代理店契約書に記載すべき内容や作成上の注意点を詳しく解説
更新日: 2023.2.25
公開日: 2023.2.25
jinjer Blog 編集部
商品やサービスを販売する方式は、自社(メーカー)が直接ユーザーに販売する「直接販売」と、販売業務を代理店に委託する「代理店販売」の2種類に分けられます。代理店に委託する場合は、代理店契約(販売代理店契約)の締結が必要です。代理店契約を締結する際、契約書にどのような条項を記載すべきでしょうか。この記事では、代理店契約書のポイントや記載すべき内容、作成上の注意点をわかりやすく解説します。
1. 代理店契約書とは?
商品やサービスの販売を代理店に委託する場合、代理店契約(販売代理店契約)を締結します。代理店契約書の特徴を理解するには、代理店契約と販売店契約をきちんと区別して考えることが大切です。
ここでは、代理店契約と販売店契約の違いや、代理店契約書の要点を解説します。
1-1. 代理店契約と販売店契約の違い
代理店契約(販売代理店契約)と販売店契約はよく混同されますが、全く異なる契約形態を指す言葉です。代理店契約は、商品やサービスの販売業務を委託し、代理店が販売手数料を受け取る契約を表します。
一方、販売店契約は販売店が商品やサービスを直接買い取り、顧客に再販売する契約です。代理店契約と販売店契約の違いを以下の表にまとめました。
代理店契約 (販売代理店契約) |
販売店契約 | |
売買契約の当事者 | メーカーが顧客と売買契約を締結し、代理店は販売業務のみを委託される | 販売店と顧客が売買契約を締結する |
販売価格 | 原則としてメーカーが決定する | 販売店が再販売価格を決定する |
利益 | 代理店は販売手数料を得る | 販売店は商品の再販売による利益を得る |
代金の収納 | 原則としてメーカーが行う | 販売店が行う |
在庫の所有権 | 代理店は所有権を持たない | 販売店が所有権を持つ |
クレームへの対応 | 代理店はクレームへの責任を負わない | 販売店はクレームへの責任を負う |
1-2. 代理店契約書の特徴
代理店契約と販売店契約の違いを踏まえて、代理店契約書の特徴は3つに分けられます。
- 代理店契約書はあくまでも販売業務の委託に関する契約であり、商品の売買契約は含まれない
- 代理店契約書では、代理店が代金回収の責任やクレーム対応への責任を負わない
- 代理店契約書では、代理店が商品在庫の所有権を持たない
販売店契約と違って、代理店契約はあくまでも販売業務の委託に関する契約です。売買契約はメーカーと顧客の間で締結されるため、代理店契約書には含まれません。
また、代理店は売買契約の当事者ではないため、商品の代金を回収する責任や、顧客からのクレームに対する責任を負いません。代理店契約と販売店契約をきちんと区別し、代理店契約書を作成しましょう。
2. 代理店契約書に記載すべき内容
代理店契約書に記載すべき条項は、大きく分けて4つあります。
- 手数料
- 販売代金の取り扱い
- 報告義務
- 契約解除の方法
それぞれのポイントや、具体的に取り決めておくべきことを解説します。
2-1. 手数料
代理店契約では、代理店が販売代金の一部を手数料(販売手数料)として受け取ります。代理店契約書を作成する場合、手数料の割合や支払い方法などをあらかじめ定めておく必要があります。
2-2. 販売代金の取り扱い
代理店契約の場合、商品の販売代金の収納は代理店ではなく、メーカー側が行う必要があります。ただし、代理店契約書で代金の収納代行について取り決め、販売代金を代理店に回収してもらうことも可能です。
2-3. 報告義務
メーカーは販売業務を代理店に委託するため、商品が売れた数や売上の見込み、顧客からのクレーム内容などの状況がわかりません。代理店契約書に売上などの報告義務に関する条項を盛り込むことで、メーカー側が商品の販売状況を把握できます。
2-4. 契約解除の方法
一般的な契約と同様に、契約解除の方法や、代理店契約の有効期間などを記載する必要があります。代理店契約は、契約期間が長期に渡ることが多く、契約の延長が繰り返し行われることも珍しくありません。その場合、代理店契約書に契約の自動更新に関する定めを記載することで、契約更新の手間を削減することができます。
もし契約条件を変更したい場合は、当事者双方の合意に基づいて、別途変更契約書を作成する必要があります。
3. 代理店契約書を作成するときの注意点
代理店契約書を作成するときの注意点は3つあります。まず、代理店に販売業務の再委託を認めるかどうかを慎重に検討しましょう。また、代理店に独占販売権を与える場合は、自社の競合品の取り扱いや、最低販売数の努力義務についても取り決める必要があります。
代理店契約書は印紙税法上の課税文書に当たるため、収入印紙を貼り忘れないように注意しましょう。
3-1. 二次販売代理店への再委託
代理店契約を締結する際に、販売業務の再委託を許諾できます。二次販売代理店への再委託を認めた場合、販売機会の拡大が期待できます。
一方、二次販売代理店への監視の目が行き届かないため、顧客とのトラブルなどにより、自社のブランドが毀損されるリスクがあります。二次販売代理店への再委託を認めるかどうか、慎重に検討しましょう。
3-2. 独占販売権の付与
メーカーは代理店に対し、独占販売権を付与することができます。独占販売権を付与する場合は、自社の競合品の取り扱いや、最低販売数の努力義務を必ず定めましょう。
競合品の取り扱いを禁止すれば、自社商品の販売に専念してもらい、売上の減少を防ぐことができます。同時に最低販売数の努力義務を定めることにより、安定した利益を確保できます。
ただし、競合品の取り扱い禁止は代理店にとってデメリットが大きいため、独占販売権を認めるメリットをきちんと説明することが大切です。
3-3. 代理店契約書は収入印紙が必要
国税庁のホームページの「印紙税額の一覧表」をみると、代理店契約書は印紙税法上の第7号文書に該当します。[注1]
号 | 文書の種類 | 印紙税額 |
7 | 継続的取引の基本となる契約書 (売買取引基本契約書、特約店契約書、代理店契約書、業務委託契約書、銀行取引約定書など) |
4,000円 |
第7号文書の印紙税額は、契約の金額によらず一律で4,000円です。契約書に収入印紙を貼らなかった場合、印紙税法の規定により、ペナルティとして過怠税が科される可能性があります。
ただし、代理店契約書に記載された契約期間が「3ヵ月以内であり、かつ、更新の定めのないもの」の場合は、非課税文書となるため印紙税が課税されません。[注2]
[注1]No.7104 継続的取引の基本となる契約書|国税庁
[注2]No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで|国税庁
4. 代理店契約書に記載すべき条項を確認しよう
代理店契約書は、メーカーが販売代理店に対し、自社の商品の販売を許諾したり、販売業務を委託したりするときに締結する契約書です。代理店契約書に記載すべき条項は、代理店に支払う手数料、販売代金の受け取り、報告義務、販売目標、秘密保持義務、契約解除の方法、契約の有効期間など多岐にわたっています。
自社にとって不利な契約にならないよう、代理店契約書に記載すべき条項をきちんと確認しましょう。代理店契約書は、印紙税法における第7号文書に該当します。契約金額にかかわらず、4,000円の印紙税を納付する必要があるため、収入印紙を貼り忘れないように気をつけましょう。
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