裁量労働制とは?労働時間管理における3つのポイントを徹底解説
裁量労働制とは、実働時間ではなく、あらかじめ取り決めた『みなし労働』に基づいて給与を計算する労働時間制度の一つです。
おもに、業務を個人の裁量によって進めることができる企画職や研究・開発職などで導入されています。裁量労働制は業務内容によって企画業務型裁量労働制と専門業務型裁量労働制に分かれており、導入要件がそれぞれ異なります。
そして、個人の裁量によって業務を進めることができるとはいえ、裁量労働制を導入している場合であっても一般的な労働時間制度で働いている従業員と同様に、企業は労働者に対して責任を持ち、一人ひとりの労働時間を把握する必要があります。
本記事では、裁量労働制における労働時間管理の重要性や、正確に管理するポイントを解説します。
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1. 裁量労働制とは
裁量労働制とは、従業員の労働時間を実労働時間ではなく、労使間であらかじめ定めた一定の時間を労働時間として設けている制度です。
企業側が出退勤時刻を設けない代わりに、自分の意思で業務を進めることができるため、企業は従業員に対して残業・休日出勤の指示などはおこないません。
裁量労働制を適用できる職種は限定されており、基本的には企画職や研究・開発職としています。また、裁量労働制は業務の内容によって企画業務型裁量労働制と専門業務型裁量労働制の2種類に分かれており、それぞれ要件が異なります。
1-1. 企画業務型裁量労働制
企画業務型裁量労働制の対象となる労働者は、事業運営に関する企画・調査・分析の業務です。これらの業務はいずれも業務の進行を労働者の裁量に委ねる必要があり、労働者側で業務の手段や時間配分を決めることができます。
また、導入要件として以下の項目について決議し、その決議内容を所轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります。
・対象業務の範囲
・1日あたりのみなし労働時間数
・対象労働者に適用する健康・福祉確保措置
・対象労働者からの苦情処理のための措置
・本人の同意の取得、不同意者への不利益な取扱いの禁止に関する措置
・決議内容の有効期限
1-2. 専門業務型裁量労働制
専門業務型裁量労働制の対象となる労働者は、業務内容上その遂行手段を労働者の裁量に委ねる必要がある業務に携わっていることに加えて、法律で指定されている19職種に携わっていることが基準として設けられています。
2. 裁量労働制のメリット・デメリット
裁量労働制は、おもに企画職や専門職で適用される労働形態ですが、企業が裁量労働制を導入することにはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
勤怠管理を適切に行うためにも、メリット・デメリットを把握しておくことは大切であるため、確認しておきましょう。
2-1. メリット
企業が裁量労働制を導入するメリットは2つ挙げられます。
1つ目のメリットは、人件費の予測がしやすいことです。裁量労働制は残業が発生せずみなし労働時間に基づいて給与計算をするため、休日出勤や深夜労働をしない限りは毎月人件費が大きく変わることはなく、人件費の予測がしやすくなります。
2つ目のメリットは、残業管理の負担を減らせることです。通常であれば残業時間は割増賃金が発生するため、一人ひとりの従業員がいつどれくらい残業したかを把握し計算しなくてはなりませんが、裁量労働制であれば残業時間を計算する手間を省くことができます。
2-2. デメリット
裁量労働制を導入するにあたってのデメリットは3つ挙げられます。
1つ目は、導入手続きや社内制度の整備が必要な点です。裁量労働制を導入するには所定の項目について労使協定を結び、労働基準監督署へ届け出をしなくてはなりません。また、届け出をした後にも就業規則を変更したり評価制度を整えたりと、導入のために様々な手続きや調整が必要になります。
2つ目のデメリットは、きちんと勤怠管理をしないと労働の実態が把握しづらくなり、長時間労働の温床となる可能性があることです。「裁量労働制は残業代が発生しないから、働かせ放題だ」と勘違いし、勤怠管理を厳格に行わない企業もあるかもしれません。そうすると従業員の間で長時間労働が当たり前となり、従業員の心身の健康を害してしまう可能性があります。
3つ目のデメリットは、チームワークの醸成が難しくなることです。裁量労働制では従業員が好きな時間に出退勤できるため、会議を開催する時間を設定しにくくなったり、チームのメンバーと顔を合わせる時間が短くなってしまう場合もあります。一緒に仕事をしている感覚をもちにくいと、従業員間のチームワークを育みにくくなるため、対策が必要です。
