労働時間の計算方法や上限規制、労働時間の判定事例をわかりやすく解説! - ジンジャー(jinjer)|統合型人事システム

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労働時間の計算方法や上限規制、労働時間の判定事例をわかりやすく解説!

働く女性

労働時間は、給与計算の基礎であると同時に、残業代やコンプライアンスに直結する重要な要素です。しかし実際には、「どこまでが労働時間に当たるのか」が曖昧なまま運用されているケースも少なくありません。待機時間や移動時間、研修時間などの扱いは判断が分かれやすく、労働時間に含めるべきかどうかで計算結果も大きく変わります。

また、テレワークやフレックスタイム制の普及により、従来よりも労働時間の把握や管理は複雑になっています。だからこそ、法的な定義と実務上の判断基準を整理し、自社の運用に落とし込むことが欠かせません。

本記事では、労働時間の基本から計算方法をはじめ、法定労働時間や上限規制、36協定との関係を整理します。さらに、具体的なケースをもとに、労働時間に該当するかどうかの判断ポイントもわかりやすく解説します。自社の勤怠・残業管理が適切におこなわれているかを見直すきっかけとして、ぜひ参考にしてください。

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◆この資料でわかること

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  • トラブルを未然に防ぐための休憩時間の付与ルール
  • 罰則リスクを回避するための正しい勤怠管理のポイント

労務リスクへの備えは、企業の信頼を守る第一歩です。自社の勤怠管理体制の見直しに役立ちますので、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。

1. 労働時間とは

労働時間のイメージ

労働時間とは、「使用者の指揮命令下に置かれている時間」をいいます。これは、三菱重工長崎造船所事件の最高裁判決で示された考え方で、現在の実務でも基本となる判断基準です。

重要なのは、労働時間が労働契約や就業規則、労働協約等の定めによって決まるものではなく、実態に基づいて客観的に判断されるという点です。会社が「労働時間ではない」と整理していた時間であっても、指揮命令下にあると評価されれば、労働時間として扱われます。

参考:三菱重工業長崎造船所(一次訴訟・会社側上告)事件|労働基準判例検索

この章では、労働時間の基本的な考え方を整理したうえで、「指揮命令下」とは具体的にどのような状態を指すのか、勤務時間や通勤時間との違いも含めて解説します。

1-1. 指揮命令下に置かれる時間の具体例

厚生労働省のガイドラインでは、労働者が「使用者の指揮命令下に置かれている」と評価され、労働時間として扱わなければならない例として、主に次の3つのパターンを挙げています。

これらは労働者の行為が使用者から義務づけられ、または余儀なくされている状況にあるかが判断のポイントとなります。

パターン 具体的な内容
準備行為・後始末 使用者の指示により、業務に必要な準備(着用を義務付けられた制服への着替え等)や、業務終了後の後始末(清掃、片付け、申し送り等)を事業場内でおこなった時間
手待ち時間(待機時間) 使用者の指示があった場合に即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機している時間
教育・研修・学習 参加することが業務上義務づけられている研修や教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習などをおこなっていた時間

特に「黙示の指示(直接命令はしていないが、やらざるを得ない状況)」による残業などは、管理者が把握しきれず未払い残業代トラブルに発展しやすいケースです。客観的に見て「その行為をすることが義務づけられているか」を基準に判断する必要があります。

参考:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン|厚生労働省

1-2. 勤務時間・拘束時間と労働時間の違い

「労働時間」と似た言葉として、「勤務時間」「就業時間」「就労時間」といった言葉があります。いずれも労働基準法で定義された用語ではなく、企業によってその解釈はさまざまです。

多くの場合、これらは労働時間と同じ意味で使われますが、企業によっては始業から終業までの時間帯を指す用語として用いられることもあります。

あわせて押さえておきたいのが、「拘束時間」との違いです。拘束時間とは、始業から終業までのうち、休憩時間なども含めて会社に拘束されている時間全体を指します。一方、労働時間はその中から休憩時間などを除いた、実際に指揮命令下に置かれている時間です。

例えば、9時から18時(休憩1時間)の場合、拘束時間は9時間、労働時間は8時間となります。

このように、似た用語が複数存在しますが、実務上は「どの時間が労働時間に当たるか」を正しく判断することが最も重要です。給与計算や残業管理を適切におこなうためにも、用語の違いにとらわれすぎず、実態ベースで整理することが求められます。

