同一労働同一賃金で賞与はどうなる?契約社員やパートを賞与なしにするリスク
更新日: 2026.6.1 公開日: 2022.1.20 jinjer Blog 編集部

同一労働同一賃金の考え方により、正規・非正規雇用間における不合理な待遇差の解消が求められており、賞与もその対象に含まれます。企業は「均衡待遇」および「均等待遇」の原則に基づき、待遇差について合理的な説明ができる必要があります。
そのため、賞与制度がある場合でも、単に非正規社員であることを理由に一律で「賞与なし」とする取り扱いは、不合理と判断される可能性があります。本記事では、同一労働同一賃金に基づく賞与支給の考え方や、違反と判断された場合の訴訟リスク、判例を踏まえた実務上の留意点を解説します。
▼そもそも「同一労働同一賃金とは?」という方はこちら
同一労働同一賃金とは?法改正の背景・目的や不合理な待遇差の禁止についてわかりやすく解説
目次
意図せず不合理な待遇差を放置してしまうと、思わぬ労使トラブルに発展する可能性があります。
企業の信頼性を守るためにも、客観的な視点での定期的な見直しが不可欠です。
◆押さえておくべき法的ポイント
- 「均衡待遇」と「均等待遇」の判断基準
- 企業に課される「待遇に関する説明義務」の範囲
- 万が一の紛争解決手続き「行政ADR」の概要
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1. 同一労働同一賃金で賞与はどうなる?厚生労働省の見解に基づき解説


同一労働同一賃金は、働き方の多様化が進む中で、正規・非正規間の不合理な待遇差をなくす重要な考え方です。特に賞与の支給についても、これまで以上に公正な対応が求められるようになりました。
ここでは、同一労働同一賃金の導入によって賞与の扱いがどのように変わるのか、厚生労働省の見解に基づいて解説します。
1-1. 賞与への同一労働同一賃金の適用はいつから?
同一労働同一賃金とは、正規社員(無期雇用フルタイム労働者)と非正規社員(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者、嘱託社員、契約社員)との間にある不合理な待遇差の解消を図る考え方です。異なる雇用形態でも仕事の内容が同じであれば、待遇も同じ内容にすることを目指しています。
非正規社員の割合は年々増加しており、2024年時点で全雇用者数の4割近くを占めています。多様で柔軟な働き方の選択肢を広げるには待遇差の解消が不可欠であることから、2020年4月にパートタイム・有期雇用労働法によって同一労働同一賃金が法整備されました(中小企業への適用は2021年4月から)。この法律は、通常の労働者との間で「均衡待遇」と「均等待遇」の実現を目指すものです。
なお、同一労働同一賃金が掲げる「不合理な待遇差の解消」には、労働者に支払う基本給や各種手当のほか、毎年の賞与もふくまれます。そのため、賞与に関しても同一労働同一賃金の考え方に照らしあわせて、設定や見直しをする必要があります。
参考:同一労働同一賃金特集ページ|厚生労働省
参考:「非正規雇用」の現状と課題|厚生労働省
関連記事:同一労働同一賃金はいつから適用された?ガイドラインの考え方や対策について
1-2. 同一労働同一賃金の均衡待遇・均等待遇の考え方
厚生労働省では、正社員と非正規雇用労働者の間に不合理な待遇差が生じないよう、企業に対して次の「均衡待遇」と「均等待遇」の2つの考え方に基づいた対応を求めています。
【均衡待遇】
事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない
【均等待遇】
事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者(第十一条第一項において「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない
つまり、同一労働同一賃金では、職務の内容などが同一であれば同一の賃金を(均等待遇)、職務の内容などが異なる場合は合理的でバランスのとれた待遇差を(均衡待遇)付与することが求められます。
この「賃金」には、「基本給、賞与その他の待遇」がふくまれます。したがって、賞与の支払いについても、企業は均衡待遇・均等待遇の考え方に従う必要があります。
関連記事:同一労働同一賃金で業務における責任の程度はどう変化する?
1-3. 同一労働同一賃金ガイドラインに基づいて「貢献に応じた支給」が必要
厚生労働省のガイドラインでは、同一労働同一賃金における賞与の扱いを次のように説明しています。
ボーナス(賞与)であって、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給するものについては、同一の貢献には同一の、違いがあれば違いに応じた支給を行わなければならない。
つまり、賞与が「業績への貢献度」を評価基準として支給される制度である場合、正社員とパートタイマー・有期雇用労働者との間で、貢献度が同程度であれば同等の支給が必要となり、差がある場合でもその違いに見合った範囲で支給額を設定することが求められます。
そのため、貢献内容に大きな差がないにもかかわらず、正社員には一律に「賞与あり」、非正規雇用労働者には一律に「賞与なし」とする取り扱いは、違法と判断される可能性が高いでしょう。
また、派遣労働者については、派遣元が「派遣先均等・均衡方式」を採用する場合、派遣先の通常の労働者との間で、賞与を含めた待遇について不合理な差を設けてはなりません。一方、「労使協定方式」を採用する場合は、同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(賞与相当額を含む)と同等以上となるように待遇を確保する必要があります。
関連記事:労使協定方式とは?均等均衡方式との違いや派遣労働者の賃金水準を解説
1-4. 【事例】大阪医科薬科大学事件最高裁判決
同一労働同一賃金における賞与の代表的な判例として、大阪医科薬科大学事件(令和2年10月13日判決)があります。これは、大学で勤務していたアルバイト職員に賞与が支給されていなかったことの合理性が争われた事案です。
最高裁は、正職員に対する賞与について、業務への貢献に対する評価だけでなく、将来にわたる継続勤務への期待や人材確保の趣旨も含まれると整理しました。
そのうえで、アルバイト職員は契約期間に定めがあり、職務内容や責任の範囲、人材活用の仕組みに一定の違いがあることなどを踏まえ、賞与を支給しないことが直ちに不合理とはいえないと判断しました。
ただし、この判決は非正規雇用労働者への賞与を一律に不要と認めたものではありません。企業ごとに、賞与をどのような目的で支給する制度なのかを明確にし、その内容に応じて待遇差を説明できるようにしておくことが重要です。
参考:学校法人大阪医科薬科大学(旧大阪医科大学)事件|全国労働基準関係団体連合会
2. 同一労働同一賃金に違反した賞与支給に対する罰則は?


