同一労働同一賃金で賞与はどうなる?就業規則や罰則についても解説
更新日: 2023.9.1
公開日: 2022.1.20
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2018年6月29日に働き方改革関連法が成立し、「同一労働同一賃金」の原則が整備されました。今後は雇用形態によらず、同じ仕事をしている労働者に対して同じ賃金を支払う必要があります。
ここでいう賃金には、基本給や各種手当だけでなく、夏のボーナスや冬のボーナスなどの「賞与」もふくまれます。厚生労働省の調べによると、2021年の夏季賞与の一人当たり平均金額は前年比0.8%減の380,268円。[注1]
今後、同一労働同一賃金の考え方に基づき、賞与の支払いをどのように考えていけばよいのでしょうか。
この記事では、同一労働同一賃金における賞与の扱いや、就業規則の変更が必要な箇所、同一労働同一賃金に違反した場合の罰則についてわかりやすく解説します。
[注1] 厚生労働省:毎月勤労統計調査 令和3年9月分結果速報等
▼そもそも「同一労働同一賃金とは?」という方はこちら
同一労働同一賃金とは?適用された理由やメリット・デメリットについて
目次
1. 同一労働同一賃金で賞与はどうなる?厚生労働省の見解に基づき解説
厚生労働省のホームページによると、同一労働同一賃金は「同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)との間の不合理な待遇差の解消を目指すもの」と説明されています。[注2]この「不合理な待遇差の解消」には、労働者に支払う基本給や各種手当のほか、毎年の賞与もふくまれます。
ここでは、同一労働同一賃金の導入によって賞与の扱いがどのように変わるのか、厚生労働省の見解に基づいて解説します。
[注2] 厚生労働省:同一労働同一賃金特集ページ
1-1. 同一労働同一賃金の均衡待遇・均等待遇の考え方
厚生労働省によると、企業は正社員と非正規雇用労働者の不合理な待遇差を解消するため、均衡待遇・均等待遇の2つの条件を満たす必要があります。
つまり、同一労働同一賃金では、職務の内容などが同一であれば同一の賃金を(均等待遇)、職務の内容などが異なる場合は合理的でバランスのとれた待遇差を(均衡待遇)付与することが求められます。[注3]
この「賃金」には、「基本給、賞与その他の待遇」がふくまれます。したがって、賞与の支払いについても、企業は均衡待遇・均等待遇の考え方に従う必要があります。
[注3] 厚生労働省:同一労働同一賃金について
1-2. 同一労働同一賃金に基づいて「貢献に応じた支給」が必要
厚生労働省のガイドラインでは、同一労働同一賃金における賞与の扱いを次のように説明しています。[注4]
ボーナス(賞与)であって、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給するものについては、同一の貢献には同一の、違いがあれば違いに応じた支給を行わなければならない。
とくに派遣労働者の場合は、派遣元の企業が派遣先労働者と同等の賞与を支払う必要があります。同一労働同一賃金の導入によって、今後は雇用形態によらず、労働者の職務の内容などに応じて賞与を支給しなければならないことを覚えておきましょう。
[注4] 厚生労働省:同一労働同一賃金ガイドライン
関連記事:同一労働同一賃金で業務における責任の程度はどう変化する?
関連記事:労使協定方式や同一労働同一賃金における派遣会社の責任について
2. 同一労働同一賃金で就業規則はどう変わる?法改正の2つのポイントを解説
賞与の支払いについて就業規則に記載している場合、同一労働同一賃金に対応した内容のものに改定しなければならない可能性があります。ここでは、同一労働同一賃金を踏まえた、就業規則の2つのポイントを解説します。
2-1. そもそも賞与の支払いは就業規則に記載しなくてもいい
そもそも、賞与の支払いは「相対的必要記載事項」に該当し、就業規則に記載しなければならない事項ではありません。相対的必要記載事項として、たとえば次のようなものがあります。[注5]
- 退職手当に関する事項
- 臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項
- 食費、作業用品などの負担に関する事項
- 安全衛生に関する事項
- 職業訓練に関する事項
- 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
- 表彰、制裁に関する事項
- その他全労働者に適用される事項
しかし、労働者と個別に締結した労働契約書に賞与の取り決めがある場合や、慣例として賞与の支給を行っている場合は、同一労働同一賃金への対応が必要です。
[注5] 厚生労働省:就業規則を作成しましょう
2-2. 非正規雇用労働者を支給対象外にはできない
賞与の支払いを就業規則に記載している場合、注意点が1つあります。
それは、就業規則に「非正規雇用労働者(パートやアルバイト)に賞与を支給しない」といった内容の記載がある場合、同一労働同一賃金の考え方に違反する可能性がある点です。
同一労働同一賃金では、雇用形態によらず、労働者の職務の内容などに応じて賞与を支給しなければなりません。
就業規則はあくまでも全社員を対象としたものであり、「パート・アルバイトは一律で支給対象外とする」といった書き方は、労働者に不合理な待遇差ととらえられるリスクがあります。ただし、職務の内容に応じた合理的な待遇差(均衡待遇)であれば認められます。
そのため、正社員やパート・アルバイトで職務の内容が異なる場合は、就業規則を分けて作成することにより、賞与の支給についての誤解を防ぐことができます。
3. 同一労働同一賃金の罰則は?違反した場合の2つのリスク
もし同一労働同一賃金の罰則に違反した場合、なんらかの罰則が課されるのでしょうか。
実はパートタイム・有期雇用労働法において、企業が同一労働同一賃金を守らなかった場合の罰金や科料は決められていません。しかし、同一労働同一賃金に違反し、不合理な待遇差を設けた場合、企業は2つのリスクを負うことになります。
- 優秀な人材が他社に流れるリスク
- 不合理な待遇差により訴訟に発展するリスク
不合理な待遇差が是正されないままだと、労働者が現状の待遇に不満を持ち、現場を動かす人材が外部に流出するリスクがあります。
また、より注意が必要なのが、訴訟に発展するリスクです。労働者が不合理な待遇差を裁判所に訴え出て、損害賠償が認められた判例も過去に存在します。
罰則がないからといって同一労働同一賃金を遵守しないのではなく、「人材の流出リスク」「損害賠償リスク」の2つのリスクに備えて、同一労働同一賃金の実現に向けた人事制度の整備に取り組みましょう。
4. 同一労働同一賃金での賞与の扱いを知り、就業規則の変更を
同一労働同一賃金の導入により、基本給だけでなく賞与の扱いも変わります。今後は労働者の雇用形態によらず、職務の内容などに応じて賞与を支払わなければなりません。
賞与の支払いについて就業規則に記載している場合は、抜本的な見直しが必要な可能性があります。同一労働同一賃金での賞与の扱いを知り、就業規則の変更もふくめた対応を行いましょう。
関連記事:同一労働同一賃金で就業規則の見直しは必要?待遇差の要素や注意点
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