1-3. 通勤時間と労働時間の違い

原則として、「通勤時間」は労働時間に含まれません。通勤は労働者が自宅から事業所へ移動する時間であり、その間は使用者の具体的な指揮命令を受けておらず、基本的には自由に過ごせるためです。

ただし、次のようなケースでは、移動中であっても労働時間とみなされる場合があるため注意が必要です。

  • 移動中に業務対応(電話・メール対応など)をおこなう場合
  • 事務所に集合し、状況に応じて会社の指示した現場へ向かわせる場合
  • 複数の現場間を移動する時間

これらは、移動そのものが業務の一部と評価されるためです。このように、単なる移動なのか、それとも「使用者の支配下にある移動」なのかによって判断が分かれます。

参考:事務所と現場の移動時間を見直してみませんか?|厚生労働省 奈良労働局

2. 労働時間のさまざまなルール

チェックリストと男性

労働時間には、労働基準法に基づき、上限規制や休憩、休日など、さまざまなルールが定められています。ここでは、実務で押さえておきたい基本的なルールを整理します。

2-1. 労働時間の上限規制とは

時間外労働の上限規制は、2019年の働き方改革関連法の施行により、それまでの「大臣告示(法的な強制力なし)」から「罰則付きの法律」へと強化されました。

2019年の法改正以前は、「月45時間・年360時間」という目安はあったものの、特別条項付き36協定を締結すれば実質的に上限なく残業させることが可能でした。法改正後は、特別条項を設けた場合でも、次の上限をすべて守る必要があります。

  • 時間外労働は年720時間以内
  • 時間外+休日労働は月100時間未満
  • 時間外労働と休⽇労働の合計について、「2~6ヵ月平均」が全て1⽉当たり80時間以内
  • 月45時間を超える時間外労働は年6ヵ月まで

上限を超えた場合には、「6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」の罰則が科されるだけでなく、企業名が公表されるリスクもあります。

なお、この上限規制は、大企業で2019年4月から、中小企業では2020年4月から適用されています。

また、2024年からはそれまで猶予されていた次の4業種にも上限規制が適用されました(一部、業種特有の緩和ルールあり)。

  • 建設業
  • 運送業(自動車運転の業務)
  • 医師
  • 鹿児島県・沖縄県の砂糖製造業

これらは業務特性上、長時間労働になりやすいことから猶予されていましたが、現在は原則として上限規制の対象となっています。いわゆる「2024年問題」として注目された分野です。

これら4業種の労働時間のルールについて、詳しくは、次の記事も参考にしてください。

関連記事:36協定における適用除外と猶予が適用されていた事業や業務について

2-2. 法定労働時間と所定労働時間の違い

労働時間を理解するうえで重要なのが、「法定労働時間」と「所定労働時間」の違いです。

  • 法定労働時間(法律上の上限)
    労働基準法第32条で定められた「1日8時間・1週40時間」という上限です。原則として、この上限を超えて働かせることはできません。労働させる場合には、36協定を締結し、労働基準監督署へ届出をおこなう必要があります。
  • 所定労働時間(会社が決めた時間)
    会社が就業規則や雇用契約などで定めた、始業から就業までの時間から、休憩時間を除いた時間のことです。いわゆる「定時」ともよばれるものです。

法定労働時間の範囲内であれば、会社は自由に所定労働時間を設定できます。例えば、9時~17時勤務(12時~13時休憩)を定時としている会社の場合、7時間が所定労働時間となります。

この場合、1日の労働が8時間を超えるまでは法定内の残業となり、割増賃金は発生しませんが、所定労働時間を超えて労働した分の通常の賃金は支払う必要があります。8時間を超えた時点から法定外の残業として、割増賃金の対象となることに注意しましょう。

2-3. 法定労働時間を超えて働くときの36協定

法定労働時間を超えて労働させる場合には、「36(サブロク)協定」を締結し、労働基準監督署に届け出なければなりません。36協定とは、使用者と労働者代表(もしくは労働組合)との間で締結する協定です。

36協定なしに1分でも法定労働時間を超えて働かせると、労働基準法違反となります。ただし、36協定を締結すれば無制限に残業させられるわけではありません。現在は、前述のとおり上限規制が設けられており、その範囲内で運用する必要があります。

また、36協定の締結や届出がないまま時間外労働をさせた場合、それ自体が法令違反となります。

2-4. 労働時間に休憩時間は含まれる?

