年末調整での還付金(返金)の仕組みやいつもらえるかを解説
年末調整によって、その年に多く支払った所得税・復興特別所得税の返金を受けられることがあります。
しかし、申告漏れや内容に不備があった場合は、受けられるはずの返金額が減ってしまったり、返金そのものを受けられなくなったりするケースも存在します。
年末調整をおこなうことで受けられる返金の仕組みを正しく理解し、年末調整で間違いがないよう申告しましょう。
年末調整は、従業員の家族構成やライフステージ、副業の有無、控除対象となる保険類への加入状況など、人によって複雑な分岐や異なる計算方法のルールがあるため、とても複雑な業務です。
給与計算を担当する方にとって、計算結果を統合する一年の集大成とも言える業務ですが、
「結婚・離婚・定年・退職・死亡など、様々なケース別の年末調整に対応する際の注意点が知りたい」
「障害者や勤労学生、共働き、遺族年金がある場合など家族構成に関する控除のポイントを押さえておきたい」
「記載ミスや、申告内容・扶養の変更、税務署からやり直し通知を受けた際などの対応方法が知りたい」
このようなイレギュラーケースの対応について不安を抱えている担当者の方に向けて、当サイトでは「Q&A形式でわかる年末調整と源泉徴収」という資料を無料配布しています。
資料では、一問一答形式でケース別の具体的な年末調整の対応方法を解説していますので、すぐに使える年末調整のガイドブックが欲しいという方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 年末調整での返金(還付金)の仕組み
ここでは、年末調整で返金(還付金)がでる仕組みと、返金(還付金)に欠かせないポイントになる「所得控除」について詳しく解説します。
特に、所得控除適用の有無によって返金額が大きく変わってくるため、所得控除の知識については必ず押さえておきたいところです。
1-1. 年末調整の返金(還付金)と所得控除
年末調整で返金が発生するのは、源泉徴収された税額と、実際の年間税額の間に差が発生した場合です。給与から源泉徴収された所得税・復興特別所得税の年間税額より、年末調整で算出された実際の年間税額が低くなると、その差額分の返金が発生します。
実際の年間税額が安くなるケースには、2パターンあります。減給や残業の減少などにより前年より年間所得が減った場合と、所得控除がある場合です。
所得控除とは、個人的な事情に配慮して税負担を軽くするためのもので、一定の要件を満たした金額を所得金額から引くことができます。所得控除に関しては、勤め先でも把握することができない内容が含まれるため、従業員から申告しなければなりません。
所得控除の例としては、個人的に加入している生命保険や地震保険、住宅ローンなどがあります。これらの所得控除を申告することによって、多く源泉徴収された所得税・復興特別所得税が返金される可能性が出てきます。
1-2. 年末調整で申告ができる所得控除
次に、従業員側から申告が必要となる所得控除について紹介します。
年末調整では、所得控除を申告することによって、返金を受けられる可能性がでてきます。所得控除の種類はいくつかあり、とくに従業員からの申告が多い所得控除は以下の8つです。
- 配偶者控除・配偶者特別控除
- 扶養控除
- 障害者控除
- 社会保険料控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)
1-2-1. 配偶者控除・配偶者特別控除
配偶者控除は、その年の合計所得額が48万円(給与収入のみは103万円)以下の配偶者がいる場合に、一定の条件を満たすことで受けることができる控除です。
配偶者特別控除は、配偶者控除を受けることができない場合に、一定の条件を満たすことで受けられる控除です。その年の合計所得額が48万円超133万円(給与収入のみは103万円超201万円)以下であることが条件のひとつとしてあります。
いずれも民法上の配偶者で申告者と生計を一にしていること、申告者の合計所得額が1,000万円(給与収入のみの場合は1,195万円)以下でなくてはなりません。
関連記事:年末調整は結婚したら何が変わる?書類の書き方のポイント
1-2-2. 扶養控除
扶養控除は、納税者と生計を一にしている16歳以上の扶養親族がいる場合に適用されます。ただし、扶養親族の年間の合計所得額が48万円(給与収入のみは103万円)を超える場合には適用されません。
1-2-3. 障害者控除
納税者本人に所得税法上で規定している障害がある場合、控除を受けることができます。これは、配偶者や扶養親族にも対しても同様の扱いです。障害者控除には3種類あり、納税者本人や配偶者、扶養親族の障害の状態によって控除額が変わります。
関連記事:年末調整の障害者控除とは?その範囲や金額を詳しく解説
1-2-4. 社会保険料控除
