給与計算とは?業務内容ややり方・流れ、基礎知識をわかりやすく解説
更新日: 2023.6.1
公開日: 2020.12.10
NOMURA
人事業務の一環として「給与計算」があります。給与計算の業務内容は多岐にわたり、慣れるまでには相応の時間がかかります。
また、給与計算に特別な資格は必要ありませんが、労働基準法や所得税法など、法律も多く関係するため気を付けておこなう必要があります。
今回は、給与計算の業務内容やその手順、そして最低限知っておきたい、労務知識の一例をご紹介します。
【給与計算業務のまとめはコチラ▶給与計算とは?計算方法や業務上のリスク、効率化について徹底解説】
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給与計算は日々の勤怠管理でもれなく勤怠情報を収集した上で、一人一人計算していく必要があることに加え、ミスが許されない業務であるため、手間だと感じる方も多いでしょう。
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1. 給与計算業務とは
給与計算とは、従業員の給与を計算し、支払う業務のことです。給与担当者は従業員に給料を支払うべく、毎月総支給額や控除額の計算をおこないます。
また、給料は従業員の労働の対価となるため、ミスは許されません。そのため基本的な業務内容や労務知識を理解しておく必要があります。
【給与計算の基礎をおさえたい方はコチラ▶給与計算の基礎が初心者でも分かる!基礎知識から全体の流れまで徹底解説!】
1-1. 給与計算をするのに、資格は必要?
給与計算業務をするのに、資格は必要ありません。ただし、給与計算を行うために労働基準法や社会保険の仕組み、所得税、住民税などの知識は必要になります。最初は難しく感じるかもしれませんが、勉強しながら少しずつ慣れていきましょう。
なお、給与計算を行うのに資格は必要ありませんが、給与計算をする上で役立つ資格には社会保険労務士、税理士などの士業のほか、「給与計算実務能力検定試験」という民間の資格も存在します。給与計算業務の勉強として、資格取得を目指してみてもよいでしょう。
【税理士について知りたい方はコチラ▶給与計算は誰に頼む?税理士、社労士の違いとは】
【社労士について知りたい方はコチラ▶社労士の給与計算業務とは|相場ややり方、準備すべきことをご紹介】
関連記事:給与計算の代行に資格は必要?気になる真相を詳しく解説
2. 給与計算の方法・流れ
給与計算の大まかな流れは、以下のようになっています。
①従業員の勤怠情報を締め、労働時間を集計する
②総労働時間から総支給額を計算
③各種保険料・税金を計算
④総支給額から各種保険料と税金を控除する
⑤給料を振り込み、保険料と税金を納付
給与計算は総務や人事の仕事と勘違いされる傾向がありますが、経理にとって重要な仕事のひとつに給与計算があります。会社で働く従業員の給与を確定する業務のため、それぞれの工程について、きちんと理解しておきましょう。
関連記事:給与計算業務の流れ|月間と年間のスケジュールも紹介!
2-1. 勤怠の締め・労働時間の集計
給与計算をする前に、まずは従業員の勤怠情報をみて抜け漏れや不審な箇所がないかを確認します。必要に応じて従業員や上長に確認をとり、全従業員の全労働日について正しい勤怠情報がそろった時点で、勤怠を締めます。
勤怠を締めた後は、総労働時間と遅刻・早退の時間、欠勤日数や時間外労働、休日労働のあった時間など、給与計算に必要な項目ごとに労働時間を集計します。
【勤怠の締めについて知りたい方はコチラ▶勤怠の締め作業の重要性とは?重要性や効率的に管理する方法をご紹介!】
【労働時間の集計方法を知りたい方はコチラ▶労働時間の正しい計算方法についてわかりやすく解説】
2-2. 総支給額の計算
算出した各種の労働時間数をもとに、給与の総支給額を計算します。
就業規則で規定されている「基本給」や、通勤手当などの「各種手当」、時間外労働や休日出勤によって発生する「割増賃金」、そして対象期間に発生した遅刻早退含む「欠勤控除」をもとに、総支給額の計算をします。
割増賃金については条件に応じて割増率が設定されており、後述の「4-2. 残業や休日出勤、深夜の割増賃金に注意」にて詳細を説明します。
2-3. 各種社会保険料の計算
次に、総支給額から控除する社会保険料の計算をします。社会保険料は主に「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」「雇用保険料」の4つの計算がそれぞれ必要になります。
「健康保険」「厚生年金保険」は標準報酬月額に保険料率をかけて算出した額を会社と従業員で折半されるのが一般的です。保険料率は地域や加入している健康組合によって異なるため、必ず加入先が提示している保険料額表を確認しましょう。
