同一労働同一賃金で賞与はどうなる?判断基準と見直し方 - ジンジャー(jinjer)|統合型人事システム

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同一労働同一賃金で賞与はどうなる?判断基準と見直し方 - ジンジャー(jinjer)|統合型人事システム

同一労働同一賃金で賞与はどうなる?判断基準と見直し方

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同一労働同一賃金では、賞与も待遇のひとつとして対象となります。正社員とパート・アルバイト・契約社員などの間で賞与に差を設ける場合、企業は「均衡待遇」および「均等待遇」の考え方に基づき、その違いについて合理的に説明できることが求められます。

そのため、非正規社員であることだけを理由に一律で「賞与なし」とする取り扱いは、不合理と判断される可能性があります。

本記事では、同一労働同一賃金における賞与の考え方や、2026年10月施行のガイドライン改正のポイント、判例を踏まえた判断基準、賞与制度や就業規則・賃金規程の見直しポイントについて解説します。

労務リスクに備える。 「同一労働同一賃金」対応の再点検を

意図せず不合理な待遇差を放置してしまうと、思わぬ労使トラブルに発展する可能性があります。
企業の信頼性を守るためにも、客観的な視点での定期的な見直しが不可欠です。

◆押さえておくべき法的ポイント

  • 「均衡待遇」と「均等待遇」の判断基準
  • 企業に課される「待遇に関する説明義務」の範囲
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1. 同一労働同一賃金では賞与も対象になる

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同一労働同一賃金は、働き方の多様化が進む中で、正規・非正規間の不合理な待遇差をなくすための重要な考え方です。賞与も基本給や各種手当と同様に「待遇」のひとつであり、不合理な待遇差の解消の対象となります。

ここでは、賞与に同一労働同一賃金が適用される根拠と、2026年10月1日に施行されるガイドラインの改正について解説します。

関連記事:同一労働同一賃金とは?法改正の背景・目的や不合理な待遇差の禁止についてわかりやすく解説

1-1. 賞与への同一労働同一賃金の適用はいつから?

同一労働同一賃金とは、正規社員(無期雇用フルタイム労働者)と非正規社員(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者、嘱託社員、契約社員)との間にある不合理な待遇差の解消を図る考え方です。異なる雇用形態でも、職務の内容と、職務内容・配置の変更範囲が同じ場合は均等待遇が求められ、違いがある場合も、その違いに応じた均衡待遇が求められます。

非正規社員の割合は年々増加しており、2024年時点で全雇用者数の4割近くを占めています。多様で柔軟な働き方の選択肢を広げるには待遇差の解消が不可欠であることから、2020年4月にパートタイム・有期雇用労働法によって同一労働同一賃金が法整備されました(中小企業への適用は2021年4月から)。

この法律は、通常の労働者との間で「均衡待遇」と「均等待遇」の実現を目指すものです。派遣労働者には、労働者派遣法に基づく同一労働同一賃金のルールが2020年4月から適用されています。

なお、同一労働同一賃金が掲げる「不合理な待遇差の解消」には、労働者に支払う基本給や各種手当のほか、毎年の賞与も含まれます。そのため、賞与に関しても同一労働同一賃金の考え方に照らしあわせて、設定や見直しをする必要があります。

参考:「非正規雇用」の現状と課題|厚生労働省

関連記事:同一労働同一賃金はいつから適用された?ガイドラインの考え方や対策について

1-2. 賞与は一律同額ではなく貢献・職務・配置変更範囲で判断

同一労働同一賃金というと、非正規社員にも正社員と同額の賞与を支給しなければならないと誤解されがちですが、そうではありません。企業に求められるのは、次の「均衡待遇」と「均等待遇」の2つの考え方に基づいた対応です。

【均衡待遇】

事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。

引用:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律 第八条(不合理な待遇の禁止)|e-Gov法令検索

【均等待遇】

事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者(第十一条第一項において「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。

引用:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律 第九条(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止)|e-Gov法令検索

つまり、職務の内容や配置の変更の範囲などが正社員と同一であれば同一の賃金を(均等待遇)、違いがある場合はその違いに応じたバランスのとれた賃金を(均衡待遇)支給することが求められます。

「賞与」について、厚生労働省の同一労働同一賃金ガイドラインでは、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給するものであれば、同一の貢献には同一の、違いがあれば違いに応じた支給をおこなわなければならないとしています。賞与の待遇差は「雇用形態」で決めるのではなく、貢献度・職務内容・配置変更の範囲といった実態に照らして判断する、というのが基本的な考え方です。

参考:同一労働同一賃金特集ページ|厚生労働省

関連記事:同一労働同一賃金で業務における責任の程度はどう変化する?

