給が変わる月は、給与計算に特に注意が必要です。昇給後の基本給を当月給与に反映するのはもちろんですが、時間外手当などが翌月払いの場合、時間外手当の計算はあくまで対象月の基本給をベースにおこなう必要があります。

昇給後の額で計算すると過払いが発生し、翌月に調整が必要となるため余計な業務が増えます。例えば、4月が昇給月で3月分の時間外手当を4月給与で支給する場合は次のとおりです。

  • 基本給:4月の昇給後の額を支給
  • 時間外手当:3月分の昇給前の基本給をベースに計算

また、部署や職種ごとに手当が定められている場合は、手当の付け忘れなど人事異動による変更でミスが起きやすくなるので注意が必要です。

給与改定や人事異動の情報をスムーズに給与計算に反映させるため、システムで情報を一元管理することが望ましいでしょう。加えて、企業独自のルールがある場合もあるので、給与計算時には必ず就業規則を確認することが重要です。

関連記事:定期昇給とは?ベースアップ(ベア)との違いや平均額を解説

4-5. 社会保険・税制改正の見落としによる計算ルールの未対応

社会保険制度や税制度は、毎年のように改正がおこなわれています。

例えば、令和8年1月からは、令和7年度税制改正による基礎控除や給与所得控除の引き上げなどに伴い、所得税の計算に使用する源泉徴収税額表が変更されました。加えて、今後は労働基準法の大幅な改正も予想されています。

最新の法改正を給与計算に反映させなければ、社会保険料や所得税の控除額を誤って計算してしまい、結果として従業員への給与に誤りが生じるおそれがあるでしょう。そのため、あらかじめ法改正情報の入手ルートを確保し、社内で確実に対応できる体制を整えておくことが重要です。

参考:源泉所得税の改正のあらまし|国税庁

関連記事:178万円の壁引き上げで何が変わる?給与計算や扶養判定への影響を解説

関連記事:年収の壁はどうなった?2026年最新の撤廃動向と人事が押さえるポイント

5. 給与計算業務の効率を上げる方法

ポイント

給与計算は毎月処理が必要な上にミスが許されず、人事担当者としては負担の大きい業務です。給与計算の処理を効率化できれば作業時間を短縮し、ほかの業務にも専念できるでしょう。

この章では給与計算の業務効率を上げる具体的な方法を紹介します。

5-1. 担当者へのスキル研修を充実させる

給与計算業務の担当者には、労働基準法や社会保険制度、所得税の仕組みなど、法律や制度を正確に理解することが求められます。担当者の知識やスキルを向上させれば、給与計算のミスを減らし、業務をより効率的に進められるでしょう。さらに給与計算業務に係る法令は毎年のように改正されます。

そのため、定期的な研修や勉強会の実施を推奨します。最近ではeラーニングなどのオンライン研修も充実しており、企業の状況や従業員のニーズに応じて、最適な研修方法を取り入れることが大切です。

5-2. 必要情報の周知や情報収集を徹底する

給与計算の正確性は、従業員から提供される情報に大きく依存します。どれだけ給与計算担当者が高い知識やスキルを持っていても、従業員の申請内容や提出情報に誤りがあれば、計算結果にも影響が出てしまいます。特に、残業や休暇の申請、扶養親族の情報、各種手当の申告内容などは、給与額の算出に直結する重要データです。

そのため、従業員には情報提供のルールや提出期限を明確に示し、社内メールやマニュアル、イントラネットなどを活用して周知徹底することが不可欠です。加えて、定期的な注意喚起や提出内容の確認、自己申告ミスを防ぐチェックリストの活用などを組み合わせることで、給与計算ミスのリスクを大幅に低減できます。

5-3. ダブルチェック体制を整備する

ダブルチェック体制は、給与計算のミスを防ぐうえで欠かせません。給与計算にミスがあった場合、次のような業務が追加で発生します。

  • 従業員への説明と謝罪
  • 翌月の給与での支給調整
  • 社会保険料や税金の納付額の修正

ミスにより作業が増えるだけでなく、ほかの従業員や上司からの信頼が損なわれる可能性もあるでしょう。

ダブルチェックは単純な計算ミスを見つけやすく、法改正の抜け漏れや就業規則の確認不足によるミスの防止にも有効です。複数の目で計算結果を確認し、ミスが起こりにくい仕組みを作りましょう。

関連記事:給与計算のミスを防止する5つの施策を原因別に解説

関連記事:給与計算ミスに気づいた時のお詫びの方法や注意点を文例とともに解説

5-4. システムを導入して処理を自動化する

表計算ソフトによる給与計算に限界を感じる場合、給与計算システムの導入がおすすめです。給与計算システムには次のメリットがあります。

  • 給与計算の自動化
  • 勤怠管理システムとの連携
  • 法改正への自動対応

ただし、給与計算システムの導入や運用にはコストがかかります。また、システムの操作に慣れないうちは、むしろ業務負担が増えるおそれもあるでしょう。

そのため、給与計算システムを選ぶ際は、費用や機能、使いやすさ、サポート体制などを比較し、自社のニーズに合ったツールを選ぶことが重要です。また、導入フローとしては、次のようなステップを意識するとスムーズです。

  1. 現状業務の棚卸し:給与計算の流れや課題を整理する
  2. 要件の整理:必要な機能や連携したいシステムを明確にする
  3. 候補ツールの比較・選定:費用や操作性、サポート体制を確認する
  4. 導入計画の策定:データ移行や操作研修のスケジュールを立てる
  5. テスト運用:一部従業員で試験運用し、不具合や操作性を確認する
  6. 本運用開始:全従業員の給与計算に適用し、必要に応じて運用ルールを調整する