休憩時間とは、労働者が仕事から完全に離れ、自由に過ごすことが保障された時間を指します。したがって、休憩時間は労働時間には含まれません。

労働基準法第34条では、労働時間に応じて次の休憩時間を与えることが企業に義務付けられています。

  • 6時間を超え8時間以内の場合:45分以上
  • 8時間を超える場合:1時間以上

ただし、形式上は休憩時間とされていても、電話番や来客対応などで使用者の指揮命令下にある場合は、休憩ではなく労働時間として扱われます。

休憩時間の運用には、次の3つの原則が定められています。

  1. 途中付与の原則:労働時間の途中に休憩を与えること
  2. 一斉付与の原則:全従業員に同時に休憩を与えること
  3. 自由利用の原則:休憩時間中は労働者が自由に利用できること

なお、一斉付与は、次の業種は適用除外となっています。

  • 運送業
  • 商業
  • 金融・保険業
  • 映画・演劇業
  • 通信業
  • 保健衛生業
  • 接客娯楽業
  • 官公署

参考:労働基準法別表第一|e-Gov法令検索

その他の業種でも、一斉付与が難しい場合、労使協定を締結すれば交代制で休憩を与えることが可能になります。

また、労働基準法第41条により、次の労働者には労働時間・休憩・休日に関する規定が適用されないと定められています。

  • 農業・畜産・養蚕業・水産業の従事者(林業を除く)
  • 管理監督者または機密事務を扱う者
  • 監視または断続的労働に従事し、行政官庁の許可を受けた者

また、高度プロフェッショナル制度の対象者も同様に労働時間・休憩・休日に関する規定の適用除外です。これらは、職務の性質上、労働時間の枠組みが馴染まない、休憩時間の付与方法も一般労働者とは異なる運用が認められています。

休憩時間について詳しくは、こちらの記事もご覧ください。

関連記事:労働時間に休憩は含まれる?労働基準法での休憩時間の定義と計算ルールを解説

2-5. 労働時間と休日との関係

休日とは、労働契約上、労働者が労働義務を負わない日のことで、次の2種類があります。

  • 法定休日:働基準法第35条で定められた休日(「週に1日」または「4週に4日」)
  • 所定休日:会社が独自に設ける休日(例:完全週休2日制における、法定休日以外のもう1日の休み)

また、よく混同されがちな言葉が「休日」と「休暇」です。

  • 休日:最初から働く義務がない日(例:平日が営業日の会社における、土日・祝日など)
  • 休暇:本来働く義務がある労働日に、労働者の申請などによってその義務が免除される日(例:年次有給休暇、慶弔休暇など)

なお、「法定休日」は原則として暦日単位(午前0時から翌午前0時までの連続24時間)で与えられる必要があります。例えば、午前9時まで勤務した後に24時間休み、翌日の午前9時から出勤する場合は、形式上は24時間休んでいても暦日で1日確保されていないため、「法定休日」とは認められない点に注意が必要です。

3. 労働時間の計算方法

電卓で計算する

労働時間の計算式は、次のとおりです。

労働時間=終業時刻-始業時刻-休憩時間

休憩時間は「賃金を支払わなくてもよい(ノーワーク・ノーペイの原則)」とされているため、拘束時間から必ず休憩時間を差し引いて計算します。

また、時間外労働(残業時間)は、次の計算式で求めます。

時間外労働(残業時間)= 労働時間 – 法定労働時間(1日8時間・週40時間)

例えば、1日の労働時間が9時間の場合、そのうち1時間が時間外労働となります。

なお、残業時間は「所定労働時間を超えた時間」と「法定労働時間を超えた時間」を区別する必要があります。会社の「所定労働時間」を超えていたとしても、8時間以内であれば法定上の時間外労働には該当しません。いわゆる「法定内残業」として、割増賃金の支払義務もありません。

さらに、残業が深夜時間帯(22時〜翌5時)に及ぶ場合には、通常の割増賃金(25%以上)に加えて、深夜割増(25%以上)が必要となります(合計50%以上)。

労働時間の計算について詳しくは、こちらの記事もご覧ください。

関連記事:労働時間を正しい計算の仕方や注意点をわかりやすく解説

3-1. 月の労働時間の上限

通常の勤務体系(固定労働時間制)では、月の総労働時間だけで残業の有無を判断するのではなく、「1日8時間・週40時間」を超えたかどうかで判断します。そのため、月の労働時間が一定時間を超えたからといって、直ちに違法となるわけではありません。

