退職日によって社会保険料はどのくらい差が出る?月の途中退職でのケースも解説
更新日: 2023.3.17
公開日: 2022.3.18
YOSHIDA
従業員がいつ退職するかによって、給与から控除する社会保険料の額が異なります。
特に、月末の退職では前月分と退職月分、2カ月分の保険料を控除する必要があるため注意しましょう。
退職日による保険料額の差や、月の途中で退職するときの注意点、退職後に従業員が支払う社会保険料の種類を解説します。
目次
給与計算業務でミスが起きやすい社会保険料。
保険料率の見直しが毎年あるため、更新をし損ねてしまうと支払いの過不足が生じ、従業員の信頼を損なうことにもつながります。
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1. 退職日により社会保険料には1ヵ月分の差が生まれる
社会保険料(厚生年金保険料や健康保険料)は、従業員がいつ退職したかによって、給与から天引きする額が変わってきます。具体的には、月末に退職するか、月末より1日前のいずれかの日に退職するかにより、控除額が異なります。
ここでは、5月に退職する従業員を例に、退職日により社会保険料額がどのように変わるかを解説します。
1-1. 月末の1日前に退職したとき
5月30日(月末1日前)に退職する場合、社会保険料の支払いは4月(前月)分のみで問題ありません。
従業員支払い分は給与から控除し、会社負担分と合わせて納付しましょう。
1-2. 月末に退職したとき
5月31日に退職した場合、4月(前月)分と、5月(退職月)分の社会保険料を支払わなければいけません。
なお、社会保険料は退職月の給与から2カ月分まとめて控除するため、事前に伝えましょう。
従業員の中には手取りが減るのを嫌って、月末1日前の退職を申し出るケースもあります。
この場合、再就職まで1日でも日が開くと、国民年金保険と国民健康保険への加入が必要です。
1-3. 社会保険上の退職日に平日・休日の差はない
退職日は、平日・休日どちらでも、実務上の違いはありません。
例えば、30〜31日が祝日であったとしても、社会保険上の退職日が29日になることはありません。
ただし、会社の休日に退職日が重なる場合、健康保険証の回収を前倒しにするか、後日郵送させるかする必要があるため注意しましょう。
1-4. 社会保険料は日割り計算ではなく月割りで計算する
社会保険料は日割り計算ではなく、月割りで計算し納付します。
そのため、月末では退職日が1日違うだけで保険料額に1ヵ月分もの違いが生まれてしまいます。
関連記事:給与計算における社会保険料の計算方法を分かりやすく解説
2. 社会保険料の締日は退職日の翌日
退職日が月末かそれ以外の日付かにより、社会保険料額に差が出るのは、社会保険料の締め日(資格喪失日)の考え方によるものです。
社会保険料の締め日は、「退職日」ではなく、「退職日の翌日」です。
また、社会保険料は退職日の翌日が含まれる月の前月分まで発生します。
具体例を上げると、退職日5月31日がなら、社会保険料の締め日は6月1日となり、前月である5月分まで保険料が発生します。
社会保険料は通常、当月分の給料から前月分の保険料を控除します。
しかし、月末退職の場合は例外的に、前月分と当月分の保険料を退職月の給与から控除できます。
本章で解説した内容は、社会保険料の算出方法や保険料が決定するタイミングなどの基礎知識を知っているうえで理解できる内容になります。
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3. 月の途中退職では社会保険料にどのような差が出るのか?
