- 課題
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- 毎朝、出勤簿への押印待ちの渋滞が発生。未押印の職員もおり、正確な勤怠管理ができていなかった。
- 有休・残業申請は紙で運用しており、心理的・物理的に申請しづらかった。
- 繁忙期に発生する雇用契約手続き。書類の作成から押印、郵送などの手間がかかっていた。
- 解決策
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- システムの導入により、確実に出退勤時間を記録できる仕組みを構築する。
- 対面での申請書提出フローをなくし、いつでも申請・承認ができる運用に変える。
- 雇用契約に関する手続きをペーパーレス化させる。
- 効果
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- スマホやパソコンなど、システム上で打刻できるようになった。自動的に出退勤時刻が記録されるため、適切な勤怠管理も実現。
- 各種申請がジンジャー上でできるようになったことで、今までよりも申請しやすくなった。
- 書類の作成から押印、郵送の手間が解消され、書類の遅滞も発生しにくくなり、総務と職員のやり取りがとてもスムーズに。
先駆的にシステムを導入し、福祉業界にDX成功事例を広めたかった
-今回、DXに取り組まれた経緯について教えてください。
小柴さん:
私は、総務課の経営戦略係という部署に2015年の立ち上げ当初から所属しております。
本部署は、これまで短期的な取り組みが多かった法人内で、より中長期で地域福祉の推進のために、どのように先駆的な事業に取り組み、法人自体をアップデートさせていくのかを考えていくために立ち上げられました。
そのような部署のミッションの中で、当法人がいろんなシステムを先駆的に導入して実験台となり、導入が成功したシステムやそれらの導入効果を広く公表することで、いろんな福祉事業所が取り入れて業務効率化してもらえたら良いなと思い、今回DXに取り組み始めました。
やはり、今後の人口減少を踏まえると、福祉を支えている人たちのマンパワーがどんどん不足していくことは確定しています。人を増やすことが難しいのであれば、地域福祉を支えている人たちの業務効率を重視していく必要があると考えたんですよね。業務効率化を図る手段として、DXやデジタルは重要なキーワードでした。
-そういった背景があるなかで、ジンジャーを選んでいただいた決め手は何でしたか?
小柴さん:
当法人とjinjer社で“共同研究”という枠組みを組んで、福祉業界へのDX普及にご協力いただけた点が非常に大きかったですね。
実はジンジャーの紹介を受けた際に、『当法人内のDX化でどれくらい業務効率化できるか』という共同研究を一緒にやってみませんか?という提案を私からさせてもらったんです。この研究発表によって、DX化が進んでいない福祉事業所の皆さんにも、DXによる業務効率化を理解してもらえるのではないかと考えていました。
-共同研究において大事にしていたことは何でしたか?
小柴さん:
ちゃんと導入効果を数値として出すということは意識していました。
DXを先行導入している組織というのは、組織内でDXに詳しい人がいたり、導入を許可してくれる上司がいたり、そういった丁度良いタイミングがあって、人員や財源などに余裕がある1~2割の組織だけなんですよね。
しかし、業務効率化を実現するためにDXを本当に推進しなければならないのは、人員や財源に余裕のない組織だと思うんです。そういった組織にDX導入の手助けができるようなデータや結果をお見せしたいなという想いがあったので、効果を数値でしっかりと提示しようと考えていましたね。
結果的に、3年間という期間の中で、目標設定・仮説立て・実証をして、DXによる効果検証を発表することができました。
▶共同研究(ふくしDXプロジェクト)の中間発表はこちらからご覧いただけます。
-ありがとうございます。共同研究の中で得られた、ジンジャー導入の効果について教えてください。
小柴さん:
まず勤怠のところでいうと、元々は紙の出勤簿で管理していましたが、1冊の出勤簿に職員全員の名前が入っていたため、毎朝押印待ちの渋滞が発生していました。また、正直な所、出勤しても押印を忘れている職員もいて、正確な勤怠管理ができていない状態だったんです。
ジンジャー導入後は、出勤したらすぐに自分のパソコンやスマホで打刻できるようになりましたし、打刻時間が自動で出退勤時刻として記録されるので、適切な管理体制を構築できた点は非常に良かったですね。
また、休暇申請はこれまで紙での申請だったので、対面で上司に承認をもらう必要があり、どうしても申請のしづらさがありました。その点デジタルになったことで自分のタイミングで申請でき、休暇の取りやすさは確実に向上したと思います。
残業申請に関しては、申請ファイルが出勤簿と同様に1冊のみで、誰かが上司に決裁をもらっている間は誰も申請できなかったのですが、現在ではパソコンやスマホ上でいつでも申請できるようになり、申請漏れも減ったと思います。
そして、雇用契約はペーパーレス化でだいぶ楽になりましたね。
元々は毎回新規で書類を2通作成して公印の押印をおこない、該当職員に渡して押印した上で1通を戻してもらって、書類を保管していました。大した件数ではないものの、年度末の忙しい時期に発生する業務であったため、総務としては負担だったんですよね。
ジンジャーで電子化してからは、書類の作成から押印、郵送の手間が解消され、書類の遅滞も発生しにくくなり、総務と職員のやり取りがとてもスムーズになりました。書類を確認したい場合には、システム上ですぐに探し出せるようになった点も便利だと思います。職員も皆、使い慣れているようです。
人事データベースの整備は未来のためにとても重要な取り組み
-ジンジャー導入をきっかけに、この先どのような管理体制を作っていきたいですか?
