社労士に給与計算を依頼するメリットは?相場や税理士との違い・依頼の流れを解説
給与計算は手間がかかり、バックオフィスの人員・時間などの社内のリソースを多く割くため、近年は専門家にアウトソーシングする企業が増えています。
社会保険労務士(社労士)に委託すれば、担当者の負担を軽減しつつ業務効率を向上することが可能です。
本記事では、社労士に依頼するメリットや相場、依頼の流れについて詳しく解説します。
【給与計算のやり方について解説はコチラ▶【図解】給与計算ガイド!例を用いて給与計算のやり方を徹底解説!】
【給与計算業務のまとめはコチラ▶給与計算とは?計算方法や業務上のリスク、効率化について徹底解説】
目次
給与計算を手計算しているとミスが発生しやすいほか、従業員の人数が増えてくると対応しきれないという課題が発生します。 システムによって給与計算の内製化には、以下のメリットがあります。
・勤怠情報から給与を自動計算
・標準報酬月額の算定や月変にも対応しており、計算ミスを減らせる
・Web給与明細の発行で封入や郵送の工数を削減し、確実に明細を従業員へ渡せる
システムを利用した給与計算についてさらに詳しく知りたい方は、こちらからクラウド型給与計算システム「ジンジャー給与」の紹介ページをご覧ください。

1. 給与計算を社労士に依頼するメリット
給与計算は、毎月締日と支給日が固定され、社会保険や税率改定、法改正にも対応しなければならず、高い専門性が求められる業務です。給与の締め日に間に合わせるため、担当者が一時的な残業で対応するケースもあり、人事労務の業務全体に負荷がかかる状況は少なくありません。
社労士に給与計算を依頼すれば、単なる計算処理の代行にとどまらず、社会保険や労働保険の手続きや法改正対応までワンストップで任せることが可能です。
この章では、給与計算を社労士へ依頼するメリットを詳しくみていきましょう。
1-1. 複雑な法改正や制度変更に対応できる
社労士は、社会保険料の控除や残業代の算出など、給与計算の中でもとりわけ複雑な領域に精通した労務の専門家です。とくに残業代の計算は、労働基準法や関連通達に則った細かな処理が欠かせませんが、社労士に任せれば法令順守の面でも高い安心感が得られます。
加えて、給与関連の法律や社会保険制度は頻繁に改正されるため、その都度ルールをアップデートしなければなりません。最新の法改正を常に把握している社労士であれば、こうした変更にもスムーズに対応できる点が大きなメリットです。
1-2. 給与以外の業務も依頼できる
社労士に給与計算を任せると、計算業務だけでなく周辺の労務処理もまとめて依頼できるメリットがあります。例えば、社会保険や労働保険の取得・喪失手続き、年度更新・算定基礎届などの手続きを代行してもらえれば、社内の事務負担を大きく減らせるでしょう。
就業規則の作成・改定や36協定の届出も対応可能で、法改正への備えも万全です。さらに、ハラスメント防止策や、働き方改革への対応といった労務コンサルティングも相談可能です。ただし、得意領域は社労士によって異なるので、委託前に対応可能な範囲を確認するとよいでしょう。
1-3. 経営者や人事労務担当者の負担を軽減できる
給与計算をはじめとした労務業務は、毎月の締日と支払日に合わせてミスなく完了させる必要があり、担当者の残業や休日出勤を招きやすいのが実情です。
社労士にアウトソーシングすれば、締切り前の集計・チェック作業や役所とのやり取り、法改正への資料更新など時間のかかるタスクを丸ごと任せられるため、バックオフィスの残業時間を大幅に削減できます。
空いたリソースは採用強化や人材育成、組織開発といった“攻め”の業務に充てることができるのもメリットです。また、専門家のダブルチェックにより、計算ミスや申告漏れのリスクも減少し、心理的な負担を軽減できるでしょう。
2. 給与計算を社労士に依頼する際の料金の相場