厚生年金保険や国民年金保険、健康保険などの社会保険料を支払っている場合、年末調整で控除の対象となります。控除額はその年に支払った保険料の金額や給与・公的年金などから差し引かれた金額のすべてです。多くの従業員が対象となるため、漏れなく対応しましょう。
1-2-5. 生命保険料控除
生命保険料控除では、一般の生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の3つが控除の対象です。新契約(平成24年1月1日以降に契約)と旧契約(平成23年12月31日以前に契約)では、生命保険料控除の内容が異なります。また保険期間が5年未満の生命保険も控除が適用対象にならないケースがあるため注意が必要です。
1-2-6. 地震保険料控除
地震保険料と経過措置の対象となっている旧長期損害保険に、控除が適用されます。
1-2-7. 小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済法に規定された共済契約の掛け金を支払った場合に、適用される控除です。この控除の中で主に従業員からの申告が必要になるのが、個人型年金加入者掛金(iDeCo)や心身障害者扶養共済制度の掛金がある場合となります。
1-2-8. 住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)
住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)は、一定の条件で組んだローンで、居住用の住居を購入または特定の改修工事をした場合に適用となる控除です。
年末調整は2年目以降の申告から可能となるため、1年目に還付金を受けるには確定申告が必要となります。
このように、控除の種類は複数あり、それぞれの条件や必要書類を確認しながら業務を進めていく必要があります。当サイトでは、控除ごとの条件や必要書類をリスト形式で確認できる資料を無料で配布しています。年末調整業務に不安のある方は、こちらから「年末調整ガイドブック」をダウンロードして、控除や年末調整業務の理解にお役立てください。
▼その他の控除に関する記事は下記をご覧ください。
・年末調整における「ひとり親控除」の対象や寡婦控除の違い
・年末調整の社会保険料控除とは?対象となる保険の種類まとめ
1-3. 年末調整で申告ができない所得控除
所得控除の中には、年末調整で申告をおこなうことができないものがあります。以下で挙げる所得控除を受けるには、年末調整ではなく確定申告が必要となるため、申告を間違わないよう注意しましょう。
- 医療費控除
- 雑損控除
- 寄付金控除
1-3-1. 医療費控除
納税者本人または生計を一にする配偶者や扶養親族が、一定額を超える医療費を年間で支払った場合は、医療費控除を受けることができます。控除額は200万円が限度で、控除額を求めたい場合は以下の計算式を使います。
医療費の総計-生命保険料の補填額-10万円※=医療費控除額
※年間所得が200万円未満の場合は、10万円ではなく年間所得の5%が適用
1-3-2. 雑損控除
災害、盗難、横領などによって、生活に必要な住宅や家具といった資産が被害を受けた場合は、一定額の控除を受けることができます。別荘や骨董品など、生活に必需ではないものに対しては控除を受けることはできません。
1-3-3. 寄付金控除
国や地方公共団体などへ、一定の寄付金を払った場合は寄付金控除が適用となる場合があります。
寄付金控除の中にふるさと納税がありますが、控除を受けるには確定申告が必要となります。ただし、ふるさと納税先が5団体以内の場合に適用となる「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を利用している場合は、確定申告は必要ありません。
2. 年末調整の還付金が発生するケース
実際に年末調整の還付金が発生するケースの具体例を紹介します。
ここで紹介する以外にも還付金が発生することがあるため、該当するものがない場合でも年末調整や確定申告はおこなうようにしましょう。
還付が受けられるケース | 対象になる控除 |
結婚した場合 | 配偶者控除・配偶者特別控除 |
扶養対象者が増えた場合 | 扶養控除 |
配偶者と離婚・死別した場合 | 寡婦控除 |
ひとり親である場合 | ひとり親控除 |
本人や家族が障がい者の場合 | 障害者控除 |
生命保険や地震保険に加入している場合 | 生命保険料控除・地震保険料控除 |
個人で社会保険料を支払った場合 | 社会保険料控除 |
iDeCoに加入している場合 | 小規模企業共済等掛金控除 |
住宅ローンを組んでいる場合 | 住宅借入金等特別控除 |
生活環境や家族構成などが変わり、新しく控除を受けられるようになった場合は年末調整をおこなうことで返金を受けられる可能性があります。
保険関係やローン関係の控除は忘れやすいため、注意するようにしましょう。
3. 年末調整での返金(還付金)はいつもらえる?
