年末調整における「世帯主」とは?その定義や変更方法を紹介
更新日: 2024.10.21
公開日: 2021.9.17
OHSUGI
従業員に作成を依頼する年末調整書類には、普段あまり使わない用語も多く出てきます。そのため、どのように記載すべきか迷う人も少なくありません。
例えば、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の「世帯主」です。誰の名前を記載すべきかわからず、困ってしまう従業員もいるでしょう。
そこで今回は、従業員に作成を依頼する「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」で記載する「世帯主」の定義について確認していきます。
また、年末調整における家族構成別の世帯主の書き方や、変更方法についても解説します。
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1. 年末調整における世帯主の定義とは
はじめに、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」における世帯主の定義について考えていきます。
まずは、世帯とはどういう意味なのか、言葉の意味について確認しましょう。
1-1. 「世帯」とは同一で生計を営む家族の単位
「世帯」とは、同じ居住地に住み、同一で生計を営む家族の単位を指します。
よくある例としては、「一家の父もしくは母が家族を扶養し、世帯主となって一世帯を形成している」というものです。
なお、同じ居住地であっても生計が同一でない場合は、「別世帯」の扱いとなります。物理的な住まいで世帯を考えるのではなく、基準はあくまでも生計である点に注意しましょう。
例えば、親子の関係で同じ世帯に住んでいたとしても、子が独り立ちして扶養から抜けた場合は別の世帯になります。一つの家に複数の世帯が入っていることも間違いではなく、決して珍しいケースではありません。
1-2. 「世帯主」とは世帯の代表者のこと
「世帯主」とは、世帯のなかの代表者のことを指します。多くの場合、世帯で生計を立てるための収入を最も得ている人が世帯主です。
ただし、法律で世帯主となる人を定める決まりはありません。年齢や所得額で世帯主が決まるわけではなく、同一世帯であれば、申告することで誰でも世帯主になることができます。なお、世帯主が決定したら、居住する自治体に前もって申告しておきましょう。また、何らかの理由で世帯主を変更する場合は、変更日から14日以内に「世帯主変更届」を所轄の自治体窓口まで提出しなければなりません。
1-3. 年末調整書類には「住民票に記載されている世帯主」を記載する
それでは、年末調整書類「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」において、世帯主欄には何を記載すればよいのでしょうか。通常、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の世帯主欄には、住民票に記載されている「世帯主」をそのまま記載します。
従業員が一人暮らしで生計を立てている場合、住民票を移しているかどうかによって記載する内容が異なるため、注意が必要です。住民票を移しておらず、実家の家族が世帯主となっている場合、世帯主欄には家族の氏名をそのまま記載します。
しかし、住民票を移しており、従業員自身が世帯主となっている場合は本人の氏名を記載しなければなりません。
つまり、年末調整書類の世帯主欄には、あくまでも従業員それぞれの「住民票上の世帯主」を確認して記載するよう周知すべきです。このように、紙の年末調整書類に記載してもらう場合、ミスが発生しないように、記載すべき事項をわかりやすく示しておく必要があります。その際に記載例などを示しておくと、従業員も記載しやすいでしょう。当サイトでは、年末調整の書き方や記載例についてわかりやすく解説した資料を無料で配布しています。年末調整の書類配布時に注意すべきことも記載しているので、年末調整業務を漏れなくおこないたい方は、こちらから「年末調整ガイドブック」をダウンロードして、ご確認ください。
2. 年末調整における家族構成別の世帯主と続柄
世帯主と続柄はどのように記入すればよいか迷う部分です。
従業員から質問があった際に答えられるように、世帯主の記載方法について「本人の場合」と「実家暮らしの場合」、「一人暮らしの場合」の3つのパターンを知っておきましょう。
2-1. 続柄は誰から見た関係を書くか注意しよう
続柄は「誰から見た関係なのか」という点に注意が必要です。また、この「誰から見た関係なのか」という点は、書類によって異なります。
年末調整の場合は、「年末調整をおこなう本人から見た関係」を続柄に記入します。
そのため、自分自身が世帯主の場合は「本人」、親や配偶者が世帯主の場合は「父」や「母」、「夫」「妻」と記入するのが正しいです。
ただし、年末調整をおこなわなかった、年末調整後に修正があったなどの理由で確定申告をする場合は記載する続柄を「世帯主から見た関係性」を記載しなければなりません。