このように、選定から導入までのフローを踏まえることで、システム導入による業務効率化の効果を最大化できます。

関連記事:給与計算を自動化するメリット・デメリット、具体的な方法や手順も紹介

5-5. 専門家・外部パートナーの活用を検討する

給与計算は、勤怠情報や各種手当、社会保険料、税額などを正しく反映する必要があり、法改正への対応も欠かせません。社内だけで対応するのが難しい場合は、社労士事務所や給与計算代行会社など、外部パートナーへの委託を検討する方法もあります。

外部へ委託することで、専門知識を持つ担当者に計算処理を任せられるため、社内担当者の作業負担を軽減しやすくなります。給与計算の確認や修正にかかっていた時間を、従業員対応や制度設計、採用・労務管理など、ほかの人事業務に充てやすくなる点もメリットです。

ただし、外部委託をしても、社内側の対応が不要になるわけではありません。給与計算に必要な勤怠情報、入退社情報、手当の変更、控除情報などは、社内で取りまとめたうえで、決められた期日までに共有する必要があります。

また、委託費用が発生するほか、外部担当者との確認・連絡も必要です。給与計算を正確に進めるためには、委託先に任せる範囲と社内で対応する範囲を明確にし、情報共有のスケジュールや確認フローを整えておくことが大切です。

関連記事:給与計算の代行・アウトソーシングのメリット・デメリットと料金相場を紹介!

関連記事:給与計算は誰に頼む?税理士と社労士の違いや費用相場を解説!

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給与計算業務の担当者には労働基準法をはじめ、社会保険や税法など、複数の法令の横断的な理解が求められます。日々の実務を通じて労務管理や税務に関する知識を体系的に習得できるため、高い専門性を身に付けることができます。

また、給与計算ではその会社独自のルールを反映させる場合が多く、経験値が非常に重宝されます。

このように専門性を磨ける給与計算業務ですが、年末調整などの季節的な業務も多々あり、毎月の給与計算と並行して対応しなければなりません。ミスを防ぎ、正確かつスムーズに業務を進めるためにも、業務効率化は必須といえるでしょう。システム導入で効率化できる部分は積極的に活用するのがおすすめです。

解説:社会保険労務士

6. 従業員からのよくある質問

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給与計算業務をしていると従業員から質問を受けることがよくあります。

この章では給与計算業務に関するよくある質問とその回答例を紹介します。

6-1. なぜ手取りが減っているのですか?

総支給額が同じでも毎月手取り額が同じになるとは限りません。次のような理由により所得税、住民税、社会保険料の控除額は変動します。

  • 住民税:前年の所得に対して課せられ、毎年6月支払い分給与から徴収される。前年の所得が高い場合は6月支払い分給与から大幅に手取りが減る可能性がある。
  • 所得税:源泉徴収税額表に従って毎月の給与から徴収される。扶養家族の有無によって徴収額が変動するので、扶養家族を取り消した場合など徴収額が上がり手取りが減る可能性がある。
  • 社会保険料:健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料、子ども子育て支援金などの社会保険料は原則4月、5月、6月支払い分給与の平均額をもとにその年の9月から変更される。対象月の残業代などが多ければ社会保険料が高くなり手取りが減る可能性がある。

上記の理由などから、総支給額が同じでも手取り金額が変動する場合があると説明するとよいでしょう。

参考:給与所得の源泉徴収税額表(令和8年分)|国税庁

6-2. 社会保険料の金額は合っていますか?

社会保険料は標準報酬月額を用いて計算されます。標準報酬月額とは社会保険料の計算を簡単にするため、被保険者の給与を一定範囲に分けて区分した値のことです。そのため、従業員の給与から徴収される社会保険料は総支給額にそのまま保険料率をかけて算出されるわけではありません。

毎月の総支給額と標準報酬月額は必ず一致するものではないので、従業員が想定している社会保険料の金額と実際の控除額に差が生じることがあります。

関連記事:標準報酬月額とは?調べ方や社会保険料の算出方法について解説

6-3. 残業代の計算方法を教えてください

残業代は「時間外労働時間×基礎賃金(時給額)×割増率」によって計算されます。すべての賃金が割増賃金の基礎に使われるわけではありません。基礎賃金の算定に含まれない賃金は労働基準法第37条で定められており次のとおりです。

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金

従業員が想定している基礎賃金と実際の計算で使われる基礎賃金に差があることがあります。就業規則で明確に定め、あらかじめ従業員に周知しておきましょう。

関連記事:割増賃金の基礎となる賃金とは?計算方法など労働基準法の規定から基本を解説

7. 給与計算業務の基本を理解しよう!

計算する

給与計算業務は、従業員に正しく給与を支給するための重要な業務です。給与計算の業務内容は、毎月おこなう月間業務だけでなく、年間業務も含めるとその業務範囲は多岐にわたります。

また、給与計算業務に係る法令は頻繁に改正されるため、労働基準法や社会保険、税金に関する知識を身に付けることが非常に重要です。より正確でスムーズな給与計算を実現するために、専用の給与計算システムなどを活用すると有用でしょう。

給与計算業務の負担を軽減し、ミスを防ぐためにも、まずは業務の全体像を理解し、基本的な仕組みや注意点を押さえることから始めましょう。

関連記事:給与計算ソフトとは?メリットや選定ポイント7選を一挙ご紹介

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