年末調整の再調整を正しく行うポイントや必要なものを解説
更新日: 2023.9.1
公開日: 2021.2.26
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従業員や、配偶者の合計所得額が見積りと異なり、配偶者控除あるいは配偶者特別控除額に影響がある場合、配偶者控除等申告書を再提出し、年末調整を再調整する必要があります。
企業側は、年末調整の再調整が終了した時点で、従業員の給与所得に差が生じていないかどうか、注意深く確認をする必要があるのです。年末調整の再調整が必要なケースとしては、下記の4つが挙げられます。
- 扶養親族等の人数に増減があったとき
- 配偶者控除や配偶者特別控除の対象である配偶者の年収に変化があったとき
- 年末調整の終了後、保険料などを支払ったとき
- 控除が適用となる申告を忘れてしまったとき
扶養親族等の人数の増減は、結婚して配偶者控除や配偶者特別控除が適用となったときや、子どもが扶養の対象外となった際などが該当します。
従業員の配偶者の年収が、年末調整で申告していた額よりも高い場合も、配偶者控除や配偶者特別控除の適用範囲を超過することがあります。
年末調整の終了後に、保険料控除の対象となる保険料を支払った際にも、再調整が必要です。
このほか、年末調整の申告自体を忘れてしまっていたときなども、やはり再調整の対象となります。
1. 年末調整の再調整を行う方法

年末調整の終了後に記載内容の間違いに気が付いたり、明らかなミスがあった場合、あるいは申告内容と実態が異なるようなときには、年末調整の修正が必要となります。
また、年末調整の修正は、時期によって修正方法も変わりますので、注意してください。
1-1. 「翌年1月31日以前」で「源泉徴収票発行前」の場合
下記の方法で修正が可能です。
- 計算間違い:申告書の該当する部分に二重線を引き、二重線に重なる形で修正印を押し、正しい数字を記入する
- 扶養親族の人数の変化や保険料の申告漏れ:従業員より正確な内容を聞き取り、添付書類を確認後修正を行う
1-2. 「翌年2月1日以降」あるいは「源泉徴収票発行後」の場合
年末調整の修正期限(翌年1月31日)を過ぎてしまったとき、源泉徴収票発行後にミスが発覚したときには、企業側の修正は不可能です。
再調整するには、翌年2月16日から3月15日の間に、従業員自身が確定申告を行わなければなりません。
1-3. 過年度の年末調整に誤りがあった場合も再調整が必要
過年度分の年末調整に誤りがあったときにも、年末調整の見直しを行う必要があります。過年度分の年末調整を行うのは、支払った税額が少なく追加徴収される場合か、もしくは支払った税額が多く還付される場合の2通りです。
- 追加徴収時は企業から税務署へ支払う:
追加徴収のケースでは、企業が税務署に従業員の不足税額を支払います。追加徴収分については、企業から従業員へ請求することになります。
- 還付については従業員自身が税務署に請求する:
支払った税額が多い場合は、従業員自身が税務署に請求を行い、還付を受けます。
2. 年末調整の再調整に必要なもの