2-2. 本人の場合の年末調整の世帯主
世帯主が自分である場合には、年末調整の世帯主は本人の氏名を、続柄には「本人」と記載します。
よくあるのは独り立ちをして実家から離れて暮らし始めた際に、世帯主が自分になるパターンです。進学や就職をきっかけに世帯主が自分になることが多いです。
ただし、住民票を移していない場合は世帯は同一のままであるため、世帯主は親や配偶者のままです。扶養に入ったままで一人暮らしをするケースや、実家から単身赴任をするケースでは、別の場所に住んでいても世帯主が家族になっていることも少なくありません。
2-3. 実家暮らしの場合の年末調整の世帯主
実家暮らしの場合の年末調整の世帯主は、世帯主には父(または母)の氏名を、続柄には「父」(または「母」)と記載します。
ただし、実家で暮らしていても世帯分離をして世帯を分けており、世帯主を自分にしている場合は「本人」と記載しなければなりません。
珍しいケースではありますが、何らかの理由で世帯分離をしている場合は注意しましょう。世帯分離は役所での手続きが必要であるため、それをおこなっていなければ同一世帯のままです。
3. 年末調整に書いた世帯主を変更する方法
記載ミスや従業員の家庭の事情により、年末調整書類の世帯主を変更しなければならないケースもあるでしょう。
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に記載されている世帯主を変更するには、次の3つのパターンがあります。
- 家庭の事情により世帯主を変更しなければならないとき
- 世帯主の記載を誤ったため、世帯主を訂正・変更したいとき
- 世帯主を誤ったまま会社に提出したことに気づき、訂正・変更したいとき
以下、これら3つのパターンについて、世帯主の変更方法を説明します。
3-1. 世帯主の記載が間違っている場合
世帯主を誤って記載したことに従業員が気づいた場合や、提出前に間違いが発覚した場合は、以下の方法で修正ができます。
- 訂正しなければならない箇所に二重線をひく
- 二重線をひいた箇所の上に訂正印(認印可)を押す
- 訂正したい箇所の上もしくは下に正確な内容を記載する
なお、世帯主の記載の修正は修正テープや修正液の使用が認められません。修正時は修正テープなどを使わないよう、前もって伝えておきましょう。
会社側が間違いに気づいた場合委は、従業員本人への確認が必要であるため、内容の確認は早めにおこなうのが望ましいです。
3-2. 世帯主を誤ったまま会社に提出したことに気づいた場合
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出後に誤りが発覚した場合も、年末調整の期限となる翌年の1月31日までであれば、書類の訂正が可能です。誤りが発覚したら、すぐに従業員へ期限までに修正するよう伝えましょう。なお、1月31日を過ぎてしまってから修正する場合、本来であれば従業員自身が確定申告を申告しなければなりません。しかし、訂正箇所が世帯主だけであれば、あえて訂正せず、そのまま書類を提出しても罰則の対象とはなりません。
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3-3. 世帯主は年末調整金額に影響する?
世帯主情報は、所得税の納税額や還付額には直接影響する箇所ではないため、世帯主の記入をミスしたとしても年末調整の還付金額に影響しません。年末調整の目的は、扶養控除申告書に基づいて所得税を適切に源泉徴収するために、扶養する家族の人数やその状況によって控除額を決定することにあります。したがって、世帯主の役割は世帯の主宰者として位置づけられますが、直接的に税額に影響を与えるものではないのです。
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4. 年末調整書類の世帯主や続柄は住民票を基本に記載するようにしよう
年末調整書類(「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」)を記載する場合に必要な「世帯主」の定義のほか、家族構成別の世帯主の記載方法、また「世帯主」の記載を変更したい場合の方法について紹介しました。
原則、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の「世帯主」欄には、住民票の世帯主と同じ氏名を記載しなければなりません。必ず住民票上の世帯主を確認したうえで記入するよう、従業員全員に周知しましょう。とくに、従業員が一人暮らしの場合、住民票を移しているかどうかによって記載する内容が異なるため、要注意です。
また、従業員から提出された「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の世帯主を誤って記載してしまった場合も、期日までであれば訂正することができます。従業員それぞれの事情に合わせて、適切な訂正方法を伝えましょう。
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