給与計算の基礎が初心者でも分かる!基礎知識や流れ・計算方法を徹底解説!
更新日: 2023.11.30
公開日: 2020.12.10
jinjer Blog編集部
給与計算は従業員の給料を計算し、経理の中でも特に大切な業務です。初めて業務に携わるときは、基礎をしっかり押さえ、正確かつスピーディな給与計算を心がけましょう。今回は、給与計算の基礎知識や、給与計算する上での注意点をまとめました。
【給与計算業務のまとめはコチラ▶給与計算とは?計算方法や業務上のリスク、効率化について徹底解説】
給与計算業務でミスが起きやすい社会保険料。
保険料率の見直しが毎年あるため、更新をし損ねてしまうと支払いの過不足が生じ、従業員の信頼を損なうことにもつながります。
当サイトでは、社会保険4種類の概要や計算方法から、ミス低減と効率化が期待できる方法までを解説した資料を、無料で配布しております。
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目次
1. 給与計算の概要
給与計算とは、従業員に賃金を支払うために、勤怠情報をもとに給与を計算する業務のことです。担当者は、毎月総支給額の計算をするだけでなく、所得税や住民税などの控除額の計算、時季によっては年末調整などの業務をおこないます。
1-1. 給与として扱われるもの
給与計算をスムーズにおこなうために、給与に含まれるものは何かを理解する必要があります。支給額をただ計算すればよいわけではなく、手当や割増賃金など、給与計算で覚えておかなければならない項目があるので、ここで理解しておきましょう。
①基本給
②手当(通勤手当、役職手当、資格手当、家族手当、住宅手当など)
③変動的な給与支給額(残業代・深夜割増代・休日割増代)
これら3つの中でも手当に関しては、会社によって有無が異なるため、自社にどのような手当てがあるか不安な方は就業規則を確認しましょう。
また、割増賃金は割増率の誤認識による計算ミスを起こしやすいため、計算方法や割増率の決定方法などを正確に覚えておかなければなりません。
▼より詳しく割増賃金の計算方法が知りたい方はこちら
割増賃金の基礎となる賃金とは?計算方法など基本を解説
1-2. 給与計算の基礎的な仕組み
給与計算の基本的な仕組みは、以下の計算式で表すことができます。
給与計算の業務を覚える第一歩として、この計算式の構造を覚えましょう。
【総支給額】-【控除額】=【差引支給額】
- 【総支給額】:基本給に残業代などの各種手当をプラスした金額で、額面と呼ばれるもの
- 【控除額】:税金と社会保険料のこと(会社によって親睦会費などの特別な項目を設けていることも)
- 【差引支給額】:従業員の銀行口座に振り込む金額のことで、手取り額ともいう
例えば23万円の給与総支給額から控除額の2万円を引いて、手取り額である21万円を銀行口座に振り込むというのが、給与計算の基本的な仕組みです。
【総支給額:23万円】-【控除額:2万円】=【差引支給額:21万円】
1-3. 従業員の給与の決め方
給与を構成する要素は大きく「基本給」「諸手当」「賞与」の3つに分けられます。
それぞれに意味・役割があり、3つのバランスや業界の水準を考慮して従業員の給与は決まります。
それぞれの意味合いは以下の通りです。
- 基本給は、年齢・勤続年数、スキルや経験などの能力、役割やそれに伴う責任を考慮して決められます。
- 諸手当は、役職手当など職務に関係するものから通勤費や単身手当など生活に関連する手当が含まれます。給与に加算して毎月付与するもので、従業員間の差がつけられる特徴があります。特に職務関連手当はモチベーションコントロールなどに活用されます。諸手当の有無は企業ごとに検討されます。
- 賞与は会社が上げた利益を従業員に分かりやすく分配でき、貢献意欲やモチベーションの向上につながります。また、毎月ではなく業績に応じて支給されるため、人件費の調整にも利用されます。
課税支給額と非課税支給額
課税支給額と非課税支給額は、給与や手当の支給において重要な概念です。
課税支給額は、従業員に支給される金額のうち、所得税や住民税などの税金が課される対象となる部分を指します。基本給や役職手当、残業手当などの支給額は、通常は課税支給額に含まれます。課税支給額は、受け取った金額から税金が差し引かれ、実際に手元に残る金額が決まります。
一方、非課税支給額は、税金の対象外とされる支給額です。例えば、通勤手当などは一定の範囲内で非課税とされ、所得税や住民税の対象外となります。これにより、受け取る従業員にとって税金負担が軽減され、手取り収入が増える効果があります。
