【最新版】65歳以上の雇用保険料の改正内容とは?給与計算ルールについても解説
更新日: 2024.12.26
公開日: 2020.12.14
OHSUGI
高齢者の労働環境整備の一環として2017年に雇用保険法改正がおこなわれ、65歳以上の従業員に対しても雇用保険の加入が義務付けられるようになりました。
事業主に配慮して、2020年3月までは保険料の負担はありませんでしたが、2020年4月からは労使ともに保険料の負担が義務付けられています。
今回は、法改正の内容と給与計算処理で注意したいポイントについて解説していきます。
【給与計算業務のまとめはコチラ▶給与計算とは?計算方法や業務上のリスク、効率化について徹底解説】
2020年4月より、65歳以上の従業員も雇用保険料の支払い義務が一般の従業員と同じく発生しています。
当サイトでは、「何歳まで支払うの?」「加入の要件や手続きは?」など、65歳以上の従業員の雇用保険料について、本記事の内容をわかりやすくまとめた資料を無料で配布しております。
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目次
1. 65歳以上の雇用保険料に関する改正内容
法律の改正により、2017年1月から65歳以上の従業員でも雇用保険の適用条件を満たせば、「高年齢被保険者」として雇用保険が適用されるようになりました。
これにより、6ヵ月以上雇用保険に加入していれば、高齢者でも失業したときに高年齢者給付が受けられるようになります。高齢者の雇用保険料について、改めて確認しておきましょう。
1-1. 雇用保険免除(経過措置)は令和2年で終了している
65歳以上の従業員に対して取られていた雇用保険免除(経過措置)はすでに終了しています。令和2年までであったため、事業規模や資産を問わず雇用保険料を納める義務があります。
すでに年齢による区分けはなく、高年齢の従業員も一般社員と同様に雇用保険を取り扱わなくてはならないことを覚えておきましょう。
なお、これは企業側に限ったことではありません。
従業員もこれまでは雇用保険料を免除されていましたが、現在は従業員側の負担も発生しています。この点を勘違いしていることがあるため、対象の従業員がいる場合は再確認しておきましょう。
1-2. 適用要件
高年齢被保険者の雇用保険適用要件は、以下のとおりです。
①65歳以上
②週の所定労働時間が20時間以上
③31日以上の雇用見込みがあること
従来は、2016年12月末時点で高年齢継続保険者を継続雇用している場合のみ、雇用保険の被保険者になっていました。しかし、2017年1月以降は以下の従業員も雇用保険の対象となります。
- 2016年12月末までに65歳以上の労働者を雇用し、2017年1月以降も継続して雇用している場合
- 2017年1月以降に新たに65歳以上の労働者を雇用した場合
1-3. 手続き方法
前項で挙げた適用要件に当てはまる場合は、対象者が入社した翌月10日までに、事業所の所在地を管轄するハローワークへ「雇用保険被保険者資格取得届」を提出する必要があります。
手続きの際に提出する書類は、以下の4つです。
①雇用保険資格取得届
②前職の雇用保険被保険者番号(過去に加入している場合)
③2017年1月1日からの出勤簿や賃金台帳
④雇用契約書または雇入通知書
もしも提出が大幅に遅れた場合は、上記とは別に遅延理由書と入社時からの賃金台帳を用意する必要があります。
雇用保険の加入対象であるにも関わらず手続きをしていなかった場合は、従業員側から遡って請求される恐れや、トラブルになる可能性があります。忘れていた、知らなかったでは済まない問題になる可能性もあるため、こうした手続きは漏れなくおこなうようにしましょう。
2. 65歳以上の雇用保険料の計算方法
65歳以上の従業員と一般の従業員とでは、雇用保険料の天引きルールが違います。正しい計算方法と、高年齢従業員にのみ適用されるマルチジョブホルダーについて知っておきましょう。
2-1. 基本的な計算方法に変わりはない
65歳以上の従業員の給与や各種手当、税金の控除などは一般の従業員と違いはありません。
雇用保険料も計算方法に違いはありませんが、勤務時間や勤務形態、さらに年齢によって変化する控除すべき保険料に注意が必要です。
以下は年齢によって変化する控除するべき保険料です。40歳、65歳、70歳で保険料が変化する点に留意しましょう。
控除する保険料 | 従業員の年齢 | 企業が取るべき対応 |
介護保険 | 40歳~65歳
|
65歳以上になると年金から自動的に控除されます。そのため、給与からの天引きは必要なくなります。 |
厚生年金保険 | 70歳まで
|
70歳になると厚生年金の加入資格を失います。しかし、70歳以上でも老齢年金の受給資格を見たいしていない場合は、条件を満たすことで任意で厚生年金に加入できます。従業員に確認するようにしましょう。 |