ここでは、同一労働同一賃金に違反する賞与支給をおこなった場合に想定される罰則や、企業が直面し得るリスクについて詳しく解説します。
2-1. 直接的な罰則規定はなし
パートタイム・有期雇用労働法では、正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間における不合理な待遇差を禁止しています。しかし、この規定に違反した場合であっても、直ちに罰金や拘禁刑などの刑事罰が課されるような直接的な罰則は設けられていません。
とはいえ、違反があった場合に何の影響もないわけではありません。まず、行政による助言・指導の対象となり、必要に応じて報告を求められることがあります。これは、企業に対して自主的な改善を促すための重要なプロセスです。
さらに、報告を求められた際に虚偽の報告をしたり、報告を拒んだりした場合には、20万円以下の過料が課される可能性があります。過料は刑事罰ではないものの、法令違反に対する制裁として企業に一定の負担やリスクをもたらすので注意しましょう。
参考:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第18条、第30条|e-Gov法令検索
関連記事:同一労働同一賃金の問題点と日本・海外との考え方の違いを解説!法改正の影響とは?
2-2. 不合理な待遇差により訴訟に発展するリスクがある
直接的な罰則がなくとも、賞与に不合理な差があると、従業員から未払い賞与や損害賠償を請求される可能性があります。特に賞与を「業績への貢献に対する報酬」として位置づけている場合には、非正規雇用の従業員についても、その貢献の程度に応じた支給が求められると判断されることがあります。
また、こうした問題が訴訟に発展した場合、未払い分の支払いにとどまらず、企業イメージへの影響や労務管理の見直しが必要となる可能性もあるでしょう。結果として、従業員の不満が高まり、人材の定着に影響を及ぼすことも考えられます。
そのため、賞与制度については、就業規則や賃金規程において内容を明確に定めるとともに、支給基準についても合理性と納得感のある設計とすることが重要です。罰則の有無にかかわらず、同一労働同一賃金の考え方を踏まえた人事制度の整備を進めていくことが求められます。
当サイトでは、同一労働同一賃金の基礎知識や具体的な対応方法、リスクに備えて企業が準備すべきことを、図を用いながら解説した資料を無料で配布しております。自社の同一労働同一賃金の対応で不安な点があるご担当者様は、こちらから「同一労働同一賃金 対応の手引き」の資料をダウンロードしてご確認ください。
3. 同一労働同一賃金に違反しないための賞与支給のポイント