年末調整で発生する還付金はある程度まとまった金額になることも多く、受け取れる人にとっては楽しみなものでもあります。受け取れるタイミングが気になる人も少なくありません。
しかし、還付金が支払われる明確な日程は決まっていません。
企業が年末調整を完了させたタイミングで受け取れるもので、多くの場合は12月中です。何らかの理由で遅れている場合は1月や2月になることもありますが、3月以降になることはほぼありません。
給与に反映される形で支給されるのが基本であるため、受け取っていないと思ったらすでに還付されていたというケースも考えられます。
2月になっても還付金を受け取った記憶がない、あるいはそのような申し出があった場合は、給与明細を確認した上で処理の状況を問い合わせてみましょう。
ただし、年末調整が期日までに終わっていない場合は還付金の支払いも大幅に遅くなる可能性があります。
4. 年末調整での返金(還付金)を受け取る際のポイント
年末調整で所得控除を申告することで、返金を受け取ることができる場合があります。しかし、必要書類の記入に誤りがあると、場合によっては返金を受け取ることができません。
ここでは、年末調整で返金を受け取る際に大切な2つのポイントを紹介します。
4-1. 控除証明書を大切に保管する
年末調整をおこなう際に、所得控除の内容によっては、控除証明書の提出が必要なものがあります。
控除証明書とは、生命保険料やiDeCoなど、納税者が年末調整で申告した金額とおりに支払いしたことを証明するものです。保険会社や支払いを受領した機関から、年末調整前に発行されます。
この証明書がないと、年末調整で所得控除を受けることができません。そのため、紛失しないよう大切に保管しましょう。
年末調整では、従業員が会社へ申告書と一緒に控除証明書を書面もしくは電子データを提出するのが一般的です。なお、控除証明書の様式(紙か電子データ)は企業ごとに異なります。
4-2. 申告書に正しく記載する
年末調整で返金(還付金)を受けるには、申告書に申告漏れなく正しく記載しなければいけません。
しかし、申告書を提出した後に申告漏れや記載の誤りに気づいた場合、年末調整の修正や再提出が必要となります。
担当者は従業員に対して、申告書を記入した後で誤りや控除証明書の添付漏れがないかどうか、再度確認するように周知しましょう。
5. 年末調整の返金(還付金)を受けるには所得控除の申告が重要
年末調整では、年間に支払った所得税や復興特別所得税が多すぎる場合は、返金を受けることができます。
ただし、従業員側からの申告が必要なものも多いため、新入社員や不慣れな社員に対してはその点の説明が必要です。
担当者は年末調整や控除、確定申告など関連する手続きを正確に把握し、従業員が還付金を適正に受け取られるようにサポートできるようにしておきましょう。
年末調整は、従業員の家族構成やライフステージ、副業の有無、控除対象となる保険類への加入状況など、人によって複雑な分岐や異なる計算方法のルールがあるため、とても複雑な業務です。
給与計算を担当する方にとって、計算結果を統合する一年の集大成とも言える業務ですが、
「結婚・離婚・定年・退職・死亡など、様々なケース別の年末調整に対応する際の注意点が知りたい」
「障害者や勤労学生、共働き、遺族年金がある場合など家族構成に関する控除のポイントを押さえておきたい」
「記載ミスや、申告内容・扶養の変更、税務署からやり直し通知を受けた際などの対応方法が知りたい」
このようなイレギュラーケースの対応について不安を抱えている担当者の方に向けて、当サイトでは「Q&A形式でわかる年末調整と源泉徴収」という資料を無料配布しています。
資料では、一問一答形式でケース別の具体的な年末調整の対応方法を解説していますので、すぐに使える年末調整のガイドブックが欲しいという方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
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