一方で、1ヵ月単位の変形労働時間制や、清算期間が1ヵ月のフレックスタイム制を採用している場合には、月単位での労働時間の総枠をもとに管理する必要があります。「1ヵ月の法定労働時間の総枠」は次の計算式で算出します。

  • 1ヵ月の法定労働時間の総枠 = 40時間 × 暦日数 ÷ 7

この式にあてはめると、月の日数によって上限は次のように変動します。

月の暦日数 法定労働時間の総枠
31日 177.1時間
30日 171.4時間
29日 165.7時間
28日 160時間

また、シンプルに1か月を4週として考える場合は、

  • 40時間 × 4週 = 160時間

をひとつの目安とすることもできます。

ただし、これはあくまで概算であり、実際の労働時間管理では暦日数に応じた総枠や、日・週単位での上限との関係を踏まえて判断することが重要です。

3-2. 年間の労働時間の上限

年間の労働時間については、「法定労働時間の総枠」と、36協定による「時間外労働の上限」の2軸で管理する必要があります。

①年間の法定労働時間の総枠

1年単位の変形労働時間制を採用している場合などは、次の計算式による総枠が基準となります。

  • 週40時間×365日÷7日=約2,085時間

これはあくまで「法定労働時間ベースの年間の目安」であり、通常の勤務体系(変形労働時間制ではない場合)では、この時間がそのまま上限として規制されているわけではありません。

②36協定による時間外労働の上限

一般的な企業において、より厳密な管理が求められるのはこちらです。法定労働時間を超えて働くことができる「残業時間」そのものに上限が設定されています。

  • 原則:年間360時間まで
  • 特別条項を締結した場合:年間720時間まで

注意が必要なのは、特別条項を締結して「年間720時間」まで延長できる場合でも、「2〜6ヵ月平均で80時間以内(休日労働含む)」や「月100時間未満(休日労働含む)」といった月単位の規制が並行して適用される点です。

年間の枠に余裕があっても、特定の月に偏った長時間労働は認められません。特定の時期に業務が集中しないよう、計画的な人員配置と業務配分が求められます。

関連記事:労働時間の上限は1日8時間・週40時間!上限規制と違反リスクを解説

4. 労働時間と扱うかどうかの判断ポイントをケーススタディで解説

木のブロック

実は、労働基準法そのものには「労働時間」の明確な定義は定められていません。そのため、日本では、過去の裁判例や厚生労働省のガイドラインを基準に、「その時間が労働時間にあたるのか」を判断しています。

判断の核となるのは、1章で説明した三菱重工長崎造船所事件最高裁判決において示された「使用者の指揮命令下に置かれているか(客観的に見て業務を強制されているか)」という考え方です。ここでは、実務で特に迷いやすい8つのケースを解説します。

4-1. 定時後に自主的に会社で仕事をする場合

<判定:原則として労働時間>

定時後の時間が労働時間に該当するかどうかは、「会社の指揮命令下にあったか」で判断されます。ただし、たとえ残業指示を出していなくても、上司が従業員の居残りを知りながら黙認している場合、それは「黙示の指示」があったとみなされます。そのため、実際には、社内でおこなう残業は労働時間と判断される場合が多いでしょう。

例えば、次のようなケースは労働時間と判断される可能性が高いです。

  • 指示された仕事が終わらず残業している
  • 業務上必要な打合せや顧客対応をしている
  • 対応せざるを得ないトラブル対応をしている

これらは指揮命令下の業務であり、労働時間です。「勝手に残っているだけ」という理屈は通用しないことが多いため、不要な居残りは厳格に禁止する運用が必要です。

一方、会社と関係のない個人的な勉強や、完全に任意でおこなっている活動については、労働時間に該当しません。

4-2. 自宅へ仕事を持ち帰って残業する場合

<判定:実質的に強制されていれば労働時間>

業務を自宅に持ち帰っておこなった場合、会社の指揮命令に基づくものであれば、労働時間となります。

場所が自宅であったとしても、上司から依頼されている場合や、期限が厳しく持ち帰らないと終わらない状況である場合など、実質的に対応が求められている場合は、労働時間と判断される可能性が高いです。

また、会社が持ち帰りを禁止していても、業務量と期限のバランスが不適切であれば、会社側の管理責任が問われるリスクがあるので注意しましょう。テレワークの普及により、このような判断はより重要になっています。

4-3. 仮眠時間に労働から解放されていない場合

<判定:労働時間(手待ち時間)>

仮眠時間であっても、労働から完全に解放されていない場合は、労働時間に該当します。大星ビル管理事件(最高裁判決)では、仮眠を取っている時間でも、「何かあったときにすぐに対応しなければならない」場合、自由な利用が保障されていないため、労働時間(手待ち時間)に該当すると判断されました。