同一労働同一賃金への対応では、賞与の有無や支給額に差を設ける場合、その違いに合理的な説明ができることが重要です。ここでは、企業が実務上押さえておきたいポイントを紹介します。
3-1. 就業規則で賞与の位置づけや支給要件を明確化する
賞与制度を設けるにあたっては、まず就業規則や賃金規程において、当該賞与がどのような性質を有する賃金であるかを明確に定めておくことが重要です。例えば、業績への貢献に対する成果配分なのか、将来の勤務継続への期待を含むものなのか、あるいは一定期間の勤務に対する功労報酬なのかによって、支給の対象や基準の考え方が変わります。
なお、賞与は法令上支給が義務付けられているものではなく、制度の有無や内容については企業の裁量に委ねられています。ただし、一度制度として定めた場合には労働条件の一部となるので、その変更にあたっては、合理的な理由の有無が問われることがあります。例えば、同一労働同一賃金に対応するため、正社員の賞与を廃止したり、減額したりする場合は要注意です。
さらに、支給対象者の範囲や算定方法、評価基準などを具体的に明記しておくことで、制度の透明性を高め、従業員に対する説明責任を果たしやすくなります。正社員と非正規社員で職務内容などが異なる場合には、規程を分けて整理することも有効です。
関連記事:同一労働同一賃金で就業規則の見直しは必要?待遇差の要素や注意点
3-2. 賞与に差を設ける場合は合理性を確認して説明できる状態にしておく
正社員とパートタイマー、契約社員との間で賞与に差を設ける場合は、その賞与の目的や性質を踏まえたうえで、職務の内容や配置変更の範囲などに照らして、不合理な待遇差とならないことが求められます。
また、非正規雇用労働者から求めがあった場合には、正社員との待遇差の内容やその理由について説明する義務があります(パートタイム・有期雇用労働法第14条)。
そのため、賞与に差を設ける場合は、あらかじめ理由や判断基準を社内で整理し、従業員から説明を求められた際に客観的に説明できる資料や考え方を準備しておくことが重要です。なお、説明を求めたことを理由に減給や解雇などの不利益な取り扱いをすることは禁止されているのであわせて注意が必要です。
参考:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第14条|e-Gov法令検索
関連記事:同一労働同一賃金の説明義務はどう強化された?注意点や説明方法も解説
3-3. 労働条件の内容と実態に乖離がないか定期的に点検する
賞与制度が同一労働同一賃金の考え方に沿って合理的に設計されていたとしても、実際の業務内容や責任範囲に変化が生じている場合には、その合理性を支える根拠が弱まるおそれがあります。
例えば、パート従業員が正社員とほぼ同等の業務を担い、責任も拡大しているにもかかわらず、賞与に大きな差が設けられている場合、その相違は不合理と判断される可能性があるでしょう。
そのため、職務内容や配置変更の有無などについて定期的に確認し、制度と現場の実態に乖離が生じていないかを点検することが重要です。あわせて、労働条件通知書・雇用契約書や就業規則についても現状に即して見直すことで、法改正や判例の動向にも柔軟に対応しやすくなります。
関連記事:同一労働同一賃金の抜け道を探すのは危険?リスクや対応ポイントをわかりやすく解説
4. 同一労働同一賃金での賞与の扱いを知り、就業規則を見直そう


同一労働同一賃金への対応において、賞与は基本給や手当と同様に「不合理な待遇差の解消」の対象となります。企業は「均衡待遇」と「均等待遇」の考え方に基づき、職務内容などが正社員と同一であれば同一の支給を、相違がある場合でもその度合いに応じた合理的な支給をおこなう必要があります。
特に賞与が「業績への貢献」を基準とする場合、貢献度が同程度であれば非正規雇用労働者にも同等の支給が求められ、一律に「賞与なし」とすることは違法と判断されるリスクがあります。今後の実務では、就業規則で賞与の性質や支給要件を明確化し、待遇差がある場合は客観的に説明できる根拠を整え、実態に即した定期的な点検をおこなうことが大切です。



意図せず不合理な待遇差を放置してしまうと、思わぬ労使トラブルに発展する可能性があります。
企業の信頼性を守るためにも、客観的な視点での定期的な見直しが不可欠です。
◆押さえておくべき法的ポイント
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- 企業に課される「待遇に関する説明義務」の範囲
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