契約書に収入印紙を貼らなくていい場合とは?ルールを徹底解説
公開日: 2023.2.24 jinjer Blog 編集部
売買契約や請負契約などの契約を締結するとき、契約書に印紙税を貼る必要があります。収入印紙を貼り忘れた場合は、印紙税法によりペナルティが科されます。
しかし、契約書の種類によっては、収入印紙を貼る必要がない場合があります。印紙税法のルールを知り、収入印紙を貼るべきケースと貼らなくてもいいケースを整理しましょう。
この記事では、国税庁の見解を元にして、契約書に収入印紙を貼らなくていいケースを解説します。
目次
1. 契約書に収入印紙を貼る意味
そもそも、契約書になぜ収入印紙を貼る必要があるのでしょうか。収入印紙を貼る理由は、契約書の取引金額に応じて、所定の金額の印紙税を納税するためです。
印紙税の課税対象となる文書のことを「課税文書」と呼びます。印紙税法の規定により、課税文書に該当する契約書を作成した時点で、契約書の作成者は印紙税を納める義務を負います。
印紙税の納税義務は、課税文書を作成した時に成立し、課税文書の作成者が、その作成した課税文書について印紙税を納める義務があります
引用:印紙税の手引(P12)|国税庁
収入印紙が貼られていないからといって、契約書の内容が無効になるわけではありません。しかし、契約書に収入印紙を貼り忘れた場合は、税金を納めていないことになるため、印紙税法の規定により過怠税が科されます。
なお、印紙と呼ばれるものには、収入印紙の他にも自動車重量税印紙、雇用保険印紙、自動車検査登録印紙、健康保険印紙、特許印紙、登録印紙などの種類があります。
印紙税を納付する場合は、必ず「収入印紙」を貼る必要があります。また、印紙の彩紋が汚損しているものや、すでに消印が押されているものを契約書に貼り付けた場合も、印紙税を納付したことになりません。
2. 契約書に収入印紙を貼らなくていい場合
全ての契約書が課税文書に該当するわけではありません。また、課税文書に該当する契約書を作成した場合でも、収入印紙を貼らなくてもよいケースがいくつかあります。契約書に収入印紙を貼る必要がないケースを4つ紹介します。
2-1. 取引の金額が1万円未満の契約書
印紙税額は、契約書に記載された取引金額に応じて決まります。取引金額が1万円未満の場合、印紙税が非課税となるため、契約書に収入印紙を貼る必要はありません。ただし、領収書などの金銭または有価証券の受取書は、受取金額が5万円未満の場合に印紙税が非課税となります。また、契約書によっては取引金額にかかわらず印紙税が課税されるものもあるため、国税庁のホームページの「印紙税額の一覧表」を確認しましょう。
2-2. 非課税文書に該当する契約書
印紙税の課税対象とならない文書のことを「非課税文書」と呼びます。非課税文書に該当する契約書には、収入印紙を貼る必要がありません。非課税文書の例として、次のような契約書が挙げられます。
- 動産のリース契約に関する契約書
- 建物のレンタル契約(賃貸借契約)に関する契約書
- 雇用契約に関する契約書
- 業務委託(準委任契約)のうち、請負契約に該当しない契約書
例えば、コピー機や複合機などのOA機器のリース契約を締結する場合は、契約書が非課税文書となるため、収入印紙を貼る必要がありません。また、従業員の雇用契約書も印紙税が課税されないため、覚えておきましょう。
2-3. 契約の成立を証明する目的でないコピーや写し
契約書を作成する際に、副本や謄本などを用意する場合があります。例えば、契約当事者が契約書の写しを1通ずつ保管するケースです。契約の成立を証明する目的で契約書の写しを作成した場合、原本・正本と同様に収入印紙を貼る必要があります。
(1) 契約当事者の双方または文書の所持者以外の一方の署名または押印があるもの
(2) 正本などと相違ないこと、または写し、副本、謄本等であることなどの契約当事者の証明のあるもの
引用:No.7120 契約書の写し、副本、謄本等|国税庁
しかし、契約内容を社内で確認するため、契約書を複写したりコピーしたりするケースもあります。契約の成立を証明する目的でないコピーや写しに関しては、収入印紙を貼る必要がありません。
