裁量労働制の残業時間の上限は?知っておくべき注意点を解説
更新日: 2023.9.1
公開日: 2020.7.6
OHSUGI
さまざまな分野・業種で働き方が変化しつつありますが、今回のテーマである「裁量労働制」も多様な働き方の一つです。
裁量労働制は、企業が業務の時間配分などを個人の裁量に任せているため、定時が設けられている一般的な勤務スタイルとは異なります。そのため、残業時間の扱いや勤怠管理の方法などに戸惑う管理者の方もいらっしゃるのではないのでしょうか。
今回は、こうした疑問点を解決するべく、裁量労働制における残業時間の扱いを中心に解説していきます。
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目次
1. 裁量労働制とは、労働時間を個人の裁量に任せる制度のこと
前提として、日本企業の労働時間は「労働基準法」において「1日8時間、週40時間」と定められています。
これを超過する労働は「時間外労働(残業)」と呼ばれ、企業が時間外労働を労働者に指示する場合は、労働基準第36条を基に作成された協定(36協定)を締結し、労働基準監督署長に届け出をしなければいけません。
また、36協定を結んだとしても時間外労働には「月45時間、年間360時間まで」と限度が定められています。そのため、企業は以上の法律を遵守しつつ、各従業員の労働時間に見合った給与を支払う義務があるのです。
一方、裁量労働制とは、勤務時間や業務の時間配分を個人の裁量に任せる制度です。労働時間を個人の裁量に任せるため、実際に働いた労働時間に基づくのではなく、「みなし労働時間」といわれる「何時間働いたと”みなした”時間」に基づいて賃金が発生します。
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2. 裁量労働制における残業時間の実質上限は月45時間
裁量労働制では、時間外労働の概念はないと思われがちですが、裁量労働制であっても、残業時間の実質的な上限は定められています。
前提として、裁量労働制であっても、労働基準法に反して労働時間を超過させることはできません。
上述したように、労働基準法では残業時間は1ヶ月に45時間、1年間に360時間までと限度が設けられています。つまり、実質的な残業時間の上限は45時間までとなるのです。
そのため、裁量労働制で働く従業員に対して、労働基準法を超える労働時間を強いることは法律違反となるのです。違反すると6ヶ月以下の懲役または、30万円以下の罰金が課されます。裁量労働制であっても、36協定の上限時間内で労働しなくてはならないため、法改正によって変更になった上限規制を確認しておきましょう。
【関連記事】働き方改革による残業規制の最新情報!上限時間や違反した際の罰則を解説
3. 裁量労働制では残業代がでない?
裁量労働制で良くある誤解が「裁量労働制では残業代を支払わなくてよい」というものです。
裁量労働制では「みなし労働時間」に基づいて賃金が発生するため、みなし労働時間が法定労働時間である8時間を超えて設定されている場合は、8時間を超えた分について割増率である1.25を基礎賃金に乗じた金額に相当する賃金を給与に含めて支払わなければなりません。
つまり、裁量労働制では残業代が発生しないのではなく、「残業代」という名目で別途賃金は支払われないが、残業にあたる分の賃金はあらかじめ給与に含めて支払わなければならないということです。
また、みなし労働時間が8時間以内であっても、実際の労働時間がそれを超えていた場合は賃金が未払いになるため、みなし労働時間と実労働時間に乖離が起きていないかを常に確認することが大切です。
ただし、22時~5時に労働する「深夜労働」と法定休日に労働する「休日出労働」に関しては裁量労働制であっても一般の労働者と同様に「基礎賃金×0.25」の深夜手当と「基礎賃金×1.35」の休日手当を算定し別途支払う必要があります。
4. 裁量労働制の残業時間の上限に関する注意点
4-1. 実際の労働時間とみなし労働時間に乖離が起きていないか確認する
裁量労働制を導入するためには、企業側・従業員側の双方に注意点があります。
みなし労働時間を何時間とするかについて話し合い、具体的な内容を定めて労働基準監督署に届け出を提出する必要があります。
ここで重要になるのが、「みなし労働時間と実労働時間に乖離がないか確認する」ことです。裁量労働制を導入している企業で見受けられる事象に、みなし労働と実務時間の乖離があります。
実際、みなし労働時間が8時間と定められているのに対して、実労働時間の平均が10時間となっています。みなし労働時間を8時間を超えて設定するためには、一般労働者と同様に36協定を締結する必要があります。
また、1日あたり8時間分として給与を支払っていても、実労働時間と乖離が起きていると、8時間を超えた分の給与を支払っていないことになるため、みなし労働時間と実労働時間に乖離がないかを確認することは必須です。
以上のことから、裁量労働制を導入する場合は、法律で定められた労働時間の限度を守りつつ、みなし労働時間と実労働時間の乖離が起きないように設定することが大切です。
【関連記事】裁量労働制の従業員の打刻管理で注意すべき2つのこと
4-2. 働き方改革により、裁量労働制であっても労働時間の把握が必須に
働き方改革関連法では裁量労働制を適用していても、従業員の労働時間の状況を客観的に把握するよう、企業に義務づけています。
従来は「みなし労働時間で働く労働者や管理監督者については残業代は関係ないから労働時間は把握しない」といったような状態も、曖昧な状況のまま黙認されてきました。
しかし、長時間労働による過労死や精神疾患のリスクは残業代の支払義務の有無に関わらず、管理監督者や裁量労働制の適用者の場合も直面します。
そこで、労働時間の把握は、単に残業代の計算という面だけではなく、健康管理という側面も重要視し、労働時間を客観的に把握することが法的義務になりました。
4-3. 裁量労働制は適用職種が限られる
5. 裁量労働制における残業時間の上限をまとめて理解しておこう
働き方の多様化に伴い、フレックス制度、みなし残業、高度プロフェッショナル制度など、さまざまな制度が実践されてきています。裁量労働制もその一つであるものの、理解が十分に浸透していない部分がたくさんある制度といえるでしょう。
労使間のトラブルを未然に防ぐために、本記事の内容をきちんと理解しておきましょう。
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