年末調整の再調整時は、記入後の書面の修正が必要です。
なお、あまりに記載の誤りが多く、新たに書き直さなければならない場合もあります。その際には、下記の書類が必要です。
- 給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計票
- 源泉徴収票
- 支払調書
それぞれについて詳しく解説します。
2-1. 給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計票
年間給与額の合計、給与から徴収した所得税額、弁護士や税理士などの外部に支払った年間報酬額や、その報酬より徴収した所得税額などを記載した書類のことです。翌年1月31日までに修正する必要があります。
2-2. 源泉徴収票
従業員や会社役員に支払った年間金額を個々にまとめた帳票です。提出が必要な源泉徴収票は「給与所得の源泉徴収票」、もしくは「退職所得の源泉徴収票」となります。
2-3. 支払調書
支払調書にはいくつか種類がありますので、新たに提出が必要なときには、注意が必要です。
主なものは、下記の4つです。
- 報酬、料金、契約金および賞金の支払調書
- 不動産の使用料等の支払調書
- 不動産等の譲受けの対価の支払調書
- 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
以下、それぞれについて詳しく紹介します。
2-3-1. 報酬、料金、契約金および賞金の支払調書
税理士や弁護士など、外部に支払った報酬等を記載したものです。一定金額を超過するものについては、支払調書を法定調書合計表に添付し、税務署へ提出する必要があります。
源泉徴収の対象となりうる報酬や金額などの支払いをした際に作成する支払調書で、1年間の報酬金額や、源泉徴収税の金額を記入します。1年間に5万円を超える場合に提出するのが一般的です。
2-3-2. 不動産の使用料等の支払調書
地代や家賃など、不動産の賃借料を支払っているときに作成しなければならない支払調書で、借主や借りている不動産の情報、支払金額などを記入します。
家賃の場合、1年間の使用料の支払いが15万円を超過しており、個人に支払っている際に提出します。
2-3-3. 不動産等の譲受けの対価の支払調書
不動産を購入したときに作成する支払調書で、購入した不動産の情報や金額などを記入します。法人または一定の不動産業者である個人に対し、1年間の支払金額が100万円を超過する場合に提出するものです。
2-3-4. 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
不動産に関するあっせん手数料を支払った際に作成する支払調書で、支払先や料金を記入していきます。法人あるいは一定の不動産業者である個人に対し、1年間の支払金額が15万円を超過するときに提出が必要となります。
2-4. 市区町村に提出の必要な書類
年末調整で必要となるのは税務署に提出する書類だけではありません。
「給与支払報告書」は、住民税計算のため、従業員の住む市区町村に提出する書類です。総括表と個人別明細書の2種類があり、どちらも翌年1月31日までに提出します。
- 総括表
市区町村ごとに作成を行う、給与支払報告書の表紙のようなものです。給与を支払う企業名やその所在地、企業の全従業員のなかで、どのくらいの人数の従業員がその市区町村に住んでいるのかといった情報を記入します。
- 個人別明細書
給与や賞与等の年間金額や保険料控除等の金額情報を記載したもので、一般的に記載内容は源泉徴収票とほぼ同様です。
3. 年末調整の再調整に期限はある?

上記でも触れましたが、ここでは年末調整における再調整の期限について、詳しく解説します。
3-1. 企業内の再調整の期限は翌年1月31日まで
年末調整の再調整は、「従業員に源泉徴収票を発行する前」かつ「翌年1月31日まで」に行うこととされています。
また、年末調整後であっても、翌年1月31日を過ぎていなければ、企業内での見直しは可能です。ただし、企業によっては、早い段階で締め切っているケースも少なくありません。
締切日をよくチェックしておくとともに、再調整が必要となる場合は早めに担当者に相談するとよいでしょう。
3-2. 従業員自身が確定申告する場合は翌年3月15日まで
「翌年2月以降」または「源泉徴収票発行後」に再調整する場合は、企業ではなく、従業員自身が翌年2月16日から3月15日の間に確定申告を行う必要があります。
従業員が自身で確定申告する際は手間も多いため、期限内の再調整が望ましいでしょう。再調整の可能性があれば早めの連絡が肝心です。期限や必要書類などの情報についても、企業側から全従業員へしっかり周知しておきましょう。
4. 年末調整の再調整は早めに動き出すことが大切です

翌年1月31日を過ぎておらず、源泉徴収票が未発行であれば、なるべく早めに担当者と従業員の間で連絡を行い、再調整を進めましょう。
翌年1月31日を過ぎているか、源泉徴収票発行されたあとで再調整する場合は、翌年2月16日から3月15日の間に確定申告が必要です。
なお、過年度の年末調整に誤りがあった場合にも注意しましょう。追加徴収時は企業主体で動き、還付については従業員自身が請求しなければなりません。
年末調整を行ったあとで再調整する場合、全ての内容を見直さなければなりません。年末調整の担当者や従業員本人にとって、非常に多くの手間と時間がかかることになります。
年末調整を行う際は、なるべく再調整が必要ないよう、事前に必要となる書類や期限についての情報を全従業員に周知することが大切です。もちろん、なかには扶養家族の増減など、仕方のないケースもあります。再調整の可能性があれば従業員に早めに申し出てもらう、担当者が従業員とその都度コンタクトを取るなどして、対処しましょう。
また、現在は年末調整の電子化が進んでおり、インターネットの活用によって、担当者・従業員の負担軽減が期待できます。積極的に導入するとよいでしょう。
▼電子化について知りたい方はこちら
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