労働基準監督署の監査内容や目的について
更新日: 2023.9.1
公開日: 2022.2.9
jinjer Blog編集部
労働基準監督署では、企業に対して監査を行います。監査は一般的に臨検監督と呼ばれており、企業が労働基準法を遵守しているかの確認を行います。臨検監督は、定期監督・申告監督・災害時監督・再監督の4種類に分けられるのがポイントです。
今回は、労働基準監督署が行う監査の内容や、監査を行う目的、常日頃からできる対策方法について詳しく解説していきます。
目次
1. 労働基準監督署の監査内容
労働基準法が行う臨検監督には、労働基準法に違反している項目がないかをチェックする目的があります。労働基準監督署の調査は、原則拒否することができません。
また、労働基準監督署の調査によって、労働基準法に違反しているポイントや是正すべきポイントが見つかった場合は、口頭による指導の他、是正勧告書・指導票による書面での指導などによって、改善するように指示が出されます。ただし、口頭による指導や是正勧告書、指導票での改善指示には法的拘束力がありません。法的拘束力をもつのは、緊急を要する場合に交付される使用停止等命令書のみです。
しかし、書面での指示を無視し続けると送検されてしまい、場合によっては裁判で起訴される可能性もあります。
また、冒頭でも少し触れたように、労働基準監督署が行う監査には4つの種類があります。
▽労働基準監督署が行う監査の種類
- 定期監督
- 申告監督
- 災害時監督
- 再監督
監査の内容を理解するには、以上に示すように監査の種類を理解するのが大切です。一つ目の定期監査は、問題がない企業に対しても定期的に行われる通常の監査です。隠ぺいや捏造を防ぐために原則では申告なしで行いますが、書類や担当者を準備してもらうために申告してから監査に訪れるケースが多いようです。
二つ目の申告監督は、労働者からの申告があった場合に、実態調査のために行われる監査です。問題部分の隠ぺいを防ぐため、定期監督のように見せかけたり、呼出状によって労働基準監督署に直接呼び出したり、監査の方法は状況によって異なります。
三つ目の災害時監督は、基準以上の労働災害が発生した場合に、原因の究明と再発を防止するための指導を行うために実施されます。
そして、四つ目の再監督は以前の監査で是正勧告を受けている場合、指摘した部分が改善できているかを調査するために行われます。是正勧告を受けると問題点を改善し、指摘を受けた項目と、改善した日を記載して是正報告書を提出しなければなりませんが、この是正報告書を提出しなかった場合にも、再監督が行われます。
普段から法令順守を心がけており、過去にも問題がなかった企業は心配する必要がありませんが、問題を抱えていたり、以前指摘を受けたりした企業は注意が必要です。
2. 労働基準監督署が監査をする目的
労働基準監督署が行う監査には4つの種類があり、それぞれ状況と目的が異なりますが、労働基準監督署が監査を行う目的は憲法25条にあります。
憲法25条では「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と定めています。健康で文化的な最低限度の生活を営むには、健全な生活を維持できるだけの賃金が守られていなければなりません。また、働き方にもポイントがあり、健康な生活を送るには適切な負担と休息が必要です。
従って、以上の最低限度の生活と健康さを維持するためには、適切な労働条件・労働環境下で働く権利が保障されていなければなりません。もちろん、適切な労働条件だけでなく、精神的な負担が多かったり、危険な作業で身体機能に支障をきたしたり、危険な労働環境も憲法に反しています。
さらに、憲法27条2項では「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」と記されていますが、この27条に即して制定されたのが労働基準法です。労働基準監督署が行う監査では、労働基準法を遵守させる目的の先に、憲法25条を守り、労働者の健康で文化的な最低限の生活を守る目的があります。
労働基準監督署の監査では、場合に応じて法的拘束力を持つ使用停止等命令書が交付されます。使用停止等命令書は労働者の安全が急迫されている状況にのみ交付されるため、監査には労働者の安全を守る目的もあることがわかります。
3. 日ごろからできる対策方法とは
労働基準監督署の監査は事前に申告がある場合でも、申告を受けてから監査が行われるまでに対策できることはありません。そのため、普段から監査で指摘を受けないための対策が必要です。加えて、監査の対策を行うには、調査の内容とチェックされる書類について詳しく知っておくのが良いでしょう。
労働基準監督署の監査では、以下の3点に焦点を当ててチェックします。
・労働時間が管理できているか
・労働条件の不利益変更や不当解雇がないか
・健康診断など安全衛生の事項が守られているか
特に、36協定で法定労働時間を超える残業が認められている場合には、長時間労働の実態がないか、サービス残業として未払いになっている残業代がないかをしっかり確認します。
また、監査では次の書類がチェックされます。
- 会社の組織図
- 労働者の名簿
- 賃金大議長
- 従業員ごとの時間外労働・休日労働に関する書類
- 勤務時間の記録
- 時間外・休日労働に関する協定届
- 就業規則
- 特殊な労働規則を定めている労使協定
- 年次有給休暇の取得状況がわかる管理簿
- 労働条件通知書(従業員に交付しているもの)
- 総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者の選任状況に関する書類
- 安全委員会・衛生委員会の設置・運営状況に関する書類
- 産業医の選任状況に関する書類
- 健康診断の実施結果
チェックする書類も、労働者が健全な労働条件下で働いているか、労働に対する賃金が適切に支払われているか、労働者の安全がしっかり守られているかに従って、決められています。
労働基準監督署の監査は次の7つの手順に沿って行われます。
- 労働基準監督署から予告が来る(予告がない場合もある)
- 労働基準監督署から監督官が2名派遣される
- 書面上で問題がないかチェックする
- 事業主および責任者に聞き込み調査を行う
- 事業場内での立ち入り調査として労働者に聞き込み調査を行う
- 口頭による改善指示を行う
- 深刻な問題があれば書面で改善指示を交付する
以上の調査詳細をふまえ、指摘を受けないためには、
- 労働者ごとの労働時間を正確に把握し、長時間労働の実態を改善する
- 賃金の計算を正確に行う
- 労働災害が発生しないように設備や労働手順に気を配る
- 弁護士や社会保険労務士に立ち合いや指導を依頼する
などの対策を、常に行う意識が大切です。
4. 労働基準監督署の監査では労働基準法を守っているかをチェックされる!法令順守の意識を常に持つのが大切
労働基準監督署の調査では、企業が労働基準法を守っているかをチェックされます。従って、常に法令を遵守する意識が大切。ただし、法令を守る意識があっても、見落としやご入力等で法令違反が発生している場合もあります。
ミスによる法令違反を防ぐためには、業務をシステム化したり、社外の第三者の立場にある弁護士や社会保険労務士に指導を依頼するのがおすすめです。
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