小柴さん:
ジンジャー導入後、当法人では間違いなく業務効率化に成功しました。
しかし、どんなシステムでもある程度使い続けると、どうしても削減工数が鈍化してくるんですよね。できる限り最良な体制で在り続けるためにも、システムをどのように利用・新しく導入していくかは考え続けていきたいと思います。
そして今年度からは、これまで紙で管理していた履歴書や昇給辞令などの情報を、ジンジャーの人事データベースに入れ込むという取り組みを始めています。
データを入れ込む作業に一定の時間はかかりますが、必要になったタイミングですぐにデータを取り出せる体制の構築や、属人化の解消などの観点で、未来のためにとても重要な取り組みであると考えています。
例えば、定期的に上司が変わるなかでも、人事データベースを活用して異動履歴やキャリアパスなどのデータを見ながら、最適な人員配置やキャリア形成を検討していきたいですね。
また、この取り組みによって書類が整理され、不要な書類は持たないということも重要であることが分かりました。できる限り少ない書類の方が管理しやすいですし、プライバシーを守るという観点でも書類廃棄の基準を設けようと考えています。
▶ジンジャーの人事データベースに関する詳細はこちらからご覧いただけます。
-これから人事労務のDXを進める企業様にアドバイスをお願いいたします。
小柴さん:
人事労務のDXによって、総務などの管理部門としては業務効率が向上し、適切な管理体制が構築できるのでメリットが非常に大きいと思います。しかし正直な所、一般の職員は業務が楽になるものの、総務と比べると大幅に工数削減されるわけではないんです。
例えば、出勤簿への記入からパソコンでの打刻だと、組織全体に換算すると30分(1分×30名)の時間削減になるので一定の導入効果が見込まれますが、職員1人あたりだと1分程度の削減となります。
そういった背景から、システム導入時に案内をする際は、「デジタル化によってめちゃくちゃ楽になるよ」ではなく「紙からスマホに変わります」と、単に手段が変わるということを伝えるべきだと気付きました。期待値は上げすぎずに、やがて1〜2年経った時にシステムで良かったと感じてもらえれば良いなと思っています。
また、どのように導入を進めていくかはしっかりと検討すべきだと考えています。
これまでのやり方をいっきに変えてしまうと、いくら使いやすいシステムでも現場では混乱が起きてしまいます。早く運用を開始できるのが必ずしも良いというわけではなくて、徐々に確実に運用を進めていくことが、導入成功の近道だと感じています。
今後も当法人のミッションとして、黒部市をはじめとした福祉業界の皆さんにDXの実態や効果を伝えていきたいです。
2006年設立。地域福祉の推進を図る中核的団体として、富山県黒部市における住民組織と公私の社会福祉事業関係者等によって構成される。住民主体の理念に基づき、地域福祉の課題解決に取り組み、「誰もが安心して暮らせるやさしい福祉のまちづくり」の推進を経営理念に、住民の福祉活動の組織化、社会福祉を目的とする事業の連絡調整および企画・実施などを行う公共性と自主性を有している。