BCP(事業継続計画)対策とは?重要性やマニュアル策定の手順をわかりやすく解説
更新日: 2022.12.13
公開日: 2022.9.15
MEGURO
BCP対策は、企業で緊急事態発生時に事業資産の損害を最小限に抑えながら、事業を継続するための手段について計画することを指します。
今回は、企業におけるBCP対策の概要や重要性、策定をおこなう際のコツについて紹介していきます。
目次
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1. BCP(事業継続計画)対策とは?
BCP(事業継続計画)対策とは、「Business Continuity Plan」の略で、緊急事態の際に最小限の被害にとどめ、以降の事業を継続できるようにまとめた計画です。
災害やテロ、未知のウイルスの流行といった、企業の緊急事態時には事業の継続や早期復旧をさせなければなりません。事業の継続ができない事態に陥り、企業の信頼低下や倒産といった可能性を防ぐためにも、リスクマネジメント対策としてBCPは必要な対策といえます。。
また、介護業界では、3年間の猶予期間を設けた後、2024年からBCP策定が義務化されることが「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」内で明記されており、早急に対応する必要が生じています。
1-1.従来の防災活動やBCMとの違いや関係性
BCPとよく似た施策に防災活動やBCMがあります。BCMは「Business Continuity Management」の略称で、BCPを策定・運用・改善するために必要な、平常時における包括的なマネジメント活動を指します。
BCP対策と防災活動の概要と違いは下記の通りです。
BCP対策 | 防災 | |
目的 | 安全確保および事業の継続や早期復旧 | 従業員の身体、生命の安全確保 |
想定するべき事象 | 事業や業務の継続に支障をきたすあらゆる状況 | 拠点地域の自然災害 |
評価基準 | ・経営資源の被害を最小限に留めること ・経営やステークホルダーへの影響 ・復旧の速度、復旧レベル |
・死者数 ・損害額 ・復旧の速度 |
防災は自然災害を想定しているのに対し、BCP対策では、より広義なあらゆるインパクトを想定しています。
防災は経営資源への影響を抑える想定があるのに対し、BCP対策では企業の事業活動や収益などより経営に近い要素への影響やリスクに備えるという点も異なっています。
関連記事:BCP対策とは?災害に対応するための計画作りを徹底解説 | jinjerBlog
2. BCP対策が重要な理由
企業でBCP対策が重要となる理由には、以下の3つが挙げられます。
2-1. 緊急時の迅速な対応
BCP対策がされていることにより、緊急時に企業が迅速な対応をとることが可能です。前もって緊急時の対応を決めておくことにより、従業員の行動にミスや迷いが生じることも防げます。計画に矛盾があったり、マニュアルが認識されていない場合、かえって混乱を招き、復旧に時間がかかって二次被害や被害の拡大に繋がるケースもあるため、日常的に社内での見直しや周知を徹底しておくことが重要です。
2-2. 企業の信頼性向上
BCP対策をおこなうことで、企業イメージが高まり、取引先への信頼性も向上します。
緊急事態でも安定した経営がアピールできるため、BCP対策をおこなっている企業は、取引相手としても選ばれやすいと考えてよいでしょう。
2-3. 経営戦略の見直し
BCP対策を策定していく中で、復旧を優先すべき事業が見えてくるため、自社内で核となる事業がはっきりしてきます。
反対に、優先度の低い事業についても可視化できるようになるので、経営戦略の見直しといった意味でもBCP対策は有効です。
また、日頃のBCP対策によって、自社の欠点が明らかになり、相乗的に全社的な業務改善を実現できる可能性もあります。
3. BCP対策でマニュアル化しておくべき非常事態
先述の通り、BCP対策ではあらゆる非常事態を想定し、対応フローをマニュアル化する必要があります。マニュアル化しておくべき非常事態としては下記の状況が挙げられます。
3-1.自然災害
自然災害は最も直面しやすい非常事態であると言えます。自然災害として想定されるものには下記のものがあります。
・地震
・台風
・大雨、洪水
・土砂崩れ
・豪雪
・竜巻
・火山の噴火
・高潮
・干ばつ
「内陸地域であるか」、「水害想定区域でかどうか」など企業の拠点地域によって想定するべき自然災害の優先度は異なります。従業員の身体の安全や自社設備の被害を想定したうえで優先度に応じて対策を強化しましょう。
3-2. サイバー攻撃等の外的要因
情報漏洩やデータの改ざん、消失など、サイバー攻撃も事業活動に影響が出る非常事態であるといえます。
顧客情報が漏洩した場合にはデータが流出したことを通知しなければいけません。その際の連絡順位や連絡フローを整理しておく必要があります。
また、データが改ざん、消失した場合は該当データの復旧方法も検討しましょう。重要データは別のファイルで保管しておくなどの対策をとることもできます。
3-3. 不祥事等の内的要因
商品の欠陥によるリコールや自主回収、人的ミスによる情報漏洩、社員の不祥事、システムメンテナンスや本社移転など、内的要因によるイレギュラーにもマニュアルを作っておく必要があります。
謝罪文のテンプレートや送信フローの定義、記者会見の開催フローの整備、ステークホルダーへの連絡の優先順位付けなど、自社の事業内容に応じて策定する必要があります。
4. BCP対策を策定する流れ
BCP対策は、以下のような流れで作成をおこなっていきます。
◇BCP対策を作成する流れ
1.自社にあった方針を定める
2.社内体制の整備をおこなう
3.優先的に復旧する事業を決定する
4.事前案の策定をおこなう
5.BCP発動基準と社内体制の整備をおこなう
6.BCPの策定内容を共有する
以下、これらの手順について具体的に説明していきます。
4-1. 自社にあった方針を定める