給与計算や手当の設定において、課税支給額と非課税支給額のバランスを考慮することが重要です。適切な手当の設定により、従業員の税負担を軽減しつつ、モチベーションの向上や福利厚生の充実を図ることができます。
2. 給与計算の流れと具体的な方法
給与計算は、一見複雑な仕組みに思われがちですが、中身はとてもシンプルな構造です。給与計算では控除額の計算などをおこなう必要があり、計算方法の流れは大まかに5つの段階に分類できます。
【Step1】総支給額の計算
【Step2】控除額の計算
【Step3】支給額の決定
【Step4】金融機関への振り込み・明細書の準備
【Step5】翌月10日までに社会保険料・税金の納付
総支給額や控除額など、給与計算をおこなうにあたって定義を事前に認識する必要があります。
2-1. 【Step1】総支給額の計算
まず最初に、従業員情報をもとに総支給額を計算します。
総支給額とは、ベースとなる基本給に、時間外手当や役職手当など、各種手当てを含めた金額を表します。総支給額の具体的な計算方法は次の通りです。
【総支給額】=【基本給】+【各種手当】-【欠勤控除】
基本給は年齢や勤続年数、経験などを考慮し、企業ごとの規定に基づいて定められます。
一方、手当の種類は「固定」と「変動」の2つに分かれています。
- 固定手当・・・役職手当、資格手当、住宅手当など
- 変動手当・・・残業手当、休日出勤手当、通勤手当など
変動手当である残業手当や休日出勤手当はそれぞれ割増率が決められています。
労働基準法では残業が25%、休日出勤が35%、深夜勤務が25%と定められているため、従業員が残業をしている場合、手当を支給する必要があります。
これらは従業員の勤怠に応じて毎月変動性があるため、常に勤怠データを精緻にするよう心がけましょう。
【参照】しっかりマスター 労働基準法 割増賃金編|東京労働局
2-2. 【Step2】控除額の計算
次に、控除額の計算をします。控除額とは、「保険料」や「税金」などを合わせた金額のことで、「総支給額」から差し引かれます。
2-2-1. 保険料の計算
主に「社会保険」や「雇用保険」から控除される形になっており、社会保険料は「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」の総称になっています。
また、雇用保険に関しては失業や雇用の継続が困難になった際に給付される制度になっています。
- 社会保険料:
【各保険料】=【標準報酬月額】×【保険料率】 - 雇用保険:
【雇用保険料】=【総支給額】×【保険料率】
【社会保険料の計算について知りたい方はコチラ▶給与計算で社会保険料を算出する方法を分かりやすく解説】
2-2-2. 税金の控除額を計算
保険料のほかに、源泉徴収する「住民税」と「所得税」の計算も必要です。
住民税は、従業員の代わりに企業が支払う場合、給与から天引きとなります。また、所得税は給与の「課税対象額」を使って計算される仕組みになっています。課税対象額の計算式は以下です。
【課税対象額】=【総支給額】-【非課税対象の諸手当】-【社会保険/雇用保険】
上記で出した【課税対象額】を「源泉徴収税額表」に当てはめて、所得税額を確認します。
ここまで保険料と税金の計算方法を説明しましたが、「まだ理解できていない」という方も多いのではないでしょうか。給与計算は控除額計算の理解が肝であるため、図表で分かりやすく整理された資料で確認したいという方に向け、当サイトでは社会保険料の考え方や計算方法についてまとめた資料を無料配布しております。
正しい給与計算の方法を理解したい方は、こちらから「社会保険料の計算マニュアル」をダウンロードしてご覧ください。
関連記事:所得税とは?|源泉所得税の計算方法や税額表の見方を解説
関連記事:給与計算における住民税とは|住民税の計算・納付・注意点について解説
関連記事:【2020年4月改正】65歳以上の雇用保険料に関する給与計算ルール
2-2-3. 労使協定による控除項目
保険料や税金以外にも、社員会費や昼食代などを給与から天引きすることができます。これは賃金の控除に関する協定を労働者と企業の間で合意された条件に基づいて結ぶ事で可能になります。
2-3. 【Step3】支給額の決定
総支給額、控除額を計算した後、最終的な支給額(手取り)を計算します。
【給額(手取り)】=【総支給額】-【保険料・税金などの控除額】
お給料として支給されている「総支給額」(全ての金額)から、従業員の手元に入る「手取り」(保険や税金等で控除されている金額)の値段になります。