長距離ドライバーや航空機のパイロット、日勤夜勤で働くスタッフなどがいる会社では、注意して管理が必要です。

4-4. 勤務開始前後に着替えや準備・後片付けをする場合

<判定:義務付けられていれば労働時間>

製造業や飲食業など、指定の制服や作業服、安全服などへの着替えが義務付けられている場合、その時間は労働時間となります。

また、始業前の点呼や朝礼、清掃、体操、終業後の後片付けなども、参加が事実上矯正されている場合は労働時間に含まれます。

なお、終業後の着替えについては、そのまま帰宅することが認められている場合などは、労働時間とならないケースもあります。

4-5. 勉強会や社内研修に参加が強制された場合

<判定:強制参加なら労働時間>

勉強会や社内研修への参加が労働時間に該当するかは、「参加を強制されているか」が判断ポイントです。

前原鎔断事件(大阪地裁判決)では、会社が自由参加と謳っていた勉強会について、講習の内容が業務に直結しており、参加しないと実際の業務に支障が出る状況であったことなどから、労働時間に該当すると判断されました。

勉強会や研修は、次の基準のいずれにも該当する場合のみ、労働時間とならない可能性が高いです。

  • 拒否権があること
  • 参加しなかった場合に不利益な取り扱いを受けないこと
  • 業務に直結せず、参加の有無が給与等の労働条件に直結しないこと

また、次のようなケースも同様に判断が必要です。

  • インターン: 実際の業務に従事させ、利益を得ている場合は労働時間(労働者)とみなされます。
  • 内定者懇親会: 原則は任意ですが、入社前の課題提出や、出席を強く義務付ける場合は注意が必要です。

4-6. 休憩中に「電話番」や「来客対応」が必要な場合

<判定:労働時間(手待ち時間)>

休憩時間中であっても、電話や来客対応が求められている場合、労働時間(手待ち時間)に該当します。休憩時間は、「労働から完全に解放されていること」が必要であり、指揮命令下にある状態では休憩とは認められません。

なお、どうしても休憩時間に対応が必要な場合は、別途休憩を与える必要があります。こうした運用を放置すると、未払い賃金の問題に発展するリスクがあるため注意が必要です。

4-7. 勤務日に健康診断を受ける場合

<判定:原則は「労働時間ではない」が、特殊健診は「労働時間」>

一般健康診断は、会社に実施義務はありますが、受診時間中の給与支払いは義務ではありません。ただし、厚生労働省によると、円滑な受診のためには「労働時間扱い」とするのが望ましいと示されています。

一方、有害業務従事者が受ける特殊健康診断は、業務遂行に不可欠なため、労働時間として扱う必要があります。

4-8. 自宅待機をする場合

<判定:拘束の強さにより判断が分かれる>

自宅待機時間が労働時間に該当するかは、「行動の自由がどの程度制限されているか」で判断されます。

  • 労働時間になるケース
    会社が自宅待機を命じている場合は、労働者が指示に従う義務があるため、原則として労働時間とみなされ、有給となります。
    また、葬儀会社の夜間呼び出しや設備会社の緊急当番などで、「◯分以内に現場に到着しないといけない」「一切の外出を禁じられている」など、場所的・時間的な拘束が非常に強い場合は労働時間とみなされる可能性が高くなります。
  • 労働時間にならないケース
    「トラブルがあれば電話に出る」程度の緩やかな拘束で、自宅でテレビを見たり食事をしたり自由に過ごせる場合は労働時間には該当しない可能性が高いです。

ただし、実際には個別の事由によって、判断が分かれるため、運用を踏まえた検討が必要です。

sharoshi_uchiyama

労働時間の判定で怖いのは、現場の「良かれと思って」という善意です。例えば、若手社員が早く来て掃除をしたり、ベテランが休憩中に電話を取ったりする光景は、一見美談に見えますが、労務管理上は未払い賃金というリスクを抱えているのと同じでしょう。

また、これらを「本人が勝手にやっていること」として放置することは危険です。裁判になれば「会社が黙認していた=指揮命令下」と判断されるケースが非常に高いでしょう。

まずは「居残り・早出の承認制」を徹底し、許可のない労働は認めないことを社内に周知しましょう。加えて、勤怠システムの打刻ルールや上長承認フローを整備し、「グレーな時間」を生まない運用にしておくことが重要です。

解説:特定社会保険労務士 内山 美央(うちやま社会保険労務士事務所)

当サイトでは、労働時間のFAQをまとめた資料を無料で配布しております。自社が労働基準法違反をしていないか、正しい知識を確認したい方はこちらからご確認ください。

関連記事:労働時間管理を正確におこなうためのガイドラインを徹底解説

5. 労働時間に関するQ&A

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最後に、労働時間に関して実務でよくある疑問について回答します。制度の理解だけでなく、「実際にどう運用すべきか」という視点で押さえておきましょう。

5-1. 労働時間の規制緩和とは?