まずはBCP対策で自社が目指す方向性について定め、社内で共有するところからはじめます。
緊急事態が発生した際に、社員それぞれが迅速に動けるよう、BCPで対象とする災害やリスクの絞り込みをおこないます。発生頻度や事業への影響度合などから優先順位を決めて優先度の高いものから対応していきましょう。
経営理念や基本方針とあわせて、事業の継続、従業員の安全、取引先からの信用の保全などあらゆる要素で何を優先的に対応するのかを検討し、具体的な方針を策定します。
4-2. 社内体制の整備をおこなう
BCP対策を策定するときには、プロジェクトチームを編成したうえで進めるのが一般的となっており、その際、各々の作業を調整するための事務局を設置します。全社的なプロジェクトであるため、多角的な意見を抽出するためにも、特定の部署やチームが担当するのではなく、可能であれば各部署から偏りなく参加させることが望ましいと言えます。
事務局の責任者や部門からの参画者が決定したら、取引先などとの連携を検討し、社員全体でもBCPの内容に対する周知がはかれるよう、情報共有をおこなっていきましょう。
4-3. 優先的に復旧する事業を決定する
複数の事業をおこなっている企業では、優先順位を決めて復旧する事業を検討していきましょう。
なかでも、「売上に貢献している事業」や「作業の遅延が発生すると大きな損害となる事業」などは、優先的に復旧すべき事業となります。会社の主要事業の早急な復旧は、企業の事業継続の可能性に大きく関わるためです。
検討の際には、売上高や利益、顧客数といった観点から確認をしていくとよいでしょう。
4-4. 事前案の策定をおこなう
優先順位決定後、復旧を優先させる業務については事前案の策定をおこないます。
緊急事態が発生した場合に、復旧にかかる時間や費用、利用できる補助制度や保険制度を把握し、シミュレーションをおこなっておくと、具体的な事前案の策定が可能となります。
資源が被災したときには、資源の代替を用意する手段を検討しておかなければなりません。拠点を複数に分散したり、テレワークを活用したりするなど、費用対効果を考慮に入れながら検討していくとよいでしょう。
テレワーク等を考慮するとクラウドシステムのような場所に左右されず活用できるツールを活用することがおすすめです。
関連記事:BCP対策としてクラウドサービスを活用するメリットと選び方のポイント
4-5. BCP発動基準と社内体制の整備をおこなう
BCPを策定するにあたっては、BCPを発動する基準と社内体制の整備をおこなっておかなければなりません。
緊急時の混乱の中でも冷静、かつ迅速に対応できるよう、誰が誰に対して指示をおこなうのか、誰が判断を下すのか、誰がどんな行動を起こすのかを可能な限り具体的に決めておきましょう。
4-6. BCPの策定内容を共有する
緊急時には、社内全体が情報共有できるようにBCPをマニュアル化しておくとよいでしょう。
中小企業庁のホームページでは、BCPを文書化するためのフォーマットも用意されていますので、こちらを活用してみるのもおすすめです。
[参考]BCP策定運用指針|中小企業庁
5. BCP対策を策定するときのコツ
BCP対策を策定する際には、次の2点を意識しておくとよいでしょう。
5-1. BCP情報の文書化および整理
BCP対策は、文書化して整理しておくと、いざというときにスムーズに活用できます。
災害時の通信手段や災害対応用具、顧客情報の保存場所のほか、災害で失われた資源の代替方法や災害時の地域貢献について、あらかじめまとめておきましょう。
5-2. チェックリストの活用
災害や事故に対応できるBCP対策ができているかどうかの判断は、自社内だけでは難しい場合もあります。
そのための判断材料として、中小企業庁から公開されているチェックリストの活用を検討してみると、災害への迅速な対応が可能となります。
関連記事:中小企業におけるBCP対策を策定するときの3つのポイント | jinjerBlog
[参考]3.6 BCP策定・運用状況の自己診断(基本コース)|中小企業庁
6. BCP対策を運用するときの注意点
BCP対策は策定して完成ではなく、定期的な見直しと改善が必要不可欠です。BCP対策だけでなく、BCMも同時平行でおこない、日頃の周知や訓練の実施、見直しのフローも確立させておくと良いでしょう。
6-1. 策定後も継続的にテストと運用の改善を検討する
BCP対策は従業員全員の理解度が重要です。勉強会を開催したり、緊急時を想定した訓練をおこなったりして、徹底した周知を心がけましょう。また、訓練をおこなうと「想定よりもフローが煩雑であった」、「策定段階では想定できていなかった要素があった」等改善するべき課題が洗い出されるでしょう。
これらを改善し、再度周知することを繰り返すことで、より具体性が高く有効なBCPを策定することができます。
6-2. 関係先のBCP対策内容も把握しておく
自社のBCP対策だけでなく、取引先企業などサプライチェーンのBCPについても確認しておくことで、非常事態におけるイレギュラーの発生を予防することができます。
非常事態の発生時に代替仕入先として想定していた企業のBCPを確認したところ、想定していた計画が成立しない可能性が浮上する場合もあります。
自社の設備が復旧した際に想定の復旧行動が阻害されるリスクがないか、もしリスクがある場合はどのような代替策をとるかなどを確認しておくことで、より強固なBCPを運用することができるでしょう。
7. BCP対策を的確に実施し緊急事態時における事業の早期復旧・継続を目指そう
BCP対策を実施することにより、企業が緊急事態となった場合でも企業の信頼低下や事業の縮小、倒産などといった最悪の事態を免れることができます。
企業価値の向上を目指すためにも、BCP対策の策定は有効です。
BCP対策を策定する際には、自社の現状を確認したうえで、発動基準や発動時の体制・要員などを明確化し、スムーズな活動ができるよう計画を立てていきましょう。
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