支給額が決定した後、金融機関への振り込みや、支給の証明になる「明細書」の作成をします。最後に、翌月10日までに控除した「社会保険」や「税金」を各関係機関に納付し、給与計算が完了します。
関連記事:給与計算はこれで解決!給与計算の方法や流れなど分かりやすく解説
関連記事:給与計算の流れ|おさえるべき5つのステップを紹介
関連記事:給与計算の方法や流れなど基本を誰にでも分かりやすく解説
2-4. 【Step4】金融機関へ振り込み・明細書の準備
支給額が確定したら金融機関に振り込み依頼を行います。
同時に給与明細書を作成します。労働基準法では給与明細書の提供は必須ではありませんが、所得税法において企業は従業員に給与明細書を渡す義務があるため、作成し給与支払い時に渡す必要があります。
さらに、賃金台帳に必要な情報を記録します。労働基準法において、賃金台帳は最後に書き込んだ日から5年間保管することが義務付けられています。
2-5. 【Step5】社会保険料・税金の納付
各種社会保険料、所得税、住民税を支払います。
社会保険料については、各役所から送られる「納入通知書」を基にして、月末までに支払いを行います。また、所得税や住民税などの税金は、翌月10日までに税務署に支払います。
以上が給与計算業務の一連の流れになります。
3. 給与計算の基礎日数の数え方とは
基礎日数の数え方は給与形態により異なり、以下の3パターンに分かれます。
3-1. 月給制
通常は、給与の計算基礎には休日や有給休暇も含まれるため、出勤日数に関係なく、給与の支払対象期間の暦日数が支払基礎日数になります。
ただし、欠勤日数分を給与から控除する場合は「就業規則、給与規程等により事業所が定めた日数から欠勤日数を除いた日数」となるので要注意です。
3-2. 時給制・日給制
時給制と日給制は、就業規則等に基づき定められた「所定労働日数」-「欠勤日数」が支払基礎日数になります。
時給性と日給制の考え方として、給与の計算基礎には休日や有給休暇も含まれるため、出勤日数に関係なく、給与の支払対象期間の暦日数が支払基礎日数になるということを覚えておきましょう。
4. 給与計算のミス発生時の対応
給与計算は毎月どの企業でもおこなわれる業務ですが、専門性が高くミスが許されないので、業務を負担に感じている方もいるかもしれません。さらにヒューマンエラーは避けられないものもあるため、給与を支給する際に過不足が発生したり、訂正申請が必要になったりと、想定外の業務が増えることもあります。
そこで本章では、ミスが起きてしまった場合に必ずすべきことを2点に絞って解説します。
4-1. すぐにお詫びを入れる
給与計算は、従業員に支払う賃金や、雇用保険・社会保険などに関わるため、もしミスをしてしまうと、会社の信用や従業員からの信用に大きな影響を与えます。しかし、人が業務をおこなう以上すべてのミスを防ぐことはできません。
万が一給与計算のミスが発覚したら、従業員に対してはすぐにお詫びを入れ、二度と同じミスをしないように対策を取ることを約束しましょう。
関連記事:給与計算で間違いが発覚したときのお詫びで注意すべきこと
4-2. ミス防止に向けた対策をする
上記の通り、給与計算業務におけるミスは致命的ですので、ミスが起こらないように事前対策が重要になります。ここでは事前に防ぐことができる5つの対策を紹介します。
① 保険料率の改定を把握するために年間スケジュールを作成
② 扶養変更・異動などの入力忘れを防止するためにダブルチェック
③ 控除項目の変更忘れを防止するためにチェックリストを活用
④ 月額変更届の届出忘れを防ぐためにマニュアルを作成
⑤ 日割り計算のミス防止のために給与計算システムを導入
より詳しく知りたい方は関連記事をご覧ください。
5. 給与計算におけるリスクと対処法
給与計算は、従業員の給料にまつわる業務のため、ミスは許されません。
例えば、「従業員の情報更新漏れ」や「時間外勤務の割り増し漏れ」などが主なミスとして挙げられます。「税務リスク」として企業が責任を負う義務が発生するため、十分な注意が必要です。
5-1. 最低賃金ルールを守る
給与は、原則として地域別に設定された最低賃金額以上にしなければならないと規定されています。この法律は、正社員だけでなくパートやアルバイトも含めたすべての従業員に適用される仕組みになっています。
最低賃金は、毎年秋に改訂されていますので、もし最低賃金額ギリギリの給与設定にしている場合は、毎年賃金額を見直す必要があります。
5-2. 残業代を正しく支払う
1日8時間・週40時間の法定労働時間を超えた残業を「時間外労働」といいます。
そして、時間外労働に対しては、法定の割増賃金を支払わなければなりません。