「介護保険」は、40歳から64歳に課税される社会保険です。こちらも標準報酬月額に保険料率をかけて算出した額を会社と従業員で折半します。「健康保険」「厚生年金保険」と同様に加入先が提示している保険料額表を確認しましょう。
「雇用保険料」はその月の総支給額に毎年厚生労働省より発表されている雇用保険の保険料率をかけると算出することができます。
【社会保険料と給与計算について詳しくはコチラ▶給与計算で社会保険料を算出する方法を分かりやすく解説】
2-4. 住民税・所得税の計算
税金は主に「住民税」「所得税」の2つを計算します。住民税は都道府県と市区町村に納付し、所得税は国に納付する税金です。
住民税を給与から天引きする場合、毎年5~6月ごろ従業員が居住する自治体から送られてくる、「決定通知書」を参考に従業員の給与から差し引きます。
【住民税の計算について知りたい方はコチラ▶給与計算における住民税とは|住民税の計算・納付・注意点について解説】
所得税を算出するには、まず以下の計算式によって課税所得額を算出します。
【給与総額(基本給+残業代など)】ー【社会保険料+非課税手当(交通費など)】= 【課税所得額】
課税所得額を算出後、給与所得の源泉徴収税額表(月額表)に照らし合わせて所得税率を確認し、この額を従業員の給与から差し引きします。
【所得税の計算について知りたい方はコチラ▶所得税とは?|源泉所得税の計算方法や税額表の見方を解説】
2-5. 差引支給額の計算
最初に計算した給与の「総支給額」から、「各種社会保険料と住民税・所得税」を差し引くと、「差引支給額」が算出されます。これが従業員の「手取り」となります。
2-6. 台帳作成などの事務処理・給料の振込手配
差引支給額(手取り)が決定したら、賃金台帳や給与明細の作成、各従業員への支払い手続きをおこないます。
2-7. 各種社会保険料・税金の納付
各種社会保険料と所得税、住民税を納付します。
社会保険料は各役所から送られる「納入通知書」をもとに月末までに納付します。また、所得税や住民税などの税金は、翌月10日に税務署へ納付します。
この保険料や税金の納付までが給与計算の業務内容となります。
【給与計算の方法をさらに詳しく知りたい方はコチラ▶給与計算はこれで解決!給与計算の方法や流れなど分かりやすく解説】
2-8. 給与計算の例
ここまで、給与計算の流れと方法を解説しました。実際にひとりの従業員の給与を計算した場合の例をご紹介します。
■想定している従業員
年齢:25歳(独身)
所定労働時間:1日8時間(所定労働時間160時間)
基本給:25万円/標準月額報酬:31万円/勤務日数:20日
勤務地:東京都/居住地:東京都/協会けんぽ加入
■総支給額
基本給 | 250,000円 |
残業:20時間 1,562円 × 25% × 20時間 |
39,050円 |
深夜残業:5時間 1,562円 × 50% × 5時間 |
11,715円 |
交通費 | 12,000円 |
計 | 312,765円 |
■各種社会保険料
健康保険料 31万円 × 9.81% ÷ 2 |
14,715円 |
厚生年金保険料 31万円 × 18.3% ÷ 2 |
29,280円 |
介護保険料 | 0円 |
雇用保険料 312,765円 × 6/1,000 |
1,876円 |
計 | 45,871円 |
■住民税・所得税
住民税(仮) | 5,000円 |
所得税 312,765円 ー(45,871円+12,000円)=課税所得額:254,894円 |
6,750円 |
計 | 11,750円 |
■差引支給額
総支給額 ー(各種社会保険料+住民税・所得税) 312,765円 ー(45,871円+11,750円) |
255,144円 |
3. 給与計算業務の基本的な知識
給与計算をミスなくおこなうために、給与担当者は「労働基準法」や「所得税法」、「企業の就業規則」など、多くの労務知識が必要となります。
給与計算に特別な資格は必要ありませんが、これらを考慮して給与計算をするため、業務に慣れるまで時間がかかるでしょう。
給与計算をする際に抑えておくべき労務知識はたくさんありますが、ここではその一部をご紹介します。
3-1. 給与計算の基礎日数
月給者については、各月の暦日数が支払基礎日数となります。
月給制で欠勤日数分に応じ給与が差し引かれる場合にあっては、就業規則、給与規定等に基づき事業所が定めた日数から当該欠勤日数を控除した日数が支払基礎日数となります。
3-2. 賃金支払いの5原則
「賃金支払いの5原則」とは、労働基準法第24条で定められた支払いに関する法律です。
①通貨払いの原則
②直接払いの原則
③全額払いの原則
④毎月1回以上払いの原則
⑤定期日払いの原則
もし、違反した場合は企業側に罰則が適用されるため、十分に気を付けましょう。
参照:賃金の支払方法に関する法律上の定めについて|厚生労働省
3-3. 残業、休日出勤、深夜労働の割増賃金(手当)