契約書の正本を複写機でコピーしただけのもので、上記のような署名もしくは押印または証明のないものは、単なる写しにすぎませんから、課税対象とはなりません。
同じく、ファックスや電子メール等により送信する場合も正本等は送付元に保存され、送付先に交付されておらず、送付先で出力された文書は写しと同様であり、課税対象とはなりません。
引用:No.7120 契約書の写し、副本、謄本等|国税庁
2-4. 電子契約を締結した際の契約書
電子契約を締結する場合は、契約書をPDFなどの電子データで作成します。電子データで作成した契約書は課税文書に当たらないため、収入印紙を貼る必要がありません。印紙税が課税されないのは、電子契約の大きなメリットの一つです。印紙税の節約を目的として、電子契約の導入を検討する企業も存在します。
3. 契約書に収入印紙を貼る必要がある場合
課税文書に該当する契約書を作成した場合、所定の金額の収入印紙を貼る必要があります。課税文書に該当する契約書や、収入印紙の金額は、国税庁のホームページの「印紙税額の一覧表」で確認できます。また、契約の成立を証明する目的で念書や覚書を作成した場合は、契約書と一緒に収入印紙を貼る必要があります。
3-1. 課税文書に該当する契約書
課税文書に該当するのは、以下の3つの条件を満たす文書です。
(1) 印紙税法別表第1(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証されるべき事項(課税事項)が記載されていること。
(2) 当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること。
(3) 印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書でないこと。
引用:No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断|国税庁
課税文書に該当するかどうかの判断は、最終的には契約書の内容を個別具体的に勘案して行います。国税庁の「印紙税額の一覧表」によると、収入印紙が必要な契約書の例として、次のようなものが挙げられます。
第1号文書 | ● 不動産、鉱業権、無体財産権、船舶もしくは航空機または営業の譲渡に関する契約書 ● 地上権または土地の賃借権の設定または譲渡に関する契約書 ● 消費貸借に関する契約書 ● 運送に関する契約書 |
第2号文書 | ● 請負に関する契約書 |
第5号文書 | ● 合併契約書または吸収分割契約書もしくは新設分割計画書 |
第7号文書 | ● 継続的取引の基本となる契約書 |
第12号文書 | ● 信託行為に関する契約書 |
第13号文書 | ● 債務の保証に関する契約書 |
第14号文書 | ● 金銭または有価証券の寄託に関する契約書 |
第15号文書 | ● 債権譲渡または債務引受けに関する契約書 |
3-2. 念書や覚書に収入印紙を貼るケースもある
契約書を取り交わす際に、念書や覚書を別途作成することがあります。契約金額が記載されているなど、契約書を補完する目的で念書や覚書を作成した場合は課税文書とみなされ、収入印紙が必要になるケースがあります。
なお、念書、請書など契約の当事者の一方のみが作成する文書や契約の当事者の全部あるいは一部の署名を欠く文書で、当事者間の了解や商慣習に基づき契約の成立等を証明する目的で作成されるものも契約書に含まれます。
引用:印紙税の手引(P6)|国税庁
4. 印紙税のルールを理解し、契約書に収入印紙を貼るべきケースとそうでないケースを区別しよう
契約書に収入印紙を貼る理由は、印紙税法の規定により、所定の印紙税を納税するためです。しかし、全ての契約書が印紙税の課税対象となるわけではありません。例えば、非課税文書に該当する契約書や、取引の金額が1万円未満の契約書、電子契約を締結した際の契約書などは、収入印紙を貼る必要がありません。契約書が課税文書に該当するかどうかの判断に迷う場合は、税庁のホームページの「印紙税額の一覧表」を確認しましょう。印紙税のルールを理解し、収入印紙を貼るべき契約書とそうでない契約書を区別することが大切です。
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