年末調整での還付金(返金)の仕組みやいつもらえるかを解説
更新日: 2023.9.1
公開日: 2021.9.28
MEGURO
末調整によって、その年に多く支払った所得税・復興特別所得税の返金を受けられることがあります。
しかし、申告漏れや内容に不備があると、せっかく受けることができる返金を受けられないこともあるのです。
今回の記事では、年末調整での返金の仕組みを中心に解説します。返金の仕組みを正しく理解して、年末調整で間違いがないよう申告しましょう。
1. 年末調整での返金(還付金)の仕組み
ここでは、年末調整で返金(還付金)がでる仕組みと、返金(還付金)に欠かせないポイントとなる「所得控除」について、詳しく解説します。
1-1. 年末調整の返金(還付金)と所得控除
年末調整で返金がでる仕組みは、給与から源泉徴収された所得税・復興特別所得税の年間税額より、年末調整で算出された実際の年間税額が安くなることで返金が発生します。
実際の年間税額が安くなるケースには、2パターンあります。減給や残業の減少などにより前年より年間所得が減った場合と、所得控除がある場合です。
所得控除とは、個人的な事情に配慮して税負担を軽くするためのもので、一定の要件を満たした金額を所得金額から引くことができます。所得控除に関しては、勤め先でも把握することができない内容が含まれるため、従業員から申告しなければなりません。
所得控除の例としては、個人的に加入している生命保険や地震保険、住宅ローンなどがあります。これらの所得控除を申告することによって、多く源泉徴収された所得税・復興特別所得税が返金される可能性が出てくるのです。
1-2. 年末調整で申告ができる所得控除
次に、従業員側から申告が必要となる所得控除について紹介します。
年末調整では、所得控除を申告することによって、返金を受けることができます。所得控除の種類はいくつかあり、とくに従業員からの申告が多い所得控除は以下の7つです。
- 配偶者控除・配偶者特別控除
- 扶養控除
- 障害者控除
- 生命保険料控除
- 保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)
●配偶者控除・配偶者特別控除
配偶者控除は、その年の合計所得額が48万円(給与収入のみは103万円)以下の配偶者がいる場合に、一定の条件を満たすことで受けることができる控除です。
配偶者特別控除は、配偶者控除を受けることができない場合に、一定の条件を満たすことで受けられる控除です。その年の合計所得額が48万円超133万円(給与収入のみは103万円超201万円)以下であることが条件のひとつとしてあります。
いずれも民法上の配偶者で申告者と生計を一にしていること、申告者の合計所得額が1,000万円(給与収入のみの場合は1,195万円)以下でなくてはなりません。
関連記事:年末調整は結婚したら何が変わる?書類の書き方のポイント
●扶養控除
扶養控除は、納税者と生計を一にしている16歳以上の扶養親族がいる場合に適用されます。ただし、扶養親族の年間の合計所得額が48万円(給与収入のみは103万円)を超える場合には適用されません。
●障害者控除
納税者本人に所得税法上で規定している障害がある場合、控除を受けることができます。これは、配偶者や扶養親族にも対しても同様の扱いとなります。障害者控除には3種類あり、納税者本人や配偶者、扶養親族の障害の状態によって控除額が変わります。
関連記事:年末調整の障害者控除とは?その範囲や金額を詳しく解説
●生命保険料控除
生命保険料控除では、一般の生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の3つが控除の対象となります。新契約(平成24年1月1日以降に契約)と旧契約(平成23年12月31日以前に契約)では、生命保険料控除の内容が異なります。また保険期間が5年未満の生命保険も控除が適用とならないケースがありますので注意が必要です。
●地震保険料控除
地震保険料と経過措置の対象となっている旧長期損害保険に、控除が適用されます。
●小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済法に規定された共済契約の掛け金を支払った場合に、適用となる控除です。この控除の中で主に従業員の申告が必要となるのが、個人型年金加入者掛金(iDeCo)や心身障害者扶養共済制度の掛金がある場合です。