1-3. 2026年10月1日からガイドライン等が改正

同一労働同一賃金の施行から5年が経過したことを踏まえ、労働政策審議会の同一労働同一賃金部会で見直しの議論がおこなわれ、2026年4月28日に改正省令・告示が公布されました。施行・適用は2026年(令和8年)10月1日です。

主な改正事項は次の3つです。

  • 雇い入れ時の労働条件明示事項の追加(省令):待遇差の内容・理由等について「説明を求めることができる旨」の明示が義務化
  • 同一労働同一賃金ガイドラインの改正(告示):最高裁判例の蓄積を踏まえ、賞与・退職手当・家族手当などの記載を追加・充実
  • 雇用管理の改善等に関する措置内容の改正(告示):待遇差の説明に対応するための体制整備や、労使コミュニケーションの充実などを規定

参考:リーフレット「パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります」|厚生労働省

このうち、同一労働同一賃金ガイドラインの賞与の項目には、長澤運輸事件最高裁判決を踏まえて次の注記が追加されました。

(注)

賞与については、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的として、労務の対価の後払い、功労報償、生活費の補助、労働者の労働意欲の向上等のさまざまな性質及び目的が含まれうるものであるが、通常の労働者と同様に短時間・有期雇用労働者にも当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的が妥当するにもかかわらず、短時間・有期雇用労働者に対し、通常の労働者との間の職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものの相違に応じた均衡のとれた内容の賞与を支給せず、かつ、その見合いとして、労使交渉を経て、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的が妥当しない他の短時間・有期雇用労働者に比べ基本給を高く支給している等の事情もない場合、当該賞与の相違は不合理と認められるものに当たりうることに留意すべきである。

引用:同一労働同一賃金ガイドライン 新旧対照表(解説付き)P16-17|厚生労働省

改正後のガイドラインは2026年10月1日から適用されるため、企業は施行までに、自社の賞与の性質・目的の整理と待遇差の点検を進めておく必要があります。

参考:令和8年改正の概要|厚生労働省

2. 賞与の待遇差を判断する4つのポイント

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賞与の待遇差が不合理かどうかは、個々の待遇ごとに、その性質・目的に照らして判断されます。実務では、次の4つのポイントに沿って自社の賞与制度を点検すると整理しやすくなります。

2-1. 賞与の性質・目的

まず確認すべきなのは、自社の賞与が「何のために支給されているのか」ということです。

2026年10月施行の同一労働同一賃金ガイドラインでは、賞与には次のようなさまざまな性質・目的があり得ることが示されています。

  • 労務の対価の後払い
  • 功労報償
  • 生活費の補助
  • 労働者の労働意欲の向上 など

例えば、賞与が「会社への貢献に報いること」を目的としている場合、正社員と非正規社員で貢献度に大きな違いがなければ、非正規社員だけ賞与を支給しないことは不合理な待遇差と判断される可能性があります。

一方、賞与の目的と待遇差との間に合理的な関係が認められる場合には、支給額や支給率に違いを設けることが認められるケースもあります。

そのため、まずは自社の賞与が何を目的としている制度なのかを整理し、就業規則や賃金規程にも明確に定めることが重要です。

2-2. 職務内容・責任の程度

賞与の待遇差を判断する際には、職務内容や責任の程度も重要な判断要素となります。

担当業務そのものが同じでも、売上目標やノルマの有無、クレーム・トラブル発生時の対応義務、決裁権限の範囲、マネジメント責任などに違いがあれば、その違いに応じて賞与額に差を設けることには、合理性が認められる場合があります。

一方で、正社員と非正規社員がほぼ同じ業務を担い、同等の責任を負っている場合、賞与の大きな差を職務内容の違いで説明することはできません。肩書や雇用区分ではなく、実態ベースでの比較が重要です。

関連記事:同一労働同一賃金で業務における責任の程度はどう変化する?