以下の表では、おおよその費用感をまとめていますので、自社の状況と照らし合わせながらご覧ください。
社員数 | 報酬相場 |
1人~4人 | 2万円~ |
5人~10人 | 2万5,000円~ |
11人~20人 | 3万5,000円~ |
21人~30人 | 4万5,000円~ |
31人~50人 | 6万円~ |
給与計算を社労士に依頼する際の相場は、月額2万円~6万円ほどが目安です。依金額は従業員数や手当項目の多さ、勤怠集計方法、年末調整・賞与対応の有無などで変動します。また、初期設定費用やWeb明細の発行、有給休暇管理や外国籍社員の税務対応は追加見積りとなる場合が多いです。急ぎの場合の割増料金や郵送費用も忘れず事前に確認をしましょう。
さらに、将来の人員増を見込んだケースでの見積もりを複数社比較し、給与計算と労務相談を組み合わせたうえで、社内で対応するべきか、それとも外注に依頼するべきかの境界を見極めることをおすすめします。
社労士事務所の多くは顧問契約のサービスも提供しています。給与計算に加えて、社会保険・労働保険手続きや就業規則の整備、労務相談までをワンストップで任せることで、個別に委託するよりコストを抑えながら法改正への迅速な対応が期待できます。
3. 社労士以外にも給与計算は頼める?
給与計算業務には、特別な資格は必要ないため、社労士以外にも委託先はあります。例えば、税理士やBPOベンダー、派遣・業務委託スタッフなど、委託先の選択肢は多岐にわたります。
ここでは「税務に強い税理士」「大量処理に適したアウトソーシング」「社内人員を活用する派遣・業務委託」という3つのルートを比較し、それぞれの得意分野と注意点を整理します。
3-1. 税理士に頼む
税理士は所得税・住民税の源泉徴収や年末調整、法定調書作成など「税務」に特化し、税務署への代理提出権を持つ専門家です。一方、社労士は社会保険・労働保険手続きや算定基礎届、就業規則整備、労務相談を担い、労基署・年金事務所へ代理申請が可能です。
両者とも給与計算を請け負うことができますが、税理士には社会保険・労働保険手続きや労務管理の業務範囲が認められていません。そのため、これらの対応は社労士に委託するか、自社で内製化する必要があります。
社労士に任せれば、保険料改定や法改正対応、労務リスク管理まで一括してサポートを受けられる点が強みです。自社のニーズや体制に応じて、税務と労務を分担するか、社労士へ業務を集約するかを検討しましょう。
3-2. 給与計算アウトソーシングやBPOに頼む
給与計算アウトソーシングとは、クラウドシステムとマニュアル化された大量処理体制を強みとして、月次締めや年末調整を「定形業務」として低コスト・高速にこなす点が特徴のサービスです。
BPO(Business Process Outsourcing)とは、企業が本来注力すべきコア業務以外の定型的なバックオフィス業務を、専門業者にまとめて外部委託する仕組みです。給与計算アウトソーシングもBPOの一種といえます。
業務を一括でアウトソースすれば、業務の種類で分けてアウトソースする場合よりも重複作業を減らしてデータ連携を強化でき、コスト削減と業務効率化が期待できるでしょう。
一方、社労士へ委託する場合には、自社の就業規則や複雑な手当ルール、法改正対応、労務リスクといったイレギュラーな課題まできめ細かくサポートしてもらえるのが強みです。
大量の給与データを高速処理できるかどうかは事務所ごとに異なるため、処理体制やシステム対応状況を事前に確認しておく必要があります。
つまり、「コスト最優先で標準化されたフローを効率的に回したい企業」は給与計算アウトソーシングやBPOが最適で、「制度改定や労務相談を併せて任せたい企業」は社労士への委託が最適といえるでしょう。
関連記事:給与計算の代行・アウトソーシングのメリット・デメリットと料金相場を紹介!
