【中小企業における人的資本経営の実態調査】人的資本経営を重要視する企業は約58%、業務過多等が原因で、人的資本情報の測定・開示に取り組む企業は約11%に留まる。
公開日: 2024.9.5 AKASHIGE
クラウド型人事労務システム「ジンジャー」を提供しているjinjer株式会社(本社:東京都新宿区 代表取締役社長:桑内 孝志 以下、jinjer)は、中小企業の人事担当者の計302名を対象に「中小企業における人的資本経営の実態」に関する調査を実施しました。
調査サマリー
調査の背景
人的資本経営は、企業の競争力を高めるための重要な要素として注目されています。特に中小企業においては、採用難や人手不足等、事業運営に直結する問題が多く存在していることから、人材の適切な管理と活用は、経営戦略の成功につながるカギになると言えるでしょう。しかし、人的資本経営に取り組む企業は増加しているものの、その実態と課題についての詳細な理解が不足しています。
本調査は、中小企業が直面している人的資本経営の現状と課題を明らかにし、今後の戦略的な人材管理に向けた手がかりとなるように、その実態を調査しました。
調査概要
・調査概要:中小企業における人的資本経営の実態調査
・調査方法:インターネット調査
・調査期間:2024年8月26日~同年8月27日
・調査対象:中小企業の人事担当者 計302名
≪本調査の利用について≫
1 引用いただく際は、情報の出典元として「jinjer株式会社」の名前を明記してください。
2 ウェブサイトで使用する場合は、出典元として、下記リンクを設置してください。
回答者属性(従業員数/上場区分)
■中小企業の人事部は「4名以上」で運営する企業が最多。
人事部の体制について質問したところ、「4名以上(32.5%)」が最多意見でした。
■人的資本経営を重要視する企業は約58%、人的資本情報の可視化・開示に取り組む企業は約11%。
人的資本経営に対して、どの程度重要視しているかについて質問したところ、「とても重要視している(21.5%)」、「やや重要視している(36.8%)」を合わせて58.3%と、重要視している企業が全体の半数以上でした。
また、実際に人的資本情報の可視化・開示に取り組んでいるかについて質問すると、「取り組んでいる」と回答した企業は11.3%でした。人的資本経営を重要視している企業が多く存在するものの、既に取り組みを行っている企業はまだまだ少ないようです。一方で、「取り組むために準備をしている(25.2%)」、「取り組むことを検討している(18.2%)」と、今後取り組む企業も一定数存在することがわかりました。
■人事戦略に紐づいた項目を可視化しているものの、情報は開示していない企業が多い。
人的資本経営に対する取り組みを実施している企業を対象に、「人的資本情報の可視化・開示を実施しているか」について質問したところ、情報を開示している企業は12.3%でした。情報を開示せず、「人事戦略に基づいた重要な項目をある程度可視化している」企業は22.2%。また、情報を開示せず、「退職率・人件費等、最低限のデータを可視化している」企業は12.9%という結果になりました。
■人的資本情報の可視化・開示のきっかけとしては、「エンゲージメント向上施策」「離職率低下への施策」へ役立てるために把握したいという意見が、同率で最多。
人的資本情報の可視化・開示をしようとしたきっかけについて質問したところ、「従業員のエンゲージメント向上施策を打つべく状況を把握したいから」「従業員の離職率を下げるための施策を打つべく状況を把握したいから」が、同率で最多意見でした。他にも「新規人材の採用につなげる施策を打つべく状況を把握したいから(16.7%)」、「経営陣からの要望があったから(11.1%)」という意見も多く挙げられました。
■人的資本情報の可視化・開示をする目的は、「経営戦略実現に向けた人材戦略策定のため」が最多。
人的資本情報の可視化・開示をする目的について質問したところ、最も多くあった意見は「経営戦略実現に向けた人材戦略策定のため(26.5%)」でした。次いで、「適切な人事評価を行うため(24.7%)」、「新規人材の採用強化のため(24.1%)」と、戦略、人事評価、採用に関連した内容が、人的資本情報の可視化・開示する目的として多く挙げられました。
■人的資本経営を進める際の課題として、最も多く寄せられた意見は「業務過多で取り組みへの優先順位が上がらない」。
人的資本経営を進めるにあたり、どのような点に課題を感じるかについて質問したところ、最も多くあった意見は「業務過多で優先順位が上がらない(36,4%)」でした。次いで、「採用難など、喫緊の取り組みに対する課題感が大きく思うように進まない(35.8%)」、「経営陣の理解が乏しい(30.2%)」、「人事部の人数が少なく思うように進まない(26.5%)」等、通常業務の忙しさや人的リソースの不足に関する課題感が多く存在しました。
具体的にデータ化している人的資本の指針について質問したところ、「残業時間(58%)」が最も多い意見でした。次いで「有給取得率(53.1%)」、「育休取得率(37.7%)」、「退職率(37%)」という結果になりました。
また、人的資本を可視化・開示する際に使用しているシステム・ツールについて、最も多くあった意見は「人事労務システム(勤怠・給与システム)」と、システムを使って情報を可視化・開示をしている企業が多いことがわかりました。
jinjer CPO(最高プロダクト責任者)からのコメント
人的資本情報の開示義務化は、有価証券報告書を発行する約4,000社の大手企業が対象ですが、今後、各市場で勢いのある一部の中小企業にも対象範囲が広がることが十分に考えられます。
今回は、中小企業の人的資本経営における現状や現在抱えている課題について、実態を把握すべく調査を実施しました。その結果、ポイントとなるのは「人的資本経営を重要視する企業は約58%に上り、人的資本経営可視化・開示の目的としては『経営戦略実現に向けた人材戦略策定のため』との回答が最多」という点だと感じています。
義務化の対象ではない中小企業においては、特に採用難など、目の前に降りかかる課題が大手企業に比べて多い印象があります。そういった状況の中でも、人的資本に対して向き合い、自社の戦略に活かそうと取り組む姿勢に、人事労務システムを提供している弊社としてもさらに貢献していきたい所存です。
最近では「ジンジャー人事データ分析」という人事データをあらゆる角度から分析・可視化できるサービスの提供を開始しました。統合データベースの活用による人事データの管理・業務効率化に加え、タレントマネジメントのより深い部分まで支援ができると考えております。
今後も、業務工数の削減や生産性の向上の一助となれるよう、引き続き開発を進めてまいります。