●住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)
住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)は、一定の条件で組んだローンで、居住用の住居を購入または特定の改修工事をした場合に適用となる控除です。年末調整は、2年目以降の申告から可能となりますので、1年目に還付金を受けるには確定申告が必要となります。
▼その他の控除に関する記事は下記をご覧ください。
・年末調整における「ひとり親控除」の対象や寡婦控除の違い
・年末調整の社会保険料控除とは?対象となる保険の種類まとめ
1-3.年末調整で申告ができない所得控除
所得控除の中には、年末調整で申告を行うことができないものがあります。以下で挙げる所得控除を受けるには、年末調整ではなく確定申告が必要となるため、申告を間違わないよう注意しましょう。
●医療費控除
納税者本人または生計を一にする配偶者や扶養親族が、一定額を超える医療費を年間で支払った場合は、医療費控除を受けることができます。控除額は200万円が限度となり、次の計算式によって控除額を求めることができます
医療費の総計-生命保険料の補填額-10万円※
※年間所得が200万円未満の場合は、10万円ではなく年間所得の5%が適用
●雑損控除
災害、盗難、横領などによって、生活に必要な住宅や家具といった資産が被害を受けた場合は、一定額の控除を受けることができます。別荘や骨董品など、生活に必需ではないものに対しては控除を受けることはできません。
●寄付金控除
国や地方公共団体などへ、一定の寄付金を払った場合は寄付金控除が適用となる場合があります。
寄付金控除の中にふるさと納税がありますが、控除を受けるには確定申告が必要となります。ただし、ふるさと納税先が5団体以内の場合に適用となる「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を利用している場合は、確定申告は必要ありません。
2. 年末調整での返金(還付金)はいつもらえる?
年末調整で返金(還付)されることになった場合、いつ・どのような形で返金されるのでしょうか?
返金の期日や方法についての明確なルールはなく、企業ごとに異なりますが、一般的には12月か1月に支払われることが多いようです。
返金方法については、給与と一緒に支払われるか、現金にて直接手渡しされるケースもあるようです。
3. 年末調整での返金(還付金)を受け取る際のポイント
年末調整で所得控除を申告することで、返金を受け取ることができる場合があります。しかし、必要書類や記入の誤りがあると、受け取れなくなる可能性があります。
ここでは、年末調整で返金を受け取る際に大切な2つのポイントを紹介します。
3-1. 控除証明書を大切に保管する
年末調整を行う際に、所得控除の内容によっては、控除証明書の提出が必要となるものがあります。
控除証明書とは、生命保険料やiDeCoなど、納税者が年末調整で申告した金額とおりに支払いしたことを証明するものです。保険会社や支払いを受領した機関から、年末調整前に発行されます。
この証明書がないと、年末調整で所得控除を受けることができません。そのため、紛失しないよう大切に保管しましょう。
年末調整では、従業員が会社へ申告書と一緒に控除証明書を書面もしくは電子データを提出するのが一般的です。なお、控除証明書の様式(紙か電子データ)は企業ごとに異なります。
3-2. 申告書に正しく記載する
年末調整で返金(還付金)を受けるには、申告書に申告漏れなく正しく記載しなければいけません。
しかし、申告書を提出した後に申告漏れや記載の誤りに気づいた場合、年末調整の修正や再提出が必要となります。
担当者は従業員に対して、申告書を記入した後で誤りや控除証明書の添付漏れがないかどうか、再度確認するように周知しましょう。
4. 年末調整の返金(還付金)を受けるには所得控除の申告が重要
今回の記事では、年間に多く支払った所得税・復興特別所得税の返金(還付)を受けるために、年末調整で所得控除の申告が重要となることについて解説しました。
また、従業員側から申告しなくてはならない所得控除の種類についても、本記事で紹介しました。
どの所得控除が自分に該当するのか事前に確認しておき、年末調整あるいは確定申告で正しく申告するように周知しましょう。
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