人は「AI」と「マネージャー」どちらを信頼するのか?『職場におけるAI』調査レポート

2019年11月、日本オラクル株式会社によって『日本の職場におけるAI』に関する調査結果が公表されました。

同調査は、世界10カ国・地域(米国、英国、フランス、中国、インド、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、UAE、ブラジル、日本)の計8,370名が回答。そのうち415名が日本における企業・団体の従業員、マネージャー、人材部門リーダーです。

この調査結果について、慶應義塾大学大学院経営管理研究科 特任教授である岩本隆氏に、「今後のマネージャーの役割」「日本と世界の差」などをお伺いしました。

岩本 隆 | 慶應義塾大学大学院経営管理研究科

東京大学工学部金属工学科卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)工学・応用科学研究科材料学・材料学専攻Ph.D.。日本モトローラ株式会社、日本ルーセント・テクノロジー株式会社、ノキア・ジャパン株式会社、株式会社ドリームインキュベータ(DI)を経て、2012年より慶應義塾大学大学院経営管理研究科(KBS)特任教授。外資系グローバル企業での最先端技術の研究開発や研究開発組織のマネジメントの経験を活かし、DIでは、技術系企業に対する「技術」・「戦略」・「政策」の融合による産業プロデュースなど、戦略コンサルティング業界における新領域を開拓。jinjer HR Tech総研アドバイザー。

1. バックオフィスのデータ活用が進んでいない日本

-今回、「職場におけるAI」というテーマで調査では、どのような結果が出たのでしょうか。

 

岩本特任教授:今回は、『職場におけるAI』をテーマに、調査をおこないました。そこで判明した結果の中で特徴的だったものは、2つです。

【調査結果】

  1. 職場でのAI活用している企業の割合は、日本は世界10カ国の中で最下位
  2. 日本人の76%の人がマネージャーよりロボットを信頼している(グローバル平均:64%)

まず、職場でのAI活用についてですが、調査対象になった国・地域の平均は、50%でした。AIの活用が進んでいるのは、インドや中国で、78%にも及びます。その反面、日本でのAI活用割合は、29%でした。

 

-なぜ日本はAIの活用が進んでいないのでしょうか?

 

岩本特任教授:私は2つの理由があると思っています。

1つめは、AIを活用しようとする意識の欠如です。AIの主な活用場面は、自社のビジネスにおける活用(製造、物流、販売・流通部門など)と、バックオフィスにおける活用(総務・人事・経理業務など)の2種類に分けることができます。

前者は、日本でもAIの活用が進んでいる分野ですが、後者に関しては導入が進んでいないことが現状です。

その背景として、まだ紙での管理や手作業が残っていることがあげられます。AIはビックデータを活用するので、データが蓄積されていないと、AIを活用しようという話になりにくいでしょう。

 

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-たしかに、タイムカードや出勤簿などの紙で勤怠を管理している企業が多い印象です。2つめは?

 

岩本特任教授:2つめは、AIを実装するスキルを持つ人材が少ないことです。日本の企業は、技術部門にはデータ専門家がいますが、バックオフィスにはいないケースがほとんどです。

そのため、職場でAIを活用するときに、どのように活用するべきかを検討したり、導入・運用したりできない企業が多いのではないでしょうか。

これからはバックオフィス部門でも、データサイエンティストなどの専門家とコミュニケーションを取り、プロジェクトをマネジメントするスキルが必要になると思います。

2. AIが広がる今、変化するマネージャーの役割とは

-日本はグローバル平均より、『マネージャーよりロボットを信頼している割合が高い』という結果は、驚きでした。

 

岩本特任教授:この結果は、日本のマネージャーは合理的なマネジメント力が弱いという背景があります。バイアスがかかっていて、行き当たりばったりのマネジメントが多いです。

たとえば、評価。データを使ってマネジメントしていたら、ある程度納得性を担保できます。しかし、日本企業は、年功序列などのトップダウン式で落とされているケースも多いので、それならAIのほうが良いと思われているのでしょう。

また、自分のマネージャーよりロボットのほうが優れている部分として、『仕事のスケジュールのメンテナンス』が2位になっているのも、「働き方の効率性が悪いのは、マネジメントのせい」だと感じている方の多さを表しているのではないでしょうか。

 

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-今後、マネージャーにはどのようなことが求められるのでしょうか?

 

岩本特任教授:調査の結果から、人間のほうがロボットより優れていると感じられている部分は「感情の理解」と「組織文化の創造」です。

今後、マネージャーはロボットができないことをより求められるでしょう。合理的なジャッジはロボットに任せて、メンバーのコーチングや、組織文化の創造・浸透などが役割になっていくと思います。

3. 年功序列から脱却できない日本。広がる世界との差

-今回の調査で、日本とグローバルでは、どのような違いが見受けられたでしょうか?

 

岩本特任教授:日本とグローバルの違いが明確に表れた結果がありました。それは、『AI化されてどういうことに期待しますか?』という質問項目に対する結果です。

「自由時間が増える」と回答したのは、日本は42%で、グローバルは36%でした。その反面、「昇格スピードが上がる」「給与が上がる」と回答したのは、日本は7%に対して、グローバルは17%でした。

これからわかることは、AIにより生産性が向上して自由な時間が増えれば、昇格したり、給与が上がったりするイメージが、グローバルはついているが、日本はイメージできていないということです。

これは、日本企業に勤める人々の根底に、年功序列制度が根強いことを示しています。つまり、年功序列が軸になっているため、『AIによって工数が削減されても、自分の給与は勤続年数に比例するため給与は関係ない』と考える人が多いのです。

 

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4. jinjer HR Tech総研所長 松葉氏 コメント

テクノロジーの発展にともない、数値・テキストだけでなく音声・画像・動画をはじめ、扱うデータの種類が飛躍的に増えました。

欧米では、ビッグデータを活用したタレントマネジメント・リクルーティング・オペレーティングがすでに登場しています。今後、バックオフィスのデータをはじめとするビッグデータの活用が、日本の人事においても進んでくるでしょう。

そのような中、人事の役割がどのように変わっていくのでしょうか。

経営戦略とDX戦略と人事戦略が三位一体となることが、今後はより求められます。オペレーション人事から戦略人事へ、そして、戦略人事からAI戦略人事へ。

今後も人事領域のデータ・ドリブンな取り組みの事例など、さまざまなコンテンツをお届けいたします。

※DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させることです