2025年10月、高市首相が就任直後に労働時間規制の緩和検討を厚生労働大臣へ指示したというニュースが大きな注目を集めました。高市政権では、労働時間規制の緩和を「働きたい改革」の柱と位置付け、意欲ある人がその能力を最大限発揮できる環境づくりを目指しています。デジタル化や副業解禁、年収の壁の撤廃といったテーマと同時に制度改革を進める構えを示しています。

一方で、現行の時間外労働の上限規制が、過労死認定ラインを基準に設定されているため、緩和には慎重な意見も多くあります。

主なメリット・デメリットは次のとおりです。

メリット

  • 労働力不足の緩和:柔軟な働き方で採用・定着率が改善する
  • 選択肢の拡大:副業・兼業、リスキリングなどが進む
  • 専門人材の活用:高度スキルを持つ人材が時間制約なく活躍できる

デメリット

  • 過労死リスク:長時間労働の常態化を招く懸念がある
  • 企業の管理負担増:より煩雑な勤怠管理や健康管理、制度設計が求められる
  • 労働者保護の低下:制度を濫用する会社の出現リスク

人事担当者は、法改正の動向を注視しつつ、自社の働き方を模索していく必要があります。

5-2. 労働時間のインターバルとは?

勤務間インターバル制度とは、終業時刻から翌日の始業時刻までの間に、「一定時間以上の休息時間」を設ける仕組みです。2019年より、すべての企業に対して導入が努力義務とされました。

例えば、深夜0時まで残業をした場合、11時間のインターバルを設けるルールであれば、翌日の始業を午前11時以降にスライドさせる、あるいはその日の就業を免除するといった対応をおこないます。

長時間労働による健康リスクを防ぐことを目的としており、厚生労働省も導入を推奨しています。なお、今後の労働基準法改正により義務化される見込みもあり、注視が必要です。

関連記事:2026年の労働基準法の改正は見送り?施行時期や議論中のテーマを解説

5-3. 労働時間を管理する方法は?

厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、原則として次のいずれかの方法による確認・記録を求めています。

  • 使用者による直接の確認(現認)
  • タイムカード、ICカード、パソコンのログ等の客観的な記録

やむを得ず自己申告制を採用する場合は、次の措置が必要です。

  • 自己申告の対象者へ十分な説明をおこなうこと
  • 申告時間と、実際の入退館記録やPCのログなどの在社時間に乖離がないか定期的に実態調査をおこなうこと
  • 適正な申告を阻害するような(残業代を抑制するような)指示を出さないこと

現在はDX化が進み、クラウド型の勤怠管理システムで「打刻とPCログの乖離」を自動検知できるツールも一般的になっています。客観的な記録を残すことが、会社を法的なトラブルから守る、極めて重要な手段です。

6. 労働時間の定義を押さえて適切な労働時間管理をしよう

時計と働く男性

事業者には、従業員の労働時間に応じた適切な賃金を支払う義務があります。労働時間の解釈を誤ると、未払い残業代や是正指導などの労務トラブルにつながりやすいため、経営者や人事担当者は基本的な考え方を正しく理解しておくことが重要です。

労働時間は法律上シンプルに定義されているものではなく、「指揮命令下にあるかどうか」という実態に基づいて判断されます。そのため、制度やルールだけでなく、現場の運用まで含めて見直していく視点が欠かせません。

自社の勤怠管理についても、形式的なルールにとどまらず、実態に即した運用ができているかを定期的に確認しましょう。必要に応じて弁護士や社会保険労務士など専門家の力を借りたり、勤怠管理システムを活用したりしながら、トラブルを未然に防ぐ体制を整えていくことが大切です。

労働時間の管理にはもう迷わない! 疑問を解決する【一問一答集】

多様な働き方の導入や度重なる法改正により、労働時間管理はますます複雑になっています。
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