2-3. 配置変更の範囲

人材活用の仕組みや配置変更の範囲も、待遇差を判断する際の重要な要素です。

例えば、正社員には全国・全事業所への転勤や職種変更、昇進・昇格を前提とした配置転換が予定されている一方で、勤務地や職務が限定された従業員では、人材活用の範囲に違いがあると考えられます。

ただし、「正社員は将来さまざまな役割を期待している」といった抽象的な理由だけでは十分ではありません。2026年改正のガイドラインでは、待遇差の根拠となる人材活用の違いは、客観的・具体的な実態に基づいて判断すべきことが明確化されています。制度上の建前ではなく、運用の実態が問われることに注意しましょう。

2-4. 貢献度・成果・評価基準

賞与が業績や成果への報奨として支給される場合には、貢献度や成果、評価基準も重要な判断要素になります。

例えば、個人の業績評価や目標達成度、会社への貢献度に応じて賞与額を決定している場合には、その評価基準が正社員と非正規社員でどのように異なるのかを説明できる必要があります。

評価制度が異なる場合でも、その違いに合理性があり、賞与額にも適切に反映されていれば、不合理な待遇差には当たらないケースがあります。一方で、評価方法が不明確であったり、雇用形態だけを理由に一律で支給率を低く設定したりしている場合には、合理的な説明が難しくなる可能性があります。

そのため、賞与の支給要件や評価基準、算定方法を就業規則や賃金規程に明記するとともに、従業員から説明を求められた際に根拠を示せる状態にすることが重要です。

3. 賞与なし・賞与格差が問題になりやすいケース

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ここでは、実際に不合理な待遇差と判断されやすい典型的なケースを4つ紹介します。自社に当てはまるものがないか確認してみましょう。

3-1. 正社員には全員支給し、パート・契約社員には支給していない

ガイドラインでは、賞与について、職務の内容や会社の業績等への貢献等にかかわらず正社員全員に何らかの賞与を支給している一方で、短時間・有期雇用労働者には支給していないケースを「問題となる例」として明示しています。

貢献にかかわらず全員に支給しているということは、その賞与は実態として生活費の補助や労務の対価の後払いといった性質をもっていると考えられ、その性質は非正規社員にも当てはまるためです。「パートだから賞与なし」「契約社員だから賞与なし」という雇用形態のみを理由とする一律の取り扱いは、最もリスクの高いパターンといえます。

3-2. 同じ貢献があるのに賞与額・支給率が異なる

非正規社員にも賞与を支給していれば安心、というわけではありません。正社員と同一の貢献がある非正規社員に対して、合理的な理由なく賞与額や支給率、算定基礎に差を設けている場合も、不合理な待遇差と判断される可能性があります。

例えば、同じ目標を達成したにもかかわらず支給月数が一律に低く設定されている、算定期間や評価プロセスが説明できない形で異なっている、といったケースです。差を設ける場合は、職務内容・責任・評価基準の違いなど、差の程度に見合った根拠を示せるようにしておく必要があります。

3-3. 再雇用・嘱託社員に支給しない理由を説明できない

定年後再雇用の嘱託社員についても、パートタイム・有期雇用労働法の適用を受けるため、賞与を含む待遇差の点検が必要です。

定年後再雇用であることは、待遇差の不合理性を判断するうえで考慮され得ますが、改正後のガイドラインでは、定年後に継続雇用された者であることのみをもって、直ちに待遇差が不合理でないと認められるわけではないことが明記されました。

再雇用後に職務内容や責任、配置変更の範囲がどう変わったのかを整理し、賞与を不支給・減額とする理由を個々の待遇ごとに説明できるようにしておきましょう。

関連記事:同一労働同一賃金における60歳以上の定年後再雇用の扱いとは

3-4. 派遣社員の賞与相当分を確認していない

派遣社員の賃金は、派遣元が採用する方式によって賞与の扱いが異なります。派遣元が「派遣先均等・均衡方式」を採用する場合、派遣先の通常の労働者との間で、賞与を含めた待遇について不合理な差を設けてはなりません。

一方、「労使協定方式」を採用する場合は、同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金水準(賞与相当分を含む)と同等以上となるように賃金を決定する必要があります。つまり、どちらの方式でも、賞与相当分を無視した賃金設定は認められません。