雇用保険 | 年齢による制限はない | 雇用保険に年齢の制限はありません。65歳になった従業員が雇用保険に加入している場合でも、特別な手続きは不要です。 |
2-2. マルチジョブホルダー制度が適用される
2022年にマルチジョブホルダーが設置され「雇用保険マルチジョブホルダー制度」も始まりました。
マルチジョブホルダーとは、複数の事業所で働いている従業員の労働時間を合算し、雇用保険の加入資格を取得できる制度です。1つの会社では雇用保険の加入条件を満たせていなくても、別の会社の労働時間を合算することで雇用保険加入の条件を満たせる場合は、雇用保険に入れるようになります。
このマルチジョブホルダー制度を利用するには、本人がハローワークに申請しなくてはなりません。まだ知らない人も多いため、高年齢の従業員がいる場合はアナウンスをするとよいでしょう。
労働者が申請をした場合は、企業側に雇用保険加入の資格を取得したことが通知されます。通知が来た場合は雇用保険の適用を迅速におこなうようにしてください。
3. 65歳以上の従業員の給与計算をするときの注意点
65歳以上の雇用保険加入者の給与計算をするとき、どのようなことに気をつければいいのでしょうか。ここからは、注意したい給与計算ルールについて3つ解説していきます。
すでに切り替えの時期は過ぎていますが、正しく処理できているか確認のためにもお読みください。
3-1. 徴収開始のタイミング
まず気をつけたいのが、雇用保険料の徴収開始のタイミングです。保険料の徴収が開始されるのは、「2020年度に属する賃金締切日以降の給与支払い」からです。実際のモデルケースを見ながら、タイミングについてみていきましょう。
例えば、給料が「月末締め、翌日25日支払い」となっているとき、保険料の徴収を始めるのは4月25日ではなく5月25日となります。4月25日に支払われるのは前年度に属する3月分の給与であり、雇用保険適用前に対するものであるためです。
雇用保険の徴収を始めるのは、制度改正年度である2020年4月以降の労働に対する給与からです。間違えやすいため、十分に注意しましょう。
3-2. 雇用保険料率の確認をする
雇用保険料率は毎年変動します。正しい料率を知った上で計算しましょう。前年度のままで徴収をしてしまうと、あとから返金などの対応をする必要が出てくることもあります。
従業員にとっても事業主にとっても手間がかかる手続きであるため、毎年、厚生労働省の通達で料率を確認するようにしましょう。
2024年度(令和6年)の雇用保険料率は以下のとおりです。
一般の事業:労働者負担 6/1000+事業主負担 9.5/1000=15.5/1000
農林水産業:労働者負担 7/1000+事業主負担 10.5/1000=17.5/1000
建設の事業:労働者負担 7/1000+事業主負担 11.5/1000=18.5/1000
※事業主負担は「雇用保険」と「失業等給付・育児等休業」を合計した料率
3-3. 支払いを忘れない
2020年度に徴収した労働保険料を支払うのは、翌年度である2021年になります。この際、必ず65歳以上の分の労働保険料を賃金総額へ算入することを忘れないようにしましょう。
今までは支払い免除対象だったため、「習慣でついうっかり忘れてしまった」なんてことがあれば大問題です。支払いを忘れないように、社内担当者への周知を徹底しておくようにしてください。
このように雇用保険料の計算は、保険料率の更新であったり、事業ごとに負担割合が異なったりするなど、ミスが発生しやすい業務のひとつといえます。当サイトでは、雇用保険料などの社会保険料の計算方法やミスなく効率化する方法を解説した資料を無料で配布しております。保険料の計算でミスがないか不安な方や、手間に感じることがある方は、こちらから「社会保険料の給与計算マニュアル」をダウンロードしてご覧ください。
4. 65歳以上の雇用保険料は保険料率や改正を踏まえた給与計算を
以前までは65歳以上の被保険者の雇用保険が免除されていましたが、2020年4月からは65歳以上の従業員の雇用保険料も支払う義務が発生しました。給与計算のルールや注意点を意識しながら、正しい給与計算や徴収をしていきましょう。
雇用保険の負担が増えることを、デメリットに感じる事業主や従業員もいるかもしれません。
しかし、雇用保険の適応拡大は高齢者の労働環境整備だけではなく、安定的な労働力確保にも一役買ってくれる制度です。従業員にもメリットを提示して、保険料徴収に対する理解を得ることが大切です。
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2020年4月より、65歳以上の従業員も雇用保険料の支払い義務が一般の従業員と同じく発生しています。
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