深夜帯(22時~翌5時)に労働する場合には、深夜手当として割増賃金を上乗せする必要があり、1ヵ月60時間を超える時間外労働に対しては、使用者は50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。
また、1ヵ月分の残業や深夜労働、休日労働などの時間外労働を計算する際、労働時間に1時間未満の端数が生じた場合は、30分未満は切り捨て、30分以上は1時間に切り上げて計算をする場合もあります。
ここでポイントとなるのは、「1ヵ月分」の時間外労働の合計時間に1時間未満の端数が生じた場合のみ、30分以上は切り上げて、30分未満は切り捨てが認められるということです。
万が一、日ごとの残業時間が端数切捨ての処理がされている場合は違法になりますので、必ず端数調整は締め日を過ぎてからおこなうようにしましょう。
【残業と割増賃金の関係を知りたい方はコチラ▶残業による割増率の考え方と残業代の計算方法をわかりやすく解説】
6. 給与計算を自動化し、ミスなく効率よくおこなう方法
給与計算業務が工数がかかるうえにミスが許されないポジションであることはご理解いただけたと思います。そこで本章では、極力ミスを低減させ効率化する方法を3点解説します。
6-1. エクセルでおこなう
エクセルを使って給与計算をする方法は、自分で給与計算用のシートを作成する、既存の給与計算用のシートをダウンロードして使用するかの2種類があります。
デザインやレイアウト、どの関数を使って管理するかは作成者によって異なりますが、給与計算に必要な基本的な機能は網羅されていますので、まずは無料でトライしたい方におすすめの方法になります。
▼より詳しく知りたい方はコチラをクリック
給与計算をエクセルでおこなう方法とは?4つのメリットと注意点を解説
6-2. アウトソーシング(代行)を使う
人数が増えてきたことによりエクセルでの管理が難しくなると、アウトソーシングを検討する企業が増えてきております。
給与計算をアウトソーシングに委託すると、給与計算業務が不要になるため、コア業務に集中できたり法改正を忘れることなく対応できます。一方で、従業員情報の漏洩リスクや自社に給与計算のノウハウが貯められないなどデメリットもあります。
メリットとデメリットを把握した上で、アウトソーシング候補先の実績等を確認し、問題ない企業を選ぶようにしましょう。
関連記事:給与計算のアウトソーシング・代行のメリット・デメリットと相場をご紹介
6-3. システムの導入
給与計算システムと人事管理システムや勤怠管理システムを連携することで、手打ち入力が必須であった作業を減らすことができます。各企業によってシステムの機能が異なるため、自社に合ったシステムを導入することがおすすめです。
またシステムを導入するメリットは以下の通りです。
①勤怠管理データをもとに給与計算を自動でおこなうことができる
②人事業務が低減される
③法改正による対応をスムーズにおこなうことができる
法改正による税率変更時の自動更新や、給与計算の自動化により、今まで起きていたヒューマンエラーを低減することが可能です。手計算やエクセルでの給与計算が辛く感じる場合は、システムの導入を検討しましょう。
関連記事:勤怠管理システムと給与計算を連携させて業務効率をアップしよう
関連記事:給与計算を自動化するメリット・デメリット、方法を紹介
7. 基本を理解してスムーズに給与計算を進めよう
計算方法や労務知識など、考慮すべきものは多くありますが、基礎をしっかり押さえれば、経理初心者でもきちんと仕事をこなすことが可能です。
しかし、計算する項目が多いため、事業規模が大きくなると、短期間で全従業員分の給与計算をすることは難しいでしょう。
給与計算の負担が大きいと感じた場合、給与計算システムを導入したり、アウトソーシングを検討したりするなど、業務効率化のための工夫をおこなうようにしましょう。
給与計算業務でミスが起きやすい社会保険料。
保険料率の見直しが毎年あるため、更新をし損ねてしまうと支払いの過不足が生じ、従業員の信頼を損なうことにもつながります。
当サイトでは、社会保険4種類の概要や計算方法から、ミス低減と効率化が期待できる方法までを解説した資料を、無料で配布しております。
「保険料率変更の対応を自動化したい」
「保険料の計算が合っているか不安」
「給与計算をミスする不安から解放されたい」
という担当の方は、こちらから「社会保険料の給与計算マニュアル」をご覧ください。
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