派遣先企業にも、比較対象となる労働者の待遇情報を派遣元に提供する義務があります。派遣社員を受け入れている企業は、派遣元がどちらの方式を採用しているか、賞与相当分が賃金にどのように反映されているかを確認しておきましょう。

関連記事:労使協定方式とは?均等均衡方式との違いや派遣労働者の賃金水準を解説

4. 賞与の待遇差に関する判例・ガイドラインの考え方

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賞与の待遇差が争われた代表的な判例と、ガイドラインに示された具体例を確認しておくと、自社の制度を点検する際の物差しになります。

4-1. 【判例】大阪医科薬科大学事件で確認すべきポイント

同一労働同一賃金における賞与の代表的な判例として、大阪医科薬科大学事件(令和2年10月13日判決)があります。これは、大学で勤務していたアルバイト職員に賞与が支給されていなかったことの合理性が争われた事案です。

最高裁は、正職員に対する賞与について、業務への貢献に対する評価だけでなく、将来にわたる継続勤務への期待や人材確保の趣旨も含まれると整理しました。

そのうえで、アルバイト職員は契約期間に定めがあり、職務内容や責任の範囲、人材活用の仕組みに一定の違いがあることなどを踏まえ、賞与を支給しないことが直ちに不合理とはいえないと判断しました。

ただし、この判決は「非正規社員には賞与を一律で支給しなくて良い」と認めたものではありません。改正後のガイドラインでは、「正社員人材の確保・定着を図る目的」があることのみをもって直ちに待遇差が不合理でないとは認められないことが明確化されたため、人材確保の趣旨を理由とする説明は、従来より通用しにくくなるでしょう。

企業ごとに、賞与をどのような目的で支給する制度なのかを明確にし、その内容に応じて待遇差を説明できるようにしておくことが重要です。

参考:学校法人大阪医科薬科大学(旧大阪医科大学)事件|全国労働基準関係団体連合会

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「大阪医科薬科大学事件で賞与の不支給が認められたから、うちもパートには賞与を支給しないで良いですよね」というご相談を今でもよく受けます。しかし、この判決だけを根拠に判断するのは危険です。

この判決は、職務や人材活用の仕組みに実態の違いがあったことが前提であり、さらに2026年10月以降は「正社員確保のため」という理由だけでは待遇差の合理性が十分でないことが明確化されています。

私はまず、比較対象となる正社員を設定し、業務内容・責任の程度・配置変更の範囲にどのような違いがあるのかを書き出していただくようお伝えしています。それでも待遇差を合理的に説明できない場合は、賞与の支給要件や評価基準、対象範囲そのものを見直すことを推奨します。

解説:社会保険労務士

4-2. ガイドラインで示された問題となる例・問題とならない例

2026年10月の改正後の同一労働同一賃金ガイドラインでは、同一労働同一賃金における賞与の扱いを次のように説明しています。

賞与であって、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給するものについて、通常の労働者と同一の貢献である短時間・有期雇用労働者には、貢献に応じた部分につき、通常の労働者と同一の賞与を支給しなければならない。また、貢献に一定の相違がある場合においては、その相違に応じた賞与を支給しなければならない。

引用:同一労働同一賃金ガイドライン|厚生労働省

ガイドラインに示された具体例を整理すると、次のようになります。

【問題とならない例】

  • 業績等への貢献に応じて賞与を支給している会社で、正社員と同一の貢献がある有期雇用労働者に、正社員と同一の賞与を支給している
  • 生産効率・品質の目標値に対する責任を負い、未達成の場合に待遇上の不利益を課される正社員には賞与を支給し、責任を負わず不利益も課されない労働者には、その見合いの範囲内で賞与を支給していない

【問題となる例】

  • 業績等への貢献に応じて賞与を支給している会社で、正社員と同一の貢献がある有期雇用労働者に、正社員と同一の賞与を支給していない
  • 正社員には職務内容や貢献等にかかわらず全員に何らかの賞与を支給しているが、短時間・有期雇用労働者には支給していない

このように、賞与の支給の有無や支給額は、雇用形態ではなく、賞与の性質・目的や職務内容、責任、貢献度などを踏まえて判断することが重要です。自社の賞与制度がガイドラインの考え方と整合しているかを定期的に確認し、待遇差について合理的に説明できる状態にしておきましょう。

5. 同一労働同一賃金に違反した賞与支給のリスク

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ここでは、賞与について不合理な待遇差がある場合に、企業が直面し得るリスクを、行政対応・労務トラブル・訴訟の観点から解説します。

関連記事:同一労働同一賃金の問題点と日本・海外との考え方の違いを解説!法改正の影響とは?