3. 裁量労働制における労働時間管理の重要性
ほかの労働時間制度と同様、裁量労働制で従業員の労働時間を管理しなければならない理由は何でしょうか。第一の理由は、裁量労働制ではいくら働いても残業代が発生しない一方で、「休日出勤」「深夜労働」の割増賃金を使用者が支払う義務がある点です。
3-1. 裁量労働制でも休日出勤や深夜労働の割増賃金が発生する
実労働時間にかかわらず、あらかじめ労働者と合意した『みなし労働時間』で給与を計算する裁量労働制では、その性質上いくら働いても原則として残業代が発生しません。
しかし、盲点となりがちなのが、法定休日に働く「休日出勤」や、午後10時~翌午前5時までの時間帯に「深夜労働」をおこなった場合、割増手当の支払いが義務付けられている点です。
休日出勤や深夜労働の手当を計算するには、定休日や深夜労働がおこなわれた時間を使用者が把握していなければなりません。
つまり、裁量労働制であっても、従業員1人ひとりの労働時間を把握していなければ労働基準法に違反してしまうリスクがあります。
関連記事:裁量労働制の残業時間の上限は?知っておくべき注意点を解説
3-2. 「労働者の健康・福祉を確保するための措置」が必要
裁量労働制では「みなし労働時間」で給与を計算するからといって、従業員を上限なく働かせてよいわけではありません。裁量労働制であっても、みなし労働時間が法定労働時間を超える場合には時間外労働になるので36協定を締結する必要があります。
企画型、専門型ともに制度を道入するためには健康および福祉を確保するための措置を協議しなければなりません。
4. 裁量労働制で労働時間を正確に管理する3つの方法
裁量労働制で正確に労働時間を管理するポイントは3つあります。
4-1. 通常の労働時間制度と同様に出勤簿やタイムカードで記録する
裁量労働制だからといって、従業員の勤務状況を記録しなくてもよいわけではありません。通常の労働時間制度と同様、出勤簿やタイムレコーダーを使って、従業員の労働時間を常日頃から記録しましょう。
割増賃金の計算が必要な休日出勤や深夜労働などの時間外労働時間だけ記録すればよいわけでもありません。
関連記事:裁量労働制の従業員の打刻管理で注意すべき2つのこと
4-2. 休日出勤や深夜労働は「事前承認制」に
裁量労働制の人事・労務管理で手間がかかるのが、休日出勤や深夜労働の割増賃金の計算です。裁量労働制の労働者は、好きな時に出勤して退勤するため、「いつ休日出勤したか」「どのくらい深夜労働したか」が管理者に見えづらい構造になっています。
そこで、休日出勤や深夜労働をする場合は、別途届出や申請を提出してもらいましょう。時間外労働の実態が把握しやすくなるだけでなく、働きすぎの場合はインターバルをとってもらうこともできます。
4-3. 勤怠管理システムなら裁量労働制でも確実に労働時間を記録
労働時間を正確に管理したい方は、勤怠管理システムの導入がおすすめです。
勤怠管理システムとは、タイムレコーダーやスマホ・タブレットでの打刻データを収集し、従業員の勤務時間や時間外労働などを自動で計算するソフトウェアです。
出勤・退勤のタイミングが不規則な裁量労働制でも、あらかじめルールセットを作成すれば、確実に労働時間を記録・保存することができます。また、2019年4月の改正労働基準法など、新基準や新ルールにも対応しているため、人事・労務管理の現場で一から法改正に対応する必要がありません。
関連記事:勤怠管理システムを導入する目的とは?メリット・デメリットも確認
5. まとめ
今回は、裁量労働制の労働時間管理の重要性や、労働時間を正確に計算するポイントを解説しました。
「みなし労働時間」を採用する裁量労働制であっても、休日出勤や深夜労働の割増賃金の計算や、特別条項付き36協定の「「労働者の健康・福祉を確保するための措置」のため、従業員の労働時間管理が欠かせません。
日頃から従業員の勤務状況を把握し、休日出勤や深夜労働は「事前承認制」にするなどして、裁量労働制ならではの人事・労務管理をおこないましょう。勤怠管理システムなら、裁量労働制でも確実に労働時間を管理できます。
近年、人手不足などの背景から、バックオフィス業務の効率化が多くの企業から注目されています。
タイムカードの集計は、集計時にExcelに入力する工数がかかりますし、有給休暇の管理は、従業員ごとに管理することが煩雑で、残有給日数を算出するのにも一苦労です。
どうにか工数を削減したいけど、どうしたらいいかわからないとお悩みの方は、勤怠管理システムの導入を検討してみましょう。
勤怠管理システムとは、従業員の出退勤をWeb上で管理できるシステムのことです。勤怠管理システムの導入を検討することで、
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