労働基準法では、従業員の労働時間は1日8時間、および週40時間以内とされています。また、休日は原則週に1回とし、これらの基準を超える場合は36協定の締結・届出が必要です。
36協定を締結した上で法定労働時間を超えた労働をさせる場合と深夜労働をさせる場合、企業は通常の給与に割増率を乗じた割増賃金(手当)を支給します。基本的に時間外労働は25%以上、休日出勤は35%以上、深夜労働は25%以上の割増賃金を支給しなければなりません。
割増賃金率の一覧
区分 | 割増率 |
---|---|
法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える労働 | 25%以上 |
法定休日の労働 | 35%以上 |
深夜(22時から5時までの)労働 | 25%以上 |
1ヵ月60時間を超える法定時間外労働 | 50%以上 |
組み合わせ可能な割増賃金率
組み合わせ | 割増率 |
---|---|
法定労働時間を超える労働+深夜労働 | 50%(25%+25%)以上 |
法定休日の労働+深夜労働 | 60%(35%+25%)以上 |
1か月60時間を超える法定時間外労働+深夜労働 | 75%(50%+25%)以上 |
上記の割増率を元に以下の計算式で割増賃金を算出します。
【対象となる時間数】×【基礎賃金(時給)】×【割増率】
残業などの手当が未払いだった場合、同じく罰則が適用されるため、こちらも十分に気を付けましょう。
4. 給与計算業務で注意すべきポイント
給与計算は従業員に渡す給与を決定する重要な業務です。ひとつのミスが従業員の信頼を失い、会社への不信感へと繋がりなりかねません。
給与計算業務をするうえで注意すべきポイントを3点解説します。
4-1. 業務範囲を確認
給与計算業務は会社によって担当部署が異なるケースがあります。総務部や管理部が一括して行う場合や、人事部と経理部で手分けして行う場合など、色々なパターンがあります。
そのため、まずは自分の担当領域や業務範囲を上司や先輩に確認するようにしましょう。
4-2. 残業や休日出勤、深夜の割増賃金に注意
労働基準法では、法定労働時間を1日8時間、週40時間と定めています。これを超える残業についての割増率は、残業手当が25%、休日出勤手当が35%となっています。
また、夜10時から朝5時までの時間帯は、別途、深夜業として25%割増ししなければなりません。割増賃金の加算を忘れずに、給与計算を行うようにしましょう。
4-3. ミスには細心の注意を
「給与計算業務が大変」だと考えられる理由のひとつは、ミスが許されないことにあります。
従業員に支給する賃金であることに加え、国や自治体に納付する税金や社会保険料の計算も一緒におこなうため、ミスがあってはならないものです。
給与計算にミスがあると、当該従業員に謝罪をしたうえで給与の追加支給や差し引きを行い、本来の支給額になるよう調整することになりますが、従業員からの信用を失いかねない行為であるため、なるべく防げるように努めなくてはなりません。
人間が行う以上、ヒューマンエラーはつきものですので、ダブルチェックをするなど計算ミスが起こりにくい仕組みを作り、正確な給与計算ができるようにしましょう。
ただし人が管理する上ではどうしてもミスは起きがちです。また、ここまで説明した通り、給与計算の業務は非常に行うことが多いため、事業をグロースさせるコアの業務に注力できなくなる可能性があります。そこでよく導入されるのが給与計算システムになります。
人間が行う以上、ヒューマンエラーはつきものですので、ダブルチェックをするなど計算ミスが起こりにくい仕組みを作り、正確な給与計算ができるようにしましょう。ただし人が管理する上ではどうしてもミスは起きがちです。また、ここまで説明した通り、給与計算の業務は非常に行うことが多いため、事業をグロースさせるコアの業務に注力できなくなる可能性があります。そこでよく導入されるのが給与計算システムになります。
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【給与計算でミスを防ぐ方法を知りたい方はコチラ▶給与計算のミスを防止する5つの施策を原因別に解説】
【給与計算でミスした際の対応を知りたい方はコチラ▶給与計算でミスしたときの対処法は?要因とその防止策もご紹介】
5. 業務効率のいい給与計算を
給与計算の業務内容は、毎月おこなう月間業務だけでなく、年間業務も含めると、かなりの数に上ります。
ひとつひとつの計算はさほど難しくありませんが、正確にデータを入力・管理したり、法改正や税制改正の情報をしっかりキャッチして逐一アップデートしたりすることは、容易ではありません。
数字やコツコツと作業することが好きな人には向いている仕事ですが、より正確かつスムーズに給与計算したいのなら、専用の給与計算システムやソフトなどを利用して効率的に作業することをおすすめします。
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