5-1. 直ちに刑事罰が科される制度ではない

パートタイム・有期雇用労働法では、正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間における不合理な待遇差を禁止しています。しかし、この規定に違反した場合であっても、直ちに罰金や拘禁刑などの刑事罰が課されるような直接的な罰則は設けられていません。

とはいえ、罰則がないからリスクがないわけではありません。不合理な待遇差は、次に説明する行政対応の対象となるほか、民事上は当該待遇差が無効と判断され、損害賠償請求につながる可能性があります。

5-2. 報告徴収・助言・指導・勧告の対象になり得る

不合理な待遇差の疑いがある場合、企業は都道府県労働局などによる報告徴収・助言・指導・勧告の対象になり得ます。労働者が労働局に相談したことをきっかけに、行政から報告を求められたり、制度の見直しを促されたりするケースは実務上珍しくありません。

特に、短時間・有期雇用労働者であることのみを理由として賞与を一律不支給とするなど、法令違反が明確な場合は、行政対応の対象になり得ます。厚生労働省は近年、パート・有期雇用労働者の基本給・賞与に関する見直し状況について、労働局によるヒアリングや回答依頼もおこなっており、行政の関心は高まっています。

また、行政から報告を求められた際に虚偽の報告をしたり、報告を拒んだりした場合には、20万円以下の過料が科される可能性があります。過料は刑事罰ではないものの、法令違反に対する制裁として企業に一定の負担やリスクをもたらすので注意しましょう。

参考:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第18条、第30条|e-Gov法令検索

5-3. 不合理な待遇差により訴訟に発展するリスクがある

賞与に不合理な差があると、従業員から未払い賞与や損害賠償を請求される可能性があります。特に賞与を「業績への貢献に対する報酬」として位置づけている場合には、非正規雇用の従業員についても、その貢献の程度に応じた支給が求められると判断されることがあります。

また、いきなり訴訟になるケースばかりではありません。実際には、次のような形でトラブルが表面化していきます。

  • 従業員から「なぜ賞与がないのか」「なぜ差があるのか」と説明を求められる(法律上、説明義務があります)
  • 社内の相談窓口や労働組合を通じて、待遇改善の要求や団体交渉に発展する
  • 従業員が都道府県労働局に相談し、行政による助言・指導や、調停などの紛争解決援助の手続きに進む
  • 退職した従業員から、在職中の賞与差額について請求を受ける

こうした段階で合理的な説明ができないと、不満が蓄積して訴訟に発展しやすくなります。訴訟に発展した場合、未払い分の支払いにとどまらず、企業イメージへの影響や採用・定着への悪影響、労務管理全体の見直し負担も生じるでしょう。

そのため、賞与制度については、就業規則や賃金規程において内容を明確に定めるとともに、支給基準についても合理性と納得感のある設計とすることが重要です。罰則の有無にかかわらず、同一労働同一賃金の考え方を踏まえた人事制度の整備を進めていくことが求められます。

当サイトでは、同一労働同一賃金の基礎知識や具体的な対応方法、リスクに備えて企業が準備すべきことを、図を用いながら解説した資料を無料で配布しております。自社の同一労働同一賃金の対応で不安な点があるご担当の方は、こちらから「同一労働同一賃金 対応の手引き」の資料をダウンロードしてご覧ください。

関連記事:同一労働同一賃金の抜け道を探すのは危険?リスクや対応ポイントをわかりやすく解説

6. 同一労働同一賃金に違反しないための賞与の見直しポイント

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同一労働同一賃金への対応では、賞与の有無や支給額に差を設ける場合、その違いに合理的な説明ができることが重要です。ここでは、企業が実務上押さえておきたいポイントを紹介します。

6-1. 就業規則で賞与の位置づけや支給要件を明確化する

賞与制度を設けるにあたっては、まず就業規則や賃金規程において、当該賞与がどのような性質を有する賃金であるかを明確に定めておくことが重要です。例えば、業績への貢献に対する成果配分なのか、将来の勤務継続への期待を含むものなのか、あるいは一定期間の勤務に対する功労報酬なのかによって、支給の対象や基準の考え方が変わります。