月の途中で退職しても、基本的には前月分の社会保険料を従業員の給与から控除すれば問題ありません。
しかし、入社当月に退職するなど稀なケースでは、処理方法が異なるため注意が必要です。
3-1. 入社した当月に退職したとき
社会保険は入社日が資格取得日となり、その月分から保険料を納めます。
なお、月の途中から入社したときも同様です。
例えば、4月3日に入社し、4月5日に退社した従業員がいれば、2日間しか出勤していなくても、1カ月分の社会保険料を納めなくてはいけません。
本来同一の月に資格の取得と喪失があれば、当月の給与から保険料を控除できます。
しかし、給与が少なく保険料を控除できないときは、従業員から後日徴収します。
なお、健康保険の場合、資格喪失日の含まれる月の保険料は支払わなくて問題ありません。
3-2. 入社当月に退職し、同じ月に社会保険に加入した場合
入社した当月に退職した従業員が、同じ月に厚生年金保険や国民年金保険に加入した場合、支払った保険料は還付されます。実務ではこのケースがほとんどでしょう。
同月内に取得と喪失が2回ある場合、年金保険料を二重に支払うこととなるため、新しく取得した資格が優先されます。会社は従業員の給与から控除した分の保険料を返還しなければいけません。
なお、健康保険の場合、このような制度はありません。
3-3. 賞与を受け取って退職したとき
社会保険料は給与だけでなく、賞与からも控除が必要です。
しかし、賞与支払い月の月末以外で従業員が退職したなら控除の必要はありません。
例えば7月10日に賞与を支給し、11日に退職したのなら、賞与から社会保険料を控除する必要はありません。
3-4. 健康保険証の扱い
健康保険の資格は、退職日の翌日に失います。
月の途中で退職したとしても、退職日以降は保険証が使えなくなるため、速やかに回収しましょう。
なお、従業員が誤って資格喪失後に保険証を医療機関で使用したときは、後日、従業員本人に請求が届きます。
4. 退職後に従業員が加入する社会保険の種類と注意点
退職後、従業員が支払う保険料は加入する制度により異なります。
説明を間違えるとトラブルにつながる部分でもあるため、人事・労務担当者も正しく制度を把握しておきましょう。
4-1. 退職後に加入する社会保険の種類
退職後、従業員が加入する社会保険には下記の種類があります。
【年金保険】
- 転職先の厚生年金(第2号被保険者)
- 国民年金保険(第1号被保険者)
- 配偶者の扶養(国民年金)(第3号被保険者)
【健康保険】 - 転職先の保険制度(協会けんぽ・健康保険組合)
- 健康保険の任意継続
- 市区町村の国民健康保険
- 健康保険加入者の被扶養者
従業員が健康保険の任意継続をしたいと申し出た場合、下記の2つの手続きが考えられます。 - 協会けんぽに加入している会社 :従業員自身が任意継続の手続きをする
- 健康保険組合に加入している会社:人事担当者、または、従業員本人が任意継続の手続きをする
会社が健康保険組合に加入している場合、会社側で任意継続の手続きが必要なこともあるため確認しましょう。
関連記事:社会保険と国民健康保険の切り替え手続きや任意継続保険の特徴について
4-2. 退職後、国民健康保険や任意継続被保険者になるときの注意点
従業員が退職後、国民健康保険や任意継続保険に加入する場合、退職日によって、本人が負担する保険料額が変わります。
- 月末退職の場合:退職月の保険料は、半分を会社が負担する
- 月末以外の場合:退職月の保険料は、全額従業員が負担する
会社側は、資格喪失日の健康保険料を支払う必要はありません。
そのため、月中に従業員が退職し、次に加入する保険が国民健康保険や任意継続保険の場合、保険料は全額自己負担となります。
4-3. 退職後、扶養に入る場合の注意点
退職後、配偶者の扶養に入るケースでは、月中に退職した方が従業員本人の社会保険料負担額を減らせます。
- 月末退職の場合:退職月の保険料は給料から控除する
- 月末以外の場合:退職月の保険料は扶養先で負担する
月末以外の日付で退職した方が、従業員本人の手取り額を増やせます。
5. 退職時の社会保険料は間違いのないように給与から控除しよう
退職時の社会保険料は変則的な控除方法となるため、トラブル防止のためにも、事前に従業員に説明しておきましょう。
また、退職後、従業員がどのような社会保険制度に加入するかにより、手続き方法が異なるケースもあります。人事や経理担当者はそれぞれの違いを理解し、問い合わせがあれば説明できるように準備しましょう。
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