請負契約を電子契約で行う際に気をつけるべき下請法の注意点を解説 | jinjerBlog

請負契約を電子契約で行う際に気をつけるべき下請法の注意点を解説

白いペンと細かい文字

下請法とは、発注者の優先的立場の乱用を防止し、下請業者の利益保護を目的とした法律です。3条書面の交付などさまざまな義務が設けられており、電子契約を導入する際も守らなければいけないルールが存在します。

この記事では、下請法の第3条に基づく書面交付義務や、請負契約を電子契約にする注意点・メリットを解説します。

1.下請法による親事業者の書面交付の義務とは?

書面による下請法

下請けの仕事では性質上、双方の事業規模の差が大きいと、優劣関係ができやすくなってしまいます。
下請業者の利益保護を目的とし制定された法律が「下請代金支払遅延防止法」です。
下請法では、新規事業者の優先的地位濫用防止のため、以下のように、4つの義務が定められています。

・書面の交付(同法第3条)
・下請代金の支払期日の決定(同法第2条の2)
・遅延利息の支払(同法第4条の2)
・書類の作成・保存(同法第5条)

上記の1.に該当する書類を「3条書面」と呼び、下請業者に対して交付義務が生じます。

1-1.下請法の対象となる取引や事業者

なお、下請法の対象となる取引や事業者は、以下のように取引内容や資本金の規模別に定められています。

(1)物品の製造・修理委託及び政令で定める情報成果物・役務提供委託を行う取引
新規事業者:資本金3億円超
下請事業者:資本金3億円以下(個人含む)
新規事業者:資本金1千万円越3億円以下
下請事業者:資本金1千万円越3億円以下(個人含む)

(2)(1)を除く情報成果物作成・役務提供委託を行う取引
新規事業者:資本金5千万円越
下請事業者:資本金5千万円以下(個人含む)
新規事業者:資本金1千万円越5千万円以下
下請事業者:資本金1千万円越5千万円以下(個人含む)

以上いずれかに該当する場合、3条書面の交付が必要です。

1-2.3条書面に定めるべき内容

発注にあたり、新規事業者は3条書面に必要な事項を記載した上で、直ちに下請業者に交付しなければいけません。
なお、記載内容は「下請代金支払遅延等防止法第3条の書類又は電磁的記録の作成及び保存に関する規則」により、委託内容や、下請け代金の支払い期日、振込み先金融機関など、12項目が定められています。[注1]

もし、正当な理由により書面の交付までに定められなかった項目があれば、いったん空白のまま3条書面を交付しても問題ありません。ただし、後日すべての項目が埋まった3条書面の再交付が必要です。
また、3条書面には定められた様式がないため、必要事項を記載すればどのようなフォーマットを用いてもかまいません。

[注1]公親事業者の義務|正取引委員会

2.請負契約を電子契約にする際の注意点

積み木とビックリマーク

請負契約では3条書面の交付など、新規事業者の義務を満たせば電子契約による締結も可能です。
しかし、ここでも優先的地位の濫用にあたらないように、電子契約を導入することが求められています。

2-1.書面の交付方法が限定されている

下請法では、3条書面の交付に代えられる電磁的方法は、以下のいずれかのみ認めています。

・電子メールやEDIで送信する
・ホームページやwebサイトに公開して閲覧させる
・磁気ディスクやCD-ROMを交付する

ただし、上記の方法で交付さえすればそれで終わりではなく、それぞれ以下のように留意点が定められています。

電子メールやEDIは送信しただけでは足りず、下請業者がメールを受信していなくてはいけない。
ホームページやwebサイトに公開する場合、閲覧するだけでは足りず、書面データをダウンロードできなければいけない。そのような仕組みがない場合は、電子メールに書面データを添付し送信する。

以上のように、下請業者が3条書面を記録できる仕組みを取らないと、電子的方法で提供したとは認められません。そのため、ショートメール(SMS)やチャットツールの文面に記載する方法では、提供したと認められない可能性が高いでしょう。

2-2.下請け業者の事前承認が必要

3条書面をメールなどの電磁的方法で交付する場合、あらかじめ下請け業者の同意を得なくてはいけません。
その際はどのような方法で電子契約をするか事前に伝え、その上で了解を得る必要があります。なお、電子的方法ではなく書面での交付も選択できるように案内する必要もあります。

もし、電子契約を拒否したからといって、取引を中止したり、数量を減じたりなど、不利益な取り扱いをしたときは、独占禁止法第19条違反を問われる可能性があるため注意しましょう。

また、電子契約のためだけに下請業者に対して、新規事業者の指定する通信機器の購入や、サービス事業者と契約させることも、下請法や独占禁止法に違反する恐れがあります。

2-3.事前承諾は書面・電磁的方法どちらも認められる

下請業者との契約を電子契約にする際の事前承認は、書面でも電子的方法でもどちらでも問題ありません。
なお、電子的方法で事前承諾を得る場合は、以下を示す必要があります。

・電子的方法の種類:メールかwebかなど
・電磁的方法の内容:WordかPDFかなど

事前承諾の様式に定めはないものの、公正取引委員会の公表する「下請取引における電磁的記録の提供に関する留意事項」の第2を踏まえた内容であるとよいでしょう。[注2]

[注2]「下請取引における電磁的記録の提供に関する留意事項」|公正取引委員会

3.請負契約を電子契約にするメリット

包み込まれるプラスマーク

請負契約を電子契約にすれば契約締結に必要なコストの削減や、業務の効率化に役立ちます。また、紙書類と違い、紛失や盗難などを防ぎやすい点もメリットです。

3-1.コストを削減できる

書面による契約では、契約書の印刷や郵送、印紙税など、さまざまなコストが発生します。また、契約締結後の書類は、所定の年数保管する義務もあるため、契約書が多ければそれだけ保管にかかるコストも発生します。

一方、電子契約では、Eメールや専用のツールで契約書を送付でき、印紙税も発生しません。また、データベースで保管できるため、保存にかかるコストも削減できます。

3-2.効率的に業務を進められる

電子契約では、データ上で作成した契約書をすぐに下請け業者に送信できるため、印刷や押印、郵送などの手間を削減できます。郵送にかかる日数も短縮でき、当日中にも契約締結が可能です。

また、インターネットにつながる環境さえあれば契約業務ができるため、担当者が在宅勤務中だから仕事が進まない、などといった事態も防げます。

3-3.コンプライアンスの強化

紙の契約書では紛失などの危険があるだけでなく、社外への持ち出しも容易に行えてしまいます。このように、外部への流出を防ぐためには、施錠できるキャビネットに保管するなどの物理的な対策が求められます。

一方、電子契約では、契約書の閲覧権限を個別に設定するなどのセキュリティ対策が可能です。また、文書は電子署名やタイムスタンプなどの付与により、改ざんを防止する仕組みを備えています。サーバー上で保管するため、災害などによる損失を防ぐことも可能です。

4.請負契約は下請法のルールを守って電子契約を進めよう

机とRULES

請負契約も電子契約により締結することができるものの、発注者には守らなければいけないルールがあるため注意が必要です。特に、電子契約を強要するなどは、独占的地位の乱用と見なされる恐れもあります。

とはいえ、電子契約を導入すれば契約締結の迅速化や、郵送の手間削減など、双方にメリットがあります。導入の際は、請負法を守って進めましょう。