改正後のガイドラインでは、賞与の性質・目的が待遇差の判断の起点になることが明確になっています。そのため、規程上も、支給対象者の範囲、支給要件、評価基準、算定期間、支給率の考え方を具体的に明記しておきましょう。制度の透明性が高まり、従業員に対する説明責任を果たしやすくなります。

なお、賞与は法令上支給が義務付けられているものではなく、制度の有無や内容については企業の裁量に委ねられています。ただし、一度制度として定めた場合には労働条件の一部となるので、その変更にあたっては、合理的な理由の有無が問われることがあります。

特に、同一労働同一賃金に対応するために正社員の賞与を廃止・減額する方法については、改正後のガイドラインで、労使の合意なく通常の労働者の待遇を引き下げることは望ましい対応とはいえないことが改めて整理されており、注意が必要です。

正社員と非正規社員で職務内容などが異なる場合には、規程を分けて整理することも有効です。

関連記事:同一労働同一賃金で就業規則の見直しは必要?待遇差の要素や注意点

6-2. 賞与に差を設ける場合は合理性を確認して説明できる状態にしておく

正社員とパートタイマー、契約社員との間で賞与に差を設ける場合は、その賞与の目的や性質を踏まえたうえで、職務の内容や配置変更の範囲などに照らして、不合理な待遇差とならないことが求められます。

また、非正規雇用労働者から求めがあった場合には、正社員との待遇差の内容やその理由について説明する義務があります(パートタイム・有期雇用労働法第14条)。2026年10月の改正では、雇い入れ時の労働条件明示事項に「説明を求めることができる旨」が追加されるため、従業員が説明を求めやすくなり、企業が説明を求められる場面は今後増えると考えられます。

さらに、十分な説明をおこなわなかった事実自体が、待遇差の不合理性を基礎づける事情として考慮されうることも明記されました。「将来の役割期待が異なるため」といった抽象的な説明では足りず、客観的・具体的な実態に基づく説明が必要です。

そのため、賞与に差を設ける場合は、あらかじめ理由や判断基準を社内で整理し、従業員から説明を求められた際に客観的に説明できる資料や考え方を準備しておくことが重要です。なお、説明を求めたことを理由に減給や解雇などの不利益な取り扱いをすることは禁止されているのであわせて注意が必要です。 

参考:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第14条|e-Gov法令検索

関連記事:同一労働同一賃金の説明義務はどう強化された?注意点や説明方法も解説

6-3. 労働条件の内容と実態に乖離がないか定期的に点検する

賞与制度が同一労働同一賃金の考え方に沿って合理的に設計されていたとしても、実際の業務内容や責任範囲に変化が生じている場合には、その合理性を支える根拠が弱まるおそれがあります。

例えば、パート従業員が正社員とほぼ同等の業務を担い、責任も拡大しているにもかかわらず、賞与に大きな差が設けられている場合、その相違は不合理と判断される可能性があるでしょう。

そのため、職務内容や配置変更の有無などについて定期的に確認し、制度と現場の実態に乖離が生じていないかを点検することが重要です。あわせて、労働条件通知書・雇用契約書や就業規則についても現状に即して見直すことで、法改正や判例の動向にも柔軟に対応しやすくなります。

関連記事:同一労働同一賃金の抜け道を探すのは危険?リスクや対応ポイントをわかりやすく解説

7. 同一労働同一賃金での賞与の扱いを知り、説明できる制度にしよう

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同一労働同一賃金への対応において、賞与は基本給や手当と同様に「不合理な待遇差の解消」の対象となります。企業は「均衡待遇」と「均等待遇」の考え方に基づき、職務内容などが正社員と同一であれば同一の支給を、相違がある場合でもその度合いに応じた合理的な支給をおこなう必要があります。

貢献度が同程度であれば非正規雇用労働者にも同等の支給が求められ、一律に「賞与なし」とすることは違法と判断されるリスクがあります。

2026年10月1日からは改正ガイドライン等が適用され、賞与の性質・目的に基づく点検や、待遇差に関する説明の重要性が一段と高まります。就業規則・賃金規程で賞与の性質や支給要件を明確化し、待遇差がある場合は客観的に説明できる根拠を整え、実態に即した定期的な点検をおこなうことが大切です。従業員に説明できる賞与制度を整備していきましょう。

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