
年末調整とは、従業員の給料から天引きしている源泉所得税を正確な税額に計算し直し、過不足分を調整する処理のことです。
今回は、年末調整をし忘れてしまった場合に考えられるリスクについて解説するとともに、適切な対処法を紹介します。
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年末調整の基礎知識|必要な人や手続きの流れを詳しく紹介
何とかして効率化したい!
システム化で変わる年末調整の2つのポイント解説BOOK!
年末調整をはじめとする必ず発生する業務の効率化は、企業全体の効率化に最も早く繋がります。
しかし、効率化といっても、これまでのやり方と異なることでイメージが湧きにくかったり、効率化が成功するのか不安なご担当者様も多いのではないでしょうか。
今回は「システム化で変わる年末調整の2つのポイント」を資料にまとめました。
年末調整をペーパーレス化した際の業務を具体的にイメージしたい方は、ぜひご覧ください。
1. 年末調整を忘れた場合のリスク
年末調整を忘れた場合に考えられるリスクは、以下の4つです。
1.従業員自身が納めすぎた税金の還付を受けられない
2.従業員が納める住民税の納税額が高くなる
3.従業員が受けられるはずの控除が受けられない
4.従業員自身に確定申告の必要が生じる
以下、それぞれのリスクについて詳しく説明します。
1-1. 従業員自身が納めすぎた税金の還付を受けられない
通常、従業員の年末調整を会社で行った場合には、納めすぎた税金の還付(払い戻し)を受けられます。従業員の年末調整を行わなければ、納めすぎている税金があったとしても、税務署側では判断できません。
サラリーマンやパート、アルバイトといった給与所得者の場合、年末調整を行ってはじめて税金が還付されます。つまり、年末調整を忘れた場合、従業員自身の不利益となる可能性があるのです。
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1-2. 従業員が納める住民税の納税額が高くなる
従業員が納める住民税の金額は、年末調整で行われた所得控除から算出されます。
年末調整を忘れた場合には、所得控除がされません。そのため、次年度に従業員が納める住民税の納税額が高くなってしまいます。
1-3. 従業員が受けられるはずの控除が受けられない
年末調整を行うと、従業員はさまざまな控除を受けられます。たとえば、配偶者控除や配偶者特別控除、扶養控除のほか、社会保険料を受けたときに受けられる社会保険料控除などです。
年末調整を忘れた場合、従業員はこれらの各種控除を受けられません。
▼各控除の説明はこちら
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1-4. 従業員自身に確定申告の必要が生じる
年末調整を忘れた場合、従業員自身が税務署で確定申告をしなければなりません。確定申告を行わなければ、場合によっては罰則の対象となってしまうため、注意が必要です。
また、会社で手続きを行う年末調整と異なり、確定申告はすべて従業員自身が手続きしなければなりません。
2. 年末調整の提出期限はいつまで?
それでは、会社が年末調整の書類を税務署に提出する期限はいつまでとなっているのでしょうか。
ここでは、年末調整に必要な書類を提出する期限について確認していきましょう。
2-1. 年末調整の提出期限
会社で取りまとめた従業員の年末調整書類を税務署に提出する期限は、翌年の1月31日までとなっています。
会社側では、原則的に12月に1月1日から12月31日までの従業員の給与について所得税を計算し、所轄の税務署長へ申告を行います。
そのため、11月から12月頃を目処に、以下で挙げる年末調整関係書類を従業員に記入、提出してもらわなければなりません。
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2-2. 従業員が提出する年末調整関係書類
従業員が記入し、提出すべき年末調整関係書類は次の3つです。
1.給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
2.給与所得者の保険料控除申告書
3.給与所得者の基礎控除申告兼給与所得者の配偶者控除等申告兼所得金額調整控除申告書
以下、それぞれについて簡単に説明します。
1. 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は、従業員が給与の扶養控除を受けるときに必要な書類です。控除の要件にあたる扶養家族がいるときは、扶養控除を受けることで、本来納めるべき税金の負担を軽減することができます。
2. 給与所得者の保険料控除申告書
給与所得者の保険料控除申告書は、従業員が保険料(生命保険料や地震保険料等)の控除を受けるときに必要となる書類です。
3. 給与所得者の基礎控除申告兼給与所得者の配偶者控除等申告兼所得金額調整控除申告書
従業員が年末調整で基礎控除や配偶者(特別)控除、または所得金額調整控除を受ける際に必要となる書類です。
3. 年末調整関係書類の提出期限はいつまで?
年末調整関係書類の提出期限は、会社で行う事務処理を考慮した時期にする必要があります。そのため、税務署に提出する期限である1月31日ではなく、その1ヶ月前にあたる12月末くらいを目処に提出するよう、従業員に周知しておくとよいでしょう。
どんなに遅くても、1月中旬には書類がすべて揃っている状態が望ましいです。
4. 年末調整を忘れた場合の対処法
もし従業員が、本来提出すべき時期までに会社までに年末調整の書類を提出し忘れた場合には、適切に対処しなければなりません。
万が一、従業員が年末調整を忘れた場合にやるべきことは、以下の2つです。
・1月末までで年末調整の再計算を実施する
・2月から3月に実施される確定申告で申請する
以下、それぞれの対処法を詳しく紹介します。
4-1. 1月末までで年末調整の再計算を実施する
12月末の給与までで年末調整を行っている場合、会社によっては1月末まで年末調整の再計算を実施することができます。
年末調整を忘れた従業員がいた場合、年末調整の再計算で対応できる旨を伝え、なるべく早めに対処しましょう。
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4-2. 2月から3月に実施される確定申告で申請する
従業員自身に確定申告を行ってもらう方法です。該当する従業員には、源泉徴収票と添付書類を所轄の税務署まで持参し、手続きするよう伝えましょう。
なお、通常、確定申告の期限は2月16日から3月15日です。
確定申告の期限に遅れた場合、無申告課税(本来の納税額プラス15%から20%の追加税の支払い)および延滞税(年7.3%から14.6%の追加税の支払い)が罰則として科されます。
従業員には確定申告の期限を正確に伝え、忘れずに申告するよう促してください。
4-3. パート・アルバイトの従業員が年末調整を忘れた場合
働き方の区分によらず年末調整は必要となるため、注意が必要です。パートやアルバイトの従業員についても、年末調整を忘れた場合、前述のリスクを負うことになります。
パート・アルバイトが年末調整を忘れた場合についても、同じく適切に対処しましょう。
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年末調整をしないとどうなる?考えられる5つのリスクを解説
5. 年末調整を忘れた場合のリスクを理解し、適切に対処しましょう
今回は、従業員が年末調整の申請を忘れてしまった場合のリスクと、忘れてしまった場合の適切な対処方法について紹介しました。
年末調整を忘れた場合、還付金を受け取ることができないなど、従業員にとっての不利益が生じます。また、その後の確定申告も行わずに放置していると、場合によっては罰則の対象となる可能性があるため、要注意です。
会社側は従業員が正しく年末調整の申請ができるよう、早めにアナウンスを出しておくことが大切です。万が一、従業員が申請を忘れてしまった場合は、本記事で紹介した方法で適切に対処しましょう。