3-3. 派遣社員や業務委託業者に頼む
給与計算業務は、経験のある派遣社員に任せることや外部に委託することも可能です。
派遣社員に業務を任せた場合、自社内でノウハウを蓄積し、その道のスペシャリストを育てやすいメリットがあります。しかし、契約期間満了や派遣元の都合で急に人員が入れ替わるリスクや、自社ルールを教える教育コストには注意が必要です。
業務委託で外注する方法には、前述のBPOサービスや社労士事務所へ依頼する場合も含まれますが、給与計算経験者のフリーランスなどに業務委託で依頼するケースもあります。
フリーランスに業務委託する場合、月額固定費を抑え、必要な時期だけスポットで依頼できる柔軟性や場所を選ばないメリットがあります。
しかし、労働保険の代理申請ができないため手続き体制を確保する必要があるほか、病気や家庭事情による業務の中断リスク、個人パソコン使用による情報セキュリティの確保、ノウハウが属人化しやすいことなどに注意が必要です。
社労士へ委託すれば、法改正対応と手続き代理も一括で依頼できます。コスト、コンプライアンスなどの観点で検討し最適な方法を選びましょう。
4. 給与計算を社労士に依頼する手順

給与計算を社労士に依頼するには、事前準備が欠かせません。自社のニーズを整理し、複数社と打合せを重ね、見積条件を比較しながら契約準備を進めましょう。
ここでは、「得意領域の把握」から「契約・依頼準備」まで、社労士に給与計算を依頼する際の手順を4ステップで解説します。
4-1. 得意領域を把握
委託先を選ぶ前に、まず自社が外注したい業務とリスクの棚卸しをおこない、候補先それぞれの「得意領域」を見極めましょう。
社労士事務所にも専門分野の違いがあります。建設業や派遣業に精通、クラウド導入支援が得意、多拠点・外国籍社員の手続きに強いなど特色はさまざまです。
ホームページや実績集、無料相談で「担当者の経験業界」「周辺業務の対応力」「電子申請への慣れ」を確認し、自社の優先順位に合うかをチェックしましょう。
4-2. 問い合わせ、打合せ
委託先の候補を絞ったら、メールや問い合わせフォームで「自社概要・従業員数・委託範囲」を伝え、初回打合せを設定します。打合せ時に確認したい主な項目は次の5つです。
- 給与締日と支払日
- 勤怠データの形式(CSV/クラウド/紙など)
- 追加業務(年末調整・社会保険手続きなど)の有無
- 毎月のスケジュールと担当者間で共有する内容(勤怠確定、計算納品、修正締切、最終納品)
- 契約締結までのスケジュールと料金
自社規程や現状の業務の流れ・体制を事前共有すると、見積内容が具体化します。担当者のレスポンス速度や説明の分かりやすさも評価ポイントです。
4-3. 見積内容の確認
見積りが届いたら、「金額」だけでは判断せず、以下のポイントで比較確認しましょう。
- 業務範囲:月次給与、賞与、年末調整、社会保険手続きなどどこまで含まれるか
- 料金構成:基本料、従業員単価、初期設定費、オプション(有給管理・Web明細など)の内訳
- イレギュラー対応の内容:入退社や締め切り後修正、特急対応の追加料金の有無と金額
- 納期:締日データ受領から給与確定までの日数、問い合わせ対応時間
- データ授受方法:クラウド共有かメール添付か、暗号化レベル・保管期間などのセキュリティ要件
- 責任範囲:計算誤り・法改正未対応時の再処理義務や損害賠償規定
- 支払条件:請求タイミング、支払サイト、更新・解約条項、値上げ通知期限
- 担当者体制:専任担当の有無、バックアップ体制、緊急連絡先と対応フロー
サービス内容と金額に問題が無ければ契約へと進みます。
4-3. 契約・依頼準備
見積り条件に双方が合意したら、次は契約書の締結と運用開始に向けて具体的な準備を進める段階に入ります。
- 契約書の確認:業務範囲、料金、納期、問い合わせ窓口、データの取扱い、損害賠償など重要項目を最終チェックします。
