電子帳簿保存法の対象書類は?保存期間や保存方法を紹介
公開日: 2023.3.16 jinjer Blog 編集部
1998年に施行された電子帳簿保存法は、少しずつ法改正が進んでおり、各種データの保存要件も緩和されてきています。昨今では、さまざまな重要書類の電子保存が認められるだけでなく、一部はデジタル化が義務化された部分もあります。
本記事では、具体的に電子帳簿保存法の対象になっている書類について詳しく紹介します。
目次
1. 各種帳簿書類のデジタル化を認めるのが電子帳簿保存法
電子帳簿保存法とは、元々用紙による保存義務があった税務関連の帳簿書類に対し、一定のルールに則った方法でのデジタル化を許可する法律です。[注1]
今までにも何度か法改正がされてきたなかで、2022年1月1日より施行された新たな規定では、電子取引による書類すべてのデジタル保存の義務化が決定しました。
たとえば、メールで送られてきた領収書などは、紙に出力して保管するのではなく、今後は電子データで残しておかなければなりません。
ちなみに2023年12月31日までの電子取引書類に関しては、猶予期間として紙ベースでの保存が認められています。
しかし2024年1月以降からは完全義務化されるため、それまでに準備を整えることが必要です。
こうした背景もあることから、電子帳簿保存法により書類保管の方法は、あらかじめきちんと認識しておくことも重要です。
具体的に、どのような書類が電子帳簿保存法に該当するのか、以下から詳しく解説します。
2. 電子帳簿保存法の対象書類
まず電子帳簿保存法には、先ほどの電子取引データのほか、スキャナデータと電子帳簿・書類という3つの区分があります。
ではそれぞれで、具体的にどのような書類を指すのかみていきましょう。
2-1. 電子取引
前述のとおり、Web上で受け渡しをした税務関連書類で、たとえば次のようなケースが該当します。[注2]
- 電子メールやチャットなどの本文
- PDFによるファイル添付・ダウンロード
- クラウドサービス上でのデータ
- オンライン決済(クレジットカードなど)の明細情報
- 記録媒体(DVDなど)による授受 など
もし特定のWebページやサイト上でのみ表示できる取り引きであれば、スクリーンショットで記録することも可能です。
上記の例なら、チャットの文面でやり取りした場合など、画面自体をスクリーンショットして保存できます。
また電子取引がおこなわれる書類の具体例には、以下のようなものがあります。
- 請求書
- 注文書
- 領収書
- 検収書
- 納品書
- 契約書
- 見積書 など
上記のように税務申告の根拠となる書類を電子受信または送信(控え)した場合、紙に印刷して保管するのではなく、デジタル記録として残しておかなければなりません。
なお、請求書や領収書など、原本を用紙で受け取っている場合には、紙ベースのまま保管しておく対応で問題ありません。
あくまで電子上で取り引きしたケースのみ、法律で義務化されています。
2-2. スキャナ保存
場合によっては、たとえば店頭で受け取った領収書なども含めて、すべてスキャニングして保存しているケースもあるでしょう。
こうしたスキャナ保存した書類も、電子帳簿保存法の対象として認められています。
なお、スキャナ保存ができる税務関連書類は、請求書や納品書など、基本的には先ほど電子取引におけるデータと同様です。
相手からの受け取り、もしくは相手に渡した控えの双方ともにスキャナ保存ができます。
ちなみにスキャナ保存と呼ばれていますが、スマートフォンやデジタルカメラで撮影したデータでも問題ありません。
また、重要書類はカラー画像で保存しなければなりませんが、税務申告などに直接関連しない一般書類(見積書や注文書など)は、グレースケール画像も許可されています。
2-3. 電子帳簿・書類
税務関連の各種帳簿や書類も、一定の要件に沿って電子作成している場合には、電子帳簿保存法によってデジタル記録が認められています。
たとえば、会計ソフトを使用しているのであれば、わざわざ紙に出力しなくても、そのままパソコンやクラウド上などで保存しておくことが可能です。
具体的には、次のような帳簿や書類が該当します。[注3]
- 仕訳帳
- 売上・仕入帳
- 経費帳
- 現金出納帳
- 買掛・売掛帳
- 総勘定元帳
- 固定資産台帳
- 損益計算書
- 貸借対照表
- 棚卸表 など
さらに上記のうちの帳簿については、電子帳簿保存法における優良電子帳簿にあたる場合、過少申告加算税の軽減措置や青色申告特別控除の対象にもなります。
3. 電子帳簿保存法の対象書類の保存期間は7年が基本
ここまでに出てきた帳簿や書類に関しては、いずれも一定期間の保存が義務付けられています。
税務調査などの場合に調査官に提示する必要があり、用紙でも電子データでも同じように、記録として残しておかなければなりません。
なお電子帳簿保存法においても、一般的な帳簿書類と同様に、原則は確定申告期限の翌日から7年間の保存が必要です。[注4]
組織の規模に関係なく、全法人で基本的には7年とされており、例外的に青色繰越欠損金などが発生した場合には10年間に延長されます。
また個人事業主の場合は法人とは規定が異なり、申告方法や帳簿書類の種類ごとに保存期間は変わります。
4. 電子帳簿保存法の対象書類を取り扱う場合の注意点
電子帳簿保存法によって、各種帳簿書類のデジタル化が認められるようになりましたが、いずれにしても国税庁による要件を満たさなければなりません。
保存方法なども非常に細かく設定されているので、詳しくは国税庁のホームページをご確認ください。
そのうち気を付けておきたい基本的なポイントを簡単に解説します。
4-1. デジタルと手書きを併用する帳簿は例外扱い
各種帳簿の場合、電子帳簿保存法によってデジタルでの作成・保管が認められたものなので、当然ながら手書きで記帳しているものがあっても問題はありません。
たとえば、現金出納帳だけは手書きして、ほかは会計ソフトを使用するといった方法も可能です。
ただし、電子作成している帳簿のなかで、一部だけ手書きにする場合、スキャニングなどによるデジタル保存はできないので注意が必要です。
4-2. 必ずデータの改ざん防止対策をしておく
帳簿作成に使用するシステムの機能や各種書類のタイムスタンプ付与など、電子帳簿保存法では、データの改ざんができない方法による管理が義務付けられています。
ずさんな状態で保存されていると、税務申告の根拠として認められなくなってしまうため、しっかりと適切に管理しなければなりません。
4-3. 速やかにデータが確認できる状態に
電子帳簿保存法によるデータでは、いずれも必要な情報を速やかに取り出すための検索要件や可視性などが求められます。
税務調査で滞りなくデータを提示するために、必要なルールがいくつか決まっているので、電子保存を始める際には事前に確認しておくのがベストです。
5. 電子帳簿保存法からペーパーレス化の推進にもつながる
最近では、電子取引データの取り扱いに関する法改正もあり、デジタルによるデータ保存が一部義務化されました。
また、税務関連の帳簿書類は、一定のルールを守っていれば、基本的にはいずれも電子保存が可能です。
電子帳簿保存法に対応していくことで、社内のペーパーレスにもつながり、コスト削減や業務改善を促すケースもあります。
ぜひ今回の記事を参考に、電子化を進めていきましょう。
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