- 社内体制の整備:連絡窓口とデータ提出フローを決め、勤怠情報の正確な出力と、従業員の登録情報が最新となっているかを確認しましょう。
- キックオフ日程の共有:初期設定、テスト計算、本稼働までのスケジュールと承認手順をすり合わせておくことでスムーズな導入が可能です。
- セキュリティ確認:給与データは個人情報となるため、納品の際の暗号化方法やアクセス権限、保管期間を取り決め、社内規程と合わせて運用ルールを統一しましょう。
以上の手順を踏むことで、委託業務を安心してスタートさせ、継続的な品質向上を図ることができます。
5. 給与計算だけじゃない!社労士が対応する主な業務
給与計算を外注するメリットと流れを押さえたうえで、もう一度確認しておきたいのが、「社労士に任せられる周辺業務」です。
ここからは「社会保険・労働保険の手続き代行」「就業規則の作成や労使協定の届出」「労務コンサルティング」の3つに分けて、社労士に依頼できる業務について具体的に解説します。
5-1.社会保険・労働保険の手続き代行
社会保険・労働保険の手続き代行には、健康保険・厚生年金の資格取得・喪失、扶養異動、標準報酬月額の決定・改定、算定基礎届・賞与支払届、労働保険成立届、年度更新、雇用保険の資格取得・喪失、離職票発行、労災給付申請などが含まれます。
給与計算と同時に委託すれば、入退社や賃金変動データが自動連携されるため二重入力や計算ズレを防止でき、締切前に追加資料を整える手間も発生しません。
保険料控除額が即時に反映され、月変・算定のスケジュールの管理も社労士が担うため、社内の事務負担とリスクを低減できるでしょう。
5-2. 就業規則の作成や労使協定の届出
就業規則の作成・改定に加え、賃金規程や育児・介護休業規程などの個別付則の整備、36協定・変形労働時間制協定の起案と労基署への電子申請、従業員向け説明資料の作成までワンストップで対応可能です。
給与計算もあわせて委託すれば、就業規則の条文や労使協定の内容、給与計算の算出方法を同時に管理できるため、制度の反映漏れや解釈の間違いを防ぐことができます。また、給与に関して従業員から問い合わせがあった際にも、就業規則の内容を把握している社労士がいれば、具体的なアドバイスを受けることができます。
▶給与計算をエクセルでおこなう方法とは?4つのメリットと注意点を解説
5-3. 労務コンサルティング
法改正対応、働き方改革施策、人事評価・賃金制度設計、ハラスメント防止、労基署調査対応、助成金申請支援などをおこないます。
給与計算もあわせて委託すれば、リアルタイムの賃金・勤怠データで過重労働や人件費超過を早期に把握し是正でき、施策効果を即反映できるため、法令順守とコスト最適化を同時に実現することが可能となるでしょう。
6. 社労士の得意な領域を理解して給与計算を依頼しよう
給与計算を社労士へ委託すれば、法改正や社会保険手続きに迅速に対応できるようになり、担当者の事務負担を大幅に削減できます。相場は月額2万円〜6万円程度が目安ですが、従業員数や業務範囲で変動するため、まずは自社の委託したい範囲を整理し、複数社に問い合わせて見積りとサービス水準を比較しましょう。
社労士に給与計算を委託する際は、問い合わせ、打合せ、見積確認、契約準備の手順を踏めば、スムーズに外注化が実現し、バックオフィス全体の効率とコンプライアンスを同時に高められます。
税理士・社労士への依頼のほかにも、Excelでの給与計算の効率化方法について、以下で解説しています。
▶給与計算をエクセルでおこなう方法とは?4つのメリットと注意点を解説
給与計算を手計算しているとミスが発生しやすいほか、従業員の人数が増えてくると対応しきれないという課題が発生します。 システムによって給与計算の内製化には、以下のメリットがあります。
・勤怠情報から給与を自動計算
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